【ライブレポ】しまなみロマンスポルノ'18~Deep Breath~の思い出【北海道から広島へ】

 

次のツアー「UNFADED」まであと1ヶ月。今更ですが、しまなみロマンスポルノについて書き溜めていたことを全て書き終えました。

 

単純にライブレポだけにしようと思ったのですが、当日の空気、そして個人的な事情も含めて書かないと、思ったこと、感じたことに齟齬が生じてしまうので、少し辛気臭い内容になってしまったかもしれません。

ライブに向かう直前にあった出来事~当日、中止になってしまった2日目~ライブビューイングまでの流れを少しでも感じていただけたら嬉しいです。

ライブレポのみ読みたい方がいたらこちらをクリックで飛べます。

 

 

 

 

☆9月6日~当日まで

しまなみロマンスポルノ、開催決定から本当に本当に楽しみにしていた。このために半年生きてきたと言っても過言ではなかった。

私は6日の昼から会社を早退して広島に入り、7日は観光、8、9日はライブという予定でいた。もう主要な荷物はホテルに送ってあるし、あとは身支度だけなので、楽しみで仕方がなくて、ネイルをしたりして夜更かししていた。

 

午前3時。少し部屋が揺れた。

地震かな?と思っていると、すぐに尋常じゃない強さだということを感じ、身構えたが、もう立っていられないほどの激しい揺れにパニックになってしまった。棚からは皿がどんどん飛び出し、ガシャンガシャンとものすごい音を立てて割れた。

幸い怪我や家屋の倒壊もなく、家族や近しい親戚の無事も全て確認し、とりあえず皿を片付けたり、断水になる前に風呂に水をためていると、程なくして停電。

趣味で持っていたペンライトを明かり代わりにし、スマホでラジオをつける。

私がいた場所は、震度5強。今までに経験したことの無い揺れだった。北海道全域がブラックアウト、電気系統がダメになり、JRや地下鉄も全てストップ。道路は地下鉄沿線を中心に陥没。信号や街灯はひとつもついていない。

 

北海道胆振東部地震」が起きたのだ。

あれ、私、今日どこに行くはずなんだっけ。

 

ツイッターではあらゆる情報が錯綜していた。新千歳空港の壁が崩落している画像。滑走路が陥没しているという噂。「電気系統の復旧の見込みはありません」「航空便は全線運休」

終わったな。正直そう思った。

ライブなんて浮かれていることを考えている場合じゃなかったのかもしれない。でも、なまじ無駄に無事だっただけに、そればかり考えてしまう。この半年は何だったのだろう。

神経が高ぶって眠れないまま朝になり、とりあえず何か食べようと家にあったパンなどを食べ、うさぎの世話などをし、少し落ち着いたら、なんというか、そもそも開催地が先に被災して、開催できるかどうかすら危ぶまれていたのに、収益を全額寄付という形でライブを敢行する決定をした二人の決断(もちろん多くの協議や協力があった上で)に、私は本当に心打たれたことを思い出した。だから、現地に行ける人は、全力で楽しんできてほしい。今は目先のことしか考えられなくて、悔しいし、悲しいけど、こうやって無事生きているのだから、いつか良かったって思えることがあるに違いないと、そう思うようになっていた。それは大袈裟な話ではなく、ラジオの報道では既に、12人が行方不明、1人が死亡というニュースが流れていたからだ。

しかし諦めの悪い私は、なんとかどうにか復旧して、行けるようにならないかな~とぼんやり思っていた。そんな中、先に広島入りしていて、合流するはずだった友人から電話がかかってきた。報道を見て、空港の状況、動きそうな飛行機、フェリーでの移動方法などを次々と提案してくれたのだ。正直疲れて頭の感覚がマヒしていた私にとって友人の存在はとても心強かった。チケットの払い戻しなどについても問い合わせてくれたが、6日の夕方時点では現在調査中。

何も解決しないまま、また夜がやってきた。依然として街に明かりは無く、星だけが煌々と輝いていた。ポルノの曲を聴こうかな、とも思ったけれど、ここで聴いたら負けな気がする、絶対に、次に聴く時は現地で歌声を聴きたい!! そう思っていた。

 

7日、友人と情報共有をしながら、なんと新千歳空港で一部の運航が再開することがわかった。私はあらかじめ急いで確保していた便が動くことを確認し、車で空港まで行くことを試みた。

相変わらず信号は全くついておらず、警察や消防の人手も足りていないのか、大きな交差点でも何も目印はなく、行き交う車同士が空気を読みあって進むというなかなかにスリリングな状況だった。

空港内には人がごったがえしており、目的の場所に着くまでも一苦労だったが、なんとか手続きをし、飛行機に乗り込んだ。飛行機でまず愛知まで飛び、そこから新幹線で広島県へ移動。

ホテルで友人と再会したのは23時30分頃。二つ送ったはずの荷物の一つが届いておらず、物流の混乱でどこにあるのかもわからないと言われたが、とりあえず必要なものは揃っていた。2日ぶりにあたたかい風呂に入り、電気ってやっぱ大事だな。と噛みしめた。

 

怒涛の時間だった。もうこんなこと人生で2度あるか、いやあってもらっちゃ困るのだが、めちゃくちゃ疲れたし、辛かった。でも、諦めずに必死に行ける方法を探して良かったとも思ったし、たまたま甚大な被害を受けなかったことが、少しの幸運だったのかもしれない。もう、いつ何があってもおかしくないぞという気持ちが、あの日から常に私の中にある。元気づけて、色々な方法で導いてくれた友人には、感謝してもしきれない。本当に。

