【ライブレポ】17thライヴサーキット『続・ ポルノグラフィティ』

2019年9月の東京ドームライブを最後に、ひと休みをしていたポルノグラフィティ

20周年という節目を迎えるまで、ほぼノンストップで走り続けてきた彼らにも休息の時間が必要だろうと、その帰りを待ち続けていた。

そのタイミングで起きた、未曽有のパンデミック

それでも、2020年12月には配信ライブがあり、晴一はnoteの執筆や個人の舞台制作に向けて動き出し、2021年は昭仁のソロ活動の配信ライブが2回開催され、そしてポルノ名義で『THE FIRST TAKE』に出演しポルノ・リバイバル旋風を巻き起こすなど、できる限りで活動を続けていた。

同じ空間で出会えなくなってから約2年。2021年8月、彼らは突如として凱旋した。

 

 

「9月にシングル出るよ!」

「ツアーもやるよ!9月から始まるよ!先行がもう始まるよ!」

ポルノは別に活動休止ですとは言っていないので、そんな風に書かれている飛ばし記事とかを見るとイラっとしてしまうのだが、それでもあえて「新始動」と銘打って、エンジンをゴリゴリに吹かせていることを示してきたポルノグラフィティ

新曲が出ること自体は予想していたが、まさかアルバムも無しにツアーをやってくれるとは思っていなかったので、嬉しい反面驚きも大きかった。アルバム無しのツアーがいかに(こちらのメンタルが)大変なことになるかは、2018年の「UNFADED」ツアーのエントリーにて言及しているのでそちらを参照していただきたい。

 

ポルノグラフィティが帰ってくる。

新しいストーリーの続章を引っ提げて。

 

<参加公演>
2021.10.15 福岡サンパレス
2021.10.16 福岡サンパレス
2021.11.28 アイプラザ豊橋
2021.12.13 札幌文化芸術劇場hitaru
2021.12.14 札幌文化芸術劇場hitaru
2021.12.22 東京ガーデンシアター(ライブ配信

以上の公演の内容を織り交ぜて書いていきたいと思う。

 

☆ツアーコンセプト
2019年7月に発売された『VS』以降、新曲も主軸となるアルバムもリリースしていないということは、「アルバム、カップリングなどの全楽曲がセットリスト入り対象のツアーになる」ことが確約されていることは明らかだ。更に、ツアー前のラジオにて「今回はこういう状況で、キャパも狭くなるし席も少なくなる。そんな中でも一生懸命チケット取ってくれる子っていうのは、やっぱりコアな…俺より曲名を覚えてて、君(昭仁)より歌詞を覚えてるようなファンの人が多いと思うから。どっちかというとコア向けみたいな感じになると思う」という旨のことを晴一が話していたため、ハッキリと方向性が示されていた。
ちなみに私の選曲予想(希望)はこんな感じ

 

☆開演前~オープニング

会場に着き、客席扉から廊下にスモークが漏れ出ているのを見て、私は既に泣きそうになっていた(早すぎ)。ライブを楽しみに待つ人々のおしゃべりも無く、静かに時が流れる会場で、浮遊感のあるBGMが流れる。客席内を、ボイスストラップ屋さんが練り歩いていた。

(公式ツイッターより引用)

今回、歓声やコールは禁止のため、公式からこのような謎グッズが発売された。舞台などでは既に導入されているところもあるが、あらかじめ収録している音声や、自分で録音した声が鳴らせる代物だ。最も、私は曲間の名前呼びは普段から別にしていないので買わなかったが、周りにはちらほら持っている人がいた。初日から徐々に持っている人が増えたらしい。

(これは別に"チャレンジグッズ"ではなかったはずだが、結局本命のチャレンジグッズに関しては立ち消えになったっぽいので、実質これがそういうポジションになっていたような気がする。)

 

開演前のライブ会場内は、大騒ぎ出来ないささやかな興奮で満ちていた。

フッと、客電が落ちる。込み上げる気持ちをうっかり声に出さないよう、静かに、しかし逸る気持ちを抑えられずに立ち上がる人々。

鼓動のような一定のテンポでバスドラムが聴こえる。サポートメンバーが入ってくる。そして、ゆっくりと歩みを進め、ステージ中央へやってくる見慣れた二つの人影。スモークが焚かれた床はまるで雲の上のような神秘的な雰囲気を醸し出す。

飾り気のない、シンプルなオープニング。彼らは、ごく当たり前のようにそこにいた。特別な空間を作り出すために息を整えるのを、私はただ見つめていた。

 

M1 IT'S A NEW ERA

夜明けを待って さあ船を出そう

目指すのは 新世界

私のための 場所がそこにある

約束は果たされる

 

2人が直接会えなくても、声を、音楽を届けてくれていたことはもちろん知っている。

わかってはいても、頭では理解してはいても……それでも、2年ぶりに大好きな声が鼓膜を震わせた瞬間、涙があふれて止まらなかった。

やっと会えた。やっと同じ空気の中で時間を共有している。私は泣きじゃくっていた。隣の人も、タオルに顔を伏せて泣いていた。

 

