「岡野昭仁の詞」という優しすぎて飲めないバファリン

最近、いつも健康面に関しては元気な自分が少し体調を崩して、ぐずぐずと調子が悪い日が続いた。珍しく病院に行ったり、休みをとったりして、やたら多く出された薬も飲んで、横になって、正に「具合が悪い人です」というような生活を送ってしまったのだが、こうなると、なぜか気持ちも底の底まで落ちてしまい、「あーもーめんどくさい、つらい、何もしたくない、何も考えたくない」と自主的に壊れかけのradio思考になってしまう。

 こんな時は好きな音楽に頼るに限る、とポルノを聞いてみたりするけれど、いつもなら大体これでなんとかなるのに、やけに歌詞も何もかも刺さらない。何を聞いても今の自分にハマらない。そんなことが起きたりした。

 

昔、まだ自分が社会的に自立していない年齢の頃、どうしても元気が出ない時によく聞いていたのが、「作詞:岡野昭仁」の曲達である。

ポルノの名歌詞職人と言えば新藤晴一、というイメージが大きいように感じるが、岡野氏の作詞もまた違った意味で特徴的で、味のある歌詞が多い。晴一がフィクションならば、その逆、「岡野昭仁」という人間を通して描かれた情景がありありと映し出されている。本人が語る言葉も合わせた上で、ファンから見た人物像としては、優しく、素朴で、温かさに満ちた人であり、ちょっとヘンテコで、あっけらかんとしているのに尚且つネガティブな「陰」の部分を持ち併せた、素直でセンシティブな人であるというのが岡野氏の大体のイメージではないかと思う(全然違ったらすいません)。そしてその人柄が、本人の作る歌詞にもよく表れているように思える。

優しい曲。あたたかい曲。とにかく暗い曲。そして気持ちの悪い曲(褒め言葉)。そして、岡野氏の「陽」をかき集めた「頑張ろう!!!」みたいな曲。

この「頑張ろう!!!」ソングがまたネックでもある。上記のように、根暗でネガティブだと常々本人も言っているけれど、とことん暗くて陰鬱になっても、それを越えて物凄く強いバネに変換できるタイプの人でもある印象を受ける。真っ直ぐな人柄だからこそ、正直な感情がグサグサ刺さってくる。

ただその前向きなバネが、昔の自分にはとても大きな支えになっていて、言葉のひとつひとつに勇気づけられた。それは、まだ未知へとひた走る明るい気持ちが自分を突き動かしていた頃の話。だけど、今の自分には身を切るナイフのように痛く感じてしまう。

 

いつから「頑張ろう!!!ソング」で胃もたれするようになったのか。それは、昔よりも「自分がどこまでやれるか、どこまで頑張れるかという見切りをつけるのが早すぎる」ということ、そして、「死ぬほど頑張らなければいけないことが少なくなった」ということに起因する。

現在の自分においては、受験や転職など大きな転換期を迎えることはこれからそうそうない。社内で重責を負うこともまだ少ない。そんな「やればできるのに、ただやる気のない自分」にとって、曲の主人公達は眩しすぎる。こんな自分が鼓舞されて良いわけない、この曲は自分ではなく他のもっと頑張っている誰かに向けられたものなのだから、と目を背けたくなってしまう。

ガイアの果てに航海に出たり少年の残骸を捨てる時期は終わってしまった。荒野に旅に出たりなどしたくない。ただひたすらFade awayしてfree and freedomが欲しいのである。そうなってくるともう昔のように「明るい曲で精神的ドーピング」は出来なくなってしまう。「決着(ケリ)をつける頃かも 見栄を張るばかりの人生」なんて、今聞いたらヘタしたら発狂してしまうかもしれない。

 

また油断できないのが、上記にもある岡野氏の「陰」が強く出た曲の歌詞である。

「風が舞う空にその身を投げることができますか?」

「ああ僕を返してください」

「苦しくて叫ぶ声 届かない 何を待つ?」

「誰にも気付いて貰えない Fade away 咽び泣いてるのに」

「蔑んで 壊して 殺した」

………怖い。一体何が?!となりそうだがこれも岡野氏の紛れもない本質、いやおそらくこっちが本体。メディアに露出するにあたりパブリックイメージを踏襲しなければいけない辛さみたいなものを噛み砕いた結果、激ポジティブな曲があったりするのだろう。正直、自分が落ち込んでいる時に、ここまでの詞には逆に同調ができない。本当に岡野氏の書く言葉には感情がこもっているので、受け止めきれない。『ロスト』も昨年亡くなった祖父を思い出してしまうので、しばらく聴いていない私には重すぎる。

 

困った。もう昔のように昭仁の曲で精神的ドーピングはできないのか……そう思い立ち、いっそのこと「詞:岡野昭仁」の曲だけ聴いてみよう。なぜかそんなことを思った。そうすると、なぜか「頑張ろう!!!」系の曲を差し置いて、全く関係ない曲が刺さってきた。

「そばにいてあげるよ あなたから笑顔消えないように」

「僕は自分に偽りないと誓えるだろうか」

「迷子になっているのならば帰ってこなくていいよ」

いわゆるラブソング。

「わかっていなかった歌の意味 今なら少しわかる気がする まるで違う歌のようさ」と先の新藤晴一先生も言っているように。

岡野昭仁は言葉のチョイスが優しすぎる。優しさがあるからこそ、暗い曲がこわい。明るい曲がまぶしすぎる。だけど、今の私が欲しかったのは、どこを切り取ってもいいからとにかく優しい言葉だったのだと痛感する。ダメ人間と呼ばれてもいい。甘えるなと自分では思っている。だけど、今は鼓舞より何より、響きがやわらかい言葉がほしい。なんでこんなに落ち込んでるのか正直わからなくてため息ってより吐きそうだったけど、とにかく新しい精神的ドーピングをしたのでまだガイア行けそう。でも君に100%はやっぱ聴けませんでした。期待外れの自分におさらばしてゼロに戻れるのはいつなのか。