 

ここからは、予定通り8日の朝からライブに参加することができた。

 

☆バス乗り場~会場

朝からかなりの量の雨が降っていた。福山駅から尾道へ移動、着くと早速スタッフに誘導され会場行のバスに乗り込む。しばらくすると、「しまなみTV番外編・しまなみラジオ」が聴こえてきた。意外と、あまり耳を澄ませて聴いている人はいなかった印象で、ライブ会場へ向かう高揚感の方が勝っていたようだった。

 

☆会場内

まずは真っ直ぐグッズコーナーへ。売り場は屋根の下だったので濡れることはなく、流れも割とスムーズに感じられた(おそらく人によるところはあったのだと思うが)。一通り目当ての物を購入したら、フードコーナーへ。

フードエリアの会場はグラウンドの中にあり、地面が砂?土?だったので雨にやられて相当ぬかるんでいた。会場真ん中の休憩エリアには、全体的に屋根を置くべきだったのでは……と思った。出店はかなりの数出ていて、食べるものには困らないくらいで協賛の多さに改めて驚いた。地元ならではの名産やアトラクションのPRのため、雨にも負けずたくさんの人が呼び込みをしていた。他にはカラオケ企画の受け付けやテレビ取材などで、かなりにぎわっていた。

私はあの因島青果の出店にお邪魔し、ラーメンを買って食べた。晴一のお兄さんは、ちょっとふっくらしていて笑顔が優しい気さくなおじさまだった。声の高さや目元の感じがとてもそっくりで不思議な気持ちになった。お兄さんだけでなく、どこのお店の人もほがらかで明るい人ばかりだったように思う。晴れていたらもっと色々見て回りたかった。動き回っている人も少なかったように思う。

カラオケ企画は、予想に反してとても盛り上がっていて、しょっぱなから「夜明け前には」から始まったのがニッチすぎて笑ったし、ライラを歌っていた人がスターになっていて面白かった。

 

☆ライブ会場まで

雨のため、ギリギリで移動しようとした人が多かったのか、私たちも普通に歩けば間に合う時間に向かったはずが、誘導を見つける前に人ごみに出くわしてしまい、同じように迷って足止めされている人たちと一緒に入り口付近へたどり着けないまま立ち往生するという事態になってしまった。ライブ会場内からは煽りの音楽が聴こえていてかなり焦ったが、チケットがもぎられたあとは席まで走ってなんとか着席したものの、後ろにもまだまだ人がいたため、結局開始は30分押しとなった。2日目は気を付けよう……と思った。

 

☆ステージ構成

メインステージは、白いサーカステントのような、民族のゲルのようにも見える素朴なセットに、色とりどりの三角旗(今回のテーマカラー)、通路は、メインから左右に真っ直ぐ伸びる花道と、その上に大小組み合わせたモニター。アリーナは天然芝で、その真後ろにスタンド席。ほぼ全員が白いカッパを着てライブの開始を待つ姿は、さながら少し宗教集団のようでもあった。

ロマンスポルノと言えば、でかいステージに豪華なオブジェクト、というイメージがあったのだが、今回は「収益全額寄付」ということもあり、「できる範囲で最高のことをやろう」という趣向をこらしているようにも見えたし、それがしまなみののんびりした空気とマッチしていて、非常に素敵なステージだと思った。

 

14:30にしては少し暗いあいにくの天気のなか、いよいよライブが始まろうとしていた。

 

突然、明るいファンファーレのような音楽と共に「開 会 宣 言」という文字がモニターに映し出され、登場したのはなんと元広島カープの『ミスター赤ヘル』こと山本浩二さん。被災した広島を元気づけるために、ポルノもカープも頑張っています。今年はカープ優勝間違いなし!という旨のご挨拶を(今日何の日だっけ?となごやかな空気に)していただき、「昭仁、晴一、がんばれよ!」とエールで締め。

そして、サポメンと共に、ポルノの二人が出てきた!先に晴一が、少し間をあけて、昭仁が。

 

 

「しまなみ!!  ロマンスポルノ!!  18!!  始めよう!!!」

 


昭仁の声に合わせ、横のモニターに「45th」という文字と共に、「キング&クイーン」のジャケット写真が出てきた……!

 

M1 キング&クイーン

前回のツアーでは本編のラストナンバーだったせいか、イントロを聴きながら「これで終わりじゃないんだ!!ライブはここから始まるんだ!!うおーーーーーー嬉しい!!!!」という謎の感情になったのを鮮明に覚えている。そして、無事にこの場所に辿り着けて音を聴けている喜び、ずっと励ましの言葉と助言をくれて導いてくれた友人への感謝が「そうなんだ ひとりじゃないから 怖くはない かけがえのない友がいる」という歌詞に合わせてとめどなく溢れて来て、1曲目からボロボロに泣いてしまった。

 

曲が終わり、カチャッ、カチャッという音に合わせて、「キング&クイーン」のジャケット写真がめくれて、今までリリースされたCDジャケットが表れていく。これはどんどん遡るんだな、オー!リバルあたりがくるのかな?と思いきや、

 

M2 ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~

マジか?!と正直思った。2曲目からしっとりしたバラード!この曲は、どちらかというとメロディは好きなのだけどどうしても自分の中であまりにも共感度が低くて、普段そんなに聴かないな~と、ジャケットが出てから曲が始まるまでの一瞬で思っていたのだけど