私は『IT'S A NEW ERA』の歌詞が、無意味に何度も写経するほど好きだ。端々に光る、晴一特有のセンテンスを逐一取り上げたいがそうもいかないので、ライブの中でも一番グッときたパートに言及しておきたい。

彼方の空 雲を割って光が差した

間違いじゃない そう言ってくれているのか

挫けそうだよ 笑えないよ 忘れられたいよ

そんな日々はもう 海に返して

「忘れたいよ」ではなく「忘れられたいよ」であるつつましさ。この言葉選びの妙が、私には他人事とは思えない感情となって刺さってくる。つらいこと、悲しいこと、ぶつけようのない怒り。私が私である限り、切り捨てたり、忘れることができない感情。隔絶された気持ちになるならば、いっそ誰しもが私のことを忘れてほしいという、自己矛盾が表現されていることに共感してしまう。

その自棄的な感情を《そんな日々はもう 海に返して》と受け止め、半ば強引に忘れさせてくれる力強さがこの曲にはある。

この曲の昭仁の声は恐ろしいほど綺麗で、だけど確かな力強さと優しく美しいファルセットが共存している。『IT'S A NEW ERA』は、カップリングという位置づけにありながら、シングルカットされてもおかしくない曲であったことが晴一の口から明かされているが、その裏付けともいえるパワーを持つ、オープニングナンバーとしての存在感。《約束はついに果たされるのさ》と歌うこの曲は間違いなく、「続・ポルノグラフィティ」というツアーの幕開け、そして、ポルノグラフィティの新たな夜明けにふさわしい曲であった。

 

M2 幸せについて本気出して考えてみた

2018年の「UNFADED」ツアーでも披露されたこの曲が来るのは予想していなかった。

ただ、あの時と違うのは、声が出せないということである。最近裏打ちのリズムで拳を上げる人が少なくなったように思うけど、私は裏打ちしたいのでもどかしい気持ちになる。まぁノリ方は人の自由だからどっちでもいいけど。

 

ここで昭仁の煽りが入る。

「みんな今日は来てくれてありがとう!声が出せん代わりに、クラップで盛り上がりましょう!思いっきりクラップしてくれ!クラップユアハンズ!!今日は思いっきり楽しんで、夢のような時間をみんなで作ろうぜ!」

 

M3 ドリーマー

まさかの選曲で早速度肝を抜かれた。さすが「コア向け」とあえて謳っただけのことはあるけど、それにしても予想外すぎる。『ドリーマー』は初めて聴けるのでラッキーという気持ちになると同時に、2006年の『SWICTH』ツアーに行かせてもらえなかった自分が成仏した。

冷静に考えると、歌詞的に「夢のような時間にしようぜ!」という煽りで出てくる曲ではない気がするのがちょっと面白かった。あと、歌割が謎な箇所があったがずっとそれで歌ってたので珍しくCDと全然違う感じになってしまった。なんでだろう。

 

M4 ANGRY BIRD

間髪いれずに始まったこの曲でまたひっくり返りそうになる。声が出せていたら、割れんばかりの歓声が聞こえただろう。ポップな『ドリーマー』から、一気にダークでシニカルな世界観のゴリゴリなロックサウンドに。いわゆる”裏ポルノ”的な曲がもう聞けるのかと、このツアーに対する期待値がグンと高まった。サビで入るギターパートで、晴一だけにグリーンのピンスポが当たる演出はズルすぎる。終盤の「デン!デン!デン!デン!」に合わせて切り替わるライトもカッコ良かった。「ダイキャス」ツアーから更に進化した『ANGRY BIRD』の姿を見ることができた演出だった。

 

M5  Love,too Death,too

恐らく、長い間多くのファンが待ちわびていた曲であろう。ポルノはなぜか全体を通して全くライブでやらない時期の曲があり、『ラブデス』も不遇シングルの一つと言われてきた。この曲に関しては、晴一が「ギターがつまんないから」という理由を吐露していたが、満を持してビカビカのミラーボールが光りまくる派手な演出とギターソロパートの追加という大変身を遂げてやってきた。ライブでやったら絶対盛り上がるのに~というファンの期待を裏切らない、名アレンジであった。

 

M5’ LiAR

ツアー中盤から、曲順が変わり5曲目が『LiAR』に変更される。ラテンナンバーとしては新しめ、かつ『オー!リバル』よりパンチが少ない、いぶし銀的なポジションに収まってきているような感じがしたので、ここで聞けたのはラッキーだったのかもしれない。「BE」ツアーでもやったが、やっぱり映像が無い方が締まる感じがする。

 

M5’’ 今宵、月が見えずとも

ツアー地方最終日の札幌2日目から突如加わり、もう変更が無いと思い込んでいた私は完全に挙動不審になった。嬉しすぎる!!正直なんでこんなにやらないんだと思ってしまうくらいカッコいい曲なのでめちゃくちゃ嬉しかった。

ラスサビの昭仁のロングトーンは、ぶっ倒れそうなほどかっこよかった。もっと『メリッサ』とかくらい頻繁にやってほしいけど、次聞けるのは一体いつになるんだ。

 

