【暁】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った Part5

自分のツアー感想を書いてから取り掛かろう、と思っていたら、一向に自分の感想が書き終わらないうちに次のツアーが始まってしまうまでに至った。せっかく掲載許可をもらったものをしまっておきたくないので、5回目の初見感想記事。多分、自分の感想はお蔵入りになると思う…。

 

初見の人数

①2022.10.17 オリックス劇場 1人

②2023.1.24 日本武道館 1人

文章で感想をいただいたのは②の方のみ。

 

①2022.10.17 オリックス劇場(座席:3階席)

【Kさん】

・性別など:女性

・好きな音楽:椎名林檎。幅広く聴いているイメージがある。

・ポルノの知識:知ってはいるけど、今の曲は知らないという感じ。

・予習として:ライブ前にいくつかこれまでのライブ映像を見てもらった時にすごく褒めてくれた。

 

Kさんとはミュージカルの観劇繋がりで話すようになり、かなりエンタメに大しての評価を信頼しているので感想を口頭で聞いたのにそれをメモし忘れるという失態を犯してしまった…。ので、かいつまんで記しておくと、とにかくライブを褒めてくれた。曲の流れ、パフォーマンス、ライティング、演出についてベタ褒めしてくれて、「自分の信頼する人に見せたい」という最上級の褒め言葉をいただいてとても嬉しかった。

以前にライブ映像を見せた時もすごく楽しんでくれて、何度も格好いい〜!と言ってくれたり楽しすぎて終わるのが早かった!という感想をもらっていて、概ね生で見た時も同じ感想を頂いた。あと、MCで泣いてくれたらしい。そんなに思い入れの無い(ファンではない)人にもそこまで伝わるものなんだ…と思って嬉しかった。Kさんの素敵な感受性の豊かさもあるとは思うけど、嬉しい感想ばかりでした。ありがとうございます!

 

②2023.1.24 日本武道館(座席:2階南西)

【Lさん】

・性別など:女性

・好きな音楽:バンドやロキノン系、テクノサウンドなど幅広く聴いているイメージがある。

・ポルノの知識:知ってはいるけど、今の曲は知らないという感じ。

・予習として:知ってはいるけど…の感じ。とりあえずサブスクで色々聴いてもらった。その中でもアポロが素晴らしいと改めて思ったらしい。また、ポルノがどういうバンドなのかということを説明する会みたいなのを僭越ながら開かせてもらった。

 

Lさんとも同じミュージカル繋がりで、今回初めて行きたいと言ってくれたので初参加。なんとツアーファイナルの武道館が当たったので特殊な体験になったと思う。以下感想文。


・えっ?歌上手すぎ

ありがとうございます!!一番の褒め言葉です。


・レーザーが綺麗

・火アッチィ!!!!ポって火とか出すんだ

演出関係。近年のツアーのライティング本当に素晴らしいので嬉しい感想。あとポルノは火が結構出る!ホールツアーだったけど最後は武道館だったおかげで景気のいい演出がたくさん見てもらえたかなと思う。


・曲予習しておいて良かった

ミュージック・アワー振りが分からんけど分かる!!
・アゲハ蝶の手拍子2回目3回叩くんだ…

・振りとか手拍子とかのやつ、リズム天国初見プレイで面白い

振り付け関連。ポルノは結構決まった手拍子とか手振りがあったりして完全初見だと何?!ってなることも多いかと思うんだけど、目立つものは昭仁が教えてくれたりするのでそこまで心配は無いかなという感じ。ラテン系の曲は2回3回の叩き方曲によって逆転したりして結構な罠。


・筆者が固まってる…(何曲かあった)

すいません。連番してたんだけどお構いなしに地蔵になってしまいました。

 

トークの2人が面白い

・方言大好きマン大興奮
・ボイスストラップで遊ぶの可愛い(ちょっと欲しくなった)

やっぱり必ずあるMCの感想。ちょうどヴァグラントの発表もあって武道館のMCは面白かった記憶がある。やっぱり初見の人にはカッコいいライブとのギャップがウケるのだなぁと思った。人柄もわかってもらえるし良いことです。

 

・暁で膝つくのヤベーーー!

いや………本当にやばかった。あれは本当にあのツアーで最大の見せ場だし、衝撃だった。岡野昭仁に心臓を鷲掴みにされてそのまま倒れるかと思ったので喜んでくれて嬉しい。

 

・アンコールかな?腕が引きちぎれるくらい全力でノッてくださーい!って言われて「俺はたった今から恥を捨てる!」ってなって手をバッて上げた

昭仁ってほんとに客席を煽るのがうまいなと思うんだけど、初めて参加する人がこうやって心から楽しんでくれるのが何より嬉しいので良かった。ゆっくり見るのが好きな人はそれでもいいけど、コンサートとかでノるのが好きな人は思う存分ノってほしい。


・新曲の歌詞がモニターに出てきて良い感じになってるの良い
・モニターに映る2人がいいアングルで映ってることが多くてモニター見てた

・てかあんなに動き回ってるのに息切れしてないのヤバすぎる。若手俳優か?(48歳らしい)(嘘でしょ)

広い会場だとモニターで表情見るのも楽しいよね。私はあんまり歌詞をテロップで出すの好きじゃないんだけど、今回は初披露の曲だったからこそみんなに伝わる演出を選択したんだなぁと思った。

あと年齢は嘘じゃないです。初めて年齢を教えた時に「よ、48?!?」って言われた記憶がある。本当に2人のバイタリティは留まることを知らない…ありがたいことです。

 

・2人の衣装が素敵

最近の衣装はほんとに良いチョイスだな〜と思う。武道館でツアー中に見たことないの着ててびっくりした。


・サポートメンバー上手すぎ
・最後にメンバー1人1人の見せ場の所でドラムの人が手でドラム叩いてたのと今宵、月が見えずともとピアノの人が知ってる曲(ド忘れ)をアレンジして弾いてて最高

サポメンにまで言及してくれるとは!ポルノは2人バンドなので必ずサポートの方が必要なんだけど、どの方もポルノの音楽を魅力的に彩ってくれる素敵なメンバーばっかりでみんなサポメンのことも好きになる。特にバンマスのtasukuさんはリリースする曲の編曲にも深く携わってくれてて、ツインギターになってからライブの魅力もグッと増したという経緯があるからずっとステージに立ってほしい。

 

感想もらってたのに反映がめちゃくちゃ遅くなってすみません…こうしてほぼ毎回違う人が興味を持ってくれてライブに来てくれることがありがたいです。別に自分はポルノグラフィティの何者でもないけど、ファンとして魅力が伝わっているんだぞーっていうのを残しておきたくて始めたので、何かのきっかけでまたこれを見てライブに行きたいな〜気になるな〜って人が増えてくれたら更に嬉しいですね。

というわけで今は『PG wasn't build in a day』ツアーの前日ということでこの辺りで失礼します。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

【ライブレポ】ドラスタとS.E.Mに会えた日【F@NCOMLIVE~BRAINPOWER!!~】

2023年7月9日に開催された「315Production presents F@NTASTIC COMBINATION LIVE~BRAINPOWER!!~のライブレポです。以下「ファンコンライブBP」。これを書くにあたりアーカイブはまだ見ていないので、所々違う箇所があるのはご了承下さい。

筆者はSideMを知ってから約3年のペーペーPです。好きになった経緯などは以前はこのような記事にまとめました。

ikaika1015.hatenablog.com

5月のロードマップ報告配信で突如として発表された、315プロのアイドルによる、3DCGのユニット合同ライブ。何もかもが未知の状態で、そもそもがコンテンツの行く先に不安を抱えている状態ということもあり、私は最初どうするのか迷っていた。だけど、見たことによる後悔と見なかった後悔ならば、圧倒的に後者の方がダメージが大きいだろうという経験則から、もうどうにでもなれ~!と半ばヤケでチケットを取った。

結論から言うと、心の底から何もかもが幸せなライブだった。

 

☆会場の様子

今回の会場である「神奈川県民ホール」は横浜の赤レンガ倉庫の近くにあり、時間を潰すにはあまり困らない場所だったので、早めに行って会場物販で買い物をした。グッズの売れ行きは、開演に近づくにつれて徐々に売り切れていったので在庫が少なすぎるということもなさそうだった。ランダムブロマイドの交換のやり取りをしている人も多く、普段私が行っている舞台等ではなく、SideMの現場でそのようなことが起きている光景が新鮮だった。

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物販に展示してあったアクスタ。メチャクチャ良いので絶対買う

 

カフェで休んでいると、アイドル達がリハをしています!みたいな公式ツイートが流れてきて、いよいよ現実との境目が曖昧になってきたぞ……と慄いた。まぁ今日起こることは全部現実なんですけど……みたいな気持ちもありつつ、まだどこか不安というか、どうなるんだろう……みたいな感覚もずっとあった。

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何をしてても笑ってくれない舞田のクリアカードめっちゃ好き

 

会場内に入ってびっくりしたのが、モクモクとスモークが焚かれていることだった。私はライブ会場がスモークで薄く煙っているのが大好きな人間なので、否応なしに興奮した。今日、ここで本当に315プロのライブが開催されるんだ……!という高揚感に包まれた。

 

☆開演前

まだ客席に入る勇気が無かったので、ロビーのベンチで速効ブルーベリーを飲んだり水を飲んだりして一息着いていると、会場内から「ぎゃーーー!!!」と突如とんでもない悲鳴が聞こえてきた。何だ何だ?!とつられてロビーにいた人も中を覗きに行く。後で知ったのだが、なんかミス的なもので一瞬6人の姿が出てきたらしい。そうとは知らなかったものの、今日は私がこれまで体験してきたこととはまるで違うことが起きるんだという予感が一気に高まり、こうしちゃ居られない、これは行き慣れてる舞台とは違うんだ、起こる全てをのんびりして見逃すわけにはいかない…!!と少し早めに席に着くことにした。

私はSS席は落選しS席の当選だったので、2階のセンター寄り上手に着席した。1人ぼっちでそわそわしていると「緊張してきますね…」と隣の人が話しかけてくれた。周りはどうやら一人参加の人が多かったようだが、どうにかして未知のステージへの期待と不安が入り混じった気持ちを共有したいという雰囲気を感じた。

開演10分前ほどで、メインステージ横のモニターに突然次郎が現れ、会場がまた瞬間的に沸騰した。Twitterで行っていたカウントダウンの映像だと気づいたが、いよいよ目の前にみんなが現れるのだ…!!という期待感を煽る。この動画の舞田が本当に可愛くて改めてメロメロになった。

本当にかわいい。

 

会場内では妙なことが起きており、ずっとドラスタとS.E.Mの曲が交互に流れていたのだが、段々客席が異様なテンションになり、最初は曲に合わせてペンライトを振ったりしているだけだったのが、盛り上がる曲になると歓声が起き、音源なのに道夫さんが"越える"とフゥ〜〜〜〜♪♪と煽るような事態に。極め付けに、ムンナイが始まると「ギャーーーーーーーー!!!!」とまるで目の前で公演が始まっているかのような空気感になり、最前ドセンではUOが焚かれていた。信じられないが、本当にまだ何も始まっていない。雄叫びを上げたオタクたちは思わず謎の一体感にアハハ…と笑ってしまっていた。私はこの異様な集団幻覚に、今日ここまでやって来た人みんなが、色々な気持ちを抱えながらも「盛り上がるしかないっしょ!!!」と思っているのだな…と元気づけられた。

 

☆前説

既に熱気が溢れんばかりの会場内で、フッとBGMが止み、客電が落ちる。その時を待ち侘びていたみんなが小さく悲鳴を上げる。緊張感のピークの中で、ドラスタとS.E.Mがいつものライブ前の注意を読み上げてくれた。そう、ファンの前に事務員である山村は出てこない。演者のみんなが前アナをしてくれている。輝、薫、翼、道夫さん、舞田、次郎。一人一人が名乗るたびに、ワッと歓声が上がる。

315プロのアイドル達が、今、初めて目の前に現れようとしている。

 

M1 Beyond The Dream

聴き慣れたフレーズと共に目の前に現れた6人に大歓声が上がる。DRAMATIC STARSが下手側、S.E.Mが上手側に一列に並んでいた。

最初は、うわぁ、いる、いるよ………!!!とじんわりした感動に包まれていたが、すぐに脳みそが破壊される瞬間が訪れた。

 

ジャンプが、バラバラだったのだ。

 

そう、《Let's jump,Everybody go.》という歌詞でみんなが大きくジャンプする時、その高さ、腕の位置、膝の曲げ方が、何一つ違っていた。6人全員が、それぞれの動きをしていた。

これが何を意味するのか。人間、6人集まってその場でジャンプしてくださいと言われ、全く同じ角度の同じポーズで跳ぶことは無いだろう。今、目の前でそれが起きていた。

 

315プロのアイドルが、生きている。

 

冒頭20秒にして、その事実に真っ直ぐ貫かれた私の脳は音を立てて大爆発した。

今日は、すごいことが起こる。起きている。その予感でいっぱいになった。

 

ビヨドリもちゃんとドラスタとS.E.Mが歌っていて(目の前にそのユニットしかいないから当たり前なんだけど)、すごく嬉しかった。翼と舞田の《心のオアシス みんなのイエロー》のユニゾンめっっっちゃ可愛かった。「Beyond The Dream~~~~!!」の、舞田の背中をそらす振付がめっちゃ大きくて、ジャンプもめっちゃアイドルポーズで、キメでピタッと止まるし、身振り手振りが全部大きい!!かわいい!!かっこいい!!と”初めて見る舞田類のダンス”に目が釘付けになった。

 

M2 STARLIGTH CELEBRATE!

まだ何がなんだかわからないまま、ドラスタのユニ曲へ。ちょうど2日前に3DMVが先行お披露目されたこともあり、ドラスタさんのパフォーマンスが生で見れる~!!という喜びがひとしおだった。輝のダンスのキレすごい!薫のパフォーマンス優雅だし歌うまい!翼めっちゃ手足長い!とまたも情報の海にあっぷあっぷしていた。3人がお互いに向き合って手をかざすところでは思わず客席から「ヒャ~~~!!」と声が上がる。この日の観客は、目の前で巻き起こる”現実”のすごさにたびたび脳を焼かれて要所要所で限界の悲鳴が漏れ出ていたのが面白かった。何もかもが初めてのステージで聴くスタセレは、安心感がありとてもよかった。

 

M3 ∞ Possibilities

ドラスタが来たということは、やはり…という流れでS.E.Mが登場。ビビットピンクのレーザーの中で踊る銀ピカギラギラのスーツ。本当に目の前で、S.E.Mのステージが繰り広げられている……!!振付は記憶のどこかにあるものに似ているが、今は関係ない。ピシッと姿勢のいい道夫さん、やっぱり振りが大きく緩急のある舞田、適度に力の抜けた動きをする次郎。ただひたすらに、S.E.Mがいた。サビ前の”情熱のポーズ”では、ワッと喜びの歓声が上がる。そして道夫さんが”越えた”瞬間、観客の盛り上がりもピークに達する。

 

MC①

正直MCの内容に関しては記憶のみだとあやふやな部分が多いので雰囲気で。3曲を披露したところでユニットが揃い、改めて自己紹介。私は3曲披露する間に、すでに脳のキャパシティが限界を迎えそうになっているのを感じ、「いかん…落ち着かないと、このままボンヤリ眺めてるだけになってしまう…!」と思って落ち着くよう努めていたのだが、割とみんなの姿に慣れてきたな~と思っていたのも束の間、輝や道夫さんの話を聞いている舞田の仕草を見ているうちに「ああ、うんうんって頷いてる……腕の角度かわいい……身振り手振りが大きい……」とジリジリ脳が焼かれ始め、ふいにこちらを向いて手を振り始めた瞬間にボン!!!!!と弾け飛んだ。類が……類が手を振っている!!!この「誰かが話している途中に何かをする人」というのも、全員がそれぞれ生きているからこそである。

道夫さんの「ここからがライブ本番だ」という言葉にハッとなる。そうだ、まだ全然始まったばかりなんだった…でも、もう何が起きても楽しい!ワクワクする~♪と、何が起こるのか身構えていた次の瞬間。

 

M4 GOLD~No.79~(Short ver.)

プァ~~~~……♪ \ギャアアアアアアア!!!!!!/

言葉通りの、阿鼻叫喚。ここからがライブ本番です!と言われて始まるのが、山下次郎のソロだなんて一体誰が予想しただろうか……。

次郎が歌い始めても悲鳴は止まず、「信じられない!」と「これから起こることってまさか……」の予感で会場はAメロの直前までざわついていた。次郎のダンスは、気だるげな余裕があり、その代わりカメラに抜かれる瞬間やキメのポイントでの小技が光るタイプのパフォーマンスだった。3DMVでも見たことが現実になっている。あの映像は、本当にステージ上の山下次郎さんを切り取ったものだったんだ……と感動した。サビのダンスがちょっと面白風になっていたのは若干の勿体無さを感じたり。ジェスチャーの振付じゃなくてもいいのにな~と思うが、まぁそれも味と言ってしまえば味である。

 

M5 THIS IS IT!(Short ver.)

次郎ソロの直後にイントロが流れて、私は予測可能回避不可状態になり崩れ落ちてしまった。自分はそこまで普段ライブでオーバーリアクションな方ではないと思っているが、人間本当にキャパシティを超えると体が勝手に動いてしまうのだと悟った。

あの底抜けに明るい太陽のような舞田類のソロ曲が、星のきらめきのような少し切ないイントロから始まるのが大好きなので、聴こえてきた瞬間胸がいっぱいになった。メロディもあえて少し落ち着いた低めの旋律なのが本当に好きで……。

《Come on,join us! おいでよ、楽しまなきゃ!》とは、まさに今日のためにある言葉にも聞こえる。舞田は歌いながらステージを歩き回って、ニコニコして、いっぱい、いっぱい手を振ってくれた。その一挙手一投足が本当に可愛らしくて、きらきらしていて、ありがたくて(?)、ウウ~~…!!と小さく呻き声を上げることしかできなかった。

終わってからかなりの人が言っていたけど、私もステージの上の舞田を見て「舞田ってこんなに踊れるんだ…!」と驚いた。野暮とは思いつつあえてステータスの話をすると、実は舞田のDa値は4なので、あの6人の中では薫の次に低い。しかし、そこをカバーするのがVi値7という数値で、技術や正確さとは違う「ダイナミックに動きしっかりキメを作ることで、華やかでいわゆる”魅せる”タイプのダンス」だと思った。ステージの上の舞田類という存在を、あのように解釈してパフォーマンスしてくれたことが私はすごく嬉しかったし、もっともっと舞田類のことが大好きになった。

曲の最後では道夫さんが出てきて、また歓声が上がる。

 

M6 Learning Message(Short ver.)