 

『こんな私でも 幸せになれるかな?』

 

いや え~~~~~~~~~~?!?!?!?声が!!!!声が良すぎる!!!!!CDとかとはもうレベルが違う、あまり聴かなかった曲がこんなに唸るほど曲の印象が変わる、例えるなら、ウニがあまり美味しくないと思っていたけど採れたての高いウニ出されてうまい!!!!ってなった感覚に似ていた。まさに甘い幻。ギターもまた泣かせる良い音で高いウニと良い醤油の虜になってしまった。本当に今日来れて良かったな、とこの日何度も思うことになるのだけど、甘い幻はすごかった。

 

M3 瞬く星の下で

自分はアコースティックしか聴いたことがなかったので、聴けて嬉しかった。珍しいチョイスで来るな~と思ったが、単純に3曲飛ばしでやっているのかな?と思い始める。豪雨災害が起こったあとに、この「自分で行動する」という曲がうまく入るのも良いなと思った。瞬く星の下で、爽やかなんだけど力強さもあり、でも激しくもなく、会場の雰囲気もあたたかいものになったように感じた。

 

MC① (MCは全てニュアンスです)

昭「みなさん!!ようこそしまなみへ!!みんな元気にしとった?みんな元気?雨も降ってしまってるけど……体は冷えてない?大丈夫?」

晴「ま~~~、百歩譲って、雨が降っているとしよう。……けっこう降ってるなぁ(笑)。雨が降っているとしても、え~~、僕たちは、そういう地球に住んでいると(笑)。そういう星に生まれたということで、それは仕方ないことだけれど、雨に負けずに盛り上がりましょう!」

昭「皆さん、しまなみの空気はどうですか?わしらのふるさとはどうですか?これがしまなみです!これが尾道です!!今日は、たっぷりしまなみの空気を感じて帰ってほしいと思っています。地元のみんなも、胸高らかに、今日はふるさとを誇っていい日じゃけぇね!!」

晴「新尾道駅って、普段は静か~な駅なんよ?それをこんなにたくさんの人が来てるなんて……えらいことよ?」

昭「ほんまにね、今日は来てくれてほんまにありがとう。……この間の豪雨があって、関西での台風があって、数日前には北海道の地震もあって。自然の猛威を前にすると、わしらはただ無力、無力を感じてしまうんじゃけども、それだけじゃ未来はできていかんけぇ、そんな中でも力強い一歩を踏み出すこと、今日がその日になるように、一緒に踏み出して行こうや!!」

 

地震のくだりで、私はまた泣いてしまった。大袈裟ではなく、死者も出てしまったれっきとした「災害」に巻き込まれ、たまたま生きている。命があるからここにいる。そのことを噛みしめてしまった。

 

昭「この曲で、ひとつになりましょう。ワンモアタイム!!」

  

M4 ワンモアタイム

自分はこの曲が出た当初より、年齢を重ねるにつれて、よりこの曲が持つ色あせないパワーと、込められたメッセージ、ライブ映えするメロディとアレンジに圧倒されていって、いつか生で聴きたいと思っていた。まさに、被災した直後というタイミングでこの曲を聴けたのは、自分にとって本当に大きな意味を持つことだし、普段とは違った捉え方ができたと思う。この曲はそもそもが、当時の東北の震災を受けた流れを汲んでできた曲ではあるが、私は当時様々なアーティストから発売された「元気を出して進もう!」というコンセプトではない部分、「遠くに一つ輝く星の 果てなき時間(とき)と比べてみれば 傍に 傍にあるよ」という歌詞が大好きで。普通、「星」というものは、憧れだったり、目指すものというポジティブな意味で使われることが多いけれど、見上げた空があまりにも遠すぎて、途方に暮れることもあると思う。そんな時に、あえて手の届かないものを見るのではなくて、目線の高さ、何光年も離れた過去の光より、「今」を大切に、今を生きていくことが未来に繋がるのだと、そう感じさせてくれる。

停電で真っ暗になり、何も動いていない静かな街の上で光る星だけがとても輝いていて、少し悲しくなったことを思い出して、また泣いた。

 

M5 アニマロッサ

3曲飛ばしが改めて最高だと思った流れ。10年ぶりくらいじゃない??!??どうして普段やらないんだ……!!めちゃくちゃカッコ良かった!!!!モニターには、漫画のコマ風に加工されたモノクロの映像が流れていて、動画部分はリアルタイムのステージを映したもの、静止画部分は今までのライブシーンの写真が使われていて、とても懐かしく感じた。どちらかというと漫画の雰囲気がタイアップされたBLEACHではなく、ジョジョ風なのが気になりはしたが非常に粋な映像だったと思う。

 

M6 ギフト

3曲飛ばしでこれも入るのが何気にすごい。ギフトはライブで聴く頻度が高い気もするが、今回はなんとイントロをソロ回しするという新鮮なアレンジを組み込んできて、ポルノは本当に既存曲の魅せ方がうまいというか、飽きさせないなと思った。歌詞はまためちゃくちゃになってはいたものの(笑)、「押しつけがましくない元気が出る曲」というポジション的にギフトは本当にちょうどいいなと思うし、心の清涼剤的な、いつ聴いても涙が自然とこぼれてしまう稀有な曲であるなと感じる。

 

MC②

昭「え~~~今回のライブはここまで、『3曲ずつ飛ばして』過去の曲をやっていってるんじゃけども。この曲も、久しぶりにやるんじゃないかな。雨の日だけども、このちょっと秋めいてきた今にぴったりの曲じゃないかなと思います。聴いて下さい、『Winding Road』。」