ここでMCが入るが、今回は曲間に声を出すことができないため、各々のボイスストラップに吹き込んだ声を流すという光景が。メンバー的には、間が持つという意味で声はあった方がいいらしいので、役に立ってるなら良かったなと思った。昭仁がこそこそ「今押してー!それ使ってー!」と指示する場面も。

新メンバー紹介。今回はベースの山口寛雄さんと、ドラムの玉田豊夢さんと田中駿太さんが仲間入り。

(以下挟まるMCは全てニュアンス、地域ごちゃごちゃです)

昭「みなさんこんばんは!元気でしたか!!わしらが~~~~~ポルノグラフィティじゃ!札幌の皆さん元気ですか!!」

晴「すごいホールよね、hitaru。初めて来たけど、めちゃくちゃ綺麗なホールじゃけぇ。あれじゃろ、大泉洋さんが建てた……」(※違います)

昭「高さがすごいよね、4階くらいまであるんじゃろ?…おお手振ってる。みんな見えとるからね~!!すぐ隣?中?にテレビ局があったけぇ。”御殿”なんじゃろ。違う?まぁええわ、あれじゃったね、トイレもめちゃくちゃ綺麗で。あの水の流れる…音のやつが、クラシック音楽じゃった!」

晴「えっ、違うよ。水の音だったよ、わし。」

昭「え?!わしが入った時はクラシック音楽じゃったけど。」

晴「BGMかなんかじゃないの?」

昭「ええ~?!流れとった気がしたけどなぁ。まぁいいんですよこんな話は!!(笑)」

晴「みんな声が出せんけぇあれじゃけど、盛り上がってるってことでええんよね?…ボイスストラップもなんか、活用してくれとるみたいじゃけど。なんか、あれよね、隣の会場が盛りあがっとるみたいな不思議な感じですけども。……今回久しぶりにやる曲とかも多くて、次いつやるかわからんような曲もあって……それを考えると、一曲一曲大切にやっていけたらと、思いますね。」

「え~、ここまで聞いてもらったらわかるけど、結構ね、コアな感じの曲もやっとりますけど。大丈夫?初めての人ついて来れてる??この後もね、久しぶりにやるようなね、十数年ぶりにやるような曲とかもやっていくので、皆さんと盛り上がれたら嬉しいです。その曲は、『ウォーカー』という曲です。聴いてください。」

 

M6  ウォーカー

あんまりやらない曲をとのことだったので、どれどれ…と思っていたら本当にやってない曲だったので驚いた。2007年の『PORNOGRAFFITTI』からのチョイスとはいくらなんでも渋すぎやしないか?初めて来た人とか、連れてこられた人が割とポカンにならないだろうか、と思いつつも、あくまで今回はいわゆる「2人より曲や歌詞を覚えているようなファン」に向けてセトリを作ってきたというのがひしひしと伝わってきた。こういう、ポルノも自分も歳を重ねて、今だからこそ沁みる感じの曲をやってくれるのはいいなぁと思う。《賞味期限が切れる夜の0時に ミルクには何が起こるんだろう 致命的ななにごとかが》は、今読んでも名歌詞。

早く『蝙蝠』のことも思い出してほしい。

 

M6’ Free and Freedom

『ウォーカー』と日替わり枠でやっていたのがこの『Free and Freedom』。『ジョバイロ』のカップリングという位置づけもあり私は聞いたことがなかったので、初めて聞けて嬉しかった。昭仁がBEツアーで新調したアコギが本当にいい音なので、浮遊感のあるアレンジと深く響く音色とが相まってすごく気持ちいい曲になっていた。リリース当時より圧倒的に進化して伸びがいい今の昭仁の声で昔の曲が聞けること自体が嬉しい。アウトロの皆川さんのキーボードアレンジがカッコ良すぎた。

 

M7 君の愛読書がケルアックだった件(前半セトリのみ)

あんまりやらない曲を~という発言の直後にしては、こちらは比較的新しい曲。しかし、シングル以外のアルバム収録曲はアルバムツアー後は埋もれてしまいがちなので、こういう『ケルアック』みたいな他と競合しそうな曲をまたすぐ聞けたのは、個人的には良かったなと思っている。後半はラブデスがここに入ってきて消滅した。

 

「え~~みなさんご存知かもしれないですけど。23年間ポルノグラフィティとして活動する中で、ほんとに色んなことをやってきたけど。今年はある新しい、魅力的なコンテンツに出させてもらって。『THE FIRST TAKE』というね…」

ここで大きな拍手。この『THE FIRST TAKE』は、ポルノが出るまで私は噂程度しか存じていなかったのだが、近年の音楽シーンの中でかなりの影響力を持つコンテンツで、動画が上がるたび何百万という再生数がつくチャンネルだ。そこにポルノが出たのは昨年9月。『サウダージ』を披露し、ぐんぐん伸びる数字を見て、かなりの反響だったことが伺えた。

www.youtube.com

サウダージ』は今では1750万再生され、比較的新しい動画ながら全体の中でも20位代をキープし続けている。本当にすごいことだ。

「ビッグコンテンツに出させてもらって、ありがたいことですよ。その出させてもらった時にそこでやったアコースティックセッションがすごく良かったので、ここでも披露したいなと思います。曲は、『ミステーロ』です、聴いてください。」

