【ライブレポ】ポルノグラフィティ 19thライヴサーキット 『PG wasn't built in a day』

2023年9月より、25周年イヤーに突入したポルノグラフィティ。20周年の東京ドームがつい最近のことのように感じられるため、もう5年経ったの?!という気持ちでもある。ホール公演が多かったため、アリーナツアーは2018年の『UNFADED』ぶり。また、周年で且つアルバムの無いツアーということで、選曲にも期待が高まる。更に今回は、初めての試みとして「カメラで撮影可能な時間を設ける」ということも大きな話題となっていた。正直なところ、撮影に関しては不安な気持ちも大きかったが、行ってみないことにはわからない。「ポルノグラフィティは一日にしてならず」というタイトルを冠するこのツアーは、一体何を見せてくれるのだろうか。
ちなみに公式もなんとなく迷っていた様子の『ワズビル』というタイトルの略称は、ポケモンみたいでかわいいので結構好き。

<参加公演>
2024.1.13  ポートメッセなごや 第一展示館
2024.1.20  北海きたえーる
2024.2.10  さいたまスーパーアリーナ
2024.2.11  さいたまスーパーアリーナ
2024.3.9  福岡国際センター
2024.3.30  有明アリーナ

☆ステージ
会場に入ってまず目に入ったのが、大きなモニターに映る城壁だった。ヨーロッパの城のような石造りの堅固な壁が静かに映し出されている。映像の両端には、金色の文字でツアータイトルが印字されている深紅の垂れ幕がゆっくりとはためいている
。アリーナツアーのセットらしく、センターステージは横が広く、真ん中からはアリーナ中央に向かって花道が伸びている。花道は中腹ブロック付近まで長さがあり、いつもより幅も太く、ぐねぐねとうねった特徴的な形をしていた。

花道はこんな感じ。蛇行しているのと、幅が広めなことがわかりやすい。
…自分が撮った写真を載せられるの、かなり革命だ!!撮影OKタイムに時に撮った写真なのだが、何の時なのかは後述。

☆開演前~オープニング
入場前の話になるが、今回はツアートラックを置ける会場が少ないため、代わりに同じデザインのフォトブースが各会場に設けられていた(サムネ参照)。初日はみんなそわそわと遠巻きに写真を撮っていたが、ツアー途中から長蛇の列ができる人気スポットになっていたため、早めにカメラに収めておいてよかったと思った。
アリーナツアーではお馴染みの客いじりのコーナーは、久々に誕生した新しいナビゲートキャラの「真実のクチ所長」が担当していた。今回、モチーフが「ローマ」「塔」「工事」という、統一感のあるような無いような感じだったため、その中でも「真実の口」から引っ張ってきたのは意外……かと思ったけど、ポルノチームってそういえば前からわりと突拍子もなかったなと思った。

客電が落ち、ファンファーレが鳴り響く。マーチのようなドラムのリズムに合わせて聞こえてきたのは、なんと行進曲風にアレンジされた”あの曲”のメロディだった。瞬時に対応し「Fu Fu!」と声を上げる客席。声に応えるように、ステージの奥からサポートメンバーが出てくる。そして、新藤晴一が、続いて岡野昭仁が登場し、曲がりくねった花道を先端に向かって歩いてくる。アリーナ席から見ると、少し傾斜がついていたようで本当に城から出てきたように見えた。歓声の中をゆっくりと歩いてくる2人の姿はまさに、王の帰還とも思える堂々たる姿であった。

M1  Century Lovers
そのままイントロへと続き、なんと1曲目から銀テープが!!アンコール以外での珍しい『Century Lovers』に会場は大盛り上がり。今回、東京ドーム以来4年ぶりの声出し解禁ライブということもあってか、向こう側の”やる気”をひしひしと感じる。会場の「Fu Fu!」の大きさに思わず笑みをこぼす昭仁。

M2  テーマソング
感想としては「なるほどね。」といったところであるが、昭仁の「やっと歌えたね~!!」という言葉に、4年という月日の長さを感じた。声が出せない期間であるにも関わらずライブでやり続けていたのはこのための刷り込みだったのか、と思えるほどの会場の歌声の大きさに、曲の目的がようやく果たされたなぁという実感があった。

M3  キング&クイーン
正直に言うと初日は3曲目にして「えっ今回こういう感じ?!」と思った。ド直球に明るい曲の連発に早くも胃もたれを起こしかけていたが、声出しがやりたいことはわかっていたのでなんとも言えず。しかし全貌が見えた2公演目からは普通に楽しすぎる♪♪♪となった。むしろ最初にこのテンションの曲を消化してくれたのはありがたいともいえる。《限りある人生 たとえ満たされても 留まることを選ぶより また次の一歩を刻む いつでも挑戦者でいよう》と言葉通り歩み続けて生きたポルノが歌うのは結構グッとくる。

M4  Mugen
こういう感じ?と思わせておいてここに『Mugen』を置いてくるのはずるすぎる。というか、ほぼ3曲目でMCを挟むのがこれまでのセオリーだったため完全に油断しており、やられた!!!と思った。きちんとカッコいい曲で締めてくるあたり、すでにポルノに転がされている感覚がある。《それは祈りの姿に似ていた》で昭仁が跪いて祈るポーズをするのが大好きなので、毎回わかっていても興奮した。2番に入ったあと、昭仁が下手から上手に走りながら大移動しスピーカーを飛び越えていく(もちろん歌いながら)のを当たり前にやってのける姿をみて、やっぱアリーナツアーってこれだよな!!と思う。Mugenのギターソロの晴一ってなんであんなにカッコいいんですか。

ここで最初のMCに。「わしらがーーー!!ポルノグラフィティじゃ!!」に\イェーーイ!!/と返せるのも、久々の体験となる。
昭「ライブで声出しができるんは4年ぶりなんじゃけど、みんなすごいよ!本当にすごい!みんなの気合が伝わって来とるけぇ、わしらも大いに盛り上げていきたいと思います!」
晴「今回のライブから、実は初めてやってることがあって。人生で初めて、コンタクトレンズをつけとんよ。なんか、せっかくこういうステージでやってて、楽しんでるお客さんの顔とかがちゃんと見えてないのって、もったいないなと思ってきて。それでつけてみたんですけど……よく見えますね!なのでこう、皆さんの顔をしっかり見て帰ろうと思います。」
このコンタクト談義は毎回やっていて、昔からコンタクトをつけている昭仁に「今更?齢50を目の前に?」「楽屋でうるさいんよ、入らないだの表裏がわからないだの」など茶々を入れられていて、最終的には「明日で大騒ぎが終わると思うとせいせいしますね」と言われていた。
昭「え~新年から能登半島の方で大きな地震があって、まだ復旧が続いている中で不便な暮らしを強いられている人もいると思います。心から、お見舞い申し上げます。こういう震災や大きな被害に対して、わしらみたいな存在ができることは少ないんだけども、今日最高のライブをして皆さんが元気になって、その力が大きなエールになって遠くまで届くことが、わしらにできることなんじゃないかと思っております。なので、ここから一緒に多いに盛り上げていきましょう!!」
あえてこういった話題に触れてくれる昭仁の真摯さが好き。
昭「ポルノグラフィティは今年25周年を迎えるということで、まぁ今までも心の距離が離れていたわけではないけども、改めて皆さんと一緒に、セレブレーションして、リユニオンしていきたいと思います!聴いてもらう曲は、『REUNION』」

M5  REUNION
初日はMCの流れをミスってやや「『俺セレ』じゃないんかい」という空気になってしまったが、暗いステージが寒色のレーザーに照らされ、緊張感のあるピアノのイントロで一気に空気が引き締まる。『REUNION』の頻度が高いのはかなり嬉しい!惜しくもシングルカットされなかった曲ではあるが、こういうアップテンポではないマイナー調のタイトなロックナンバーはどんどんやってほしいのでこれからも随所で披露してほしい。この曲はなんといってもCメロの《止まった思考と 固定された視点だ I am you,Here is there 真理を孕んだこの矛盾》というパートの岡野昭仁の咆哮にも似た歌声が好きすぎるので、毎回自然と息を止めて聴いた後、感嘆のため息を漏らさずにはいられなかった。