 

M7 Winding Road

この雨の中演奏することを始めから考えられていたかのような選曲。もちろんそんなことは考えてなかった(むしろ快晴であることが誰しも望んでいた)だろうけど、雨の中でWinding Roadを聴くことなんて今後間違ってもないような気がするし、あえてこう言ってしまうけど、天候も含め非常に情緒あふれる素晴らしいステージだった。昭仁が当時苦戦していたクロマチックハーモニカも、少しアレンジを加えて完璧なパフォーマンスだったし、私はCDのミックスが非常に嫌いなのでやっぱり生のクリアな歌声で聴くべき曲だと思った。

 

M8 ROLL

CDジャケットが映った時既にギターを持っていたので、ネオメロではないのだなとわかったけど、しまなみロマンスポルノで聴くのはROLLで大正解だった。ひんやりとした秋の始まりの空気と相俟って、切なくもあたたかい曲調とマッチしていた。生で聴く「恐れてたんだ」は、全ての音が消え昭仁の声だけになるので全神経を集中させて聴くことに意味があるのだけど、今回はとても熱が入った濁点交じりの力強さに圧倒された。

ライビュ映像では、曲の間に入っている「カァン!」という音が、シーケンスではなくnang-chang氏によって手打ちされていることがわかりなんだか興奮した。

 

MC③

昭「予想以上じゃわ……!!予想以上に、地元でライブをやるってことがこんなに楽しいんじゃね!!そう思いませんか?晴一さん!!」

晴「いや思ってるよ?(笑)まぁ~~、島を出た時……じゅう…25年前か。25年前に島から出てきた時は、何にもないところじゃと思うとったけれども、こうして帰ってくると、やっぱりたまらないよね。」

昭「わしらもこうして20年近く活動してきて、まぁ曲もそれなりに出したけれども、やっぱりこう、ファンの皆さんが愛してくれて、育ててくれた曲っていうのがある。この曲も、皆さんに長く愛されて育った曲です。聴いてください。『愛が呼ぶほうへ』」

 

M9 愛が呼ぶほうへ

実は、悔しくも2日目が中止となってしまったため、本来の企画であった「因島高校の生徒たちとの合唱」が、日の目を見ることなく頓挫してしまったことが、後日放送されたドキュメンタリー「SONGS」の中で明らかにされた。時間を割いて練習してくれた高校生の皆の前で中止を発表し、それなりに長い間ファンをやっている中でも、今まで見たことがないような苦渋の表情と、初めての涙を見せた二人。それだけで、ポルノの二人がどのような思いでこのライブを、この企画を進めてきたか、2人を好きで見て来た人にとっては痛すぎるほど伝わってきたと思う。いつかこのやり場のない悲しみが報われてほしいと、本当に心から思っていた。

しかしその機会は思いがけずすぐに訪れることとなった。このライブの実質リベンジ企画である映画館でのライブビューイング、当日の中継映像で映し出された因島市民会館の中には、なんと因島高校の生徒たちが待機していたのだ。

あの日聴けなかった歌声。見られなかった光景。それらを目撃した瞬間、涙が止まらなかった。「愛が呼ぶほうへ」とは、恋愛などの小さな枠にとらわれない、もっと広く深い愛情の歌だと思っている。ポルノの2人が地元を元気にしたい、支えたいという気持ち、高校生のみんなが力を合わせて歌を完成させようとしてくれた気持ち、ファンが、嬉しそうな2人の姿を見て涙する気持ち、映画館にあふれる拍手、一際目立っていた「因高一」のポルノファンのあの子の笑顔、生徒会長さんの言葉(新田さんは本当に素晴らしい。もちろん他の生徒の方々も)。

たくさんのあふれる「愛」を我々は目撃したのだ。

そして、この企画を目の当たりにして改めて、「ずっとポルノグラフィティのファンでいて良かった。」と心から感じた。

 

M10 Mugen

雰囲気も一転し、ドンドンタン!というリズムに合わせて、コーレスタイム。ここから雨も激しさを増し、それを物ともせず盛り上がるステージと相俟って会場のテンションはおかしな方向に振り切れ始める。花道を縦横無尽に駆け回る昭仁の体力と全くぶれない歌声は本当にすごい。いつか何m走りながら歌ったら息切れするのかやってみてほしいくらいだ。Mugenで岡野氏がよくやっている「自分の両手を合わせてみても 僕の悲しみが行き交うだけで それは祈りの姿に似ていた」という部分で、本当に祈るように両手でマイクを持つのが大好きなんだけど、今回それに加えて跪いていたのが本当にCOOL!!!!!だったのだ。けれど、立ち上がった瞬間、白いズボンの膝が真っ黒になっていて、うーん、そういう所が昭仁だよなぁ、と思って笑ってしまった。最後に、駆け回ったせいでびしょびしょになったのを、お前のせいだぞ!とでも言いたげに天を睨みながら指さしていたのがカッコ良かった。

 

M11 サボテン

雨が降り続くステージで「何処に行くの?こんな雨の中 どんな言葉待ってるの?」と始まるサボテン。まるでこの日のために用意されたのかと思うほど雰囲気にマッチしていた。アミュフェスでは「雨」というコンセプトの中に意図的に組み込まれていたものの、まさか本当に雨に打たれながら聴くことになるとは。貴重な経験として胸に残っていくだろうな~と思う。最後のスキャットもまた新しくて、後奏に花を添えていた。