 

M8 ミステーロ

本当に、こんなに盛沢山でいいの?ってくらい贅沢な時間だった。『TFT』のアコースティックセッションはとてもクオリティが高くて素晴らしかったが、まさかそのアレンジで違う曲が聴けると思っていなかったのですごく嬉しかった。『ミステーロ』が持つエキゾチックな雰囲気が更に増して、美しい楽器の音色と昭仁の声がクリアに聴こえて、高級なディナーを食べているような気持ちになった。山口さんがコントラバスで鳴らしていた「ギューン」という音が不穏な空気も醸し出していて、不思議なアクセントになっていた。本来サビ始まりなのがAメロ始まりになって、最後にサビを繰り返すという構成になっていたのも面白かった。

 

「え~ありがとうございます。ここで、せっかくなので、その『THE FIRST TAKE』でやった曲もね、披露したいと思うんですけど。」

客席から湧き上がる拍手。やったー!『サウダージ』も聞けるんだー!と喜んだ瞬間、昭仁から衝撃の一言が。

「せっかくのこういう機会で、こういう距離が近いホールでやらせてもらえるんでね、今日は、せっかくなんで、マイクを使わないで、みなさんに届けたいと思います!」

マイクを使わないで、と言った瞬間、建物が揺れるくらいの拍手が沸き起こった。客席が一気に息を呑むのがわかった。

昭仁がスッと息を整え、客も静かに身構える。

 

M9 サウダージ

「私は私と はぐれる訳にはいかないから

いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ恋心よ」

 

これまで約18年間、昭仁の声がずっと大好きでいたけれど。この日改めて、岡野昭仁の声が好きでよかったなと、本当に本当に心の底から思った。

今までも、昭仁がライブでアコギ一本で弾き語りをしてくれたこともあるし、少ない音数で声を聞くという機会はあった。最後の挨拶だっていつも生の声ではあった。

だけど、本当の生の歌声、それが直接鼓膜に入ってくることは今までなかった。この人から本当に私の大好きな歌声が出ている。その実感だけで、声を聞いただけで、涙があふれて止まらなかった。

あの時間は、紛れもなく、私の人生の宝物になった。一生忘れないし、最後に思い出す瞬間のひとつになると思う。

サビのワンコーラスをアカペラで歌った後は『TFT』のアレンジになり、美しいラテンの民族音楽のような素晴らしい演奏と共に濃密な時間が流れていった。Aメロが始まるギリギリまで鳴り止まなかった長く大きな拍手が、昭仁の歌声の素晴らしさを物語っていた。

曲が終わると雰囲気が一変し、ステージが暗転、重く響く金属音のイントロと共に、無数の光の筋が舞台上に檻をつくりあげた。

 

M10 鉄槌

艶やかな空間から、一気に重く薄暗い緊張感が走る。私はこのツアーが始まる前、まだコロナ禍ではあるし、最新シングルもメッセージソングだし、全体的に明るめのライブになるのかな?と思っていた。そんなことは無かった。にしてもここまで、恐ろしいほど圧倒的な“陰”のオーラで殴ってくるとは。ポルノが繰り出す暗い、ダークな雰囲気を纏った曲というのは、ポップな曲とのギャップも相まって本当にシリアスでかっこよくて、こういうポルノがたくさん見たい!と思っているファンも多い。世相を加味せず、あくまでライブという空間のカッコいいポルノを見せる選択をしてくれたような気持になって、嬉しかった。

1番が終わると、ステージ上に厚い霧のようなスモークが立ち込めており、いつの間にか昭仁が消えていた。長いギターソロのアレンジは、晴一の独壇場だ。これで曲のポジションがいわゆる“ヘソ”だということは分かったが、まさか今それがこの『鉄槌』になるとは…。

 

M11 Fade Away

2曲続けて、また暗めの曲。こういう流れは大好きなのでめちゃくちゃ嬉しかったし、『ケルアック』と同じく2017年の『BE』アルバムの曲なので、こんなに早くやってくれたのも嬉しい。ダークな世界観と昭仁の艶やかなボーカル、メロディアスなリフが非常に印象的な曲だが、「続」ツアーでは更にバンドサウンドがブラッシュアップされていて非常にかっこよかった。今回のツアーは、かなりタイトでシンプルにバンドの音を聴かせていたなというイメージがある。アウトロの昭仁の叫びがたまらなくカッコよくて打ちのめされた。

 

「え~皆さん大丈夫ですか!ね、ここまでこう、静態して聴くような暗い曲が続いたけぇ、ここでちょっと愛の曲なんかをね、届けようかなと思います。」

そう言って、昭仁にアコギが手渡され、ポロポロとスケールを確認する。

 

M12 元素L

イントロ無しで、昭仁のソロ歌唱で始まった瞬間、やられた!!と思った。『元素L』も比較的レア曲なので、ライブで初めて聴けた。ミディアムテンポのラブバラードの中でもかなりの名曲だと思うし、私も大好きなのですごく嬉しかった。静かに、訥々と語るようにゆったり歌う昭仁のパートが終わると、通常のテンポに戻りバンド演奏が始まる。ひとつの曲を多面的に聴くことができてお得感があった。晴一のコーラスがよく聞こえたので、にっこりした。