M6  俺たちのセレブレーション
頭サビのあとにボン!と火花が上がる。俺セレは2曲目でした。こういうアニバーサリーな雰囲気によく似合う曲だし、ライブで聴いてこそのお祭り感があるので結構好き。バックモニターにこれまでのライブの映像が次々と映し出される演出があり、ステージと交互にチラ見しながら2人とも若っ!あっあのライブだ!等と楽しんでいた。
《今日の月は格別に綺麗でしょう》から昭仁がセンターで黄色いライトにパパパパ~っと照らされるところが好き。あと冒頭で《丸い月》を大きな黄色いライトで表現していたのもよかった。

M7  アニマロッサ
なぜか披露頻度が低い『アニマロッサ』だが、ここできちんと渋めのシングルも押さえてくれるのは嬉しい。間奏では原曲にないサポメンによるソロ回しと、晴一の長めのギターソロがありとてもカッコよかった。モニターの映像が最初はモノクロで大サビでガラスが割れ、カラーになるという演出がされていてドラマチックになっており好きだった。原曲は割と内なる情熱を燃やしている感じの雰囲気だが、ライブで聴く昭仁の歌唱は圧倒的に力強く、アッチィ!!!という迫力があり素晴らしかった。

今ツアーの中で、この『アニマロッサ』という選曲が個人的にトップレベルで刺さっていて、毎回この曲を聴くたびに岡野昭仁にメロメロになっていた。
なんていうか……これまでこの曲にそんな感情は抱いていなかったのに、歌詞全体を通して改めて聴くと、このタイミングの『アニマロッサ』ってポルノグラフィティから私たちファンへのラブソングなんじゃないか?という思いが強まってしまった。

君がここにいることで僕は僕でいる意味を知るんだ
ほとばしる真っ赤な愛情 僕の命を燃やしてる
君の為に僕はいるから
この肉体(からだ) この心 君をずっと守りたい
そばにいる 終わりまで 離さない

ファンへのラブソングなんじゃないか?(2回目)
実際この曲はラブソングではあるとは思うんだけど、この25周年というタイミングと昭仁らしいストレートな歌詞が妙に刺さってしまい……私は常にポルノグラフィティと生涯を全うする気満々のため、《君とここにいることを僕はそれを愛と呼んでいいのかい?》《離さない 終わりまで》なんて言われると、言質取ったから!!みたいな気持ちになった。勝手に。

M8  メリッサ
ベストアルバムでも出したのかってくらいバンバン有名タイトルを出してくるあたりポルノの持ち球の多さを実感する。今回珍しくイントロのパパン!パン!という手拍子の時間が無かったのがちょっと寂しかった。ライブのメリッサといえばあのサビのロングトーン……だと思っていたのだがそれもやや控えめ。なので割とスタンダードな印象を受けた。
ANIPLEXのイベントにシークレット出演し、ハガレン枠で『メリッサ』を披露したことで結構反響があったことは知っていたが、それがきっかけでツアーのチケットを取ってくれた人をSNSで見かけたりしたので、やっぱりヒット曲があるって強いなぁと思った。

M8' ミュージック・アワー
愛知公演より後から入れ替え枠となったことで、『メリッサ』の方があまり回数を聴けず。『暁』ツアーではファンクアレンジだったが、今回はこちらもスタンダード。映像もいつもの感じになっていて、落ち着くなぁと思った。

ここで、今回は太い花道が伸びているので、その先端に行ってセッションをやりますと宣言があり、昭仁の掛け声でスタッフによるセッティングが始まる。
ここで毎回、準備の間の繋ぎトークがわりと長尺で行われていた。内容としては、いつもの他愛もない話を膨らませたようなものが多く、公演ごとに違う話をしていた。覚えている中では、
・札幌:ホテルのテレビで見たイオンのCMで作っていたパスタがおいしそうだった
・埼玉:「さいたまスーパーアリーナでやります」って言うとやっぱり気持ちいいよね
・福岡:X JAPANのToshiさんがサウダージを歌っていた、緑黄色社会がTHE DAYをカバーしたらしい
有明:コンタクトで騒いでいる晴一がうるさい、コンタクトの仕組みについて
大体こんなような話だった。
また、毎回「男のお客さんが増えた」という話をしていて、実際本当に増えたなぁと思った。私がライブに行き始めた頃は明らかに女の人が多く、そこから徐々に性別比が変わってきているなぁとは思っていたけど、ここ数年は更に顕著でもう5:5くらいになっている気がする。ロックフェス等の効果?わからないけど、同性の人にもカッコいいと思ってもらえるポルノはやっぱりカッコいいんだと思った。女性としては、テニプリを男性が読んでるみたいな嬉しさを勝手に感じている(?)
一通り話し終わると、2人とサポメンがぞろぞろと花道を歩いてくる。趣向を変えてステージを広く使ってくれるのは嬉しい。

M9  Sheep~song of teenage love soldier~(アコースティック)
初日で『Sheep…』とタイトルを言った瞬間の会場の叫びがすさまじく、同行者に「途中みんな“ミ゛ャッ!!”って踏まれたネコちゃんみたいになってた曲あったよね?」と言われた。それくらい、待ち望まれていた人気曲でもある。『テーマソング』の会場別円盤特典映像で弾き語りが披露されていたので、ライブで聴けるとは思っておらず、かなり嬉しかった。曲名の通り、すごく可愛らしい10代のラブソングだが、昭仁の歌声が明るくキラキラになっていてすごい表現力だった。ラスラビのフレーズを2回繰り返すのも好きだった。
途中までは「この曲はまだ30代の時に僕が作詞したんですけど、その時はまだ10代の頃の甘酸っぱい気持ちが残っていたのかな?もうアラフィフになってしまいましたけど、そんなような気持ちなんかを思い出してやってみましたよ。」というMCだったのが、最終的に「この曲をやるのは久しぶりなんだけど、カップリングの曲であまり日の目を見ない場所にあるのに、みんながワーッて言ってくれて、その反応を見て、皆さんが本当に細かいところまで大切にしてくれているんだなと思いました」という内容になっていた。ファンからすると当たり前のことで、もっとレア曲聴かせてくれ!とも思っているので、これからも素直に態度に出していこうと思った。蝙蝠やってください。

M10 ジョバイロ(アコースティック)
アコースティックでもう1曲、ということで『ジョバイロ』が。『暁』ツアーでも披露されたけど今回は弾き語り。ミナチンさんのアコーディオン演奏から始まるアレンジが素敵!やっぱり会場が昭仁の歌声でいっぱいになる空間は何にも代えがたい幸せな気持ちになる。ギターはスタンダードに晴一がガット、tasukuさんがアコギ。3本持ちってもうやらないのかなぁ。

演奏が終わり、ステージが暗転すると共に何か電子音のような音楽が聞こえる。モニターに、一輪の花が映し出される。そこへ、2足歩行のバッタのキャラクターが出てきた時に「あっ」と思う。雷と嵐の中、花の下で雨宿りをするバッタ……バックではミナチンさんが繋ぎのメロディを奏でてくれている。そして、予感通りの曲が始まった。

M11 フラワー
ここにどっしりとしたバラードが来る選曲。この曲は最初聴いた時に、半音下げているなぁと思ったんだけど、なんか音程がふわふわしてて、公演の中盤に安定してくるまでよくわからなかった。演奏は下がってるのに歌は原キーみたいな……?人と話していると、下がっているという人といや下がっていないという人に分かれていて、やはりどっちつかずに聞こえていたみたい。不思議だ。《春には氷を割って》から、緑色のライトとピンク色のライトに変わり会場いっぱいに花が咲いているような表現が美しかった。

M12 夜間飛行
「ポロン…」とピアノのイントロがなった瞬間、『BE』ツアーの衝撃が再来する。ここで?!今?!聴けるんですか?!と、喜びと驚きが混在した。アルバム曲はどうしてもシングルと比べるとそのアルバムツアー以外での披露頻度が減ってしまうため、なかなか聴ける機会がないのだが、本当に大好きな曲なので嬉しかった。
演出も非常に素晴らしく、モニターには飛び立つ飛行機と夜景が映し出され、花道は滑走路のように縁のライトが点々と灯り、サーチライトのような光の筋が会場を照らす。そして最後には飛び立った飛行機が着陸し、初めとは逆の順番でまた花道のライトが道を作る。花道までもが舞台装置になっていることは、スタンド席に座ってから初めて知ったので、やはりアリーナ公演は色々な角度から見るのが大事だなと思った。
進化し続ける岡野昭仁の歌声は更に艶っぽく、後半の公演はほとんど目を閉じてうっとりしながら聴いていた。一点気になったのは、サビ終わりのフレーズが若干原曲と違っていたことだが、昭仁はあまり露骨に歌い方を変えないタイプだと思うので『続』のドリーマー現象が起きていたかもしれない。