 

 

昭「さあ!!!!いよいよ!!!時計の針は1999年9月8日に戻ります。わしらは19年前の今日!!!!この曲でデビューしました!!!!!!」

 

M12 アポロ

最初のサビをたっぷりためるスタイル!!満を持してやってきたデビュー曲。最近特に思うんだけど、19年前の曲なのに未だに盛り上がるどころか、どこでやっても知らない人がいないってくらい熱気に包まれるのが本当にすごいと思う。むしろ近未来感すら感じるこんなパンチのある曲を、まだ実績も何もないこれからデビューするバンドに、ポルノに与えてくれた元プロデューサーの本間さんの嗅覚というか才覚は計り知れないものなんだろうと感じる。そしてそれをキー下げもせずに高らかに歌い上げる岡野氏の力強さよ。この曲があることで、色あせずに「昔から今へ」繋がっているということをアポロは強く思わせてくれる。本当にカッコ良かった。

 

昭「しまなみロマンスポルノ!!!!18!!!Deep Breath!!!みんなは、深呼吸できとるか??!??思いっきり、深呼吸して帰れよ~~~~~!!!!」

 

M13 ブレス

アポロの後奏の時点で、今まで遡っていたジャケットが一気にまた巻き戻り、最新曲の「ブレス」のジャケットが映し出される。

ブレスは、本当にもう色々な気持ちがあふれてきて、イントロからドバドバ泣いてしまった。ポケモンにタイアップされたという個人的に超ビッグイベントがあり、映画も非常におもしろく泣けてしまったのを思い出したし、曲自体も本当に、第2のギフトと呼べるような名曲で、しまなみの空気にも合っていて聴いてて幸せな気持ちであふれた。北海道から諦めないで広島まで来てこの曲が聴けて本当に良かったと思った。ラストのコーラスのところでは、無数のシャボン玉が発射され、夢のような雲の中のようなふわふわした気持ちになった。

 

 

曲が終わると、波の音が聴こえてきた。ふとモニターに目をやると、車内からビデオカメラを回しているかのような映像が映っている。

「今日は良い天気ですね~、お、見えてきましたよ!あれが因島大橋で~す。この橋はね、昔の人たちにとっての自慢でした。」

誰かがナレーションをしているぞ的な雰囲気だったけど、聴けばすぐにわかる、声の主は昭仁。

「ここが青影トンネルですね~、狭いよ~こわいよ~、ここをね、昔はよく自転車で…あっ今もおりますけどね、排気ガスがすごくてちょっと煙いんじゃけどもね、通っていました。」

「ちょっと降りてみましょうか。はい、最後に着いたのがここ、折古之浜ですね~。昔はここも、海水浴場的なビーチになっていて、海の家的なね、にぎわっていたんですよ。子どもの頃は、その浜辺の様子をみて、いつもと違う海を見ているとなんだか都会的な感じがしました。波の音がいいですね。では、海の姿を映しながら、撮影していたのはぼく!岡野昭仁でした~。えー現在9月7日、今日はこのあたりで、お別れしたいと思います。みんな今頃、ライブで盛り上がっているのかな?大きい声で歌ったりしているのかな?」

 

映像が終わると、メインステージには真っ白なスモークが赤やピンクのライトに照らされている。妖しげなメロディとラテンのリズム、そして「折古之浜」……!

 

M14 狼

ぜひともしまなみロマンスポルノでやってほしかった曲ではあったけど、ライブで聴くと本当にカッコよすぎた!!しかし、スモークが出たは良いものの、それが全く消えず(雨のせいだったらしい)イントロからAメロあたりまでモニターも何もかも真っ白になってしまうという事態に。でも真っ白のスモークの中から昭仁の声とイントロだけが聴こえてくるというのも、中々幻想的で妖しい雰囲気が良かった気がする。

「なんも見えーーん!!!」という昭仁の声が響くなか、二人はトロッコに乗って客席の両側から出てきていた(私がいた方からは始め昭仁が出てきた)。テンションが上がりまくっていたらしく、しょっぱなから歌詞を盛大に間違えたり(ライビュでは、渋い顔をする晴一が映っていた)、間奏で謎のステップを踏むなどしていた。

 

M15 Century Lovers

そのままの勢いでCentury Loversへ。私はBefore Century 自体が久々だったので、違う曲になったらどうしよう……と思っていたけどそのままセンラバで嬉しかった。そして何年かぶりに昭仁のあのパフォーマンスをみた。途中で交差してトロッコでやってきた晴一も物凄く楽しそうだったのが印象的。楽しそうにわーいわーいしている晴一に対して「リフを弾くんだよリフを!!」と昭仁に言われるほど楽しそうだった。しまなみロマンスポルノは、全体を通して常に二人がめちゃくちゃ楽しそうな顔を見せてくれていたのが本当によかったと思うし、ふるさとのライブが心から楽しいんだなってことが伝わってきてあたたかな気持ちになった。

曲の中盤から終わりに差し掛かり、ステージの近くに戻る途中で昭仁が「あれ?ここからどうするんじゃったっけ?わし段取り忘れてしもうた!!」とらしからぬ発言を。「ほんまに忘れてしもうた!あ、ここで紹介するのか!皆さん!ステージをご覧下さい!!」と言われるがままに見たステージ上に現れていたのは、広島県の各地のあらゆるご当地ゆるキャラ達。中でも『ヒロシマイケル』がお気に入りだった模様の昭仁、爆笑していた。