 

M13 Winding Road

やさしい空気感はそのままに、しっとりしたバラードが続く。『Winding Road』は、ここ数年の昭仁の歌声の進化に伴い、非常に化けた曲であると思う。「しまなみロマンスポルノ」で披露されたので比較的最近聞いた気もするが、良い曲は何回聞いても良い。

リリース当時より大人になった今の方が胸に響くし、そもそもメロディが物凄く綺麗なのでは?ということに気付くのが遅かったため、自分の中で評価が覆った曲でもある。

ステージの上から降り注ぐライトが床に水玉模様を作り、まるで雨の中で歌っているような幻想的なステージだった。

 

「ありがとうございます。え~こうしてね、全国回っとるわけじゃけども、まだまだ世の中はコロナで暗い気持ちになることも多くて、先が見えなくてしんどくなることも多いと思う。でもそうやってね、暗闇の中だけを見とったらいけんと思うのよ。暗闇を抜けた先にはきっと光が、明るい未来があると思うけぇ。その新しい時代、イッツアニューエラを迎えるために、このライブがそのためのきっかけになってくれたらいいと思う。みんなで新しい時代を迎えようや!その新しい日を迎えるための一歩を踏み出す、今日が”その日”だ!!THE DAY!!!」

 

M14 THE DAY

今日が“その日”に。これまでのライブでも何度か聞いたことのあるメッセージだ。しかし、こんな世の中だからこそ、いつもより更に強く胸に響いた。『BE』のアレンジがめちゃくちゃ好きなんだけど、スタンダードなアレンジもすごく良かった。『THE DAY』はすっかりライブでもおなじみだけど、本当にカッコいい新しい定番曲が生まれたのは大きなことだなぁと思っている。

 

M15 REUNION

ピンと糸を張ったような、シリアスなピアノのイントロが奏でられると、会場はピリッとした気持ちの良い緊張感に空気に包まれる。配信ライブの『CYBER ロマンスポルノ』で発表された時は、てっきり表題シングルになると思っていたくらい力のある曲だ。

静かで張り詰めたAメロからどんどん音が増え、サビで一気に開放する。激しく点滅するライトの中で浮かび上がる二人のシルエットに、目が眩みそうになる。ポルノが得意とする、スタイリッシュだが泥臭い、ギラリと研ぎ澄まされたカッコよさが凝縮されている曲だ。初披露時とリリース時では、歌詞の変更と追加パートが加わったが、これがまたすごかった。

我と彼を隔てるのは 此処と其処を割かつのは

止まった思考と 固定された視点だ

I am you, Here is there 真理を孕んだこの矛盾

まるで咆哮ともいえる「止まァアッ!!!た!!!!!!!」を聞いた瞬間、ザワ……と体の中に何かが渦巻くのを感じた。岡野昭仁がどこまで進化していくのか、ただひたすらに怖い。年齢と共に劣化どころか更に高みへ登っていく姿を目の当たりにするたび、私はただ立ち尽くすことしかできなくなる。

REUNION』の歌詞は珍しく二人の共作で、昭仁の作成した英詞(晴一曰く“念仏”)が多すぎる初期バージョンが好きだったが、この追加パートとライブでのパフォーマンスを見て、やっぱりブラッシュアップには意味があるんだ、これが完成形なんだと思うことができた。曲全体に流れる禅問答のような、瞑想のような、内向的だけど開かれている、不思議な浮遊感も好き。

 

M16 メリッサ

この3曲の畳みかけが本当に良かった!特に『REUNION』が入ったことで、同じ系統でもパリッと締まる空気が作られたのがすごくよかった。ライブ映えするし、今後も頻度高めでやってほしい。

メリッサは相変わらず、序盤でも終盤でも安定して盛り上がるし、昭仁の信じられない長さのロングトーンも健在だ。もはや当たり前のようにやってるけど言い方を選ばなければ本当に化け物である。

 

『メリッサ』が終わると、ひと呼吸置いて“男前ギター”が始まる。
自然にタオルに手をかけると、もうすぐ終わってしまうんだなぁと少し寂しい気持ちになる。

 

晴「君らは手拍子しか出来んけど……声が出せなくて溜まってるその…君らの中のその……残留エネルギーみたいな……そのエネルギーで……サステナブルな世の中を作りませんか?」

 

M17 ハネウマライダー

定番も定番なのでストレートにやるのも飽きたのか、上記のような(歯切れの悪い、謎の)SDGs煽りを毎回挟んできたりしていた。一時期は私も飽きた~とか言っていたけど、やっぱりハネウマは盛り上がるし楽しいし、たくさんの思い出が詰まっているので、なんだかんだ無いと寂しい…かもしれない。でも終盤にやるのが定着すると、本当に“終わりの予感”の曲になってしまうので、やんない回があってもいいし、今度はいっそ久しぶりに最初の方にやってみたらどうだろうか。