ここまで一人ずつのパフォーマンスを見てきたが、私がこのライブで特に楽しみにしていたことの一つが”硲道夫さんのダンス”だった。道夫さんのダンスは、正確、精密、芯がブレないという、正に本人の精神性そのものを体現しているようなパフォーマンスだった。MVでの道夫さんは常にまっすぐ前を向き、未来を見据えて姿勢を正していた。その姿に涙していたのだが、今、目の前のステージ立って、変わらない眼差しで私たちを見つめていた。

この曲の振付は、独特というか有り体に言えば少しなのだが、「面白い動きをしているから」ではなく「きちんと動ける人が意図をもってヘンテコな動きをしている」という、インターネット風に言うと”無駄に洗練された無駄のない無駄な動き”みたいな面白さがあった。しかし、それを道夫さんがいたって真面目にやっていること、それが逆に真摯な想いの裏づけであることを、私たちはこれまでの積み重ねで知っている。道夫さんが良しとしているなら、私はそれを全身で受け止めるだけだ。もちろん変な部分だけではなくかっこいい振付もあるので、その絶妙な融合加減が正にS.E.Mというユニットの本質に通ずるのだなと私は感じた。

 

3人のソロが終わり、次は何が来るんだろう……とざわついているその時、またもや会場は驚きと大歓声に包まれた。

 

M7 Study Equal Magic!(DRAMATIC STARS ver.)

ここでライブの前にも予告されていた、楽曲交換枠が来た!ドラスタが『S=M』をやるだろうということは、なんとなく連動ストーリーやパンフレット(ライブとの交錯具合と情報量がとてつもないので、該当Pやファンは絶対に読んだ方がいい)で確信してはいたものの、実際に始まると面白すぎて圧倒されてしまった。ポップアップで出てくるなんて聞いてないよ!こういうアイドルっぽい演出、どんどんやってほしい。

連動ストーリーではこの曲に苦労している姿をたくさん見たし、何より3人がS.E.Mのパフォーマンスとそこに込める意味をすごく大切に扱ってくれているのを知っていたので、普段ドラスタがやらないようなダンスと動きを見て、ありがとう……と胸がいっぱいになった。それはそれとしてS.E.Mの振付をする桜庭薫、面白すぎる。

要所要所に楽曲を交換した意味が散りばめられていて、「錬金術知ってっか~~♪♪」という薫の美声、《”Wing” ほら 飛べるさ!》が上手いこと翼のパートになっていたり、人文字が”S・T・K”と3人の名前の頭文字になっていたり(歌詞はそのままなので蟹・ウニ・Takoの画像みたいになっていた)、オレンジ色のタケノコが一面に生える光景だったり。ただ歌うだけではない、このファンコンライブをやる意味が生まれていたのがとても良かったと思う。

あと、改めて思ったのが声出しできることの嬉しさ!私は315プロのことをコロナ禍で知ったので、声出しの現場には行ったことがなかった。こういう盛り上げ曲でコールできるのが楽しすぎたし、知らなかったコールのセオリーにびっくりしたりもして、新鮮な気持ちで『S=M』を楽しめた。曲に思い出が乗っかって更に好きになれることがライブの醍醐味だとも思うので、また一つ宝物が増えたなぁとジーンとしていた。

 

MC②

ドラスタの3人がそのまま出てきて、曲の交換について話し始める。こういうMCの時の、「あの時ちょっと苦労したんだよな~!」という、「ちょっと苦労した」の内容を、連動ストーリーを見ていると全て知ることができる。それを聞いた時に、「ああ、あの時は大変だったよね」という”見ていた側=Pとしての立場”になれるのが、うまいことできているなぁと私は感じた。逆にストーリーを見ないでライブを見たときに違和感を感じない程度の情報の出し方の塩梅が非常にバランスがいいなとも思った。

 

M8 約束はドリーミングフライト(Short ver.)

次のソロメドレーのトップバッターは翼。新鮮に、翼って……足長!スタイル良!背高!それでいて……めちゃくちゃ可愛いなぁ!!!という気持ちになった。あの、脚を斜めにピーンて伸ばしてターンするところ、妖精みたいだった。ここまで目の前のアイドルの動きに全力集中していた私は、ドラスタのターンになったことでやっと上のモニターの存在に着目することができ(遅すぎる)、飛行機雲がsmileになっててかわいいね、などと思う余裕があった。

曲の最後の方ではなんと薫が出てきて、記憶がどんどん上書きされていた私は新鮮に「薫だ!!!」と思った。ファンコンライブは目の前でいろいろなことが起こりすぎていちいち覚えていられないのだ。いやもう……桜庭薫さんってこんなダンスもしてくれるんですか?とあまりの可愛らしさに会場も大いに沸き立つ。アイドルとして完璧な仕事をこなす薫の姿に、そうかこの人は、常に全力なんだ……と改めて実感した。

 

M9 Because(Short ver.)

MVが公開されてからたくさん話題になっていたけど、あの桜庭薫のパフォーマンスを見た後に改めて聞く『Because』という曲は本当に素晴らしかった。《完璧な輝きを届けてみせるから 受け取ってほしい 僕のすべてを今込めて歌おう今…》という言葉に込められたものが、すべて本物であることを知った。

ライブ会場で聴く薫の歌声は本当に凛としていて力強く、歌の上手さが際立っていた。クールなだけではない熱量の籠ったパフォーマンスに、ペンライトを振る手にも力が入る。そして、順番的にわかってはいたことなのだが、曲の終盤では輝が出てきて……薫と輝が一緒に……?!と遅れて衝撃がやってきた。ここでもまた”現実”に驚いたのだが、輝の方がダンスが速い!!ずれているというわけではなく、薫とはリズムの取り方が違うというか、キビキビと元気に動くので全然違ったパフォーマンスに見える。”ダンスの上手さゆえに振りが速く見える”というのは、私が普段行っているテニミュ等の生身の人間が演じる舞台でもよく見る光景だったので、より”存在”の濃度が上がって脳みそが喜んだ。

 

M10  THE FIRST STAR(Short ver.)

ソロメドレーの最後を飾るのは、輝。なんかもう、ファンコンライブの初回にドラスタがいてよかった……としみじみ思った。安心感というか、ホッとする。輝の放つ明るさとパワーを真正面から浴びることが、これだけ自分に元気をくれるのだということがわかっただけで、ここにいる価値が高まる。みんな色々な想いを抱えて今日という日を迎えたのだと思う。だけどそれは、紛れもなく”いい日”となった。

 

M11  DRAMATIC NONFICTION(S.E.M ver.)

楽曲交換で、S.E.Mがやるなら『ドラノン』がいいな~とずっと思っていたのが実現した喜びと、最初のポーズが思いっきりS.E.Mナイズされていたおかしさで叫んでしまった。というか特殊イントロになっていて、ファンコンライブってこんなことまでしてくれるんですか?!と気合の入り方に驚いた。ドラスタの曲のなかでも割とシリアス寄りの楽曲だし、編曲の雰囲気もS.E.Mに合ってるだろうなと思ってはいたけど、正に大正解だった。

今回のメンバーはキャストも言っていたように、全員が”大人”。ドラスタとは形が違えども、それぞれの人生を歩んできた人たちによって新しく色づけされたドラノンはめちゃめちゃカッコよかった。おもしろいもカッコいいも楽しいも可愛いもできる、S.E.Mが好きでよかった………と改めて思ったし、ドラスタさん曲を貸してくれてありがとう……となった。ドラスタの『S=M』が新境地の開拓ならば、S.E.Mの『ドラノン』は魅力の再認識といったところか。

 

MC③

それぞれのソロ~楽曲交換パートも終わり、健闘を称えあう6人。この辺で確か輝と次郎がお酒を飲みに行った話をしていて、「お酒おいしかったよね~」みたいなリアクションを2人でしているところで、また脳が破壊された。この”誰かのリアクションに誰かが反応して動く”みたいなのがノンストップで押し寄せてくることのすごさに、最後まで全然耐えられなかった。とか思っていたら、類が「みんなでやりたいことがあるんだけど…」と言い出して、コーレスの練習が始まった。315プロのアイドルと、コーレスできている……リアルタイムで……!!!という感動があった。「俺たちのライブに初めて来たよ〜って人〜!」という問いかけがあったが、それを聞くってことは…このライブが初めてじゃない人がいるってこと?!羨ましすぎる!!と思った。

ライブもいよいよラストスパートとなり、終わらないでくれ~~!!と早く次の曲も聴かせてくれ~~~!!が同時に押し寄せた。ここまで約60分くらいなのに、信じられない密度である。

 

M12  Multiple Entertainment Show!

ここでMVも披露された最新ユニ曲の『MES』が来た。あのMVの出来が本当~~~~~に良すぎて、私はこれを書いている今現在でも毎日毎日見ている。(良すぎるので貼っておく)

www.youtube.com

タイミングが良かったのもあってか、イントロで歓声が起こる。今回S.E.Mがユニットとして披露したのはまだ『∞ Possibilities』だけなので、十八番である「カッコよさと面白さの融合」みたいな曲も見れるのが嬉しかった。これまでソロで見てきた3人の違いが、一緒に踊るとよりわかりやすかったし、『∞ Possibilities』がスタイリッシュ寄りだったのに対して、めちゃめちゃハードに踊っていた。熱くて、まっすぐで、ちょっとコミカルでユニークで、カッコいい。私の思い描いていたS.E.Mのステージがそこにはあった。あのMVも、本当にS.E.Mのステージの様子をそのまま映し出してくれたんだなと思えたし、自分が初めてアニメで『S=M』を見たときのとてつもない衝撃と感動に似た、原始的な感情を思い出していた。そして改めて舞田類のダンスに魅了されていた……本当にカッコよくてチャーミングで、いいんですか?こんなに素敵なアイドルを好きでいられて……と嬉しくなった。

 

M13  Change to Chance

www.youtube.com

ドラスタも素晴らしいMVが配信されましたね。冒頭のスタセレと比べて、こちらは逆にシリアスなカッコよさを前面的に押し出した曲で、ドラスタの大人な魅力全開のステージを見ることができた。連動ストーリーでもS.E.Mが評価していたように、ドラスタの魅力は、人間としての個性はバラバラでも、個々の能力値が高く、ステージ上では息の合ったパフォーマンスを披露できるというところにあると私も思っている。実際にライブを見ることで、その説得力がひしひしと感じられた。やっぱりドラスタって本当にカッコいい……。

 

MC④

私は連動ストーリーで舞田が薫に懐いていたのがめちゃくちゃ好きだったのだが、ここでもミスターさくらばに絡みまくって邪険にされているのが見れて大喜びしてしまった。冒頭で輝も「俺と類をそういう目で見るな~!」みたいなこと言ってたけど、薫の舞田の扱いってそうなんだ……(笑顔)という発見があった。「俺たちもうすっかりfriends!だよね☆」と言われ「……勝手にしろ」と言う薫にフゥ~~~と茶化しの声が上がる。ありがとう、ファンコンライブBP。

「次が最後の曲だ」と言われ、お約束の「ええ~~~!!!」が飛び出る客席。本当に終わってほしくなくて私は既に泣きそうだった。次はいよいよ今回のために作られた合同曲。コールもやってね~!とのお達しにワクワクが止まらなくなる。

 

M14  Dramatic Anthem

 

試聴が来たときから、いい感じの曲だ~とは思っていたが、実際にライブで聴くとめちゃくちゃカッコよかった。今回のテーマである”知的さ”をモチーフとした、スタイリッシュで大人なアレンジになっていて、どちらのユニットの雰囲気にも合っていた。後に発表されたがCDシリーズになるようなので、後続のユニ曲もすごく楽しみ。

今気づいたんだけど、後半になるにつれて楽しすぎたのかどんどん記憶が曖昧になっていってる。こんなことになるイベントは本当に久しぶりかもしれない。

 

曲が終わり、みんなが挨拶をしながら捌けていく。舞田は最後の最後まで愛嬌たっぷりでかわいいなぁ……と思っていたら一番最後に捌ける次郎が投げキッスしてきてうわ!!!!!!になった。ずるい、山下次郎って本当に……ずるい。心得ている。(配信に載っていないらしい、残念…)

はぁ、すごいもの見たな……と放心する暇もなく、アンコールの掛け声が始まる。あらゆるライブでのアンコールって、半ば形骸化しがちなものというか、「出てきてくれるよね」という確信の下で行われることが多いとは思うんだけど、私はこの何もかもが初めてのファンコンライブで、「このまま本当に終わったらどうしよう…!!!いやだ!!!」と思いながら、一生懸命コールしていた。こんなに必死に、本気で終わって欲しくなくて、祈るような気持ちでアンコールをしたのはいつぶりだろうと思った。そのくらい、みんなと離れるのが嫌だった。

 

程なくして、画面横のモニターに何やら楽屋前の廊下のような映像が映り、次郎が出てきた!こんなに呼んでくれてアリガトね~的なことを言いながら、みんなが次々向かってくる。すごい。本当に私たちの声援が聞こえてるんだ………と本気で思えて、感動した。ファンコンライブはこんな風に「すごい歓声だねぇ」とか「みんなの声が聴けて嬉しいぜ!」みたいな、”こちら側のリアクションを想定して進んでいく”という場面が随所にあったのだが、それが客席の空気感と全く齟齬を起こさずに最後までやり切ったのが本当にすごいと思った。まるでリアルタイムなアイドル達の言葉で叫んだり、笑っているかのような。その想定が少しでもずれると違和感が生まれ、実在性がガラガラと崩れる危険性もあるが、ファンコンライブにはそれが全然無かったことも、心の底から没入できた要因だと思う。タイミングは忘れたが次郎が「そこ~!笑わないの!」みたいに客席に絡んでいたのもめちゃくちゃ良くて、脳がドロドロドロ……になった。

最後に輝が「今、会いに行くぜ!」って言ってくれたの、め~~~~っちゃ嬉しかったし、来てくれるんだ~~~(涙)(涙)になって最高だった。心からアンコールしてよかった。

 

M15  DRIVE A LIVE(アンコール)

最後はやっぱりこの曲だよな!という締めのドアラ。ここまでカウントダウンからパンフから何もかも徹底して「315世界のアイドル達によるファン向けライブ(コンテンツそのものやPの存在はどこにも出てこない)」という体を貫いていたからか、「SideMって呼称がいきなり出てくる」みたいな話も目にしたけど、私はもうこの空間が幸せすぎてなんか、細かいことはどうでもよくなってしまっていた。実家のテニミュでも思いっきり作中で「テニスの王子様」って言ってるし……みたいな……あんま気にならなかったかも。ファンコンライブでも、そうじゃない形式のライブがあったとしても、これはこういうもの!ってなっていくかもしれない。私はずっとドアラを歌い続けてほしい。

ドアラではもう怒涛のファンサービスが巻き起こり、受け止めるだけで精一杯だった。可愛いメンタル二人、薫に寄りかかる次郎(めっちゃいい)、背中合わせのリーダー。こうしてみると、ドラスタとS.E.Mってめっちゃ相性良かったんだな~と改めて実感した。愛嬌と明るい人柄の二人、歌が上手くて理知的な二人、みんなの柱になるリーダー。この2ユニットのライブが見れて、本当に本当に幸せだった。

オレンジとピンクの銀テープまで発射されて、2階席だったのでああ~~~欲しかった~~!!と思っていたのだが、帰り道で優しいPさん(ファンの方かも)が「ここに置いておきます!」ってガサっと置いてくれたものをありがたく一本ずつ頂戴した。

 

曲が終わり、みんなが一言ずつお礼を言って捌けていく。その時に、舞田が「またすぐに会えるよ!」と言ったのを聴いて、私は心が汚れた大人なので、「嘘だ……」と思ってしまった。この時は。なんて優しい嘘をついてくれるんだろう、きっともうこんな機会ないかもしれないのに……と、類が悲しませないようにしてくれている(と思い込んでいた)ことが逆にすごくすごく寂しくて、ちょっと泣いてしまった。

最後に、輝が捌ける前にしたのが、手を振るでもなく決めポーズでもなく、”深いお辞儀”だったのがすっごく良くて……28歳の、社会を経験している、責任や感謝を知っている人だ……ということが伝わってきて、感動してしまった。天道輝の魅力がぎゅっと詰まっていた。

 

輝が捌け、終わってしまった~~でもすごく楽しかった~~!的な空気が流れている客席に対し、間髪入れずに315プロから情報の波が押し寄せる。

先ほど、舞田は「またすぐに会えるよ☆」と言ってくれた。完全に、優しい嘘だと思っていた。

11月に追加公演があるなんて!!!!!