ここで、暗転したステージから昭仁が捌ける。聴いたことのないメロディが流れてきて、新しいインストのコーナーになった!……と思ったら、なんと晴一が歌っている!!!というより、なんか見たことある機械を使っている!晴一は確かにマイクを通して歌っていたが、ギターの音を声に変換する機械を使って歌っていた。恐らく、ヴォコーダーもしくはトーキングモジュレーターという機械だと思うのだが、素人目にはどちらかわからない。
とにかく、このインストが本当にカッコよかった。晴一の歌声は『ウェンディ』や『Hey Mama』でも聴ける通り、いつもだとふわふわとした感じなのだが、この「ギターを言語にしている」感じがめちゃくちゃ刺さった。これまでの『didgedilli』などのインスト曲も好きだし、やっぱりギターを弾いてるところが一番カッコいいなぁ…と思っていたのだけど、この「ギターで歌う」という技はさすがにずるい(?)。ほぼ1曲分くらい長さがあったし、音源化して次のアルバムとかシングルに収録してくれないかなぁ。勿体ない。

しかし結局どっちの機材を使っているのか気になる。FC会報とかで恐らく明かされるのだと思うけど、SNSでも意見が分散していた。この2つは音声を変換する仕組みが各々違うらしいのだが、調べてみたところ、
トーキングモジュレーター(トークボックス):「口の中に入ってきた音を声を出さずに口を言葉の形にして言葉にする」
ヴォコーダー:「マイクを通して楽器に言葉を入れ、楽器から電子音を出す」
という違いがあるようだ。トーキングモジュレーターを使っていた『NaNaNa サマーガール』の時はマイクとは別にもう一本機材があったから、多分ヴォコーダーの方…?

M13 オレ、天使
インストが終わった瞬間、サイレンが聞こえてきた時に「やられた!!」と思った。この流れはさすがに予想していなかった。アルバムの無いツアーはこういうところが面白い。しかし、再び登場した昭仁の姿に違和感が。……なんか、羽つけてる!!天使の!!天使だからって?!?なんで?!正直混乱してしまった。私はポルノにはこういうの求めてないんだよ……と最後まで納得できなかったんだけど、どうやらツアー終了後のポッドキャストによると昭仁には明確な意図があったようで。でもごめんなさい、要らないです…(笑)
演奏と歌唱はもちろん最高にカッコよかった。『UNFADED』とも違うアレンジで、わりと原曲寄り?今回はそういうアレンジが多い気がする。ギターソロ前の《赤い空が迫りくる》でめちゃくちゃロングトーンにしていてウワーー!!!てなった。冒頭と最後の語りがリアルタイムだったのも久々!ただ、昭仁が「今生きてる人間って100年後には誰もいないんだよな?」「誰も残ってないんだよな?」と毎回言っていて、微妙にニュアンスが違うのもまたご愛嬌だった。

M14 170828-29
ここでまた『BE』からの選抜。新藤晴一のシニカルな文学全開の選曲に唸る。『オレ、天使』とはまた違う方向で世界の憂いを切り取りつつ、重くなりすぎないロックナンバーにしていることでライブでも盛り下がらない。歌詞に合わせてピースサインの形(V字)に炎が出てる!

M15 アビが鳴く
私は普段あまりセトリに対して深読みしないタイプなのだが、今回アコースティックセッション以降のこのブロックの流れは非常に美しかったと思う。人の生について歌う『フラワー』で始まり、愛の残り香を描く『夜間飛行』で夜の空に飛び立ち、インストでガラッと雰囲気を変えたかと思えば更に高いところにいる『オレ、天使』から世界を俯瞰で見て、天使からの警告を具体化した『170828-29』、そして平和を祈る『アビが鳴く』。2人はあえてライブ中に言葉で語ることはしないが、押しつけがましくないしっかりとしたメッセージの忍ばせ方を感じた。
この『アビが鳴く』という曲をこのライブで聴けてよかったと思う。“平和”について歌詞を書くことの難しさを晴一は何度も話しており、書くことに対して抵抗があったとも言っていたが、私は結果的にこの曲が生み出されてよかったと思っている。

小さな船で波を切り裂き
朱い大鳥居をくぐれば
あらわれる水上の神殿
見上げて私は祈るよ

私は新藤晴一の、心の中に景色が広がるような情景描写をとても愛している。『アビが鳴く』はいつ見ても本当に美しい歌詞だと思う。ステージに立つ人が“戦争”や“平和”について明確に表現することは、時に個人の主張が強くなってしまったり、表現の意図とは別に説教くさく感じたり、シリアスで重くなってしまったりする懸念があり、想像以上にバランス感覚が求められることなのだと思う。しかし、私は2人の表現に対するバランス感覚がとても心地の良いものだと感じる。
音が薄めのオケをバックに昭仁のまっすぐな声が歌うことで、毎回ハッと引き締まった気持ちになった。ボーカルがきちんと前に出てくる感じの調整がかなり良かった思う。作曲は昭仁だが、この非常にドラマチックなメロディも大変素晴らしい。重すぎず、軽すぎず、アレンジも現代的でありながらもしっかりと心に届く、絶妙な曲だと思った。
また、『オレ、天使』の語りと『アビが鳴く』の歌詞に「100年」というキーワードが共通していることにも着目したい。『オレ、天使』では、語り手である天使が半ば嘲笑し諦めたかのように、

あーあ、これだけオレが正しい道に説いてやってんのに、
今生きてる人間って100年後には誰もいないんだよな?
かくも儚きかな……人生          
                 『オレ、天使』アウトロ部分より

と述べている。これに対して、『アビが鳴く』では

世界がどんなに変わっても
平和を祈る想いだけは
百年先に生まれる子らと
同じでありますように
                 『アビが鳴く』より

このように「未来」へ込めた祈りを歌っている。例え天からの啓示を受けたとしても、今を生きる人間はいなくなってしまうけど、せめて平和に対する気持ちはいつの時代も受け継がれ、恒久的なものであるように。セットリストがこんなにピタリと(恐らく意図的に)繋がった構成になっているのは結構珍しいかもしれない。

ここで、しっとりした空気のまま晴一が静かに話し始める。
晴「新曲を作ってきたんですけども。……あまり一般的な言葉じゃないかもしれないけど、経済用語で『失われた何十年』っていうのがあって。ポルノグラフィティの25年の活動も、歴史の中で見れば、すっぽりこの中に入ってる。けど別に、これまでのことが全部『失われた』ものかというと、そうとは思えないし。『明日はいい日だ』とか、『未来は明るい』とか、そんなふうに、ここじゃないどこかとか、今じゃなくて明日にしか幸せは無いのかっていうと、俺はそうは思わなくて。ここじゃない場所じゃなくても、今いるこの瞬間にも、幸せはあるんじゃないかという……そういう…曲です。聴いてもらう曲は、『解放区』。」

M16 解放区(新曲)
冒頭から、《夜の国の女王》というワードが出てきた時点で、あ~~新藤晴一の歌詞だ~~~!!!と思った。最初に聴いた時、全体を通して感じたのは、あえてポピュラリティを追求しすぎず、新藤晴一の言葉で書かれている”意図した手癖”のような手触りだった。晴一がずっと言ってきている「“明日はきっといい日だ”という言葉の不確定さ」を凝縮したような曲だとも思った。どこかじゃなくて、今ここにある幸せをみんなで嚙み締めよう、今という時間を、この空間を愛そう。ライブという『解放区』を、ここがファンにとって安寧の地であることを全力で肯定してくれる、優しい歌だと感じた。あえて晴一節全開で書いているのは、長年追い続けているファンには伝わるだろうという、一種の信頼なのではないだろうか。私はそんな風に受け取った。その言葉を、岡野昭仁の力強いボーカルが歌い上げて届けてくれるのがポルノグラフィティなのだ。