 

M16 ミュージック・アワー

まだまだぶちかますぞ!!と、ゆるキャラ達と一緒に変な躍りの時間。ミュージック・アワーは、どんなライブでもハッピーになれるし、どうしても頭のタガが外れる音がする。ライビュでは、高校生達が楽しそうに盛り上がってくれていたのを見て、ほっこりした。「客席にいる生徒達を、全員盛り上げたり前に出てこさせるのは難しいけど、必死になってしまう」と卒業サプライズライブの時に言っていた気がするが、画面に映った顔はみんな笑っていた。

 

M17 Aokage

ポルノの数ある広島(因島)を歌った曲の中でも、特にその風景や過去の思い出などが色濃く描かれている1曲。ステージに二人だけが残り、「当時因島で過ごした18年間を詰め込んだ」と、ギターセッションで演奏された。素朴で可愛らしいストーリーを歌う昭仁と、優しいギターを奏でる晴一。この二人が、そしてTamaさんが島で出会ったからこそ生まれたのがポルノグラフィティであり、私たちは当時の少年達が見た景色のなかで音楽を聴いている。

広島県というところは、ポルノファン、特に二人のキャラクターや人柄まで含めたファンにとっては非常に身近に感じる土地であり、私にとっては行ったこともないのに生活の中に根付いていて妙に親近感を覚える場所である。それは二人が広島を愛していること、誇りに思っていることを知っているから、だからこそ、広島でライブを観たかったし、このロマンスポルノが決まったときは絶対に行こうと思っていた。

その矢先に、平成30年7月豪雨が起こり、テレビでは連日、聞き覚えのあるあたたかな方言を話す人々が傷つき、悲しんでいる様子が映し出されていた。私はそれを見て、他人事とは思えなかったし、予想以上に心が痛んでいることに気付いた。二人が全額寄付という形でライブを行うということを決めたとき、本当に力になりたいと思った。結果的に、まさか直前になって自分が「被災」をリアルに感じることになるとは思いもしなかったけれど、全く別の土地でも、復興へと向かう姿を見て、今は自分のことで精一杯でも、いつか元通りになる。そう信じようと思った。幸い、これを書いている今は特に生活に支障はないが、しばらくは仕事をしている最中に急に涙が出そうになることもままあった。怖かった気持ちとか、心細さとか、不安だとかをいっぺんに感じてしまった2日間だったけれど、ポルノのライブは束の間、そういうネガティブな気持ちを忘れさせてくれる。生きる元気をくれる。それはいつも感じていることだけれど、いつも以上に心に響くライブだった。

ライブビューイングでは、市民会館の外に出て、夕暮れの海に浮かぶ島々が見える景色の中での演奏だった。それはあの日本当は二人が見せたかった景色でもあり、私が見るはずだった景色でもあった。いつかまた、広島や因島にちゃんと自分の足で訪れたいと思う。

 

☆邪険にしないで

ライブビューイングの話と混ぜて書いているので、ここにライビュ限定の1曲を挟まさせてもらう。

Aokageの後にもう1曲、広島にまつわる曲を演奏します、とチョイスされたのがこれ。

昭「わしらのこの、広島弁というよりかは、備後弁っていうのかな?岡山寄りの言葉じゃけども、今テレビで千鳥さんがよく言うてるよね。この方言、お国言葉もわしらの誇りじゃけ、それを使った曲を聴いてもらいたいと思います。『邪険にしないで』という曲です」

この曲は二人とキーボードの康兵さんで演奏され、綺麗なピアノのイントロが始まった………と思いきや、突然昭仁の「あっちょっと待って!」という声で制止された。何かトラブルが?!と思ったが「(彼を)紹介してなかったから。宗本康兵くんです。ではどうぞ!」とものすごく自由なMCをされてしまい映画館の客は爆笑。もちろんこういう所も愛される所以。島ののんびりした空気とマッチしてなんだかほっこりしてしまった。

因島の景色は刻一刻と変わり、夕闇が近づいていた。遠くから聴こえる祭り囃子の音に、あの日会場へ行けなかったひとも、晴れた姿を見ることができなかった人も、彼らのふるさとに思いを馳せることができた。

 

M18 そらいろ

ライブ会場でも演奏されたこの曲だが、MCはライビュの時の物を記しておく。

昭「ちょうど12年くらい前かな。因島の幼馴染みから電話がかかってきたんよ。それも深夜に。『お前、最近どうしよんな?』って言われて、いやこんな深夜に電話かけてきて、お前がどうしよんな、と思うたけども、『お前、仕事は大変なんか?そういう業界じゃけ、辛かろう?』と言われたんですね。そこでわしは能天気なもんじゃから、『まぁ、好きなこと仕事にしよるけぇ、楽しくやってるよ』と答えたんですよ。そしたら『そっか……。それ聞いて、なんかすっきりしたわ!』って友達が言ったんですよ。実はその友達は、仕事の悩みが多すぎて、落ち込んでたと。でもそんな気持ちのまま帰れんけぇ、家族にそんな姿見せられんけぇ、まだ車の中におる言うんよ。そこでわしが、『そうじゃね、辛いこともあるよ。しんどいしんどい。でもまぁ、お互い頑張っていこうや!』みたいなことを言うと思っとったらしいんじゃけども、わしが楽しいよと言ったことで、逆に吹っ切れたわ!って言ってくれて。もっと、自分も今の仕事が好きになれるくらい、頑張ってみようかなと思えたらしいんです。そんな友達からの電話があって、この曲は作られたんじゃけども。田舎の友達って、いつまでもこう、張り合ってくるみたいな感じせん?お前は今何しよるん、男として成長しとるんか!みたいな」