私は本当に反省した。よりにもよって、大好きな担当が言った言葉を一瞬でも信じなかった自分に腹が立った。本当にごめんなさい。でも本当に嬉しい。本当にまた会える。絶対チケット取って、会いに行こう。

新曲は新CDシリーズとして出るし、ファンコンライブの第2弾も開催が決定し会場は狂喜乱舞状態に。彩×アルテ、レジェ×クラファなんて絶対楽しいし絶対見たい!!!今日この場に居合わせた人、そして配信で見た人のほとんどが、開演前まで抱えていた不安感は払拭されたことだろう。私は、ファンコンライブを絶対に完走してほしいし、なんなら最終的に全ユニ揃ってでっかいライブやってほしい。でっかいモニターのある会場で。

最後の最後まで”存在”してくれてて本当に最高だった。

 

☆総括

ここまで読んでいただいた方には伝わっているかと思うが、私は今回のライブに行って本当によかったと思っている。ここまでSideMが歩んできた道があり、様々な展開を積み重ねてきた中で、関わり方も人それぞれで、2000人いれば2000通りの思いがあったと思う。最初はもちろん不安もあった。モデルに馴染めなかったらどうしよう、何らかの違和感があって、逆に”現実ではないこと”を突き付けられて、楽しめなかったらどうしよう…とか、いろいろ考えていた。そんなことは一切無かった。

私個人の思いとしては、このライブで起きたこと全て、ステージに立っているアイドルの声が、ダンスが、仕草のひとつひとつが、アイドルの姿で、想像ではなく本物の記憶として自分の中にあることが、ただひたすらに嬉しい。そんな風に思っている。

システム的な話をしてしまうと、背景が真っ黒なのは寂しいな~とか配信映像明るくならないかな〜とかもっと演出豪華になるといいな~とかはあるけど、今後変わっていくかもしれないし、追加公演でどんな風に変わるのかも楽しみ。初回であの盛り上がり方ができたのは本当にすごいし、開演前の独特の一体感を共有できてよかったな〜と思う。

会場の空気感も本当に素晴らしくて、あの場に居合わせたことはずっときらきらの宝物になるんだろうなと思う。DRAMATIC STARSもS.E.Mも、確かにそこにいた。ずっと見たかった景色を見ることができた。初めての試みを大成功に導いた2ユニットと、熱量を込めてステージを作り上げてくれたスタッフさんに心から労いと称賛と感謝の気持ちを伝えたい。いっぱいアンケートを書こう。

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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ポルノグラフィティ 12thアルバム『暁』全曲感想

2022年8月3日にリリースされた、約5年ぶりとなるニューアルバム『暁』。全ての作詞を新藤晴一が行い、岡野昭仁はより歌へのアプローチを深め、アレンジャーと共作の曲を作り出すなど、これまでにない試みを取り入れた全く新しい作品となった。「ファンにフォーカスしたアルバムにしたい」「新規の方々が少しでもザワザワしてくれるものを」と言う彼らが届けてくれたのは、紛うことなき傑作だった。

 

 

1.暁
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁tasuku 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

ポルノの得意とする、アップテンポでマイナー調のシリアスな曲。これがシングルではなくタイアップすらついていない、アルバムのための曲であることに驚きを隠せない。

タイトルのイメージから、なんとなく暗めのミドルテンポで壮大な感じの曲を想像していたら、全然違った。めちゃくちゃカッコいいポルノだった。こういうタイプの曲を「ポルノっぽい」と自認してくれているのが、ファンとしてはすごく嬉しい。

作曲は、昭仁とtasukuさんの合作という珍しい形態。今回、「トラックを先にアレンジャーに作ってもらって、後からメロディを乗せる」という方式で作った曲が何曲かあって、そのやり方が結構良かったので採用したとのこと。リクエストしたとはいえ、tasukuさんの引き出しにある“マイナー調のカッコいいポルノ”でこれが出てきたのがまた嬉しい。『THE DAY』の進化形って感じがする。

「全体的に明るい雰囲気ではない」と2人が言うとおり、確かに今作は弾けたパーティーチューンやワイワイ盛り上がるような曲は無いかもしれない。ただ、冒頭に置かれたこの『暁』を聴けば、単に「暗いアルバムだな」という評価を下すことには、まずならないだろう。逆境に置かれてこそ鋭く閃光を放つ、カウンターパンチのような曲である。

作詞の面では、晴一が韻を意識して作ったとのことで、確かに大量に散りばめてある。個人的に、韻って、やりすぎると小手先の技術による「加工」っぽさが洒落臭くなって好きじゃなかったりするんだけど、これはそうならないギリギリを攻めているんじゃないかなと思う。「共犯者」と「乱反射」で踏んでるとこが、言葉の雰囲気も加味して好き。

「暁」という言葉の意味を二人が統一してイメージしていなかったのが面白いなと思った。そんなことある?「まぁ、明けていくことに変わりはないんで」という言葉通り、最終的な方向性が同じだからそういうスタンスでいれるんだろうなとも思う。

 

2.カメレオン・レンズ
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:篤志PORNOGRAFFITTI

発売当時は「なんだこの曲?!すごすぎる…」ってなって、その後1年くらいずっとなんだこの曲?!って言ってた気がするけど、さすがにもう馴染んだな。こういうEDMというかリズム主体のエレクトロに振り切った曲をポルノも頻繁に作るようになったし、特にこのアルバムにはそういう曲も多いので、通しで聞いたときの空気感が合ってる。でも、改めてこういう曲がシングルにあるのはすごく嬉しいし、楽曲の完成度が高すぎる。

「UNFADED」ツアーでの演出がすごすぎて、あれを超えられるのか…と思うけど、意外とサラッとやるのかなぁ。でもこういう曲がセトリに入っているとものすごくアクセントになるし、期待したいところ。やるよね?ツアーで…。お願いします。

 

3.テーマソング
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:立崎優介、田中ユウスケ、PORNOGRAFFITTI

アルバムの中にあったら浮くかなぁと思っていたけど意外とそうでもなかった。ただ、アルバム全体のバランスとかをガン無視すると、これが『REUNION』だったらなぁ…もっと最強になったのに…とはどうしても思ってしまう。これは個人の好みの問題…。

昭仁が「続」ツアーで言っていたように、いつかみんなで声を出せるようになった時のための曲というテーマに沿うなら、「暁」ツアーではやらない気がする。同じくだりを繰り返すことになるし。

 

4.悪霊少女
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:江口亮PORNOGRAFFITTI Strings Arrangement:江口亮、友野美里

タイトルが出た時点でかなり期待されていた曲だと思うが、個人的にはその期待を全く裏切っていない名曲だと思う。もっと重厚な暗い雰囲気の曲かと思っていたら、アップテンポな暗めのロックチューンで紡がれる恋の歌だった。短いイントロだが、真っ逆さまに落ちていくような不気味さと没入感があり、歌詞は晴一の得意とする物語調の世界観で、また新しい切り口が生まれたなという感じ。

様子がおかしくなっている人に対して「悪霊が憑いている」という見方をするのは、少し昔の話なのかな~という印象もあり。少女に対する父と母のリアクションの違いも面白い。《我らは戦士 戦うの 生涯をかけても》と言う母親が勇ましすぎやしないか?と思ったが、少女のように恋わずらいに対して抗わなければいけなかった時があったのかもしれない。

暗黒の館には決して
足を踏み入れてはならない
出口には錠が落とされて
呪いの儀式で身を焼かれる

これだけ見て、恋の曲だとは誰も思うまい。禁断の恋に落ちて前後不覚になる比喩のようでもあり、もしかしたら本当に相手も吸血鬼や悪魔なのかも…と思わせるようなダークファンタジーっぽさもあり。《生温かい泥のような甘美の夢》なんて歌詞も出てきたりするけど、晴一も何度か言っているように、ともすれば背徳感すら滲む表現を、昭仁の歌声によって過剰に湿った印象にならず、キャッチーに聴けるのは強みだなぁと思う。

キャッチーとは言ったものの、Aメロの背後から忍び寄るような低音は初めて聴いた時にゾクゾクしたし、サビの最後のフレーズをファルセットで伸ばしてきたのは「そう来たか!」と思った。特に2番サビの「逃れられない」は、まるでライブの時のようなロングトーンで驚いた。岡野昭仁は一体どこまで新境地を見せてくれるのだろうか。これ本当に生で聴けたらすごいことだぞ…。

間奏で3拍子になるのも、おとぎ話風のアレンジで更に深く物語の世界へと誘われるような気持ちになるし、歌うようなギターソロもカッコいい。展開も面白くて短くて聴きやすいし、めちゃくちゃ好き。

 

5.Zombies are standing out
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

これツアーでやらない理由ある?無いよね?頼むよ。これも「UNFADED」ツアーのイメージが強いけど、夏フェスでやったりドームでもやったりして、こういうゴリゴリのヘヴィロックがファンにもきちんと求められていることがわかっていると思うので、今回のツアーで外すわけないと信じている。アンフェ初日の『Zombies~』が始まった時の割れるような歓声が本当にすごかった……。あの演出でこれ出されたら、そりゃああなる。それだけのパワーがある曲だと思う。

 

6.ナンバー
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:トオミヨウ、PORNOGRAFFITTI

曲調は、「続」ツアーで披露された(仮)バージョンとほとんど変わらず、ストリングスとバンド演奏が融合した、ポルノが得意とするタイプのロックナンバー。本人たちも言っているように、UKロックの雰囲気を主体としているとのこと。少し乾いた感じの、洋風?洋楽?的な空気を醸している。

昭仁のベタ~っと引きずるような、ザラついた歌い方はけっこう珍しく、印象的。その影響で、曲からもどこか退廃的な印象を受ける。しかし、湿った感じの表現をしても重くなりすぎず、カラッとして聞こえるのは声質のなせる技である。

詞は、正に新藤晴一の得意とする、「全然わかんないけど、とにかく世界観に引き込まれる」タイプのやつ。『ナンバー』は穏やかな曲調と相まって、どこかメルヘンチックでありつつ、その裏に潜む不安と違和感が見え隠れし、ある種の怖さすら覚える。

個人的な感覚としては……この曲でキーになるのは「数字」と「満ちる・欠ける」ことであり、その「満ち欠け」とは、「月」を指すのではないかと考えている。現実世界では、時間や月日といった「数字」に囚われて生きている人間も、元は日の出や星の動き、月の形に従って、自然の成り行くまま生きていた。主人公は何らかのきっかけで「数字」を失い、しがらみから解放される。それと同時に、今まで築いてきた生活や「君」をも失うことになる。最初は寂しいと思っていたけれど、段々と元の生活を忘れていく。《数えるのではなく満ちる(欠ける)が合図》であり、行雲流水、無為自然、流るるままに生きることしかできなくなっても、どちらにせよ《Life goes on》なのだと締めくくられる。2番には『胡蝶の夢』のエッセンスを感じ取れる部分もあり、夢か現実か曖昧になってしまった人の曲であるような気もしてくる。

長々と書いたが、これが正解とも思わないし、別にすべてを理解できなくても良い。「考えなくとも、感じる」ことができる楽曲が存在するのも、ポルノの魅力の一つである。ツアー最終日の(仮)バージョンで披露された時は、下手したら『メビウス』より怖がられていたんじゃないかという難解さだったけど、それより幾分かマイルドになったイメージがある。もちろん、すべてを理解しているわけでは全く無いが…。

 

7.バトロワ・ゲームズ
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁、トオミヨウ 編曲:トオミヨウ、PORNOGRAFFITTI

トオミ節全開の曲。『ナンバー』もトオミさんなことを考えると、なんでもできる人なんだなぁと思うけど、ポルノにおいてのトオミ編曲のイメージはこっちかな。とにかく音使いが気持ちよくて自然とノれるけど、どこか緊迫した雰囲気もあるカッコいい曲。

裏テーマとかを感じさせないくらいに、ストレートにFPSゲームに熱中する人の曲だな~という感じなんだけど、この曲の昭仁の歌い方が気持ちよすぎるので、メロディで聴く曲だと思ってる。《常にヘッショを狙われて こっちもヘッショを狙ってる》の文章のモタつき感はもっとどうにかならんかったのかと思うけど、若者言葉的な口語体をイメージしていると落とし込んだ。とにかく、音使いもボーカルも歌詞の乗せ方も全部気持ちいい。サザンの桑田さんとかがやる、日本語をあえて英語に聞こえるようにダラッと歌う感じが新しい。1サビの「まぁーだのーぅわ」の歌い方とか「濃いめのドーパミンに酔って」のファルセットも、「バァァァァァ!!!!トロワ・ゲーィムーズ…」も、こっちのドーパミンが垂れ流しになるわという勢い。

『暁』と同じくアレンジャーにトラックを投げてもらってできた曲とのこと。昭仁はこの作り方を気に入ったっぽいので、今後もどんな楽曲が飛び出してくるのか物凄く楽しみ。OPにPS2の起動音が使われているのはレーベルがSONYだからか。

 

8.メビウス
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

初披露された瞬間から話題作。ツアーで披露された(仮)バージョンから少し歌詞が変更されたが、こちらは曲のアレンジそのものも大きく変わっている。ライブの時の無骨なバンドアレンジが非常にカッコよかったので、初めはなんだこれ?!になったんだけど、ずっと聴いていたら割と好きになった。オシャレかつ浮遊感のあるループミュージックになったが、曲のコンセプトにざっくり言うと「意識朦朧」というイメージがあるというのを読むとかなり納得できた。そう言われると、この前後不覚な、霞がかった、水の中で溺れている時の意識のようなアレンジなのもわかる。昭仁ってこういうワンコードで進むみたいなやつけっこう好きだよね。

で、それに伴って問題の歌詞がひらがなという点で、私はライブ時には「子ども」をイメージしてたんだけど、もう少し年齢が上なのかな?と思うようになった。拙さというよりは前述の「朦朧」の方なんだなと。にしても不気味なことに変わりないが…。なんかあらゆる創作において見つかったらバズりそうだなと思っている。

 

9.You are my Queen
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

箸休め。と言っても、これはこれで存在感があって意外と嫌いじゃない曲。最初に聴いた時は、なんとなく題材が「晴一版『スパイス』か?」と思ってしまい気乗りしてなかった。『スパイス』があんま好きじゃないので…。まぁでもこちらの書き手は新藤晴一だしな…と思って何回か聴いてると、アレンジも含めて悪くないなと楽しく聴けるようになった。

晴一的には、二人が誰とか関係なく「こういう関係性があったら素敵だよね」というニュアンスの曲らしいが、私はこの曲の登場人物を“親子”だと最初から思っていて。小さな可愛らしい娘に対して「レディ」とか「クイーン」とか気取った呼び方をしておどけているじゃれ合いの曲なのかなと。《君の前にひざまずいて その手の甲にキスするよ》も、相手が小さい女の子だからそういう表現になっているのかなぁとか。《象の背に乗った君を》あたりからは、絵本のような、子どもが見る夢のようなファンタジックな世界観で、カラフルだなぁと思う。クレパスで描いた絵のようなイメージ。

でも、最後のワンフレーズ《永遠にあなたに仕えましょう》が、娘だとすると果たしてそうなるか?とは思うけど、離れても親子の関係は変わらないだろうから、いつまでもワガママを許してしまう父親、みたいなニュアンスなのかな。

ただ、この曲で印象的なのが「レコード針の音」である。イントロと間奏で聞こえてくるこの音がどのような意味なのか、もしかしたらすごく遠い昔を思い出してるみたいなイメージもあるのかなとか。間奏の微妙な“間”が若干不安になるのは私だけだろうか。多分そこまで意味深な演出ではないとは思うけど。

 

10.フラワー
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:篤志PORNOGRAFFITTI

壮大なバラード。こんな“宇宙”みたいな感じだっけ…?と思って、過去に配信された原曲と聞き比べたけど、デジタルだったのがCD音源になったおかげで音質がクリアになり、なんとなく広がりのある感じに聞こえていただけっぽい。特にミックスとかに変更は無さそう。昔あった『アゲハ蝶』とか『渦』みたいな、アルバム用のリミックスってあんまり無くなったよね。『2012Spark』が最後?たまにはそういう枠も復活したら面白いかも。

テーマもハッキリしてるので、ツアーでの扱いは難しいところだと思うけど、曲の雰囲気も考えると後述の『証言』とかもあるし、今回は入らないんじゃないかな?と思う。どっしりしたスローバラードって何曲もやるもんじゃないし。

 

11.ブレス
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

優しいギターの音色と、それを引き立てる打ち込みのリズム、爽やかで力強く伸びやかなボーカルと、押し付けがましくない、でも突き放すわけでもない、そっと背中を押すだけの絶妙な言葉選びのマッチングなど、ポルノが得意とする方向のメッセージソングらしさが詰まった曲。しまなみロマポルと、ポケモン映画タイアップの思い出がぎゅっと詰まっているので、無条件で泣けてしまう曲。そうでなくても曲自体が本当に良いので、ぜひともツアー固定曲になってほしいところ。『ギフト』的なポジションになってくれそう。セトリの最後に置いてもいいくらいだけど、リリースから期間空いてるしなぁ…という。本人たちがどう思ってるのかはわからないけど。

 

12.クラウド
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:宗本康兵、PORNOGRAFFITTI

正直最初に聴いた時は「まぁ、1曲はこういう“スーッ”のやつも入ってきちゃうよね。」と思っていた。が、サビの「燃えるような 夕陽だけが」「が↑↑↑」のファルセットを聴いた瞬間、嘘でしょ?!になり飛び起きた。全体のメロディがすごく綺麗だし、Aメロの投げやりな歌い方から段々ギアを上げてくるのも面白いし、サビは本当に泣いているのか?と思うくらいの切ない声色と、対比した明るいメロディが余計に哀しさを帯びている曲で、これはやられたなぁ……と何回か聴いて心に染みる羽目になった。

晴一って『空が青すぎて』とかもそうだけど、悲しい出来事をメジャー調で書くと余計哀しい、みたいなのが好きなイメージがある。なんというか、《泣きたくなるほどの青さ》を曲にすると、こういうメロディになるのかなぁという感じ。普通、空が青けりゃ嬉しいもんだけど、自分の心はそうではないよ、でもそんなの関係なく、どうしようもなく空は綺麗で、心の置き所がなくて切ないね、みたいな。

アレンジャーが付き合いの長い康兵さんなだけあって、すごく自然な仕上がり。昭仁の特徴である、語尾のフォールを活かすディレクション、ストリングスの入ったバンドサウンド、というポピュラーな「ポルノっぽさ」を汲み取ってくれているので聴きやすい。キラキラしたサウンドに乗ったドラマチックなメロディと切ない歌詞が、このまま何かしらの映画の主題歌になっても良さそうなくらいにマッチしている。

 

13.ジルダ
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

煌びやかでラグジュアリー、ちょうど良く気だるげな甘さを感じる、ポルノ流シティー・ポップといった雰囲気のオシャレな曲。メロディからストーリーや情景が浮かんできやすい、ベルベットの赤!シャンデリアのゴールド!という感じ。こういう、ジャズ、ソウルチックな、揺らした感じの曲はあんまり無いので新鮮さもあるが、これもポルノだな〜と思わせる説得力と魅力がある。