ここからライブはラストスパートへとギアを上げていく。「まだまだ盛り上がっていこうぜーーー!!」という昭仁の煽りが、会場のボルテージを上げていく。

M17 空想科学少年
個人的に、『空想科学少年』はシリアスな世界観が魅力だと思っていたので、この曲をここで使う?!という驚きがあった。確かに人気曲だと思うしカッコいいし私もベスト10には必ず入れたいくらい好きな曲だけど、盛り上がっていこうぜ~!!みたいな曲かなぁ?!《感情なんてもういらないよ》って曲だけどいいのか?!と最初は戸惑っていたけど、2人が異様に楽しそうだったのでそのうちどうでもよくなった。好きな曲が固定で嬉しい。
この曲では2人が花道まで歩いて来て、昭仁は縦横無尽に歩き回り、晴一は先端に立てられたスタンドマイクまで来る…という流れだったのだが、晴一はニコニコしながらゆっくりテコテコ…と歩いて来て慌ててシールドを挿す、というのをほぼ毎回やっていた。そのくせ階段に足をかけてギターを弾いててカッコいいしなんなんだこの人は

M18 ハネウマライダー 
初日だけはミュージック・アワーだったこの枠。結局後述の理由で愛知2日目からハネウマ固定になった。おふざけ無しの“男前ギター”が嬉しい。《Mirror取り付け 見つめた後ろに寄り添う人》で昭仁が親指で背後を指すと、その先に晴一がいる……というのを見るたびにさすがに”エモ”を感じた。別に昭仁は晴一を指しているわけでもないしポルノにどっちがリーダーとか無いのはわかっているけど、2人が見せてくれた景色が眩しかった。ラスサビでは花道の先端からブワーーーとキラキラの紙吹雪が舞う。東京ドームで見た『VS』みたいだった。今回は本当に声出しも特効もモリモリで、ポルノチーム側の「全部やっちゃお~」という気概を感じる。花道の先端付近で見たときに頭上からいっぱいキラキラが降ってきて、楽しかった。

M19 アポロ
すごい勢いの畳みかけ。来てくれたうちの一人が『アポロ』を生で聞きたいとずっと言っていて、始まった瞬間「ヒャア!!」と言っていて嬉しかった。今回、ポルノには珍しく“客に歌わせる”というシーンがあったが、私は最初乗り気ではなく……というのも、限りある人生の中で1秒でも長く昭仁の歌声を聴いていたいためで、その瞬間が削られるなんてもったいない……!!と思っていたのだが、昭仁があまりにも嬉しそうにするため、後半からは全力で歌っていた。まー、アニバーサリーだし、たまにならいいと思う。それにしても、一番有名な部分ならともかく、2番まで歌わせるのはファンのことすごく信じてるな…と思った。まぁ、歌えますけど。

M20 サウダージ
大盤振る舞いにも程がある。飛ばしすぎでは?!どこまでもエネルギッシュな姿を見せてくれるポルノ、改めてすごい。マイクを通してだが、昭仁のアカペラから始まるアレンジで『続』ツアーを思い出した……。『ハネウマ』が始まると、あーもうそろそろライブ終わっちゃうのか~という気持ちになるのだが、今回後半が怒涛の展開でまだ続くの?!まだ続くの?!嬉しい!って毎回思っていた気がする。昭仁の歌声が本当に素晴らしくて…初期の曲を聴くと、改めてその進化を感じることができて、何回か涙が止まらなくなってしまった。

M21 オー!リバル
最後の最後にこの曲。『ジョバイロ』『サウダージ』『オー!リバル』が競合するのは実は『UNFADED』ツアーと一緒なのだが、全く違う構成に感じたし、物凄い質量で最後まで押し切られた気分だった。声出しに始まり、声出しに終わる。やっぱり、全力で盛り上がれるライブは楽しい!と思った。『オー!リバル』という曲のパワーを再認識した盛り上がりだった。
曲の最後の「ジャーン!」に合わせて、オープニングで映像投影されていた大きな垂れ幕の本物がバサッ!と両端に降りてきて、大歓声でフィニッシュ。
『PG wasn't built in a day』—―—そのタイトル通り、これまでのポルノの歩みを思い出しながら一緒に駆け抜ける…そしてその道は、今日この瞬間へと間違いなく繋がっている。そんな本編だった。

久しぶりの「ポルノ」コールが会場に響く。今回は最後のブロックの勢いが凄すぎて、終わるたびに高揚感に息切れしていた。誰もいないステージに、ラストで落ちてきた垂れ幕だけが重そうに揺れていていて、それが先ほどまでの熱気の余韻を残しているようで、なんとなく毎回見ている時間が好きだった。
アンコールの声に応えてステージの明かりが点く。しかし、今回先に出てきたのはサポートメンバーではなく、ポルノの2人だけだった。

EN1 アゲハ蝶弾き語り)
2人だけのアコースティックセッション。ツアーの中盤あたりから、昭仁のいつものアコギが変わっていることに気がついた。あの粒立ったやわらかい音とはまた違い、クリアでパキッとした感じの音色に変わっていた……気がした。『アゲハ蝶』自体は声出しができないライブ、それこそ初のオンライン配信ライブ『REUNION』からやってきていたが、やっぱりコーラスができるのは楽しい。
間奏からラスサビに入る前、昭仁が毎回客に対して「あと一回!」と言うのだが、転調してからも「ラララ」のコーラスがあるので、特にやめる人はいなかったと思う。なんで毎回言ってたんだろう(笑)。福岡では「あとひと回し!」と言っていて、コーラスのスタッフかなんかになった気分で妙にウケた。

EN1'   ハネウマライダー(初日のみ)
実は初日のみ『アゲハ蝶』に代わって珍しくアコースティックのハネウマが披露された。後から明かされたことだが、最初はここがセトリ変更枠だったが、実際やってみてここを『アゲハ蝶』に固定し、本編にハネウマを入れることで『メリッサ』の枠が入れ替わりになったらしい。確かに盛り上がりやコーラスの有無などを鑑みると、ここがアゲハ蝶固定でよかったとは思う。アコースティックのハネウマ自体はこれまでもアレンジ違いで披露されたことはあるが、図らずも1回のみの演奏を聴くことができて、レアな回となった。

1曲を終えると改めてサポメンの方々が登場し、いつものメンバー紹介が始まる。今回もドラムのみ2人体制。『暁』ツアーまでステージを降りてもPA卓にいてくれたnang-changは不参加となったのが少し寂しかった。
ここで最後のMCとなるが、福岡1日目の晴一のMCがかなり晴天の霹靂というか、心に残ったので記しておく。まず、この日までに晴一は何度か「わしらもここまでありがとうとは言うけど、君たちがずっと求めるけぇお互い様だと思うんよ。」というやり取りをしており、それがある前提でのMCだったのだけど。
晴「…君たちのおかげでここまで来れましたありがとう~言うんは勿論なんじゃけど。よく考えたら、ここまでやらせたのも、君たちなんだからね?…君たちのせいで。君たちが、やめられなくさせたんだからね?早めに切り上げときゃ、まだサラリーマンに戻ったりカタギになれたのに。もう会社勤めなんかできんからね!君たちが、それをできなくしたんだから。この先、急に飽きたとか無しだからね?これからもずっと、ついて来てくれないと………頼むよ。」
見間違いや誇張した記憶でなければ、このようなことを後半はポツリ、ポツリと小さめの声で言っていたのを、まじか?!と思って聞いていた。新藤晴一に、こんなにストレートに「ずっとついて来て」と言われるとは思ってなくて、動揺したが正直かなり「言質取ったからね!!」の気持ちだった。そんなこと言われなくても一生ついていくのに。ねー?(?)これに対して昭仁はウンウンと頷きながら聞いており、言葉に詰まった晴一に「もう一人の、会社員の適齢期を過ぎた人から…」と振られ通常運転で「ええ~~!!」といつもの調子で話し始めたのが余計に面白かった。
昭「えー、これまでの25年を振り返った時に『山あり谷ありで、紆余曲折ありました』みたなことを言った方がカッコいいのかもしれないですけど。よくよく考えてみたんです。その結果、ポルノグラフィティの25周年は、『順風満帆』でした!途中そりゃ迷ったこともあるし、この道でええんかな、なんかこの先が見えない、道が半透明になっとるぞ?みたいに立ち止まった時もありました。そんな時もずっと、ファンの方々の『もっと進め!もっと行け!』という声が聞こえてきて、その声のおかげで太くてまっすぐな道が見えて来たんよ。皆さんのおかげで、ここまで来ることができました。これからも、皆さんが作ってくれた道を歩いていけるようにまだまだ頑張りますんで、よろしくお願いします。」
初日は「一緒にピラミッドを作るみたいな、一生懸命に石を引いていって一緒に作るみたいな関係でいられたら」的なことを言っていた。それにしても、25年を「順風満帆」と言ってのける昭仁はすごい。絶対にそんなこと無かったと思うのに、それでもそう言ってくれることが、ポルノの優しさなんだなぁと思いたい。有明公演では「25周年の先もまだまだやりますんで」と言ってくれたのが、本当に嬉しかった。