晴「そうね、なんていうかこう、ずっと同じラインにいるというか、離れててもお前はどうなん?って気にかけてくる感じね。わかるよ。」

昭「今きっと、(因島高校の)みんなにも、そういう仲間がここに集まっていると思う。いつか島を出て離れ離れになる人がいたとしても、地元の仲間っていうのはいつまでも大切な繋がりになると思います。」

 

私はずっと『光の中で 夢を見ていた』のは、岡野氏自身のことだとばかり思っていた。まさか、別視点の主人公がいたとは。だけど、この「そらいろ」という曲は、二人のどちらの視点からでも同じに見える、お互いに、ふるさとの友人を想いあっている曲なんだと思う。こういう、岡野氏の少し天然で飾り気のない、真っ直ぐな人柄を感じさせるエピソードが私は大好きだ。

『知らないうちに なにか背負ってるものができるなんて』というのも、家族や仕事のことで悩んでいたご友人、そして、バンドのフロントマンとしてパフォーマンスをする岡野氏。そして、この楽曲が出た10年前から比べて、はるか大人になってしまった私たち。フィクションの多いポルノの歌詞だが、よりリアルに迫ることで隣に寄り添うような力強さを感じさせるものもある。

途中、バックモニターの映像には、まだ痛々しく災害の爪痕が残る様子が映し出された。

『明日をむかえる不安と戦いながら 夜明けを待ったこともある』

震災があってもなくても、誰しもが持ったことのある気持ちを歌う。岡野氏の書く歌詞はどうしてこんなにもあたたかく胸に響くのだろう。

しまなみの空に響く「カモン エビバディ」というコーラスは、「おかえり」とも「ようこそ」とも「また来てね」とも聴こえたのだった。

 

M19 ハネウマライダー

雰囲気が一転し、しまなみテレビではおなじみの「はっさくメガネ」による機内アナウンスのようなものが流れる。お手元の風船をお持ち下さい……?しまった!私はすっかり忘れてしまっており、大慌てで準備する。カウントダウンに合わせて、観客が一斉に赤と白の風船を飛ばす!

雨のせいですでにタオルはしっとりと濡れてしまっていたものの、少し重くなったタオルをいつものように元気よく回す。曇り空を吹き飛ばすかのような、熱く爽やかな演奏だった。

ライビュでは、高校生たちがライブタオル……ではなく、白い手ぬぐいを持っていて、もう抱きしめたくなるくらい素朴で愛しかった。だけど、元気よく自前のライブタオルを振り回し、ライブTシャツとキャップに身を包んでいた子もまた、愛しくてたまらなかった。

 

演奏が終わった後、またMCが挟まれた。今回は、デビュー前の思い出話。

東京に来る前、大阪の通称「城天」でストリートライブなどを行っていたポルノグラフィティ。当時は立派なステージなどなく、自前の衣装と機材だけでライブを行っていたのだが、当時お世話になっていたスタッフの方が、少しでも見栄えのいいステージらしくしようと、ビールケースを積み上げた特設簡易ステージを準備してくれて、その上でライブをしていたと。今回、広島に帰ってきて、初心を思い出すという意味で、特別にそれを再現した「ビールケースステージ」の上でライブをすると言う。

ポルノの2人だけが花道を通り、客席の真ん中へ。

客の中を埋もれるような形で進んでいくことになったのを気にしてか、

昭「すいませんね!!小さいもので!!170センチ前後しかないもんで!!」と両手をひらひらさせながらしきりにアピールして歩く昭仁と、その後ろを悠々と歩く177センチの晴一がやけに面白かった。

昭「では聴いて下さい。演奏する曲は、アゲハ蝶です。」

 

M20 アゲハ蝶

ライブビューイングでは、こんなことも言っていた。

昭「島を出て、大阪に来て、東京に行くんだ!って、当時にとっては夢物語みたいなもんで。」

晴「当時のバンドの実力としては、本当にどのレベルを見ても『E』ってつけられるくらいのもんじゃったけども、『いつか大阪城ホールで演奏するんだ』ってことだけは、リアルに頭の中に描いてあったりね。」

昭「『勘違い』って項目だけは、Sクラスだったかもしれないね(笑)。でも、その勘違いというか、自信だけが大きなエネルギーになっていたことは確かだから、それが今、気付けば19年も続いて、こうして地元でライブを開けるまでになりました。」

 

『高校の学園祭のライブで歓声を貰ってからが、大いなる勘違いの連続だった』と二人はよく言う。

だけど、何か大きなことを始める時、動き出さなければならないとき、「もしかして、いけるんじゃないか?」と思うことは、非常に大切なことだと思う。

始まりは例え勘違いだったとしても、それが私の人生において最高の出会いをもたらしてくれたのだから、当時の二人に「自信を持ち続けていてくれてありがとう」と伝えたい。求めてくれるから続けられる、そう言ってくれるならいつまでも求め続けたい。雨の中でアゲハ蝶を聴きながらこの幸せは勘違いではないと強く噛みしめていた。

 

メンバー紹介が入り、アンコール無しで最後の曲へ。

 