それにしても……この曲に出てくる主人公の男は、まぁ、私に言わせると「人の話を聞かない頭お花畑のいけ好かないキザナンパ野郎」なので、9割がた「何言ってんだコイツ」という気持ちにはなる。本当にただひたすらコイツの頭の中で話が進んでいくので、軽く恐怖すら覚える。ポルノの(主に新藤晴一の)世界にはたまに出てくるタイプの人だが、中でも相当にヤバいと思う(※個人の見解です)。1番終わりでこの曲の意味するところを察して、文字通りジタバタしながら聞いていた。彼氏いる女の子を連れ出そうとすな!友人の牽制をスルーすな!ウインクすな!仕事仲間を脇役とか呼ぶな!急にアインシュタインを持ち出すな!カレンダーの余白を虹色にすな!なんだこいつ。ジルダさんは小粋なオペラジョーク(笑)でコロッと転がされる女性ではないと思いたい。正気を保っててほしい。まず恋人がいるのに別の男について行くという破滅的な倫理観が私には無いので、コイツの行為を、物語の結末をどう捉えるかは、人によると思う。

曲中に出てくる「オーチャード」とは、十中八九、渋谷のオーチャードホールのことであろう。もしかしたら、そこにコイツと誑かされた女の子のストーリーがあるかもしれない。結局「マグリオット」って何なんですか?教えてください新藤先生。あまりに男のことが理解出来なすぎて、気がつけば『ジルダ』のことばかり考えていた時もあったので、夢中にさせられてるのは自分だったってオチなんですか?腹が立ちますね…。

しかしながら、長々と書いた歌詞の共感性の有無を丸ごと差し引いても、岡野昭仁の歌声がとにかく素晴らしすぎて、まるでロマンティックで上品なラブストーリーを見ているような気持ちになるのが不思議だ。散々言ってるけど、昭仁の歌声は、声色による緩急のつけ方、表情の豊かさなど、何を取っても“最強”になっているので、『ジルダ』においても異常なくらいのグルーヴを生んでいる。Aメロのオク上で被せるコーラス、「土曜の夜にオペラへ」のファルセット、「オーチャードでSee you」の音ハメの気持ちよさ。シルクのような肌触りと、古いランプのようなボヤけたあたたかみのあるオレンジ色。曲が、詞が、歌声が全てのシーンを作り出している。最後まで聴けば、まるで映画のワンシーンをそのまま切り取ったような満足感に、いつの間にか虜になっている。そんな曲。

 

14.証言
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:江口亮PORNOGRAFFITTI Strings Arrangement:江口亮、友野美里

『暁』と合わせて先行配信された曲。

タイトルから、『鉄槌』などの系譜に近いシリアスな楽曲だと予想していた人も多かったが、その正体は、ストレートに愛を歌うロック・バラードだった。バラードと言いつつ、まるで一つの舞台のように目まぐるしく展開していく曲調は、5分15秒という長さを意識させない、疾走感すら感じさせる不思議な構成である。

《悪魔が黒い翼 羽ばたかせ飛び去った》から始まる出だしと共に、主人公の置かれている状況と、悲痛な叫びが伝わってくる。決して明るいとは言えない曲調だが、そのメロディは幻想的で美しく、ヨーロッパの霧深い森を連想させるようなドラマチックな音作りとなっている。

静かに語りかけるような冒頭から、ドラムパターンが徐々に変化することにより、曲のスピード感が生まれている。最初はただ悲しみに暮れ、ゆっくりと歩いている様子が、次第に何かに突き動かされるように、段々と歩みを早め、揺るぎない確信を胸に駆け出していく。靴も履かずに、裸足で、痛みと孤独を抱えながら、それでもただひたむきに、美しさすら感じさせるほどに、長い髪を振り乱して息を切らし続ける……そんな情景が浮かんでくる。

完璧なものなど この世にはないと言うのなら あの愛はそれを

覆した ほんの一瞬 たくさんの星が証言してくれるはず

偽りのない奇跡と

逆説的に、愛の不変性を説くこの「証言」という言葉の使い方に、ただ舌を巻く。そしてあえて文末に置かれた「はず」という言葉選びが、その希望の儚さをイメージさせる。灯火のような小さな光を、哀しみを帯びながらも全てを照らす太陽のような、力強い昭仁の声が高らかに歌い上げることで、この曲は生命の宿る地球のような絶妙なバランスを保つ。

一口に“バラード”と言うにはあまりに力強く、壮大で、揺るぎない。曲の雰囲気の根幹を担う、岡野昭仁によるメロディと歌声。そこに呼び寄せられるかのような、新藤晴一の手法としては珍しい、てらい無く“愛”を表現する言葉たち。ミニマムな世界を切り取ったようでいて、世界の全てを唄っているような錯覚さえ覚えるこの曲は、本当に大げさではなく“音楽である”としか言いようがないと私は思う。

 

15.VS
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:近藤隆史、田中ユウスケ、PORNOGRAFFITTI

ノスタルジックな煌めきと突き抜けた晴れやかさが共存する、アップテンポなロックチューン。東京ドームのメモリアルな印象がつきすぎてしまっているかな?と思ったけど、アルバムの並びで聴いても、最後の曲としてぴったり収まる良い曲だった。同じ理由でツアーでの扱いは難しくなるかもとか考えたけど、そういえばCYBERロマポルでもやってたし、サラッと清涼剤みたいなポジションで扱ってくれたら嬉しい。

東京ドームの『プッシュプレイ』リミックスが良すぎて、アウトロを聴くと毎回「アレッ?!」ってなる。スタジオ演奏動画(文章下)でも、CYBERロマポルでもこのアレンジだったので、これこそ”アルバムver.”でリミックスして出しちゃえば良かったのにと思わなくもない。逆に言えば、ツアーでどう化けるのか楽しみでもある。

www.youtube.com

 

「太陽が昇る前のほの暗い頃」、もしくは「夜明け前の空が少し明るくなり始める頃」を指す『暁』。時代によって意味が移り変わったとしても、夜明けに向かうという意味は変わらない。自分たちが置かれた立場による葛藤、音楽との向き合い方。様々なしがらみや、自問自答から解放されたと思われる2人が作り出す音楽は、これまでの楽曲と比べても、1曲1曲が放つ輝きの大きさがまるで違うことがわかる。「聴く人に希望を与えたい」という意味を持つこの『暁』を生み出した、ポルノグラフィティも今まさに「暁」を迎えているのだと、肌で感じることができた。

ファンとして、まず間違いなく最高傑作レベルだと断言することができる一枚だった。このアルバムを引っ下げて回る全国ツアーが、今から楽しみでならない。

【ライブレポ】17thライヴサーキット『続・ ポルノグラフィティ』

2019年9月の東京ドームライブを最後に、ひと休みをしていたポルノグラフィティ

20周年という節目を迎えるまで、ほぼノンストップで走り続けてきた彼らにも休息の時間が必要だろうと、その帰りを待ち続けていた。

そのタイミングで起きた、未曽有のパンデミック

それでも、2020年12月には配信ライブがあり、晴一はnoteの執筆や個人の舞台制作に向けて動き出し、2021年は昭仁のソロ活動の配信ライブが2回開催され、そしてポルノ名義で『THE FIRST TAKE』に出演しポルノ・リバイバル旋風を巻き起こすなど、できる限りで活動を続けていた。

同じ空間で出会えなくなってから約2年。2021年8月、彼らは突如として凱旋した。

 

 

「9月にシングル出るよ!」

「ツアーもやるよ!9月から始まるよ!先行がもう始まるよ!」

ポルノは別に活動休止ですとは言っていないので、そんな風に書かれている飛ばし記事とかを見るとイラっとしてしまうのだが、それでもあえて「新始動」と銘打って、エンジンをゴリゴリに吹かせていることを示してきたポルノグラフィティ

新曲が出ること自体は予想していたが、まさかアルバムも無しにツアーをやってくれるとは思っていなかったので、嬉しい反面驚きも大きかった。アルバム無しのツアーがいかに(こちらのメンタルが)大変なことになるかは、2018年の「UNFADED」ツアーのエントリーにて言及しているのでそちらを参照していただきたい。

 

ポルノグラフィティが帰ってくる。

新しいストーリーの続章を引っ提げて。

 

<参加公演>
2021.10.15 福岡サンパレス
2021.10.16 福岡サンパレス
2021.11.28 アイプラザ豊橋
2021.12.13 札幌文化芸術劇場hitaru
2021.12.14 札幌文化芸術劇場hitaru
2021.12.22 東京ガーデンシアター(ライブ配信

以上の公演の内容を織り交ぜて書いていきたいと思う。

 

☆ツアーコンセプト
2019年7月に発売された『VS』以降、新曲も主軸となるアルバムもリリースしていないということは、「アルバム、カップリングなどの全楽曲がセットリスト入り対象のツアーになる」ことが確約されていることは明らかだ。更に、ツアー前のラジオにて「今回はこういう状況で、キャパも狭くなるし席も少なくなる。そんな中でも一生懸命チケット取ってくれる子っていうのは、やっぱりコアな…俺より曲名を覚えてて、君(昭仁)より歌詞を覚えてるようなファンの人が多いと思うから。どっちかというとコア向けみたいな感じになると思う」という旨のことを晴一が話していたため、ハッキリと方向性が示されていた。
ちなみに私の選曲予想(希望)はこんな感じ

 

☆開演前~オープニング

会場に着き、客席扉から廊下にスモークが漏れ出ているのを見て、私は既に泣きそうになっていた(早すぎ)。ライブを楽しみに待つ人々のおしゃべりも無く、静かに時が流れる会場で、浮遊感のあるBGMが流れる。客席内を、ボイスストラップ屋さんが練り歩いていた。

(公式ツイッターより引用)

今回、歓声やコールは禁止のため、公式からこのような謎グッズが発売された。舞台などでは既に導入されているところもあるが、あらかじめ収録している音声や、自分で録音した声が鳴らせる代物だ。最も、私は曲間の名前呼びは普段から別にしていないので買わなかったが、周りにはちらほら持っている人がいた。初日から徐々に持っている人が増えたらしい。

(これは別に"チャレンジグッズ"ではなかったはずだが、結局本命のチャレンジグッズに関しては立ち消えになったっぽいので、実質これがそういうポジションになっていたような気がする。)

 

開演前のライブ会場内は、大騒ぎ出来ないささやかな興奮で満ちていた。

フッと、客電が落ちる。込み上げる気持ちをうっかり声に出さないよう、静かに、しかし逸る気持ちを抑えられずに立ち上がる人々。

鼓動のような一定のテンポでバスドラムが聴こえる。サポートメンバーが入ってくる。そして、ゆっくりと歩みを進め、ステージ中央へやってくる見慣れた二つの人影。スモークが焚かれた床はまるで雲の上のような神秘的な雰囲気を醸し出す。

飾り気のない、シンプルなオープニング。彼らは、ごく当たり前のようにそこにいた。特別な空間を作り出すために息を整えるのを、私はただ見つめていた。

 

M1 IT'S A NEW ERA

夜明けを待って さあ船を出そう

目指すのは 新世界

私のための 場所がそこにある

約束は果たされる

 

2人が直接会えなくても、声を、音楽を届けてくれていたことはもちろん知っている。

わかってはいても、頭では理解してはいても……それでも、2年ぶりに大好きな声が鼓膜を震わせた瞬間、涙があふれて止まらなかった。

やっと会えた。やっと同じ空気の中で時間を共有している。私は泣きじゃくっていた。隣の人も、タオルに顔を伏せて泣いていた。

 

私は『IT'S A NEW ERA』の歌詞が、無意味に何度も写経するほど好きだ。端々に光る、晴一特有のセンテンスを逐一取り上げたいがそうもいかないので、ライブの中でも一番グッときたパートに言及しておきたい。

彼方の空 雲を割って光が差した

間違いじゃない そう言ってくれているのか

挫けそうだよ 笑えないよ 忘れられたいよ

そんな日々はもう 海に返して

「忘れたいよ」ではなく「忘れられたいよ」であるつつましさ。この言葉選びの妙が、私には他人事とは思えない感情となって刺さってくる。つらいこと、悲しいこと、ぶつけようのない怒り。私が私である限り、切り捨てたり、忘れることができない感情。隔絶された気持ちになるならば、いっそ誰しもが私のことを忘れてほしいという、自己矛盾が表現されていることに共感してしまう。

その自棄的な感情を《そんな日々はもう 海に返して》と受け止め、半ば強引に忘れさせてくれる力強さがこの曲にはある。

この曲の昭仁の声は恐ろしいほど綺麗で、だけど確かな力強さと優しく美しいファルセットが共存している。『IT'S A NEW ERA』は、カップリングという位置づけにありながら、シングルカットされてもおかしくない曲であったことが晴一の口から明かされているが、その裏付けともいえるパワーを持つ、オープニングナンバーとしての存在感。《約束はついに果たされるのさ》と歌うこの曲は間違いなく、「続・ポルノグラフィティ」というツアーの幕開け、そして、ポルノグラフィティの新たな夜明けにふさわしい曲であった。

 

M2 幸せについて本気出して考えてみた

2018年の「UNFADED」ツアーでも披露されたこの曲が来るのは予想していなかった。

ただ、あの時と違うのは、声が出せないということである。最近裏打ちのリズムで拳を上げる人が少なくなったように思うけど、私は裏打ちしたいのでもどかしい気持ちになる。まぁノリ方は人の自由だからどっちでもいいけど。

 

ここで昭仁の煽りが入る。

「みんな今日は来てくれてありがとう!声が出せん代わりに、クラップで盛り上がりましょう!思いっきりクラップしてくれ!クラップユアハンズ!!今日は思いっきり楽しんで、夢のような時間をみんなで作ろうぜ!」

 

M3 ドリーマー

まさかの選曲で早速度肝を抜かれた。さすが「コア向け」とあえて謳っただけのことはあるけど、それにしても予想外すぎる。『ドリーマー』は初めて聴けるのでラッキーという気持ちになると同時に、2006年の『SWICTH』ツアーに行かせてもらえなかった自分が成仏した。

冷静に考えると、歌詞的に「夢のような時間にしようぜ!」という煽りで出てくる曲ではない気がするのがちょっと面白かった。あと、歌割が謎な箇所があったがずっとそれで歌ってたので珍しくCDと全然違う感じになってしまった。なんでだろう。

 

M4 ANGRY BIRD

間髪いれずに始まったこの曲でまたひっくり返りそうになる。声が出せていたら、割れんばかりの歓声が聞こえただろう。ポップな『ドリーマー』から、一気にダークでシニカルな世界観のゴリゴリなロックサウンドに。いわゆる”裏ポルノ”的な曲がもう聞けるのかと、このツアーに対する期待値がグンと高まった。サビで入るギターパートで、晴一だけにグリーンのピンスポが当たる演出はズルすぎる。終盤の「デン!デン!デン!デン!」に合わせて切り替わるライトもカッコ良かった。「ダイキャス」ツアーから更に進化した『ANGRY BIRD』の姿を見ることができた演出だった。

 

M5  Love,too Death,too

恐らく、長い間多くのファンが待ちわびていた曲であろう。ポルノはなぜか全体を通して全くライブでやらない時期の曲があり、『ラブデス』も不遇シングルの一つと言われてきた。この曲に関しては、晴一が「ギターがつまんないから」という理由を吐露していたが、満を持してビカビカのミラーボールが光りまくる派手な演出とギターソロパートの追加という大変身を遂げてやってきた。ライブでやったら絶対盛り上がるのに~というファンの期待を裏切らない、名アレンジであった。

 

M5’ LiAR

ツアー中盤から、曲順が変わり5曲目が『LiAR』に変更される。ラテンナンバーとしては新しめ、かつ『オー!リバル』よりパンチが少ない、いぶし銀的なポジションに収まってきているような感じがしたので、ここで聞けたのはラッキーだったのかもしれない。「BE」ツアーでもやったが、やっぱり映像が無い方が締まる感じがする。

 

M5’’ 今宵、月が見えずとも

ツアー地方最終日の札幌2日目から突如加わり、もう変更が無いと思い込んでいた私は完全に挙動不審になった。嬉しすぎる!!正直なんでこんなにやらないんだと思ってしまうくらいカッコいい曲なのでめちゃくちゃ嬉しかった。

ラスサビの昭仁のロングトーンは、ぶっ倒れそうなほどかっこよかった。もっと『メリッサ』とかくらい頻繁にやってほしいけど、次聞けるのは一体いつになるんだ。

 

ここでMCが入るが、今回は曲間に声を出すことができないため、各々のボイスストラップに吹き込んだ声を流すという光景が。メンバー的には、間が持つという意味で声はあった方がいいらしいので、役に立ってるなら良かったなと思った。昭仁がこそこそ「今押してー!それ使ってー!」と指示する場面も。

新メンバー紹介。今回はベースの山口寛雄さんと、ドラムの玉田豊夢さんと田中駿太さんが仲間入り。

(以下挟まるMCは全てニュアンス、地域ごちゃごちゃです)

昭「みなさんこんばんは!元気でしたか!!わしらが~~~~~ポルノグラフィティじゃ!札幌の皆さん元気ですか!!」

晴「すごいホールよね、hitaru。初めて来たけど、めちゃくちゃ綺麗なホールじゃけぇ。あれじゃろ、大泉洋さんが建てた……」(※違います)

昭「高さがすごいよね、4階くらいまであるんじゃろ?…おお手振ってる。みんな見えとるからね~!!すぐ隣?中?にテレビ局があったけぇ。”御殿”なんじゃろ。違う?まぁええわ、あれじゃったね、トイレもめちゃくちゃ綺麗で。あの水の流れる…音のやつが、クラシック音楽じゃった!」

晴「えっ、違うよ。水の音だったよ、わし。」

昭「え?!わしが入った時はクラシック音楽じゃったけど。」

晴「BGMかなんかじゃないの?」

昭「ええ~?!流れとった気がしたけどなぁ。まぁいいんですよこんな話は!!(笑)」

晴「みんな声が出せんけぇあれじゃけど、盛り上がってるってことでええんよね?…ボイスストラップもなんか、活用してくれとるみたいじゃけど。なんか、あれよね、隣の会場が盛りあがっとるみたいな不思議な感じですけども。……今回久しぶりにやる曲とかも多くて、次いつやるかわからんような曲もあって……それを考えると、一曲一曲大切にやっていけたらと、思いますね。」