ここで、客はあることに気づいていた。まだ、今回あるはずの”アレ”をやっていない。
昭「え~~次で最後の曲になるんですけども、思い切り歌って暴れて帰ってほしいと思うんじゃけども、今回はね、事前に告知があったと思いますが、ここで、ケータイやスマートフォンでの撮影タイムがあります!」
い、今?!?!?!?!?!?
「ちょっと待ってくれ」という会場のどよめき。いや、ここまで来た時点で薄々感じてはいた。いたけど、まさか撮影タイムが『ジレンマ』とは……。
「撮影どうしようかな、ライブは生が一番だから集中して聴きたいし気が散るの嫌だからやめようかな」「でもせっかくだし思い出として1公演くらいは撮りたいな」「どんな曲でやるんだろう、やっぱりバラードかな」などの葛藤は無に帰すこととなった。
昭「撮影して思い出を持ち帰って、でもちゃんと盛り上がってね?」
誰しもが心の中で「無茶を言うな」と思ったことだろう。『ジレンマ』では最後の力を出し切るまで、跳んだり歌ったり叫んだり、アホになって帰るのがセオリーなのに……そんなこと出来るのか?!と思いつつ、みんなあたふたとスマホの準備をする。

EN2 ジレンマ
結論から言わせてもらう。
スマホにポルノが残るの、めっちゃ最高~~~~~。

初日の写真。あたふたしてよくわからないままとりあえず撮った。

花道の先端付近だとこれくらい近かった。
正直、撮影と盛り上がるのを両方100%頑張るのは無理だった。どうしても盛り上がると撮影はブレるし、自分の声が入るのも嫌だし、かと言って撮影に集中すると動きはふにゃふにゃになる。しかし、終わった後に自分のスマホに今日の映像が残っているという事態は前代未聞であり、初日に見返した時は興奮した。結局、日替わりでサポメンのソロ回しもあるし、2人の動きも違うし、毎公演撮った。SNSに流れてくるような綺麗な写真はあんまり無いけど、自分だけの思い出が残るのはとても嬉しかった。でも、撮影自体には賛成だけど、やっぱりジレンマは勘弁してほしい。
今回サポメンのソロで『渦』『今宵、月が見えずとも』『まほろば〇△』などに当たるたび、本編でやってよぉ!!と歯ぎしりしていた。ロマポルに期待。

最後の昭仁の大ジャンプが各々のカメラに収められたところで、ライブは終了。
コロナ禍のライブでは行わなかった、メンバー同士手をつないでのお辞儀やハグなどを見て、やっと通常のライブが帰ってきたんだという実感が改めて湧いてくる。
晴「本当に、頼むよ!」(MCの内容を受けて)
昭「今日はほんとにありがとー!また会う時まで、元気でおってねーー!!!」
2人の生声が広いアリーナに響き渡り、今回のライブは大盛況のうちに終幕した。

 

今回は一口に言うと、お祭り騒ぎでめちゃくちゃアニバーサリー然とした楽しいツアーだった。始めこそ多少は戸惑う部分があったものの、セトリもいいし、撮影タイムも楽しかったし、深いことを考えずに「あ~~楽しかった!!」と清々しい気持ちで終われるライブだった。別に普段から難しいことを考えてライブに参加しているつもりはないけれど、単純に「めっちゃ楽しい!!」が詰め込まれたライブだったなと思う。あの衝撃の『BE』ツアー以降、ポルノが見せてくれる全てを受け取りたい!と意気込んでいたけど、そこまで考える隙もなかったというか。とにかく楽しかった。
近年、1公演の曲数は大体20~21曲で落ち着いていたので、やっぱり年齢を重ねていく上で必要な変化なのかな…とか思っていたら、今回また23曲に戻ったのも驚いた。どんなバイタリティ?声出し曲も非常に多く、ポルノチームもこちらの声をずっと待ってくれていたのかな、という気持ちになった。
でもやっぱり、羽は要らないね……申し訳ないけど。やっぱり2人はステージに立っているそのままの姿が一番カッコいいから、余計な装飾は要らない。もし曲に変化をつけるなら、演出やアレンジの方を変えてほしいと思った。あと、撮影タイムはまたやってもいいけど、ジレンマ以外で頼みたい。今回はいい記念になったけど。
ツアー最終日には25周年のロマンスポルノも発表され、横浜スタジアムは予想できていたものの、なんと因島での開催も!楽しみだけど、公式や2人から散々言われている通り、色々と不安な点も。でも、楽しめるようにこちらも努力したい。
このライブの期間中、『アニマロッサ』の歌詞を何回も反芻した。《君とここに居ることを僕はそれを愛と呼んでいいのかい?》そうポルノに問いかけられていたのなら、私は力強く頷いてみせる。25年という年月のその先へ、2人が連れて行ってくれる景色をまだまだ見ていたい。それはポルノのことを心から愛しているから。ずっとついて来てと言うなら、終わりまでそばにいるし、離さない。もうどこまでもついて行くからね!と改めて思えた、最高のツアーだった。

【セットリスト】
M1  Century Lovers
M2  テーマソング
M3  キング&クイーン
M4  Mugen
M5  REUNION 
M6  俺たちのセレブレーション
M7  アニマロッサ
M8  メリッサ(⇔ミュージック・アワー
M9  Sheep~song of teenage love soldier~(アコースティック)
M10 ジョバイロ(アコースティック)
M11 フラワー
M12 夜間飛行
M13 オレ、天使
M14 170828-29
M15 アビが鳴く
M16 解放区(新曲)
M17 空想科学少年
M18 ハネウマライダー ※初日のみミュージック・アワー
M19 アポロ
M20 サウダージ
M21 オー!リバル
EN1 アゲハ蝶 ※弾き語り(愛知のみハネウマライダー
EN2 ジレンマ

【ライブレポ】ポルノグラフィティ 18thライヴサーキット『暁』

2017年の『BUTTERFLY EFFECT』から、約5年の月日を経て発売されたアルバム『暁』を引っ提げたツアー。つまり、純粋なアルバムツアーも約5年ぶりということになる。『BE』ツアーから、ポルノのライブ演出は目に見える形でどんどん進化を遂げており、更にアルバム『暁』の尋常ではない完成度も相まって、私は開催前から否が応でも期待が高まっていた。
…『Visual Album暁』という、ファンの間でも壮大に物議を醸したコンテンツに水を差され、若干の不安もあったが、まぁポルノの二人はその辺の舵取りは上手いと思うので、ツアーに関してはあまり気にしないでおこう、という心持ちで参戦を待っていたが、果たして…というところである。

<参加公演>
2022.10.28 大分市民ホール iichikoグランシアタ
2022.11.16 函館市民会館 大ホール
2022.11.18 札幌文化芸術劇場hitaru
2023.1.24  日本武道館(ファイナル)
以上の公演の内容を織り交ぜて書いていく。主に初見時の大分公演をベースとした感想になるが、私の地元公演である札幌にて、なんと生まれて初めて最前列が当たってしまったため、ところどころ感情にバグが生じてしまっているのはお許しいただきたい。

☆ステージ
今回、会場内に入ってすぐ目に飛び込んできたのが、大きなドアと、吊り下がったシャンデリア、そしてたくさんの窓である。まるで古城の一室かのようなステージセットに、私は大興奮し、ドキドキが止まらなかった。まるで「あの曲」の世界観そのものではないか。ということは逆に、私が想像している「あの曲」はいつやるんだ…?持っていき方は?終わったらどうするんだ?と、ここまできっちり開演前からコンセプトが固まっていることが珍しく、逆に考えることがたくさんあった。
ドアには「18PG」という文字が。シャンデリアにはオレンジ色の光が灯り、窓枠は大小合わせて8つほどあった。