でも、ハネウマのメロディってよく考えたらかなりドラマチックで、少し切ない煌めきがあって、最後の方にやりたくなるのかもなぁと最近思う。この20年に名前をつけるなら?と問われて晴一が「Days of the Sentimental」と引用して答えるほどだし、彼らにとっても、ポルノとしての青春の象徴なのかもしれない。

 

「ありがとう!!あんたらほんまにすごいよ。ほんまにすごい!!今日は声が出せんけど、あんたらの、最高の拍手、生涯最高の拍手をちょうだい。手が痛くなるくらい、痺れるくらいの拍手をちょうだい!!そして次にまた会う時まで、その手の痛みを、その手の熱さを覚えていて。今のこの時間も大切なものになるから!!次会う時までその痛みを忘れないで、そして次に会う時は、きっと声が出せるから!この曲をみんなで歌おうや。その時までの約束!」

 

M18 テーマソング

ほら 見上げれば空があって 泣きたくなるほどの青さ

ほら 雲のような白いスニーカーで 高く高く昇ってゆけ

このようにストレートな“ザ・メッセージソング”という風体の曲は、実はポルノの楽曲の中では少ない。少ないし、あっても私はそんなに求めてない系統というか、もっとシニカルな視点で描かれる小技の効いたカッコよさを求めているので、最初は戸惑った。

壮大なテーマソング 流れりゃその気にもなるかな

耳に届く音はいつも 不安な鼓動のドラムだけ

フレーフレー この私よ そしてフレー 私みたいな人

ともに行こう 拳あげて 誰のためでもない this is all my life

今までは突然「フレーフレー」なんて言われたら、おい新藤晴一どうした?!となっていただろう。しかし、「今エンタメに必要なのは、明るいとは言えない世の中のことを一瞬でも忘れられるもの。フレーフレーと言う理屈があるから書いた」という、晴一の揺るがないロジックで作られたという安心感があるし、メッセージは素直に受け取るべきだろう。真っすぐな希望溢れる応援歌のようでいて、根底には晴一らしい、ポルノらしい内向的で皮肉っぽい言い回しが随所にみられるのがバランスを取っているとも思う。

「ただ自分らしくあれば それが何より大切」

などと思えてない私 何より厄介な存在

ここのパートが変な方向で刺さったまま、未だにどうしたらいいのかわからない。理解と納得と求めていない共感は、時に苦しくもなる。

しかし、そこまで胸に刺さるフレーズを生み出せる新藤晴一の詞の技量には、どんな形であれやはり舌を巻く。出来るならば、私なりに、納得できるような人生になって、噛み砕いていければいいなと思う。

 

曲の最後に、「また会おう」と昭仁が何度も何度も言ってくれた。『テーマソング』は最後のサビがコーラス隊によるものとなっているが、音源を聴いたときは、ああこういう方向ね…と斜に構えていた。でもやっぱり「いつかみんなで歌えるように」と昭仁が込めた希望の意味をないがしろにはしたくないので、それが実現する日が来ればいいなと思う。

 

曲が終わりメンバーが捌け、いつものようにポルノコール……ができないため、ボイスストラップと、精一杯の手拍子でアンコールを起こす。声が出せない分、やはり一体感というか、届けようという客席の熱量があったように思う。

 

「アンコールありがとうございます!みんなボイスストラップちゃんと使えてるね。手拍子も一生懸命ありがとう。

…え~、『続・ポルノグラフィティ』というツアーで全国回っとるわけじゃけども、このツアーの目的は長い期間待っとってくれたみんなに会いに行くために、ポルノグラフィティの”続”を見せるためだったんじゃけども。じゃあ、何をもってして”続”なのか、それはやっぱり、みなさんに、新しい曲を届けることなんじゃないかということでね、みなさんにここで、新曲を聴いてもらいたいと思います。」

やっっった~~~~~!!!!!いや、ツアーをやってくれること自体がすごく嬉しかったのに、まさか新曲を聴けるとは思ってもみなかったので、客席も思わずざわついていた。

「え~~聴いてもらう曲は、今わしらが届けたい音、作りたい音楽というのを表現した曲になります。タイトルは、『メビウス』。聴いてください。」

 

encore メビウス(仮)

 

何?????????

今、一体私は何を聞かされたのだろうか。

やさしいあなたは わたしのくびねを

りょう手でしめ上げ 泣いてくれたのに

うすれるいしきに しあわせみたして

はずかしい はずかしい わすれてほしいよ

 

こわ………………。

おおよそ明るさやポップさを微塵も感じられない歌詞が、やさしくあたたかな音色に乗って歌い上げられているという事実に、しかもそれを「新曲できたよ~いま表現したい音楽だよ聴いてね~」のノリで繰り出されたことで、完全に宇宙猫になった。

しかも、ツアー最終日の配信で、上記のように「歌詞が9割ひらがな表記である」ということが判明し、物議をかもした。しかも、気になりすぎて調べたんだけど、漢字は恐らく小学校2年生までで習う漢字しか使われていない。どういうことなんだ………。