「え~、ここまで聞いてもらったらわかるけど、結構ね、コアな感じの曲もやっとりますけど。大丈夫?初めての人ついて来れてる??この後もね、久しぶりにやるようなね、十数年ぶりにやるような曲とかもやっていくので、皆さんと盛り上がれたら嬉しいです。その曲は、『ウォーカー』という曲です。聴いてください。」

 

M6  ウォーカー

あんまりやらない曲をとのことだったので、どれどれ…と思っていたら本当にやってない曲だったので驚いた。2007年の『PORNOGRAFFITTI』からのチョイスとはいくらなんでも渋すぎやしないか?初めて来た人とか、連れてこられた人が割とポカンにならないだろうか、と思いつつも、あくまで今回はいわゆる「2人より曲や歌詞を覚えているようなファン」に向けてセトリを作ってきたというのがひしひしと伝わってきた。こういう、ポルノも自分も歳を重ねて、今だからこそ沁みる感じの曲をやってくれるのはいいなぁと思う。《賞味期限が切れる夜の0時に ミルクには何が起こるんだろう 致命的ななにごとかが》は、今読んでも名歌詞。

早く『蝙蝠』のことも思い出してほしい。

 

M6’ Free and Freedom

『ウォーカー』と日替わり枠でやっていたのがこの『Free and Freedom』。『ジョバイロ』のカップリングという位置づけもあり私は聞いたことがなかったので、初めて聞けて嬉しかった。昭仁がBEツアーで新調したアコギが本当にいい音なので、浮遊感のあるアレンジと深く響く音色とが相まってすごく気持ちいい曲になっていた。リリース当時より圧倒的に進化して伸びがいい今の昭仁の声で昔の曲が聞けること自体が嬉しい。アウトロの皆川さんのキーボードアレンジがカッコ良すぎた。

 

M7 君の愛読書がケルアックだった件(前半セトリのみ)

あんまりやらない曲を~という発言の直後にしては、こちらは比較的新しい曲。しかし、シングル以外のアルバム収録曲はアルバムツアー後は埋もれてしまいがちなので、こういう『ケルアック』みたいな他と競合しそうな曲をまたすぐ聞けたのは、個人的には良かったなと思っている。後半はラブデスがここに入ってきて消滅した。

 

「え~~みなさんご存知かもしれないですけど。23年間ポルノグラフィティとして活動する中で、ほんとに色んなことをやってきたけど。今年はある新しい、魅力的なコンテンツに出させてもらって。『THE FIRST TAKE』というね…」

ここで大きな拍手。この『THE FIRST TAKE』は、ポルノが出るまで私は噂程度しか存じていなかったのだが、近年の音楽シーンの中でかなりの影響力を持つコンテンツで、動画が上がるたび何百万という再生数がつくチャンネルだ。そこにポルノが出たのは昨年9月。『サウダージ』を披露し、ぐんぐん伸びる数字を見て、かなりの反響だったことが伺えた。

www.youtube.com

サウダージ』は今では1750万再生され、比較的新しい動画ながら全体の中でも20位代をキープし続けている。本当にすごいことだ。

「ビッグコンテンツに出させてもらって、ありがたいことですよ。その出させてもらった時にそこでやったアコースティックセッションがすごく良かったので、ここでも披露したいなと思います。曲は、『ミステーロ』です、聴いてください。」

 

M8 ミステーロ

本当に、こんなに盛沢山でいいの?ってくらい贅沢な時間だった。『TFT』のアコースティックセッションはとてもクオリティが高くて素晴らしかったが、まさかそのアレンジで違う曲が聴けると思っていなかったのですごく嬉しかった。『ミステーロ』が持つエキゾチックな雰囲気が更に増して、美しい楽器の音色と昭仁の声がクリアに聴こえて、高級なディナーを食べているような気持ちになった。山口さんがコントラバスで鳴らしていた「ギューン」という音が不穏な空気も醸し出していて、不思議なアクセントになっていた。本来サビ始まりなのがAメロ始まりになって、最後にサビを繰り返すという構成になっていたのも面白かった。

 

「え~ありがとうございます。ここで、せっかくなので、その『THE FIRST TAKE』でやった曲もね、披露したいと思うんですけど。」

客席から湧き上がる拍手。やったー!『サウダージ』も聞けるんだー!と喜んだ瞬間、昭仁から衝撃の一言が。

「せっかくのこういう機会で、こういう距離が近いホールでやらせてもらえるんでね、今日は、せっかくなんで、マイクを使わないで、みなさんに届けたいと思います!」

マイクを使わないで、と言った瞬間、建物が揺れるくらいの拍手が沸き起こった。客席が一気に息を呑むのがわかった。

昭仁がスッと息を整え、客も静かに身構える。

 

M9 サウダージ

「私は私と はぐれる訳にはいかないから

いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ恋心よ」

 

これまで約18年間、昭仁の声がずっと大好きでいたけれど。この日改めて、岡野昭仁の声が好きでよかったなと、本当に本当に心の底から思った。

今までも、昭仁がライブでアコギ一本で弾き語りをしてくれたこともあるし、少ない音数で声を聞くという機会はあった。最後の挨拶だっていつも生の声ではあった。

だけど、本当の生の歌声、それが直接鼓膜に入ってくることは今までなかった。この人から本当に私の大好きな歌声が出ている。その実感だけで、声を聞いただけで、涙があふれて止まらなかった。

あの時間は、紛れもなく、私の人生の宝物になった。一生忘れないし、最後に思い出す瞬間のひとつになると思う。

サビのワンコーラスをアカペラで歌った後は『TFT』のアレンジになり、美しいラテンの民族音楽のような素晴らしい演奏と共に濃密な時間が流れていった。Aメロが始まるギリギリまで鳴り止まなかった長く大きな拍手が、昭仁の歌声の素晴らしさを物語っていた。

曲が終わると雰囲気が一変し、ステージが暗転、重く響く金属音のイントロと共に、無数の光の筋が舞台上に檻をつくりあげた。

 

M10 鉄槌

艶やかな空間から、一気に重く薄暗い緊張感が走る。私はこのツアーが始まる前、まだコロナ禍ではあるし、最新シングルもメッセージソングだし、全体的に明るめのライブになるのかな?と思っていた。そんなことは無かった。にしてもここまで、恐ろしいほど圧倒的な“陰”のオーラで殴ってくるとは。ポルノが繰り出す暗い、ダークな雰囲気を纏った曲というのは、ポップな曲とのギャップも相まって本当にシリアスでかっこよくて、こういうポルノがたくさん見たい!と思っているファンも多い。世相を加味せず、あくまでライブという空間のカッコいいポルノを見せる選択をしてくれたような気持になって、嬉しかった。

1番が終わると、ステージ上に厚い霧のようなスモークが立ち込めており、いつの間にか昭仁が消えていた。長いギターソロのアレンジは、晴一の独壇場だ。これで曲のポジションがいわゆる“ヘソ”だということは分かったが、まさか今それがこの『鉄槌』になるとは…。

 

M11 Fade Away

2曲続けて、また暗めの曲。こういう流れは大好きなのでめちゃくちゃ嬉しかったし、『ケルアック』と同じく2017年の『BE』アルバムの曲なので、こんなに早くやってくれたのも嬉しい。ダークな世界観と昭仁の艶やかなボーカル、メロディアスなリフが非常に印象的な曲だが、「続」ツアーでは更にバンドサウンドがブラッシュアップされていて非常にかっこよかった。今回のツアーは、かなりタイトでシンプルにバンドの音を聴かせていたなというイメージがある。アウトロの昭仁の叫びがたまらなくカッコよくて打ちのめされた。

 

「え~皆さん大丈夫ですか!ね、ここまでこう、静態して聴くような暗い曲が続いたけぇ、ここでちょっと愛の曲なんかをね、届けようかなと思います。」

そう言って、昭仁にアコギが手渡され、ポロポロとスケールを確認する。

 

M12 元素L

イントロ無しで、昭仁のソロ歌唱で始まった瞬間、やられた!!と思った。『元素L』も比較的レア曲なので、ライブで初めて聴けた。ミディアムテンポのラブバラードの中でもかなりの名曲だと思うし、私も大好きなのですごく嬉しかった。静かに、訥々と語るようにゆったり歌う昭仁のパートが終わると、通常のテンポに戻りバンド演奏が始まる。ひとつの曲を多面的に聴くことができてお得感があった。晴一のコーラスがよく聞こえたので、にっこりした。

 

M13 Winding Road

やさしい空気感はそのままに、しっとりしたバラードが続く。『Winding Road』は、ここ数年の昭仁の歌声の進化に伴い、非常に化けた曲であると思う。「しまなみロマンスポルノ」で披露されたので比較的最近聞いた気もするが、良い曲は何回聞いても良い。

リリース当時より大人になった今の方が胸に響くし、そもそもメロディが物凄く綺麗なのでは?ということに気付くのが遅かったため、自分の中で評価が覆った曲でもある。

ステージの上から降り注ぐライトが床に水玉模様を作り、まるで雨の中で歌っているような幻想的なステージだった。

 

「ありがとうございます。え~こうしてね、全国回っとるわけじゃけども、まだまだ世の中はコロナで暗い気持ちになることも多くて、先が見えなくてしんどくなることも多いと思う。でもそうやってね、暗闇の中だけを見とったらいけんと思うのよ。暗闇を抜けた先にはきっと光が、明るい未来があると思うけぇ。その新しい時代、イッツアニューエラを迎えるために、このライブがそのためのきっかけになってくれたらいいと思う。みんなで新しい時代を迎えようや!その新しい日を迎えるための一歩を踏み出す、今日が”その日”だ!!THE DAY!!!」

 

M14 THE DAY

今日が“その日”に。これまでのライブでも何度か聞いたことのあるメッセージだ。しかし、こんな世の中だからこそ、いつもより更に強く胸に響いた。『BE』のアレンジがめちゃくちゃ好きなんだけど、スタンダードなアレンジもすごく良かった。『THE DAY』はすっかりライブでもおなじみだけど、本当にカッコいい新しい定番曲が生まれたのは大きなことだなぁと思っている。

 

M15 REUNION

ピンと糸を張ったような、シリアスなピアノのイントロが奏でられると、会場はピリッとした気持ちの良い緊張感に空気に包まれる。配信ライブの『CYBER ロマンスポルノ』で発表された時は、てっきり表題シングルになると思っていたくらい力のある曲だ。

静かで張り詰めたAメロからどんどん音が増え、サビで一気に開放する。激しく点滅するライトの中で浮かび上がる二人のシルエットに、目が眩みそうになる。ポルノが得意とする、スタイリッシュだが泥臭い、ギラリと研ぎ澄まされたカッコよさが凝縮されている曲だ。初披露時とリリース時では、歌詞の変更と追加パートが加わったが、これがまたすごかった。

我と彼を隔てるのは 此処と其処を割かつのは

止まった思考と 固定された視点だ

I am you, Here is there 真理を孕んだこの矛盾

まるで咆哮ともいえる「止まァアッ!!!た!!!!!!!」を聞いた瞬間、ザワ……と体の中に何かが渦巻くのを感じた。岡野昭仁がどこまで進化していくのか、ただひたすらに怖い。年齢と共に劣化どころか更に高みへ登っていく姿を目の当たりにするたび、私はただ立ち尽くすことしかできなくなる。

REUNION』の歌詞は珍しく二人の共作で、昭仁の作成した英詞(晴一曰く“念仏”)が多すぎる初期バージョンが好きだったが、この追加パートとライブでのパフォーマンスを見て、やっぱりブラッシュアップには意味があるんだ、これが完成形なんだと思うことができた。曲全体に流れる禅問答のような、瞑想のような、内向的だけど開かれている、不思議な浮遊感も好き。

 

M16 メリッサ

この3曲の畳みかけが本当に良かった!特に『REUNION』が入ったことで、同じ系統でもパリッと締まる空気が作られたのがすごくよかった。ライブ映えするし、今後も頻度高めでやってほしい。

メリッサは相変わらず、序盤でも終盤でも安定して盛り上がるし、昭仁の信じられない長さのロングトーンも健在だ。もはや当たり前のようにやってるけど言い方を選ばなければ本当に化け物である。

 

『メリッサ』が終わると、ひと呼吸置いて“男前ギター”が始まる。
自然にタオルに手をかけると、もうすぐ終わってしまうんだなぁと少し寂しい気持ちになる。

 

晴「君らは手拍子しか出来んけど……声が出せなくて溜まってるその…君らの中のその……残留エネルギーみたいな……そのエネルギーで……サステナブルな世の中を作りませんか?」

 

M17 ハネウマライダー

定番も定番なのでストレートにやるのも飽きたのか、上記のような(歯切れの悪い、謎の)SDGs煽りを毎回挟んできたりしていた。一時期は私も飽きた~とか言っていたけど、やっぱりハネウマは盛り上がるし楽しいし、たくさんの思い出が詰まっているので、なんだかんだ無いと寂しい…かもしれない。でも終盤にやるのが定着すると、本当に“終わりの予感”の曲になってしまうので、やんない回があってもいいし、今度はいっそ久しぶりに最初の方にやってみたらどうだろうか。

でも、ハネウマのメロディってよく考えたらかなりドラマチックで、少し切ない煌めきがあって、最後の方にやりたくなるのかもなぁと最近思う。この20年に名前をつけるなら?と問われて晴一が「Days of the Sentimental」と引用して答えるほどだし、彼らにとっても、ポルノとしての青春の象徴なのかもしれない。

 

「ありがとう!!あんたらほんまにすごいよ。ほんまにすごい!!今日は声が出せんけど、あんたらの、最高の拍手、生涯最高の拍手をちょうだい。手が痛くなるくらい、痺れるくらいの拍手をちょうだい!!そして次にまた会う時まで、その手の痛みを、その手の熱さを覚えていて。今のこの時間も大切なものになるから!!次会う時までその痛みを忘れないで、そして次に会う時は、きっと声が出せるから!この曲をみんなで歌おうや。その時までの約束!」

 

M18 テーマソング

ほら 見上げれば空があって 泣きたくなるほどの青さ

ほら 雲のような白いスニーカーで 高く高く昇ってゆけ

このようにストレートな“ザ・メッセージソング”という風体の曲は、実はポルノの楽曲の中では少ない。少ないし、あっても私はそんなに求めてない系統というか、もっとシニカルな視点で描かれる小技の効いたカッコよさを求めているので、最初は戸惑った。

壮大なテーマソング 流れりゃその気にもなるかな

耳に届く音はいつも 不安な鼓動のドラムだけ

フレーフレー この私よ そしてフレー 私みたいな人

ともに行こう 拳あげて 誰のためでもない this is all my life

今までは突然「フレーフレー」なんて言われたら、おい新藤晴一どうした?!となっていただろう。しかし、「今エンタメに必要なのは、明るいとは言えない世の中のことを一瞬でも忘れられるもの。フレーフレーと言う理屈があるから書いた」という、晴一の揺るがないロジックで作られたという安心感があるし、メッセージは素直に受け取るべきだろう。真っすぐな希望溢れる応援歌のようでいて、根底には晴一らしい、ポルノらしい内向的で皮肉っぽい言い回しが随所にみられるのがバランスを取っているとも思う。

「ただ自分らしくあれば それが何より大切」

などと思えてない私 何より厄介な存在

ここのパートが変な方向で刺さったまま、未だにどうしたらいいのかわからない。理解と納得と求めていない共感は、時に苦しくもなる。

しかし、そこまで胸に刺さるフレーズを生み出せる新藤晴一の詞の技量には、どんな形であれやはり舌を巻く。出来るならば、私なりに、納得できるような人生になって、噛み砕いていければいいなと思う。

 

曲の最後に、「また会おう」と昭仁が何度も何度も言ってくれた。『テーマソング』は最後のサビがコーラス隊によるものとなっているが、音源を聴いたときは、ああこういう方向ね…と斜に構えていた。でもやっぱり「いつかみんなで歌えるように」と昭仁が込めた希望の意味をないがしろにはしたくないので、それが実現する日が来ればいいなと思う。

 

曲が終わりメンバーが捌け、いつものようにポルノコール……ができないため、ボイスストラップと、精一杯の手拍子でアンコールを起こす。声が出せない分、やはり一体感というか、届けようという客席の熱量があったように思う。

 

「アンコールありがとうございます!みんなボイスストラップちゃんと使えてるね。手拍子も一生懸命ありがとう。

…え~、『続・ポルノグラフィティ』というツアーで全国回っとるわけじゃけども、このツアーの目的は長い期間待っとってくれたみんなに会いに行くために、ポルノグラフィティの”続”を見せるためだったんじゃけども。じゃあ、何をもってして”続”なのか、それはやっぱり、みなさんに、新しい曲を届けることなんじゃないかということでね、みなさんにここで、新曲を聴いてもらいたいと思います。」

やっっった~~~~~!!!!!いや、ツアーをやってくれること自体がすごく嬉しかったのに、まさか新曲を聴けるとは思ってもみなかったので、客席も思わずざわついていた。

「え~~聴いてもらう曲は、今わしらが届けたい音、作りたい音楽というのを表現した曲になります。タイトルは、『メビウス』。聴いてください。」

 

encore メビウス(仮)

 

何?????????