☆開演前~オープニング
今回、今までのツアーと比べて大きく変化したのが「開演前アナウンス」である。これまでは、会場のアナウンス担当者が諸注意を淡々と案内するという普遍的なものだったが、今回はなんと突然、しわがれたおどろおどろしい声の「人間諸君、今宵はポルノグラフィティ18thライブサーキット“暁”へようこそ…」というナレーションが入るのだ。どうやら彼は会場に住まう幽霊のようで、我々人間たちに向けて悪霊から身を守るためのアドバイスをしてくれる……という体で、会場の諸注意をしてくれた。開演前アナウンスに趣向を凝らすというのは『FCUW5』くらいしか経験がないので、既に新しい挑戦が始まっているのだな…!と期待に胸が膨らむ。
最後の開演前アナウンス……もとい、幽霊男爵からの諸注意が終わった後、ステージの床を這うスモークがモクモクと出始め、あたりを怪しげな雰囲気に変えていく。最前列で見た際はスモークがもろに顔にかかり、ちょっと面白かった。
「さぁ……聞こえてくるだろう……ポルノグラフィティがこちらへ向かう足音が……」
客電が落ち、コツ、コツ、という足音のSEが響く。いたずらな幽霊に煽られた客席の興奮が肌に伝わってくる。間を於いて、ステージ下手に設置されたドアからサポートミュージシャンが入ってくる。遅れて、漏れ出るスモークに包まれながら、この館の主たちが手を翳してゆっくりとした歩みで姿を現した。盛大な拍手に迎えられ、真ん中の人影がマイクの前に立ち、まるで儀式を始めるかのように目を閉じて、顔を下げる。狂宴は今宵、彼らに支配される。

M1  悪霊少女
予想を裏切らず、しかし確実な「正解」を叩き出してきたなという選曲。短くも印象的なイントロは、一気に物語の始まりを予感させ、没入感を高める。アルバムの中でも特に好きな曲だったため、序盤にサクッと消化されるには少々勿体なさを感じると共に、今回は1曲目のモニターが定まるのが遅い傾向があったため、どの会場でもしばらくボヤボヤした音でしか聞けないのは残念だった。しかし、昭仁のファルセットのロングトーンは音源以上に圧巻で、頭では「来る…!」とわかっていても、実際に聴くといたく感動した。そのすぐ後に畳みかけるようにギターソロが始まると、一瞬にして虜になるのを感じた。

M2  バトロワ・ゲームズ
フォン、というゲームの起動音(結局PS2そのものでは無かったらしい)が鳴り、オリジナルのゲームロゴのようなものがスクリーンに浮かぶ。窓枠のようなセットは個々に映像を映せるモニターだったことに、ここで気づく。ゆったりとリズムに身を任せて体を揺らす昭仁がとてもよかった。ラスサビの叫ぶような「バァァァ!!!トロワ・ゲーィムーズ…」を繰り返すのがカッコよすぎてこの時点で大興奮する。

M3  カメレオン・レンズ
暗めの曲の3連発。アンフェでは凝った演出で披露されたが、ここではあくまでサラッとシングルの1曲としての役割を果たしたといった印象。間奏の晴一とtasukuさんのツインギターに月のようなイエローのスポットが当たっていたのが良かった。

MCを挟み、次のセクションへ。大分はツアーで回るのが14年ぶりだったらしく、待たせてごめんねと昭仁。「14年前も来たよって人おる?おお~嬉しいね!」「14年前って言ったら、iPhone3の時代らしいよ。LINEも入ってないって。きっとYouTubeも見れんじゃろうて」「初めての人らもようさんおるけぇ今日はわしらも、しんけん!しんけん!!盛り上げるんで!!」と言っていた。真剣?と思ったが「しんけん(すごく)」という大分の方言だったらしい。

函館では、10年ぶりのライブという話になり。「函館言うたらGLAYさんじゃろ」という地元の話や、「それが悪いとかじゃないけど今回のツアーでここ(函館市民会館)が一番小さい会場なんよ。だから距離が近いけぇみんなで大家族みたいな感じでね、楽しんでいけたらと思います」という話があった。

M4  ジョバイロ
最近聴いたよなぁと思ってしまったが、直近で披露されたのが2018年のアンフェなので、4年前を最近と思ってしまうのをやめたい。ジョバイロはラテンの中でも低浮上のイメージがあるが、意外とこういう頻度でやっている気がする。今回の大きな変更点は、昭仁がギターを持たず、晴一がエレキ、tasukuさんがアコギという配置になったことだろう。エレキでジョバイロとは!非常に珍しい変則的な構成。音楽的に専門的なことはあまりわからないものの、ギターが2本あるとこういう時に良さを実感できるので、今後も続けてほしい。ギター弾く昭仁も好きだけど。

M4‘ ネオメロドラマティック
このブロックが、武道館でまさかの大幅セトリ変更。完全に油断していたので、イントロが聴こえた瞬間に挙動不審になってしまった。開始2秒でブチ上がれるネオメロが入ったことでこのセトリの印象も割と変わったのではないだろうか。声出しのできないネオメロはやはり寂しいものがあったが、昭仁が普段と同じように煽ってくれるのでとても楽しかった。「助けて」の歌い方はもう「たーすけてー」で固定なんだろうか。

M5  Stand for one’s wish
“稀”枠でここにツアー初披露の曲が。日替わりで『オニオンスープ』だったらしいが私は日程が被らずに聞けずじまい…。割と好きだから普通に聴きたかった。まぁ、実際ライブで聴いて思ったけど、知らなくてもなんとなくノれる曲にはなっていたので『Stand~』の方が使い勝手は良さそうではある。こういう爽やか系のアップテンポ曲って最近あんま無いから新鮮に感じた。なんていうか、メロディが若い。札幌で、晴一がなんかコーラスをやろうとしてできなかった?のか、終始ニヤニヤしていたのが謎で、一番前で見えてるんだからね!!と思った。やろうと思ったけど音程が取れなかった?

M5‘ プリズム
武道館にて、イントロがアレンジされており一瞬「何?!新曲?!」と思ったのだが、ギターリフが聴こえた瞬間ウオーーーー!!!!と心で叫んでしまった。ここにきて、20周年のメモリアルソング的立ち位置の曲が“稀”枠として披露されるとは。ずっとずっと聴きたかったし、いつやるんだよ~!と思っていたのでめちゃめちゃ嬉しかった。途中、鬼のような変拍子があるので全くノりきれなくて笑ってしまった。「ポイントは“無”になることです」と言っていた、あの難易度の高いギターリフを完璧に仕上げてきていた晴一に感動したが、顔が「やりきった顔」になっていたので微笑ましかった。「ファンのために作った」と各所で言っていたアルバム『暁』のツアーにおいて、≪気づいたら指をさして示してくれたのは君だった≫という歌詞を歌ってくれたことは、なんとも感慨深いものがある。本当にメロディも歌詞も、昭仁特有のドラマチックさが詰め込まれていて大好きな曲。

M6  サボテン
今回、既存シングル枠の予想が全くつかなかったため、意外と言えば意外だったかも。アウトロの昭仁のフェイクも原曲に近く、久しぶりにシンプルなアレンジだったように思う。そしてやっぱり、晴一のコーラスを見ちゃう。最後の方で緑色の丸いライトが重なってサボテンみたいになってたのがなんかウケた。

M6‘  愛が呼ぶほうへ
武道館でサボテンと入れ替わり。「この曲も皆さんに大切にされている曲だと思います」という前フリがあり、ピンときたものの、ここで?という気持ちに。なんとなく、最近の傾向からロマポルのイメージが強かったので、ツアーのセトリに組み込まれるのが新鮮だった。今回わりと既存シングルはどれもシンプルに原曲っぽいアレンジが多かった気がする。凝った作りのアルバム曲とのバランスを考慮していたのか?
ここでMC。大分では、晴一が2日前から現地入りして温泉に行ったよという話で。
晴「大分に来たんじゃけぇ、スタッフとかマネージャーとか、後ろの愉快な仲間たちと温泉行こうやって話になって。せっかくだから浴衣着ましょうよって話になって。唆されたんよ、スタッフに。でも、こういうのって『みんなで着ようね~』とか言って、わしだけ本気にしてたらどうしよう……と思ってロビーに来たら、みんな浴衣で、着てる~って安心して(笑)。浴衣着てぞろぞろ街の中を歩きよったんじゃけど、別府って、温泉街というよりは街の中に銭湯が点々とあって、ほんとに生活の中に温泉があるって感じで。みんな普通に生活しよんの。その中を明らかに観光客って出で立ちで歩くんはちょっと恥ずかしかったね。でも温泉入ったおかげで、体が動く動く~!」