M21 ジレンマ

「『ありがとう』という言葉、本当にそれしかない」と、始めから終わりにかけてしきりに感謝の言葉を口にしていた2人。それはこちらこそ言いたい言葉だった。

昭「こんな遠いところまで来てくれて本当にありがとう。だからこそ!!!全部出しきって帰らにゃいけん!!!」

その言葉通り、今日ここに来られたことを噛みしめて、跳んで、歌って、叫んだ。結局最後まで止まなかった雨の中、客席は半狂乱になっていつもより爆発的なテンションを感じた。これがロマンスポルノ。お祭り騒ぎとはこういうことか、とロマポル自体に初めて参加する私はひしひしと感じていた。

全21曲、しまなみロマンスポルノの「1日目」は大盛況のうちに幕を閉じた。

「明日は雨がやむといいね」

口々にそうつぶやく人の群れがあった。

 

開催予定だった2日目。

豪雨災害の復興のために開催されたライブが、無情にも雨のため、中止となった。会場近くも含め、豪雨警報、土砂災害の恐れがあると発令されたのだ。

遠くから来た人もいただろう。2日目だけ参加するつもりの人もいただろう。既に会場に集まっている多くの人たちも、中止の発表時には一時騒然となった。しかし、降りやまない雨の中、どこか「仕方ないよな」という空気が流れる方が早かったように感じる。万が一、開催したとして客も演者も安全が保障されているわけではない。

開場時間ギリギリになってからの発表。それはポルノチーム全員が悩んだ時間だったと思う。想像もつかないほどの苦渋の決断。二人の人柄を知っているからこそ、このライブに懸ける想いが伝わるからこそ、それでも客の案じた「中止」という決断に、優しさを感じられて、なおさら切なかった。ライブに参加できなかった人や、二人やスタッフの気持ちを考えれば考えるほど、やるせなく、辛かった。

 

正直に言うと、現地の運営や誘導等は若干の不慣れが目立ってしまい、フラストレーションが起きていなかったと言えば嘘になる。このような大規模なイベントの開催自体が初めてで、キャパオーバーを起こしていることがわかったし、天候も含め仕方のない部分もあっただろうけど、どうしても不満を体感している人も多かったと思う。それを感じてか、ツイッターをやっている晴一が自ら「#しまなみ掲示板」というタグを作り、『明日来る人へのアドバイス、運営側への希望(全部改善できるわけではないかもですが)情報共有として』と、次の日の開催を少しでもより気持ちのよいものにしようと働きかけていた。きっとそれを基に反省会がなされ、できるだけ訪れた人に楽しんで帰ってもらいたいと様々な点を変更していたのが翌日はわかったし、目に見えてスムーズになっている部分もあった。

「ライブは生き物」とは言うし、「この地球に住んでいる」とはいえ。

本当に、2日目も無事開催できることが誰しもの望みだったと思う。多くの無念を残し、幻のような2018年9月8日のみのしまなみロマンスポルノは終了した。

 

しかし、その心にあいた穴をすぐに埋めてくれたのが、「しまなみライブビューイング」だった。

正直、ここまですべてをカバーしてくれるとは思ってなかったし、予想以上の素晴らしい映像とライブ中継だった。

当日時間が押したこともあり、できなかった曲を何曲かスタジオライブでやるのかな、くらいの感覚だったのだが

・記録用じゃないから期待しないでね、と言われていたモニター映像⇒DVD収録映像かのようなアングルと演出がちゃんとわかるようなカメラワーク

・無観客ライブを中継と告知⇒因島高校生を招待(「一般は」無観客という意味だった)

・できなかった企画のリベンジ(趣旨説明までしっかりとされていた)

・当日見られなかった晴れた因島の映像と共に行われるアコースティック

・参加者にはライブ当日に発射された特効銀テープのストラップをプレゼント

・休日に参加できない人のために平日ディレイビューイングの開催

完全に、ただのやり直しではない、120%になって返ってきたようなものだった。

ようやく、このライブビューイングでしまなみロマンスポルノは完成したと思う。あの日のやるせない気持ちはどこかに飛んでいってしまった。

晴「当日来れなかったのに更にお金を払って観に来てくれとるわけでしょ?4000円……ジュラシックパーク2回も見れちゃうよ。」

昭「ありがたいことですよ本当に。『返金しなくていいですから、そのお金を寄付にあててください』って言ってくれる問合せもたくさん来たみたいで、本当に、なんて素晴らしいファンの方に囲まれてるんだろうと思います。ありがとうございます」

正直4000円でも安いくらいなのでは?と思うくらい素晴らしい内容だった。このライブビューイングの成功は、ファンが求めるだけでは実現しなかったと感じる。ポルノグラフィティが地元から愛されているから。協力し、支えたいと思うスタッフがついていてくれるから。それだけの魅力が、ポルノグラフィティには絶対にある。

優しくて、あたたかくて、素朴なんだけども力強く、真っ直ぐで、何よりカッコいい。

しまなみロマンスポルノには、ポルノの持つそんな魅力がギュッと詰まっていた。

本当にポルノグラフィティのファンで良かったと、これからもきっと思い続けるだろう。そう思わざるを得ないだろう。

 

しかし次のツアーでは、多面体ガラスのようにまた違った一面を見せてくれるはずだ。もしこのライブビューイングで初めてポルノを観た人は、驚くような楽曲がまだまだ隠されているので、興味があればぜひ聴いてみてほしい。

 

スタッフロールの「Special Thanks」の本当に最後に添えられていた一文。

 

 

「And people who giving PORNOGRAFFITTI love.」

 

 

これからもずっと愛を送り続けたいと思います。

 

 

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