今、一体私は何を聞かされたのだろうか。

やさしいあなたは わたしのくびねを

りょう手でしめ上げ 泣いてくれたのに

うすれるいしきに しあわせみたして

はずかしい はずかしい わすれてほしいよ

 

こわ………………。

おおよそ明るさやポップさを微塵も感じられない歌詞が、やさしくあたたかな音色に乗って歌い上げられているという事実に、しかもそれを「新曲できたよ~いま表現したい音楽だよ聴いてね~」のノリで繰り出されたことで、完全に宇宙猫になった。

しかも、ツアー最終日の配信で、上記のように「歌詞が9割ひらがな表記である」ということが判明し、物議をかもした。しかも、気になりすぎて調べたんだけど、漢字は恐らく小学校2年生までで習う漢字しか使われていない。どういうことなんだ………。

曲としては、優しいメロディがシンプルなギターサウンドで奏でられ、サビでラウドっぽく展開するのがめちゃくちゃカッコよくて、このまますぐ音源出してほしい!!と思った。「アルバムとかに入るかはわからないですけど」と言っていたけどまぁ恐らく入るので、どうなるのかすごく楽しみ。

個人的に作曲作詞は、少なくとも作詞が晴一なのは確定だと思ってたけど、検索してみると昭仁派も少なからずいて驚いた。でも私は違うと確信しているが、実際の所どうなのかは今後リリースされる際にわかるだろう。昭仁だったら土下座します。

 

終わった後も、ゾッとした気持ちが抜けないまま放心状態で拍手しているにも関わらず「え~メビウスもね、みんなに長く愛される曲になればいいなと思います」といつもの調子で締めようとする昭仁に対して、いや置いていかないで!!ストップストップ!!!とパニックになっていた。信じられない。突然ビンタして放置しないでほしい。ありがとう(混乱)。

 

encore ナンバー(仮)

ツアー最終日にサプライズで披露された、2曲目の新曲。『メビウス』とは打って変わって、ストリングスが印象的なイントロから素朴で牧歌的な、ポルノの引き出しにありそうな感じのアレンジだったので、ああ、こういう曲ね~いいじゃん。『農夫~』みたいな感じ?と思っていた。

こうして僕は見失った 日付だとか時間だとか

君の住む街の番地さえ不思議な模様に

けれど花は咲くのだろう 熊は春に目覚めるだろう

数えるのではなく満ちるの待っているの

何……?????????

1サビにして雲行きが怪しい。どういう曲なんだこれは。雲行きが怪しいわりに、全体を通して「猫」「蜜蜂」「小川」「キツネ」「花」「熊」「ウサギ」「芦毛」「蝶」など、いやにのほほんとした単語が頻出して一見可愛らしい曲っぽいのがいじわるだ。
そう思っているうちに《まだ何も知らずにいれた僕の残像》《いつものように遠出をして帰り道が消えてしまい》など、おおよそ曲調からは想像できない不穏さと難解さが露出し、結局この曲も??????になってしまった。配信だと歌詞が出ていたからすぐ違和感に気付けたけど、現地参戦組が後から歌詞を知って度肝を抜かれたというのも納得できる。

この『メビウス』『ナンバー』という曲をこうして繰り出されてハッキリしたことは、次のアルバムが楽しみすぎるということ……。
どっちも恐らくシングルにはならないタイプの曲かな?と思うけど、カップリングでもなんでもいいので、いつかこれが世に出るその瞬間が楽しみ。

 

ここでセオリー通り、サポメンから順番にメンバー紹介。

昭「次に、我らがギタリスト!!!の名前をー、そのー、なんじゃ、緑のやつでぇ、緑のやつを駆使して呼んでやってくださーい!!オーーーーンギター!!!!!」

\はるいち~~~~~/(ボイスストラップ)

昭「オーーーーーンギター!!!!!」

\はるいち~~~~~/

昭「オンギター、新藤、はーるいちーーーーー!!!!!!!」

なお、福岡公演は10月15日の昭仁の誕生日とかぶっていたため、「岡野くん、今日誕生日らしいね。」とモニターに「Happy Birthday」の文字が映し出され、メンバーによりハッピーバースデーの演奏があり、ステージ袖からケーキが出現するというサプライズが。

晴「ハッピバースデー岡野く~ん、ハッピバースデー岡野く~ん、ハッピバースデーディア岡野昭仁く~~~ん…」ときちんと歌う晴一。

昭「ありがとうございま~~~す!!47歳になりました~!」

昭仁がこぶし大のちっっちゃいケーキのろうそくを吹き消して、サプライズは終了……かと思いきや、次の日16日も「岡野くん、昨日誕生日だったよね。……別に、今日も祝ってもいいんじゃないの。」という謎発言から、再び祝うと言う流れに。祝いたがりの晴一。

ここで通常MCへ。

晴「意外と(ボイスストラップの音が)聞こえるもんじゃね。でもなんか、その~、ライブで呼びよるテンションと、家で吹き込むテンションって多分違うけぇさぁ、なんか、お母さんとかに呼ばれてるみたいな気持ちになるよね。『ちょっと!晴一!』みたいな。『宿題やったの!』みたいな。……まぁその、こういう機会もそうそう無いけぇ、みんながそうやって、グッズ使ってくれたりとか、声が出せんくて手拍子したりとかも、良いように言えば、いつかあんなことあったなぁって、なんかこんなん買わされたなぁって、思い出になってくれれば、あー、いいんじゃないかなと、思いますので、わしらもツアーを一本一本噛みしめて、やっていきたいと、思います。」

晴「そしてボーカルは~」

\あきひと~~~~/

晴「ボーカルは~~~」

\あきひと~~~~/

晴「ボーカル~、おかの~、あきひとく~~~ん!」

昭「ありがとうございます!!みんな上手に(ストラップ)使えてるよね、ええことじゃわ。初日より若干増えてきた感じあるよね(笑)。え~~わしらが20周年の東京ドームを終えて、まぁ少し休もうかってなっている間に、コロナがバーッと広がって、活動も少しストップしたみたいになってしまって。そんな中でも、それぞれソロで色んなことをやってみたり、言ってみると”離れ”での活動をやったりして。こうしてポルノグラフィティという”母屋”に帰ってくることができたのも、みなさんが待っていてくれたおかげで。普通なら、こんなに長い間待たされて、なにやっとんじゃって怒ってもいいくらいだと思う。でも、そんなことなく、あたたかく迎えてくれて。離れでの活動をしてみて、改めてポルノグラフィティというのは、すごい母屋だなと。土台がしっかり作られてて、柱で支えられて、立派な屋根があって。これからも、みなさんにはたくさん母屋に携わってほしい、ここ釘が出てるぞとか、ここ壁紙剥がれてるから補修してやろうとか、どんなことでもいいから一緒に作っていけたらいいなと、思います。」

昭「最後は!!!みなさんアホになって、声が出せん代わりにボディで、ダンスで、全てを出し切って、アホになって帰ってほしいと思います!!!!ラスト!!ジ!!レンマ!!!!!」

 

encore ジレンマ

やっっっっと『ジレンマ』で終わるライブに来れたよ!!!!

いや、『ライラ』も悪くなかった。けど、やっぱり最後は儀式を求めてしまう。最後に全て発散してアホになって、あ~楽しかった!ってなれる曲はやっぱり『ジレンマ』なんだなと思う。無言でいないといけない『ジレンマ』なんて初めてだったけど、「声が出せんけぇ思いっきり全身で暴れて帰れよ!!全部出してけ!!!」という、この日何度も聞いた昭仁の煽りに倣い、久しぶりに腕が千切れるほどの気持ちで大暴れした。

「あんたらは最高じゃ!!!!ほんまに最高じゃ!!!自信持っていけ!!!胸張っていけ!!!!」を、このコロナ禍で聞ける喜びと力強さ。ポルノと私たちの強固な合言葉は、またひとつ新しい勇気をくれた。

 

生声挨拶(メモしたもののみ)

・福岡

晴「ほんと皆さん、また会う時まで、お元気で。」

昭「ほんまにサイコーの誕生日になりましたありがとー!!!また会おうね!!」

 

・札幌

晴「また、ちょくちょく来ます。」

昭「今日は本当にありがとう~~~!!ほいで!!また会う時は!!今度こそ声出して、大暴れしましょう!!どうもありがとうございました~~~~!!!」

 

今回、コロナ禍での声が出せないライブツアーということもあり、ポルノも、ファンも手探り状態からのスタートとなった。いつもとは違う距離感で、どんな雰囲気になるのかと思っていたが、蓋を開けてみればなんのことはない、同じ心の距離が保たれていた。むしろ、声を届けることができない分、より一層お互いに「届け!」と願っている、そんなライブだったと感じた。

このツアーを「元気だよ」という顔見せのライブだと言っていたが、並んだ曲のタイトルや構成を振り返ると、紛れもなくコアファン向けのツアーであったのは間違いない。そして、ツアーを通してポルノグラフィティがずっと私たちに伝えてくれたのは、「続くよ」という意思表示であった。

コロナ禍で、いつ何が突然終わってもおかしくない不安の中で、「続く」ということを明確に表現してくれたポルノの姿は、確実に私たちの心に光を与えた。

昭仁が使った「母屋」という言葉。休息を経て、お互いに違う活動をしていた二人だが、私たちはそこで得た力をポルノグラフィティに還元してくれることを知っている。その信頼があるからこそ、ずっと待ち続けられるし、これからもたくさんの景色を見せてくれることを期待してしまう。二人も、きっと私たちが待っていると、これまで以上に信じてくれているはずだ。東京ドームで、私たちとポルノの距離は、確実により強固に、密接なものとなった。照れくさい言葉で言えば、その絆を確かめるツアーだったのかもしれない。

どんなに休んだって、止まったって怒るわけなんかないのに。離れるわけないのに。それでも、そんな風に私たちに「待たせてごめんね」と言ってくれる彼らのいじらしさもまた、愛すべき謙虚さなのだなぁと思う。

ポルノグラフィティの進んでいく旅路。それがどんな道であろうと、私は最後まで見届けたい。新時代の幕開け、彼らはその新しい航路の先を、私たちに示してくれた。新始動したポルノグラフィティがライブで見せてくれた「私のための場所」、果たされるべき約束のことを、私はずっと忘れないだろう。


M1  IT'S A NEW ERA
M2  幸せについて本気出して考えてみた
M3  ドリーマー
M4  ANGRY BIRD
M5  Love,too Death,too
(M5‘ LiAR)
(M5‘’ 今宵、月が見えずとも
M6  ウォーカー
(M6‘ Free and Freedom)
M7  君の愛読書がケルアックだった件
(→愛知以降はLove,too Death,too
M8  ミステーロ
M9  サウダージ
M10 鉄槌
M11 Fade Away
M12 元素L
M13 Winding Road
M14 THE DAY
M15 REUNION
M16 メリッサ
M17 ハネウマライダー
M18 テーマソング
EN1 メビウス(新曲)
EN2 ナンバー(新曲) ※最終日のみ
EN3 ジレンマ

 

テニスの王子様研究発表会 資料(いか)

2022年6月12日に開催された「第4回テニスの王子様研究発表会」に参加させていただきました!緊張しましたが、とにかく……とにかく楽しい会で、人生の中でも非常に貴重な体験をさせていただいたと思っています。

詳しい感想等は、またいずれどこかに書こうかなと思っておりますので、ひとまず私が作成した資料を置いておきます。

 

<発表スライド>

本当に自信なかったんですけど、あたたかい会場のみなさんのおかげで楽しく発表することができました。「日吉若と言えば…」と言っただけで既に笑いが起きると思っていませんでした(全くウケを狙っていなかったので)。

冒頭で「北海道から来ました」と言ったのは、遠いところから自慢ではなく、皆さんのあまりの発表の素晴らしさと熱量に感化され「そんなところから来たいと思えるくらいすごい会です!」という気持ちを込めて言わせていただいただよ。

かなり時間ギリギリに収まる想定だったので、ガチガチに原稿を作って何回も練習して臨んだのですが、やっぱりあれもこれも話したくなってしまい最終的にはほぼアドリブで話していた気がします。最後の方はタイムキープベルでかなり焦ってしまい、何を話しているか自分でもわからなくなってしまい聞き苦しかったと思います。すみません。

時間の都合でほぼ割愛したアンケート結果も、後日こちらに掲載いたします。

 

私の研究は完全アナログで、こんな感じでとにかく原作、ファンブックを発売順に読み漁り、日吉についての記述を抜粋するという形で行いました。

そして、より深めたい項目に関する関連図書を読み(久々に図書館へ行きました)、考察と照らし合わせて真偽を確かめるという肉付けを行いました。

うまくいかなかったり、思っていた結果が出ずにウワーーー!!ってなった時もありましたが、それ以上にすごく楽しかったです。今は力尽くして空っぽですが、次は聴講者として、もしくは、何か良いテーマが浮かんだ時は、また参加したいなと思いました。

まずは一旦、以上にて関わってくださった全ての皆様へのお礼へと代えさせていただきます。ありがとうございました。

 

好きなポケモンのBGM ~戦闘BGM編~

ただひたすらポケットモンスターの好きなBGMについて書いています。所々ストーリーのネタバレも触れている箇所があるので注意!

シリーズの略称 ⇒ 赤緑青、金銀、RSE、FRLG、DPPt、HGSS、BW、BW2、XY、ORAS、SM、剣盾

※基本的に”本編”と呼ばれるシリーズについて記載。外伝的なダンジョンシリーズやスタジアムなどは含みません。

※ピカブイ、USUM、剣盾DLC、BDSP、アルセウスは未プレイ。

 

街・道路・施設編はこちら

ダンジョン・イベント・キャラクター編はこちら

 

戦闘曲編

戦い(VSトレーナー)(赤緑)作曲:増田 順一

ポケモン初期シリーズのBGMは、増田氏がほぼ全ての楽曲を手がけており、後続シリーズへ受け継がれていく”ポケモンらしさ”の基本のキが詰め込まれている。特に戦闘BGMにおいてはそれが顕著で、イントロの「テレレレ テレレレ テレレレ テレレレ」というフレーズ、「テンッ!テン!テン!」という独特のリズム、上がったり下がったりを繰り返す伴奏など、GB音源の3つの波形でこんなに複雑な曲ができるのかと、今聴いても充分にカッコいいと思えるメロディが詰め込まれている。

 

ラストバトル(VSライバル)(赤緑)作曲:増田 順一

チャンピオン、かつライバルとの最終決戦という王道展開にふさわしい、激しさと緊迫感と熱さが存分に感じられる曲。上記のとおり3つの波形でできているとは思えないほど、イントロから複雑に絡み合うメロディに圧倒される。様々なシリーズで何度もアレンジされているが、結局初代のシンプルな原曲が一番好き。

 

戦闘! トレーナー(ジョウト)(HGSS作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛

金銀の戦闘曲はポップな明るい曲が少なく、どちらかというとシリアスでカッコいいメロディーのものが多い。原曲よりイントロや間奏が長くなっており、楽器が増えたことでメロディの遊びの部分が格段に増えており、より白熱した緊張感とバトルの盛り上がりを演出している。途中で楽器が減って落ちサビのようになっているところなど、曲の中のメリハリが非常に楽しい曲となっている。謎のアラビアっぽい部分の編曲も味があって好き。

 

戦闘! ライバル(金銀、HGSS作曲:増田 順一     編曲:一之瀬 剛(HGSS

赤緑のライバルはどこか憎めないヤンチャな男の子であったが、2作目にしてライバルの扱いはかなり尖ったものになり、これ以降は"お友達"路線になっていくことを考えても、ライバルの曲としては珍しいクールでダーティーな曲となっている(同じ系譜はグラジオや少し違うがヒュウあたりだろうか)。まず人のポケモンを盗むという普通に悪い出だしではあるがかなり深みのあるキャラになっていくので、度々聴くことになるこの曲も段々と印象が変わっていくことだろう。リメイク前後どちらも好き。何気に金銀ライバルは登場と退場でそれぞれ曲が違うという贅沢な扱いにもなっている。

 

戦闘! ジムリーダー(ジョウト)(HGSS作曲:増田 順一 編曲:景山 将太

上記のとおり、金銀はジムリーダー戦もシリアスで『強敵と戦っている』という雰囲気がこれでもかと感じられる曲となっている。あえて音数をそこまで増やさず、原曲のメロディに忠実にシンプルなアレンジをすることで、緊張感を演出していると思われる。それほどテンポも変わっていないけど、ドラムが増えるだけで疾走感が増し増しになっているところも良い。

 

戦闘! ロケット団(金銀)作曲:増田 順一

『悪の組織の曲』というカテゴリが生まれたのは、金銀が初。戦闘BGMの中でも、悪の組織系は暗めの曲調で他には無いダークでダウナーな感じが特殊で人気が高いが、ロケット団は特に”悪”としての側面が強い雰囲気がある。リメイク後はリズム隊の変化によりテンポ感が落ちる部分があるので、原曲の方が好き。

 

戦闘! ホウオウ(HGSS作曲・編曲:一之瀬 剛

金銀がリメイクされて良かったと思える理由の一つになっている曲。リメイクで初めて専用の曲が作られたホウオウとルギアだが、曲調の特殊さとイベントの雰囲気の恩恵をより受けているのが、ホウオウの曲だと思っている。ポケモン固有の曲の中でもかなり珍しい『和』を前面に押し出した雅なアレンジ、鼓や雅楽楽器の音色がふんだんに使われた荘厳な編曲に、伝説のポケモンとしての威厳や畏怖を感じさせる名曲。それでいてポケモンの戦闘曲らしさも失われておらず、タイトル映画が作られなかったり何かと不遇なイメージのあったホウオウだが、イベントの演出とこの曲だけで報われたと言っても過言ではない。当時『金』版をやっていた身としても非常に嬉しい一曲。

 

戦闘! 野生ポケモン(RSE)作曲・編曲:増田 順一

明るい曲が多いルビサファを象徴するような、バトルの楽しさとゲットへのワクワク感を詰め込んだ曲。野生ポケモン戦の曲としてちょうどいい、冒険の途中で何回聴いても飽きの来ない展開が魅力的。真剣さとポップさのバランスがかなり絶妙。ルビサファの野生ポケ・トレーナー・ジムリーダー戦のイントロは全て統一されているため、印象的な「テッテッテ!テッテッテ!」への繋がりも含めて初めてアドバンスのポケモンで聴く曲として印象に残っている人も多そう。

 

戦闘! アクア団・マグマ団(RSE)作曲・編曲:増田 順一

やっぱりカッコいい悪の組織の曲。今まで出ているシリーズの中でも、1、2を争うレベルで好き。捨てるメロディがどこにもない。疾走感のあるイントロから、Bパートの裏で鳴っているピコピコ音や、Cパートの主旋律を担うトランペットがすごく気持ちよく、気がついたらループしている。ザコ敵の曲でこのカッコよさ?!と聴くたびに驚く。ORASでは欲しい裏メロがことごとく弱くなっている(オーケストラ風を重視しているのか、ピコピコ音は全体的に小さくなってしまっている)ので、原曲の方が好き。