函館では、北海道でライブをやるからってGLAYがわざわざ差し入れくれた話で「わしらもいい先輩にならにゃいけんね〜」って話の流れで。
晴「TERUさんにはコレ(手をバッと広げるやつ)があるけど、ポルノの決めポーズって何?
昭「そんなもんある人の方が少なかろう」
晴「でも氷室さんとかもあるじゃろう」
昭「決めポーズかぁ~……」
晴「函館の人ってGLAYさんは知り合いみたいなもんなんじゃろ?友達の親戚のみたいな…」
昭「ここにいるみんなサイン持っとるんじゃないの?GLAYさんのサイン持っとる人!……意外と少ないな?因島の人なんかわしらのサインみんな持っとるよ、1人3枚ずつくらい」
晴「ダブついとるけぇね」

札幌では「何か面白い話ないんですか?」という昭仁の雑なフリに対して「ん〜あるけど、言えん!笑」という"無"の会話をしていた。……思ったけど、最前だったせいで札幌のMCをほとんど覚えていない。二人がいる………という気持ちに支配されていた。

ここからアルバム曲のセクションに。このセトリの感じがアルバムツアーだなぁ~!と懐かしく感じる。

M7  ナンバー
ここで一つ言及しておかないといけないのが、『Visual Album 暁』についてである。本当に単刀直入に言うと、私は全く好きではなかった。いくらMVとは違う扱いだと言われても、どうしても受け入れられなかったし、見なければよかったと思ったほどの作品だった。ファンの感想も、肯定・否定があんなにもハッキリと分断されたような作品を、使うわけがないと思っていた。
曲が始まった瞬間、モニターを見て驚愕した。そこには確実にVAの映像が映し出されていた。私は特に『ナンバー』の映像がトラウマ級に苦手だったので、もう「どうして…」という気持ちでいっぱいになってしまい、初見の大分公演では気が散ってしょうがなかった。
ただ、曲が進むにつれ、不快な人物のシーンは丸ごとカットされて新しい風景の映像が追加されるなど、知らない人が見たら何のことはない、普段の映像と変わらないような仕上がりになっていることに気づき、幾分かホッとした。ただ、いつあの汚い映像が出てくるんだ…とビクビクしながら曲を聴く羽目になったこと、「これ使うんだ…」という落胆の気持ちになってしまったことは、拭い去れない事実である。
曲に関して言えば、アルバムのクオリティそのままで素晴らしかったとしか言いようがない。昭仁の歌について「CD音源みたい!」と言われると「いやライブはCDよりすごいから!!」と言い続けていたのだが、ここ数年であまりにも歌唱の技量が上がり、逆にCD音源に近づくみたいな現象が起きている気がする(?)。迫力は上乗せで、声の安定感はそのままみたいな。岡野昭仁の進化がいつまでも加速していくのがこわい。

M8  クラウド
こちらも、映像からは人物が削除されていた。特定のイメージがつくことを避けたためだろうか?ただ、この曲調でラーメンどんぶりとか蒸し器とかが映るのは心の中で笑ってしまったが…(撮影地が台湾のため)。
アルバムの中でも、ライブで聴くのをかなり楽しみにしていた曲。なんといっても、あのサビのファルセットがライブでどうなるのかということに着目していたが、さすがは岡野昭仁、見事としか言いようがなかった。数年前まで「ファルセットが苦手で…」と言っていた人間とは思えない(今も言ってるけど)迫力のあるパフォーマンスだった。公演の調子のよさのバロメータにもなっていた曲だとも思う。

※注:↑ここまではツアー後にすぐ書き始めていたけど、どうしても件の映像に触れないわけにはいかず、このまま書き進めていいのだろうか……とモヤモヤした気持ちになって途中で放り投げてしまいました。お蔵入りにするか迷ったけど、せっかくここまで書いたし、何より順番が変わったり歯抜けになることがストレスなタイプなので(?)19thツアーの感想の前に仕上げたいと思い、ここから下はゆるめに、覚えている範囲のことを書いていきます。もう2024年ですが…。

M9  ジルダ
これも映像が本当に邪魔だった……ツアーに連れて行ったうちの一人も「歌詞がところどころにテロップで出てくるから何か意味があるのかと思ったけど無さそうだったしちょっと気が散っちゃった」と言ってて、ですよね……となった。
ただ、やはり音楽と歌は素晴らしく……最終的にほぼ目を閉じて聴いていた。前の方に入ればあんまり見えなかったから前方入った人は気にならなかったと思う。この曲に入る前に、キーボードの皆川さんがアドリブでワンフレーズ弾いて繋いでくれるというシーンがあったのだが、毎回ロマンティックな演出となっていて最高だった。フレーズについての裏話は、ご本人がnoteに書いて下さっている。

note.com

特に札幌で演奏してくれたエビスビールのテーマソングが、曲のモチーフにも合っていて聴いた中では一番好きだった。
札幌公演においては最前でこの曲を聴けたことがかなり財産となった……。以前、アルバムの感想でも私はこの曲の主人公の男が理解できない!と滾々と書いたのだが、ライブでの岡野昭仁の表情がもう………素敵すぎてしまって……ちょっといたずらっぽく笑ったり、気だるげにゆっくり歩きながらチラリと客席に目線をやったりと……こんな表情で歌ってたんだ!!!という発見が多々あり……私の負けかも……と思った。でも負けたのは岡野昭仁にであってジルダの男にではない。断じて(?)

『ジルダ』が終わり、ここで着席してください、というアナウンスがあり、ぞろぞろと座る客。私としてはアコースティックでも別に立っててもいいのだけど、たまにはこういうのもアリかも。
「座って下さいとは言ったけど、ええ感じのとこで立ち始めてもいいですからね(笑)」という謎のMCがあり、2回目からはああ、と納得。元々は座らせる予定ではなく、大阪公演で機材トラブルがあったことから定着したものだったらしい。だからふわっとした流れだったのか?
「『続』の時もしばらくやってない曲をやったりしたけど、今回も見せ方を変えて聴いてもらおうかなと思いまして。この曲は、2009年の東京ドーム以来やってないけれども皆さんからの評価は高い曲で…」というMCから、察した客席が無言で色めき立つのを感じた。

M10 うたかた
『うたかた』は初めて聴くので、アコースティックアレンジでも普通に嬉しかった。ポルノの音楽チームは本当に既存曲のアレンジが上手い。元がエキゾチックな曲でもあるので、割とスタンダードな落とし込みのアレンジに昭仁の歌声が染み渡る。”今”の昭仁の声で聴けるのが何よりも嬉しい。あと、tasukuさんが加わり昭仁がギターを持つことが少なくなったので、それが見れたのも貴重。

M11 瞬く星の下で
序盤はしっとり、途中からバンドサウンドというアレンジ。ああここで立つのか、と自然と立ち始める客席。こういう空気の読みあいというか、曲による協調性が高いのはやはりポルノファンの特徴といったところか。東京ドームでやったのが記憶に新しいが、割と本人たちが気に入ってるイメージがある。別に嫌いではないんだけど意外なチョイス。温度感がちょうどいいのかな?

比較的にゆったりとした時間が続いたのち、「皆さんが生ける屍に~」との御触れ。こちらのリアクションを想定した投げかけに、向こう側が味を占めている感がある。もっと占めてくれていいから問題はない。

M12 Zombies are standing out
予告があっても、イントロで歓声が出せないのがもどかしい。ゾンビもしっかりブチ上げどころになったよなぁ~と嬉しく思う。こういう曲の需要をわかってくれているのが非常に嬉しい。ギターソロのキメで紫色のライトにカッ!と照らされる晴一が良すぎる。あと、「清らかな~」のパートから客席にフワ~とライトが向かっていくにが好きだった。

M13 メビウス
ここでか!!という静と動のギャップ。『続』ツアーの時とはまた違うアルバムアレンジでの披露となったが、こちらもいいなぁと思った。映像はなんか普通の、いつもの感じのやつになっていた。こういうのでいいんだよ……。ゾンビとはまた違う、深く重めの曲で重ねてきたのはなるほどと思った。

ここで昭仁が捌け、何やら更に怪しげな雰囲気に。なんと山口さんがコントラバスを持っている!始まったのは聴いたことのないインスト。シロフォンなども使われていてちょっとしたオーケストラのよう。バンド演奏というよりは何かのミュージカルの劇伴のような印象を受ける。私は毎回、なんとなく暗く深い森の中に迷いこんだような気持ちになっていた。後から明かされたことだが編曲はtasukuさんらしく、なんでもできる人なんだなぁ……と感心した。近年入ることの多いこういうインタールード的な試みは面白いので、いくらでもやってほしい。