曲としては、優しいメロディがシンプルなギターサウンドで奏でられ、サビでラウドっぽく展開するのがめちゃくちゃカッコよくて、このまますぐ音源出してほしい!!と思った。「アルバムとかに入るかはわからないですけど」と言っていたけどまぁ恐らく入るので、どうなるのかすごく楽しみ。

個人的に作曲作詞は、少なくとも作詞が晴一なのは確定だと思ってたけど、検索してみると昭仁派も少なからずいて驚いた。でも私は違うと確信しているが、実際の所どうなのかは今後リリースされる際にわかるだろう。昭仁だったら土下座します。

 

終わった後も、ゾッとした気持ちが抜けないまま放心状態で拍手しているにも関わらず「え~メビウスもね、みんなに長く愛される曲になればいいなと思います」といつもの調子で締めようとする昭仁に対して、いや置いていかないで!!ストップストップ!!!とパニックになっていた。信じられない。突然ビンタして放置しないでほしい。ありがとう(混乱)。

 

encore ナンバー(仮)

ツアー最終日にサプライズで披露された、2曲目の新曲。『メビウス』とは打って変わって、ストリングスが印象的なイントロから素朴で牧歌的な、ポルノの引き出しにありそうな感じのアレンジだったので、ああ、こういう曲ね~いいじゃん。『農夫~』みたいな感じ?と思っていた。

こうして僕は見失った 日付だとか時間だとか

君の住む街の番地さえ不思議な模様に

けれど花は咲くのだろう 熊は春に目覚めるだろう

数えるのではなく満ちるの待っているの

何……?????????

1サビにして雲行きが怪しい。どういう曲なんだこれは。雲行きが怪しいわりに、全体を通して「猫」「蜜蜂」「小川」「キツネ」「花」「熊」「ウサギ」「芦毛」「蝶」など、いやにのほほんとした単語が頻出して一見可愛らしい曲っぽいのがいじわるだ。
そう思っているうちに《まだ何も知らずにいれた僕の残像》《いつものように遠出をして帰り道が消えてしまい》など、おおよそ曲調からは想像できない不穏さと難解さが露出し、結局この曲も??????になってしまった。配信だと歌詞が出ていたからすぐ違和感に気付けたけど、現地参戦組が後から歌詞を知って度肝を抜かれたというのも納得できる。

この『メビウス』『ナンバー』という曲をこうして繰り出されてハッキリしたことは、次のアルバムが楽しみすぎるということ……。
どっちも恐らくシングルにはならないタイプの曲かな?と思うけど、カップリングでもなんでもいいので、いつかこれが世に出るその瞬間が楽しみ。

 

ここでセオリー通り、サポメンから順番にメンバー紹介。

昭「次に、我らがギタリスト!!!の名前をー、そのー、なんじゃ、緑のやつでぇ、緑のやつを駆使して呼んでやってくださーい!!オーーーーンギター!!!!!」

\はるいち~~~~~/(ボイスストラップ)

昭「オーーーーーンギター!!!!!」

\はるいち~~~~~/

昭「オンギター、新藤、はーるいちーーーーー!!!!!!!」

なお、福岡公演は10月15日の昭仁の誕生日とかぶっていたため、「岡野くん、今日誕生日らしいね。」とモニターに「Happy Birthday」の文字が映し出され、メンバーによりハッピーバースデーの演奏があり、ステージ袖からケーキが出現するというサプライズが。

晴「ハッピバースデー岡野く~ん、ハッピバースデー岡野く~ん、ハッピバースデーディア岡野昭仁く~~~ん…」ときちんと歌う晴一。

昭「ありがとうございま~~~す!!47歳になりました~!」

昭仁がこぶし大のちっっちゃいケーキのろうそくを吹き消して、サプライズは終了……かと思いきや、次の日16日も「岡野くん、昨日誕生日だったよね。……別に、今日も祝ってもいいんじゃないの。」という謎発言から、再び祝うと言う流れに。祝いたがりの晴一。

ここで通常MCへ。

晴「意外と(ボイスストラップの音が)聞こえるもんじゃね。でもなんか、その~、ライブで呼びよるテンションと、家で吹き込むテンションって多分違うけぇさぁ、なんか、お母さんとかに呼ばれてるみたいな気持ちになるよね。『ちょっと!晴一!』みたいな。『宿題やったの!』みたいな。……まぁその、こういう機会もそうそう無いけぇ、みんながそうやって、グッズ使ってくれたりとか、声が出せんくて手拍子したりとかも、良いように言えば、いつかあんなことあったなぁって、なんかこんなん買わされたなぁって、思い出になってくれれば、あー、いいんじゃないかなと、思いますので、わしらもツアーを一本一本噛みしめて、やっていきたいと、思います。」