 

戦闘! レジロックレジアイスレジスチル(RSE)作曲・編曲:増田 順一

伝説のポケモンの曲の中でも、特にそのポケモンの”イメージ”に特化している感じがたまらない。無機質で、不気味で、畏れがあって、でも少しロボットのような可愛らしさもあるレジ系の雰囲気が存分に出ている曲。冒頭の不規則な電子音は、レジ系達が「会話」をしているイメージの音なのだそう。かわいい。

 

決戦! ダイゴ(RSE)作曲・編曲:増田 順一

恐らく、全シリーズ全曲を含めても、自分の中で1、2を争うくらいに好きな曲。まず、激しいイントロと脅威のBPM約210というトップクラスの速さからわかる通り、スマートで爽やかな彼から一気に放たれる強キャラ感。ジェットコースターのように動き回るメロディ、登りつめたテンションがMAXまでキリキリと高まったところで一旦3拍子になり少し落ち着きを取り戻す、感情の波が押し寄せるような展開が素晴らしい。勝負の駆け引きとチャンピオンとしての揺るがない強さ、熱さの中に光るダイゴさんの気品も感じられる一級品。ちなみに、戦闘前に流れる『ダイゴのテーマ』自体は、リメイクのORASの方でテンポと和音が変わり更にカッコ良くなっていると思うのでそちらも必聴。

 

戦闘! ライバル(DPPt)作曲・編曲:増田 順一

戦闘曲の中でも、特に”キャラソン”的な色の強い曲。コロコロしたイントロから、せかせかした速めのビートで、せっかちで元気なダイパライバルの性格をそのまま音楽にしたような曲となっている。全体的にコミカルで、明るいながらもストーリーに沿って強くなっていくライバルと対峙するたびに緊迫感も増していくように感じられる味のある曲。

 

戦闘! トレーナー(DPPt)作曲・編曲:増田 順一

ダイパのトレーナー戦の曲は、一見地味なように聴こえるが、実はかなり動きのあるメロディ展開となっている。Bパートで入ってくる雪国系でよく使われるアコーディオンの音がフックになり、Cパートでは打楽器とベースでメロディが構成されている部分から一気にシリアスになっていく。ベースラインの動き方はほとんどず~~~~っと↑↓↑↓↑↓↑↓という繰り返しで、戦闘中に何回ループしても飽きの来ないかつちょうどいいテンションで聴ける曲。

 

戦闘! ギンガ団(DPPt)作曲・編曲:増田 順一

Aパートの3小節目あたりの「ミ♭ファソラ♭」という音程の外し方がたまらなく好きで、初めて聴いた時になにこれ?!?と心を掴まれた曲。全体的に明るいんだか暗いんだかわからないような不思議な感じを行ったり来たりしているのが、ギンガ団の胡散臭さと妙なカッコよさを強調している。幹部の曲よりこっちのしたっぱバージョンの方が好き。

 

戦闘! ディアルガパルキア(DPPt)作曲・編曲:増田 順一

伝説のポケモンらしい重厚さもありつつ、ピアノの音が神秘的な印象を強めている曲。どんどん壮大になっていくポケモンの物語の中で、「時・空間を操る」という設定に負けないくらいの荘厳な曲。途中メロディが明るくなるパートでは、宇宙を駆け巡るかのようなキラキラした冷たいアレンジが加わり、どっしりとしていながらスマートな骨格を感じさせる曲。

 

戦闘! フロンティアブレーンHGSS作曲:一之瀬 剛、佐藤 仁美 編曲:佐藤 仁美

Aパートはプラチナの『ファイトエリア』のアレンジ、サビ部分はエメラルドのフロンティアブレーン戦のアレンジとなっている。明るく可愛らしいが、きちんと強者との戦いを疾走感のある名曲。ジム戦よりもボーナスステージというかお祭り感が強い。バトルガチ勢ではないので自分でブレーンに辿り着いて聴いた回数は申し訳ないくらい少ないが、実際に苦労して聴く価値のある曲でもある。初出のプラチナよりHGSSの方が音がスッキリしていて好き。プラチナ版は、鐘の音がより強くなっており、雪国感が増しているのでシリーズにはふさわしいアレンジと言えるだろう。ちなみにプラチナ版はBW2のサントラに収録されている。

 

戦闘! トレーナー(BW)作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛

上記のダイパのトレーナー戦がいぶし銀的なカッコよさだとすると、BWのトレーナー戦は”王道かつシンプル、洗練されたスタイリッシュさ”を持っていると言える。一之瀬さんの曲にしてはベースラインが落ち着いているのも印象的。ダイパ特有のモサモサした音から格段に進化し、スッキリしつつあえて電子音風味を残しているような音色が今聴いてもBW特有の”近未来”を感じさせ、ワクワクする。うるさすぎず盛り上がりポイントもきちんとあり、ループ前のメロディが落ちて静かになる部分で緊張感を生み出す。ほぼ批判の要素が見つからない曲。

 

戦闘! ジムリーダー(BW)作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛

特筆すべきは、やはりイントロだろう。ポケモン特有の”繰り返し”を使用してはいるものの、「テレレレ テレレレ」の階段の部分を丸ごと無くし、突然なんとなくBパートっぽいメロディを挟んでから始まるAパート、というのハズし方をしている。これが最高にたまらない。そして、ジム戦にしては珍しくかなり明るい曲調と、落ち着いたテンポがBWの個性豊かなジムリーダー達をより印象づける。「えっ今ループしたの?!」という謎の部分から始まるところも聴くたびにびっくりする。普通ぽくて全然普通じゃない曲。

 

勝利は目の前!(BW)作曲:増田 順一・一之瀬 剛 編曲:一之瀬 剛

どうせみんな好きだから入れるか迷ったんだけど、そんなひねくれた考え方をするのが無意味なほどの名曲、というか名演出枠。まさかポケモンで、しかもリーグとかではなくジム戦の段階で、バトルのラスト一匹でメインテーマのアレンジが流れるというラスボス級の仕掛けがあるとは思わなかったので、プレイした当時はかなり興奮した思い出がある。GB時代のコードをそのまま持ってきているので、BW2よりこっちの方が好き(BW2は転調している)。

 

戦闘! N(BW)作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛

BWを象徴すると言っても過言ではない『N』というキャラクター性を存分に表現している曲。イントロの不思議なメロディから、淡々とした無機質なベースライン、不自然な数のロングトーン、全体的に無感情だが熱いイメージもある奇妙な空気感のある曲。この曲及び『決戦! N』は、そのキャラクター性を表現するために”素数”というキーワードを基に、物凄い工夫が凝らされていることも特定層には有名である。曲の組み立ては、本作の作曲及びディレクターを務める増田氏のブログ(下記)にて解説がされており、Nというキャラクターはかなり愛着を持って作りこまれている人物であることが伺える。というか、こういう曲解説本出してくれないかな……。お願いします。

リンク先→増田部長のめざめるパワー

 

戦闘! 四天王(BW)作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛

四天王戦の曲というカテゴリがそもそも少ないのだが、全ての曲を含めてもトップ5くらいには入る曲。BWの特徴的なシンプルな音作り、緊迫感を加速させる細かく刻んだノイズドラム、シリアスだけど奇妙な明るさもあるメロディ、最後にルビサファの四天王戦のアレンジが入る、そして違和感の無いループという、捨て所の無いほぼ完璧に近い構成。

 

戦闘! ゼクロム・レシラム(BW)作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛

比較的遅めのテンポで一定のリズムが繰り返される、どっしりとした重厚感のある曲。ポケモンのメインタイトル曲のイメージである『怪獣映画』を踏襲したような雰囲気の作り。この王道な感じが好き。なぜかダイパライバルのテーマと金銀の42番道路の曲がアレンジされているが、どうしてそこから持ってきたのかはかなり謎。ブラックではレシラムの炎が燃え上がる音が、ホワイトではゼクロムの電流が走る音が流れる。キュレムは更にアレンジされて、その特性からより不安定に感じる譜割りになっている。

 

戦闘! アクロマ(BW2)作曲:佐藤 仁美 編曲:一之瀬 剛

トップ5には確実に入る曲。この曲の特徴は、なんと言っても曲中に多用されている"カウントダウン"のボイスサンプリング。ボイスサンプリングの試み自体は前作のBWの『戦闘! ゲーチス』で既に披露されていたが、それとは雰囲気が全く異なる使われ方となっている。アクロマの醸し出す善悪を判断しきれない独特のグレーな雰囲気、科学者という側面から滲み出る冷静さと理知的な言動の中に見える無感情な狂気、そして真摯さと冷酷さという、相反するものの調和を見事に体現している。戦闘BGMとしてもキャラクターBGMとしても、オリジナリティと唯一無二の特色を持った名曲。

 

戦闘! ハウ(SM)作曲:佐藤 仁美・一之瀬 剛 編曲:一之瀬 剛

サン・ムーンでは舞台が南国であるという特徴と、これまでほぼ全ての作曲を手掛けてきた増田氏が一線を退いている影響からか、これまでの雰囲気からはかなり変わった面白い曲が増えている。ハウ戦は、今までのポケモンには無かったような、繰り返しのメロディが無いゆったりとした導入が特徴的。前半はハウの明るい笑顔とおおらかな性格を感じさせる、南国の日差しのような曲。後半は『ハウのテーマ』をアレンジしたものになっており、キラキラと切なさも感じる曲調になっている。呑気さすら感じる曲が、徐々に盛り上がっていく様はストーリー後半の成長したハウとの白熱したバトルを思い起こさせる。

 

戦闘! しまキング・しまクイーン(SM)作曲:一之瀬 剛・増田 順一 編曲:一之瀬 剛

これまでのシリーズでの”ジムリーダー”の上位ポジションくらいの存在である、しまキング・しまクイーンとのバトル。どっしりと重厚感のある緊迫したイントロから、一気に明るいメロディへと変化することで、ジム戦とはまた違った「全力で勝負を楽しみ、成長する」という雰囲気が伝わってくる。これまでの「試練」のアレンジなのもグッとくる。イントロで、クリア後に聴ける『戦闘!カプ』のメロディが既に使われており、しまキング・しまクイーンと島の守り神との関係性がストーリークリア後にわかるという仕組みになっている。サン・ムーンにはこういう「明るいメロディが逆に泣ける」という曲が多いイメージがある。

 

戦闘! スカル団(SM)作曲・編曲:足立 美奈子

スカル団系統の曲は、ヒップホップを取り入れたアレンジがとても印象的。要所要所で使われるボイスサンプリングや途中のビートが落ちるところなどのキメがあり、気だるげながらもスタイリッシュでピリッとした空気感の曲になっている。Cパートはどこか赤・緑を彷彿とさせるようなメロディになっており、全く新しい雰囲気なのにどこか懐かしさも感じる不思議な曲。

 

戦闘! エーテル財団トレーナー(SM)作曲・編曲:足立 美奈子

サン・ムーンでは、2つの悪の組織が現れるというストーリー展開のため、それぞれの組織で全く雰囲気の異なった曲が聴ける。近年の中でもトップレベルにカッコいい曲だと思うのが、この『エーテル財団』の戦闘曲。とにかくイントロ~Aパートの繋ぎを聴いてほしいのだが、今までのポケモンBGMの雰囲気を絶妙に崩しながらも、同じ繰り返しのリズムで畳み掛けるというセオリーを用いることで、世界観と馴染んだ曲になっている。悪の組織らしいシリアスなメロディに、クラシック的な楽器を多めに使いつつ、ノイズや電子音を効かせることで"清廉潔白な攻撃性"を表現している。足立さんはすごい。

 

戦闘! ジムリーダー(剣盾)作曲・編曲:足立 美奈子

最新作のサントラはまだ発売されていないが、この曲ばかりはスルーできない。私はこれを初めて聴いた時に、自分の中の揺るがなかった戦闘曲ランキングが音を立てて更新されていくのを感じた。比較的落ち着いたテンポのEDM風というのは、どこかXYのジム戦BGMの系譜を感じさせるものの、当時から圧倒的にブラッシュアップされ、緊張感のあるマイナー調のクールでわかりやすいメロディに。しかもきちんとサビに向かうビルドアップ部分があり、必然的に盛り上がる展開になっている。更に、ジム戦が観戦する"競技"として取り扱われているという設定から、優勢、劣勢などバトルの展開に合わせて曲の展開も変わるという仕掛けがあり、終盤は畳み掛けるように人々の応援する歌声、掛け声が生まれる。上記でも言及したボイスサンプリングを、"BGM"と"環境音"の自然な形での融合という方法で組み込んできたことに舌を巻く。これがまた剣盾のジム戦のシステムに絶妙にマッチしており、没入感を増しているのだ。会場の熱気、人々の高揚感、そしてバトルの駆け引きを楽しむ気持ち。これらを余すことなく表現した、ポケモンゲーム史に残すべき名曲である。

剣盾ジム戦BGMが途中まで聴ける公式のツイート。サントラ発売はまだだろうか?

 

その他のカテゴリは以下の記事に記載。

 

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好きなポケモンのBGM ~街・道路・施設編~

ただひたすらポケットモンスターの好きなBGMについて書いています。所々ストーリーのネタバレも触れている箇所があるので注意!

シリーズの略称 ⇒ 赤緑青ピ、金銀ク、RSE、FRLG、DPPt、HGSS、BW、BW2、XY、ORAS、SM、剣盾

※基本的に”本編”と呼ばれるシリーズについて記載。外伝的なダンジョンシリーズやスタジアムなどは含みません。

※ピカブイ、USUM、剣盾DLC、BDSP、アルセウスは未プレイ。

 

ダンジョン・イベント・キャラクター編はこちら

街BGM編

タマムシシティ(赤緑)作曲:増田 順一

大都会といえば思い浮かぶこの曲。赤緑ではミナモシティのようなゆったりとしたアレンジになっていたが、私は原曲の騒がしいリズムとメロディの方が、都会にやってきたぞ!という喧噪を感じられて好き。

 

マサラタウン(金銀ク)作曲:増田 順一

思い出の話になってしまうが、幼い頃から、赤緑の冒険(レッドの冒険)から3年後の金銀世代のマサラタウンが大好きで、冒険に出た息子を待ち続けているレッドのお母さん(サトシのママとも重ねていた)、ジムリーダーになった弟がいなくなった家で暮らすナナミさん、それぞれがひとりぼっちで(ゲーム容量の制約があるにしろ)待っている様子がすごく寂しいんだけど、ずっと帰ってこないレッドのことがすごくカッコよく感じて、なんとも言えない気持ちになっていた。金銀のカントー地方の曲は、赤緑の原曲からゆったりとしたテンポに変わっているものが多く、落ち着いているとも、かつての賑わいを失ったとも取れる感じが、幼心に無常を感じていたのかもしれない。

 

キキョウシティ(HGSS作曲:一之瀬 剛 編曲:一之瀬 剛・景山 将太

HGSSで生まれ変わった曲の中でも印象的なのが、和風のテイストを持つ曲たちだ。GB音源からの進化は凄まじく、本来ゲームの中で表現したかったジョウト地方の特色が余すことなく出ている。『キキョウシティ』もまた序盤の街だが、印象的なツッタンツツタンタン!というイントロと、ドラマチックなメロディが大好きな曲。

 

エンジュシティ(HGSS作曲・編曲:一之瀬剛

HGSSで生まれ変わった曲の中でもかなりの恩恵を受けているのが、この『エンジュシティ』だと思う。GB音源の妙にのっぺりしたBGMが不気味で怖くて大嫌いだったのに、リメイクをやって衝撃を受けたのがこの曲。京都がモデルとなっているが、琴や鼓が惜しげもなく使われており、この和風の世界観はさすがにGBで表現するのは無理だったろうな…と強く感じる。更に、全く同じ曲だった『タンバシティ』も異なるアレンジがされていて、しっかり差別化されている点も素晴らしい。それぞれ原曲より半音低く・高くなっているため、本来の音階は使われていない。ちなみに、エンジュシティの原曲自体は、ポケモンピンボールの曲でもある。

 

ミシロタウン(RSE)作曲・編曲:一之瀬 剛

最初の町のBGMって本当に良いですよね。思い出補正抜くと、もしかしたら『ミシロタウン』が一番好きかもしれない。サントラが発売されてないから今回は抜いたけど、剣盾の『ハロンタウン』もかなり好き。やっぱり始まりの町は、”旅立ち”と”おかえり”を意識する場所だからか、無性に泣けてくる。『ミシロタウン』はけっこうテンポが早めでポップさもあるけど、メロディラインが絶妙に心をくすぐる感じが良い。

 

カナズミシティ(RSE)作曲・編曲:一之瀬 剛

RSEでは、初めてGBAソフトとなり、様々な楽器とリズム隊が鳴らせるようになっていることで、今までにない凝ったリズムの曲がたくさん生まれている。『カナズミシティ』は、ボサノヴァのリズムが特徴的で、ホウエン地方のゆったりした空気を醸し出しており、メロディも”ちょっとした都会”という感じがよく出ている。

 

ミナモシティ(ORAS作曲:一之瀬 剛 編曲:景山将太

実はあんまり全体的にORASのアレンジが好きではないんだけど、『ミナモシティ』はテンポ感こそ少し速いものの、ベース音が弱い感じとか使っている楽器のチョイスがまさに原曲を損なわない良アレンジで、景山さんの底力をひしひしと感じる。ゆったりとした3拍子が品の良い都会を思わせる一曲。

 

ルネシティ(RSE、ORAS作曲・編曲:一之瀬 剛

原曲もアレンジも好きなので併記。人気なのはわかっているので入れるか迷ったけど、なんだかんだ自分も好きなこの曲。終盤の街ということに加え、”海に潜って浮上した先に広がる都市”というなんともロマンのある設定と、明らかに住みにくそうなのに夢のある街並み、もの悲しくエキゾチックなメロディが冒険心をくすぐる名曲。

 

マサゴタウン(昼)(DPPt)作曲・編曲:一之瀬 剛

私はけっこう”2番目の街”の曲が好きで、ストーリー上では地味で通りすがるだけの街でも、珠玉のメロディが隠れていることが多い。この『マサゴタウン』もその一つだと思っている。これが序盤の街でいいのか?というくらい、むしろ、終盤のドラマチックで明らかに気合いの入った街とはまた違う、肩の力が抜けたくらいの良さが序盤の町にはあると思う。イントロのちょっと調子を外したメロディからもうたまらない。

 

ソノオタウン(DPPt) 作曲・編曲:佐藤仁美

大きな花畑がある町にふさわしく、優雅でありながらどこかメルヘンチックな浮遊感も併せ持つ、ゆったりとした時間が流れている様子が表現されている曲。夜のBGMは、イントロのメロディラインがはっきりと追加されていてまた違ったテンポ感になっているのも印象的。3拍子の街BGMは複数あるけど、中でもひときわテンポが遅く、差別化されている。

 

ラクサタウン(BW)作曲・編曲:景山将太

2番目の街シリーズ。この曲では、ポケモンBGMで初めて「楽器を持ったNPCに話しかける(もしくは近づく)と、BGMにその楽器が加わる」というギミックが初めて登場するので、印象に残っている人も多いのではないだろうか。可愛らしくもドラマチックなメロディで、コンパクトにまとまっているようで実は上記の仕掛けにより更に深みが増す面白い曲。

 

シッポウシティ(BW)作曲・編曲:一之瀬 剛

アコーディオンの音が特徴的で、とてもオシャレで洗練されたアレンジの曲。倉庫街として発展してるという街の雰囲気も好き。ちょっと地味めではあるけど、ちゃんと聴いてみるとこんなにメロディの展開が多かったっけ?となる味わい深い曲。

 

ホドモエシティ(BW)作曲・編曲:佐藤 仁美

これまでの街BGMからは一線を画す、非常にフックのある曲。短めのイントロから展開されるうにょうにょとしたメロディにはオリエンタルな雰囲気がたっぷりと詰まっており、BWの中でもかなり印象的な曲なのではないだろうか。港町ならではの異文化の交じり合った様子、活気のある人々の空気感がうまく表現されている。

 

ソウリュウシティ(BW)作曲・編曲:一之瀬 剛

BWでは、8人目のジムリーダー、その最後のジムがある街自体に違いがある。ソウリュウシティは、ブラックが近未来的なビル街、ホワイトが歴史ある古都という見た目の違いから、BGMも異なり、メロディは同じだが使っている楽器とアレンジが180度異なるという珍しい街だ。上記の楽器がBGMに加わるという要素もあり、ブラックではショルキー、ホワイトでは二胡が楽曲にスパイスを与えている。

 

カゴメタウン(BW)作曲・編曲:佐藤 仁美

この街は、夜になると化け物(キュレム)が出るという伝承のため、夜になると一切外に人がいなくなるという風趣がある。その少し異質な雰囲気と冷たい風が吹くという気候が、BGMにも表れているようで、ポケモンがたまに出す無機質な不気味さと人間味が、美しさと寂しさを感じるメロディーの中に同居しているとも言える。

 

クノエシティ(XY)作曲・編曲:景山 将太

シリーズ初のフェアリータイプのジムがある街。まるでおとぎ話の中にある妖精の国のような、可愛らしい雰囲気のある曲。しかし、不思議の国のアリスのような、メルヘンと少しの不安を織り交ぜたようなメロディが印象的。

 

コニコシティ(昼、夜)(SM)作曲・編曲:一之瀬 剛

聴いたらわかるんだけど、ポケモンでもけっこう珍しい”ザ・チャイナタウン”な曲。アローラ地方のモデルはハワイだけど、明らかにアジアンテイストの街が急に出てくるところが面白い。また、コニコシティやマリエシティの曲は、”間違った異文化理解”がテーマになっているらしく、過剰に”和”が強調されていたり、銅鑼がジャンジャン鳴っていたりして、正に外国人がイメージを膨らませた、ちょっとズレているステレオタイプのアジア、という雰囲気を醸し出しているのが味わい深い。また、『コニコシティ』は夜のBGMの方が騒がしいタイプ(トバリシティやクロガネシティと同じ)で、ピポーピピー♪という謎の電子音や、女性のコーラスまで入っている。夜の繁華街の華やかさと胡散臭さが存分に味わえる。

 

その他好きな曲

コトキタウン(RSE)作曲・編曲:青木 森一

カナワタウン(BW)作曲・編曲:一之瀬剛

オハナタウン(昼、夜)(SM)作曲・編曲:(昼)佐藤 仁美、(夜)黒田 英明

ハロンタウン(剣盾)

 

道路BGM編

トキワへの道~マサラより(赤緑)作曲:増田 順一

アニメでも何度もアレンジされている定番の道路BGM。記念すべき最初の道路。いわゆる1番道路にあたる道の曲って結構好きで、これから冒険が始まるんだというワクワク感と、まだ少し散歩気分のような軽快さがある。赤緑のテンポが早めな原曲が好き。

 

30ばんどうろ(HGSS作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛・景山 将太

オープニングセレクトにもアレンジされて使われているので、デン!デケデンデン!というイントロが印象的な曲。HGSSで新しくイントロが追加されて、よく雨が降っている道路のBGMにもなったので雨音のイメージもついた。環境音が与える影響は大きい。

 

26ばんどうろ(金銀、HGSS作曲:一之瀬 剛 編曲:景山 将太

金銀の道路BGMでなおかつ"名曲"と言われて真っ先に思いつくのがこれ。「きみは いま!」の台詞でおなじみ、カントー地方への第一歩を踏み出す時に流れる曲。新たな冒険への予感がバシバシ感じられ、とても感動する。アニメでもよく話のエンディング付近で使われていた。

 

110番道路(RSE)作曲・編曲:青木 森一

ものすごくルビサファっぽいなぁ~~と思う曲。「あたたかい地方を元気に冒険しているぞ!」感が好き。GBA時代の音源って、トランペットなどの金管系の再現率がちょっと低くて、耳に痛い感じの音色なんだけど、それがまた元気で騒がしくて、RSEの雰囲気に合っていると思うのだ。なので、生の楽器をストリーミング再生できるようになった3DSからの音源だと、特にリメイクではGBAの音色より小綺麗にまとまってしまって物足りないように感じてしまうことも多かったので、難しいところではあると思う。

 

111番道路(RSE、ORAS作曲:一之瀬 剛 編曲:一之瀬 剛、足立 美奈子(ORAS

ルビサファで一番好きな道路BGM。ポケモンにおいて初めての要素である、砂嵐が吹き荒れる砂漠地帯。そのワクワク感と、未知の領域に踏み込む様子、そしてエキゾチックな異国を思わせる、雄大かつどこかコミカルなメロディに胸が高鳴る。イントロから繰り返される弦楽器のリフレインの耳に残るメロディは、欲しいところに手が届かないアレンジをされがちだったORASでもきちんと残っており、かなり良いアレンジになっている。

 

余談なんだけど、ORASの「113番道路」って、なんか謎の音が入ってないか?ずっと疑問なんだけど、「カチ カッチ」って一定のテンポで変な効果音が鳴っている。あれ何ですか?誰かわかる人いたら教えてほしい…。アレンジにしても異質すぎる

 

210ばんどうろ(昼)(DPPt)作曲・編曲:一之瀬 剛

ポケモンの道路BGMの中でも、私が1位2位を争うレベルで好きな曲。冒険もここまで来たか、という壮大さと、広大なシンオウの土地を駆け抜ける軽快さを感じる。夜の方が半音低く、テンポも少し遅い。特筆すべき点は、アニメのアレンジが素晴らしいということだ。ゲームよりもゆったりしたテンポで、ギターやベースが効いていた原曲とは違い、主旋律にはバイオリンやフルートなどの涼やかな音色が使われている。それにより、夏の北海道を思わせるような、やわらかな緑が生い茂る雄大な大地、清涼な風が吹抜けるような空気感を醸しているのだ。また、アニメBGMならではの“アウトロ”が用意されていることも大きい。主にエンディングに向かうときに使われることが多く、アニポケによくあるやりすぎなくらい壮大なアレンジがマッチしている。ぜひ聞いてみてほしい。

 

216ばんどうろ(昼)(DPPt)作曲・編曲:一之瀬 剛

終盤に訪れる、しんしんと雪が降り積もる道のBGM。キラキラと新雪を思わせるようなイントロから、一気に賑やかなメロディへと変化していくのが面白い。鈴が効果的に使われており、ポケモン世界ではダイパで初登場した”雪”ステージに彩りを添えている曲。これ以降登場するポケモンの雪BGMは、厳しめのものや静かなものが多く、明るくポップな216番道路は少し珍しいのかもしれない。

 

2番道路(春~夏)(BW)作曲・編曲:佐藤 仁美

1ループが短いが、展開が楽しく聞き飽きない曲。最後の方に入る「ピーピッピッピー ピッピッピー♪」というホイッスルの音がめっちゃ好き。BWで初めて導入された”季節”という概念により、BGMにも変化がある。秋~冬はイントロとアウトロにピアノやグロッケンの音が入っており、若干落ち着いた雰囲気になっている。

 

4番道路(BW)作曲:増田 順一 編曲:景山 将太

BWの導入にもアレンジが使われている曲。イントロから続くメロディの雰囲気が、楽しいだけじゃない感じが好き。なんと季節でそれぞれイントロのアレンジが違っていて、春はスタンダード、夏はトランペットで元気に、秋はマリンバで木の実が転がるような楽しさ、冬はグロッケンでしっとりとしたアレンジになっている。

 

スカイアローブリッジ(BW)作曲・編曲:景山 将太

ヒウンシティに行くまでのとても長い橋。あのグルグルと切り替わるカメラワークを思い出す人も多いと思う。歩き続けるとちょうど橋を渡り終える頃に曲も終わるようになっていて、長めの曲になっている。都会のオシャレな雰囲気と、高いところの澄んだ空気も感じさせる爽やかな曲。

 

ビレッジブリッジ(BW)作曲・編曲:一之瀬 剛

大きな橋の上に民家があり、人々が生活しているという変わった場所。かなりロマンがあるが、モデルは実際にこのような光景が見られるフィレンツェのヴェッキオ橋とされている。穏やかで民族的な雰囲気を持つ、のどかな郊外を感じる曲。ここは自転車に乗ったりなみのりをしてもBGMが変わらない。人々に話しかけると楽器が加わり、完成形となる。加わる楽器は、草笛、アコースティックギター、ボイスパーカッション、そして歌声。

 

8番道路(XY)作曲・編曲:足立 美奈子

イントロから入る鐘の音が印象的な曲。シリアスながら勇敢さもあり、途中の上昇していくメロディも非常にポケモンらしい曲になっている。最後のほうのデン!デン!(カーン!)というキメが気持ちいい。今作から作曲家陣に加わった足立さんの曲は、非常にポケモンの世界観に溶け込んでおり、仕事のうまさを感じる。

 

18番道路(XY)作曲・編曲:景山 将太

物語の終盤に向かって行くときの、壮大かつ少し切ない感じのメロディが素晴らしい。ゲームとしてもやや影の薄い印象のあるXYだが、道路BGMとしてもかなりの良曲だと思う。少しアニポケっぽいアレンジに感じるところも、ポケモンにおけるオーケストラの使い方に馴染み深さを覚えるので良い。

 

メレメレ島1番道路(SM)作曲・編曲:足立 美奈子

基本的に「1番道路」に当たる曲は好きなのだが、久しぶりにおおっ!となったのが、サン・ムーンの1番道路。ゲームBGMというよりかは、ひとつの曲としてのメロディ展開がハッキリしていて、ループも長い。アローラ地方特有の民族的な穏やかな空気感と、冒険の始まりを予感させる明るいながらも力強いアレンジ。サン・ムーンは、一つのメロディが次の町や道路にアレンジが使われるという特色があり、そのほか『リリィタウン』などもこの『1番道路』のアレンジになっており、地域特有の一体感を感じることができる。

 

施設編

※基本的に野生のポケモン等が出て来ない店や建物などを「施設」とし、それ以外を「ダンジョン」とする。

ジム(金銀)作曲:増田順一

お馴染み、各地にあるジムの曲。BW2では各ジムでアレンジが違うなどの趣向が凝らされていたが、私はこの金銀シリーズの曲が一番好き。どっしりしたテンポ感と、ほどよい緊張感があって、ジムリーダーの迫力が伝わってくる。BWも割とこのアレンジに近いので好き。でも、BW2のタチワキジムのバンドアレンジみたいな変化球も好き。

 

コガネゲームコーナー(金銀)作曲・編曲:一之瀬 剛

近年の作品では見かけることが無くなったゲームコーナーの曲。赤緑ではそのまんま『カジノ』というタイトルで、賑やかで華やかさを感じる曲だったが、金銀だとオシャレでカッコいい感じになっている。

 

ポケモンリーグ(金銀)作曲:増田 順一

やっぱり初めて挑んだリーグということもあり思い入れもあるが、GB音源でも伝わる重厚感と緊張感、強者に挑むぞ!感がたまらない。XYのリーグもちょっと似ている。HGSSのアレンジでは鐘の音も加わり、更に荘厳な感じが増している。

 

かぶれんじょう(HGSS作曲:増田 順一 編曲:景山 将太

エンジュシティにある、イーブイの進化系を使う”まいこさん”とバトル出来る歌舞練場。ジョウト地方ならではの、和のモチーフがそこかしこに設置されている。HGSSでは、上記のエンジュシティのように、琴や笛の音色が使われており、艶やかな雰囲気を醸し出している。まいこさんとのバトルには、固有の視線BGMが使われている。

 

フレンドリィショップ(HGSS作曲:一之瀬 剛 編曲:景山 将太

金銀にはお店のBGMが無いが、ルビサファから新規で追加されたので、逆輸入というかたちになる。好きな理由は、一番普通のコンビニっぽいから。

 

海の科学博物館(RSE)作曲:増田 順一 編曲:青木 森一

ホウエンの海についての研究や、船の模型が展示してある施設。ピアノの美しい旋律で落ち着いた気分になる曲。赤緑版の『サント・アンヌ号』のBGMのアレンジで、海の多いホウエンで聴けるという遊び心がある。

 

ポケモンセンター(RSE)作曲:増田 順一 編曲:一之瀬 剛

おなじみの施設。BGMのメロディ自体は変わっていないが、各シリーズでアレンジが全く異なるので面白い。RSEのアレンジはかなりゆっくりとしたテンポで、ホウエン地方のあたたかな気候が感じられるのが好き。ポケセンに限らず、ホウエン地方の曲は全体的にゆったりとしている曲が多い気がする。

 

けんきゅうじょ(DPPt)作曲・編曲:一之瀬 剛

ナナカマド博士の研究所の曲。これまでの明るかったりにぎやかだった研究所のBGMとは違って、涼しげな清潔感があり、博士の威厳を感じる曲。私のイメージする正統派な”研究所”な雰囲気があって好き。シリーズの中でも珍しく、オープニングの導入にもアレンジが使われている。博士が出てくるのだから当然と言えば当然なような気もするが、意外にも研究所のBGMが導入に使われているのは、他ではXYのみ。

 

バトルステージ(Pt、HGSS作曲・編曲:佐藤 仁美

プラチナから登場したバトルフロンティアの施設の一つ。フロンティアブレーンのステージマドンナ・ケイトには散々な目に遭ったが、曲がかなりオシャレで正に最先端のファッションショーのような洗練された印象を受ける。

 

バトルサブウェイ(BW)作曲・編曲:一之瀬 剛

BWではバトルサブウェイというシステムの施設がある。ここではトレーナーと連戦するたびに車両が移り変わるのだが、最初はリズムのみ、次にベース、そしてメロディ…とどんどん音が加わって賑やかになっていく。サックスやトランペットが使われておりジャズ調でカッコいい。サントラに入っているのは最初から全ての楽器が加わったバージョンなので、連勝しなくても聴くことはできるので、楽器が少ない状態の方がレア。

 

パルファム宮殿(XY)作曲・編曲:足立 美奈子

カロス地方にある大きな宮殿。フランスをモデルとしたカロスには、宮殿や大きなお屋敷がたくさんあるのが特徴的。優雅なティータイムといった雰囲気のBGMを聴きながら、美しく刈り込まれた庭を散策するととてもお上品な気持ちになる。

 

カロス発電所(XY)作曲・編曲:景山 将太

個人的に、シリーズ全体の中でも隠れた名曲。ポケモンにおける”発電所”のイメージと違わず、悪の組織関連のイベントが起こる『ボール工場』でも使用されるためか、薄暗くてダウナーな感じの曲。基本的に懐かしめの電子音で構成されているが、途中でストリングスが入ったりチェンバロのような音が入ったりと、ミステリアスな雰囲気も併せ持っている。Aメロ→Bメロ→Aメロ→サビという展開になっており、細かくアレンジが変化していくので長時間聴いていても飽きない。

 

我が家(SM)作曲・編曲:足立 美奈子

サン・ムーンにおいて、シリーズの中で初めて主人公の家のBGMがついた。アコースティックギターウクレレ、様々な打楽器が使われており、南国のあたたかな風や、人々の明るい気質を感じることができる。

 

キャプテンの試練開始!(SM)作曲・編曲:一之瀬 剛

サン・ムーンにおける、ポケモンジムにあたるBGM。厳密にはジムではないが、課された試練に挑み認めて貰うという点では共通している。明るいメロディでありながら、一筋縄ではいかない手ごわさも感じる曲。また、この曲のメロディが別の機会に行う戦闘曲にも使われているのが熱い。

 

エーテルパラダイス(SM)作曲・編曲:足立 美奈子

傷ついたポケモンの保護活動を行う組織『エーテル財団』が管理する人工島、およびポケモンの保護研究施設の曲。真っ白な建造物とたくさんの豊かな植物と相俟って……幻想的で、どこか浮世離れした、不思議な浮遊感緒ある曲。しかし、『エーテル財”団”』ということは……ということもあり、ストーリーが進むにつれて明らかになる情報を知る前後では印象の変わる曲でもある。

この施設を訪れるに、とある人物とバトルすることになるのだが、その戦闘BGMにこのエーテルパラダイス(エーテル財団のモチーフ)のメロディが隠れて入っており、実は関係性を仄めかすものとなっている。

 

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