晴「そしてボーカルは~」

\あきひと~~~~/

晴「ボーカルは~~~」

\あきひと~~~~/

晴「ボーカル~、おかの~、あきひとく~~~ん!」

昭「ありがとうございます!!みんな上手に(ストラップ)使えてるよね、ええことじゃわ。初日より若干増えてきた感じあるよね(笑)。え~~わしらが20周年の東京ドームを終えて、まぁ少し休もうかってなっている間に、コロナがバーッと広がって、活動も少しストップしたみたいになってしまって。そんな中でも、それぞれソロで色んなことをやってみたり、言ってみると”離れ”での活動をやったりして。こうしてポルノグラフィティという”母屋”に帰ってくることができたのも、みなさんが待っていてくれたおかげで。普通なら、こんなに長い間待たされて、なにやっとんじゃって怒ってもいいくらいだと思う。でも、そんなことなく、あたたかく迎えてくれて。離れでの活動をしてみて、改めてポルノグラフィティというのは、すごい母屋だなと。土台がしっかり作られてて、柱で支えられて、立派な屋根があって。これからも、みなさんにはたくさん母屋に携わってほしい、ここ釘が出てるぞとか、ここ壁紙剥がれてるから補修してやろうとか、どんなことでもいいから一緒に作っていけたらいいなと、思います。」

昭「最後は!!!みなさんアホになって、声が出せん代わりにボディで、ダンスで、全てを出し切って、アホになって帰ってほしいと思います!!!!ラスト!!ジ!!レンマ!!!!!」

 

encore ジレンマ

やっっっっと『ジレンマ』で終わるライブに来れたよ!!!!

いや、『ライラ』も悪くなかった。けど、やっぱり最後は儀式を求めてしまう。最後に全て発散してアホになって、あ~楽しかった!ってなれる曲はやっぱり『ジレンマ』なんだなと思う。無言でいないといけない『ジレンマ』なんて初めてだったけど、「声が出せんけぇ思いっきり全身で暴れて帰れよ!!全部出してけ!!!」という、この日何度も聞いた昭仁の煽りに倣い、久しぶりに腕が千切れるほどの気持ちで大暴れした。

「あんたらは最高じゃ!!!!ほんまに最高じゃ!!!自信持っていけ!!!胸張っていけ!!!!」を、このコロナ禍で聞ける喜びと力強さ。ポルノと私たちの強固な合言葉は、またひとつ新しい勇気をくれた。

 

生声挨拶(メモしたもののみ)

・福岡

晴「ほんと皆さん、また会う時まで、お元気で。」

昭「ほんまにサイコーの誕生日になりましたありがとー!!!また会おうね!!」

 

・札幌

晴「また、ちょくちょく来ます。」

昭「今日は本当にありがとう~~~!!ほいで!!また会う時は!!今度こそ声出して、大暴れしましょう!!どうもありがとうございました~~~~!!!」

 

今回、コロナ禍での声が出せないライブツアーということもあり、ポルノも、ファンも手探り状態からのスタートとなった。いつもとは違う距離感で、どんな雰囲気になるのかと思っていたが、蓋を開けてみればなんのことはない、同じ心の距離が保たれていた。むしろ、声を届けることができない分、より一層お互いに「届け!」と願っている、そんなライブだったと感じた。

このツアーを「元気だよ」という顔見せのライブだと言っていたが、並んだ曲のタイトルや構成を振り返ると、紛れもなくコアファン向けのツアーであったのは間違いない。そして、ツアーを通してポルノグラフィティがずっと私たちに伝えてくれたのは、「続くよ」という意思表示であった。

コロナ禍で、いつ何が突然終わってもおかしくない不安の中で、「続く」ということを明確に表現してくれたポルノの姿は、確実に私たちの心に光を与えた。

昭仁が使った「母屋」という言葉。休息を経て、お互いに違う活動をしていた二人だが、私たちはそこで得た力をポルノグラフィティに還元してくれることを知っている。その信頼があるからこそ、ずっと待ち続けられるし、これからもたくさんの景色を見せてくれることを期待してしまう。二人も、きっと私たちが待っていると、これまで以上に信じてくれているはずだ。東京ドームで、私たちとポルノの距離は、確実により強固に、密接なものとなった。照れくさい言葉で言えば、その絆を確かめるツアーだったのかもしれない。

どんなに休んだって、止まったって怒るわけなんかないのに。離れるわけないのに。それでも、そんな風に私たちに「待たせてごめんね」と言ってくれる彼らのいじらしさもまた、愛すべき謙虚さなのだなぁと思う。

ポルノグラフィティの進んでいく旅路。それがどんな道であろうと、私は最後まで見届けたい。新時代の幕開け、彼らはその新しい航路の先を、私たちに示してくれた。新始動したポルノグラフィティがライブで見せてくれた「私のための場所」、果たされるべき約束のことを、私はずっと忘れないだろう。


M1  IT'S A NEW ERA
M2  幸せについて本気出して考えてみた
M3  ドリーマー
M4  ANGRY BIRD
M5  Love,too Death,too
(M5‘ LiAR)
(M5‘’ 今宵、月が見えずとも
M6  ウォーカー
(M6‘ Free and Freedom)
M7  君の愛読書がケルアックだった件
(→愛知以降はLove,too Death,too
M8  ミステーロ
M9  サウダージ
M10 鉄槌
M11 Fade Away
M12 元素L
M13 Winding Road
M14 THE DAY
M15 REUNION
M16 メリッサ
M17 ハネウマライダー
M18 テーマソング
EN1 メビウス(新曲)
EN2 ナンバー(新曲) ※最終日のみ
EN3 ジレンマ