M14 証言
ここからの繋ぎは、いわゆる「ヘソ」に当たるものだと思っていたので、半分くらい予想通り。半分、というのは『証言』は本編ラストに来てもおかしくはないと思っていたため。私は、個人的な感覚で言えば、最初からドラムが走っているイントロに少し違和感を感じてしまった。原曲の、静かな始まりが好きだったので…。ただ、パフォーマンスとしてはやはり圧巻。映像もVAから挿し変わっている!!嬉しい。曲を聴いた時にイメージしていたような、ヨーロッパの森らしきものが燃えている映像になっていた。『証言』という曲は使いどころが難しそうではあるが、またぜひライブでやってほしい。ドームのトワトワみたいな使い方もできるのではないだろうか……。

M15 アゲハ蝶
声の出せないアゲハ蝶もやはりもどかしさを感じるが、昭仁が一生懸命クラップを煽ってくれる。しかし、大分の公演では面白いことが起きた。既に始まっている曲を止めてまで、昭仁が一言。
昭「あのねぇ……速いよ!!(笑)」
そう、手拍子が異様に速かったのだ。確かにアゲハ蝶のラテンリズムの手拍子は、初めての人には難しく感じるかもしれないが、十数年ライブに通っている私ですら初めて体験するくらい、お客さんの手拍子が演奏より走っていた。後から一緒に来てくれた人に聴いたところ「県民性が出たのかもしれん…」と言っていた。真偽のほどは不明だが、かなり面白かった。

M16 ミュージック・アワー
最初、何の曲だろう?という長めのカッコいいイントロから始まり、なんとファンクアレンジでの演奏に!「あか!つき!」という昭仁のアドリブパートもめちゃくちゃいい。ポルノチームは既存曲のアレンジが本当に巧い。何回も聴いている曲でも、新鮮味を感じさせてくれる見せ方をしてくれるのはやはりライブの醍醐味でもある。こういうシングル曲の畳みかけが来るとライブも後半だなぁ~と思う。

M17 VS
『VS』は東京ドームでの感動的な思い出がぎゅっと詰まっていたので、ツアーでどう料理するんだろうと思っていたけど、いい意味で通常通りだった。むしろ、「金色の紙吹雪の中で花道を走ってくる二人を号泣しながら見てる」という朦朧とした記憶じゃない、ニュートラルな思い出ができたのは嬉しいかもしれない。(笑)

M18 テーマソング
アルバム曲だけど『続』でもやったし、曲のコンセプト的に声出しできない状況で2度はやらないだろう……と思っていたからセトリ入りしたのが意外。ていうか『ブレス』は?!いや声が出せないという点では同じだけどさすがに今回こそやると思ってた……。

比較的明るめのラッシュが続いたところで、雰囲気が変わり最後の曲へ。
昭「アルバムのタイトルにもなっている『暁』。暁は、夜明け前のまだ暗い時間という意味があります。暗闇の中に、微かに見える光、そしてその光の先には、もっと大きな光が待っている。そう信じて、最後の曲を聴いてもらいます。」

M19 暁

あゝ 大地に膝ついたままで天を仰ぎ

弱き者よ どれほど待っている? 暁

正直に言って、ここまであれこれ書いてきたが、全てはこの『暁』でチャラになると言っても過言ではないレベルのパフォーマンスだった。サビ始まりのこの曲で、文字の通り“大地に膝をつく”岡野昭仁を見た瞬間、「あ、私はこの人と一緒に死ぬんだ」と誇張抜きに本気で思った。それくらい、心臓を鷲掴みにされた。圧倒的フロントマンとして輝く存在である昭仁が、ガン!!とすごい勢いで崩れ落ちる姿はまるで助けを乞う様でも、祈りを捧げているようでもあり。岡野昭仁には、その場の空気を一気に支配できる力がある。その瞬間を幾度となく目にしてきた私でも、この膝をつくパフォーマンスはトップレベルで好きかもしれない。ちなみに、あまりにすごい勢いで膝をつくので途中からカーペットが導入されたらしい。
最前席でこの膝つきパフォーマンスを見たときは、初見でないにも関わらず、もう身動き一つできずにただ茫然と立ち尽くしてしまった。涙もボロボロ流れて、本当にただぼうっと心臓を握られながら立っていた。後ろの方で見ていた人に話を聞くと、最前付近だけ本当に微動だにしていなくて面白かったらしい。でもあんなもの浴びたらみんなそうなると思う。
『暁』という曲の魅力はアルバムを聴いた時点で相当なものだと感じていたが、それに負けない演出もしっかりと施されていて、バックにある窓枠のようなライトが組み合わさって漢字の「暁」となったり、《乱反射をして視界を奪う》で真っ白なライトが縦横無尽に動き回ったり、近年の演出チームの洗練されたテクニックがこれでもかと光っていた。(《視界を奪う》で昭仁が手で目を隠したのも本当に本当に好きだった)

曲が終わり、メンバーが帰っていく。始まりと同じドアの向こうに帰っていく姿は、あちらとこちらを隔てる異世界へ消えていくようにも見えた。程なくして、お決まりの「ポルノ」コール……はできないので、今回もボイスストラップの音が各所で上がる。私は結局購入していないので手を叩いていた。

アンコールの声もとい音に応えて、またメンバーが出てきてくれる。
昭「アンコールありがとう!!いっぱいそのボイスストラップ?も鳴らしてくれてありがとう!!」
晴「このさぁ、ボイスストラップが進化して音がでかくなったじゃろ。それで映画館で使えないってどういうこと?(笑)」
そう、今回発売されたボイスストラップは前回よりもパワーアップして音がかなり大きくなっていた。その結果、ファイナルの武道館公演でのライブビューイングが上映される映画館での使用が禁止されたのだという。そんなことある?
晴「なんでじゃろうね?映画館の音の方が大きそうなもんだけどね」
昭「花道~!流川く~ん!に混ざってアキヒト~!ハルイチ~!とか聴こえてくるかもってこと?」(※この頃『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットしていた)
晴「誰?!になるかもね(笑)」
なんていう話もありつつ、武道館では晴一プロデュースの舞台『ヴァグラント』の話にもなったり、それぞれの活動の話にも花が咲き。

EN1 Century Lovers
ロマポル以外の通常ツアーでは久しぶりのセンラバ。いつやっても飽きるということが無く、順当にアンコールだなぁと思える盛り上がりが感じられる曲。ツアーが始まる前に「ストラップにフーフーという声を入れてね」みたいなアナウンスがあり、あ~やるんだ~と思った。「Everybody(ボイスストラップを)押したり手をあげたり!!」という昭仁の煽りもせかせかしていてなんか面白かった。

EN2 OLD VILLEGER(新曲)※武道館公演のみまさかここで新曲発表があるとは思っていなかったので、すごく嬉しかった。『続』の時も言っていたけど、これからのポルノの在り方を示す一番の方法として「新曲を聴いてもらうこと」を考えてくれる2人が大好き。最近あんまり無かったタイプのゴリッとしたロックナンバーだった。歌詞のテロップが出ていたのでチラチラ見ていたのだけど、全体的に皮肉っぽい感じで、「予定調和」とか「お涙頂戴」みたいなパンチのあるワードが並んでいたのが印象に残った。《明日を変えたいならまず自分が変われ》みたいなのが出て、あっそういう感じ?と思ったら《そういうパターンでしょ?》と直後に来て、し、新藤晴一だ~~~~~!!!!!と思ったのを覚えている。

ラスト1曲となり、いつも通りサポートミュージシャンからメンバー紹介。ここで気になったことが一つある。前回の『続』ツアーで昭仁がポルノグラフィティここで、メンバー紹介をしたいと思います!……今思うと、この“ポルノグラフィティここで”って変だよね?だってポルノグラフィティって2人じゃん。」という突然の疑問を抱いていた回があり、この『暁』ツアーからちゃんと「ポルノグラフィティここで」と言わなくなっていたのだ。そこ律儀に変えるんだと思って、気づいた時に妙に面白かった。
最後の2人のMCで、晴一が大分で話していた内容が特に印象に残っているので残しておく。
晴「俺がなんでエンタメが好きなのかというと…こうして今、自分もそういう仕事をしてるけど、元は自分がそういうエンタメが好きだったからで。なんで好きなのかというと、小説だったり音楽だったり……まぁスポーツも言ってみればエンタメじゃけど、それは自分の人生ではない物語に心を委ねられるからだと思うんよ。スポーツ選手だってその人が頑張ってる物語に勇気をもらったり熱くなったりする、そういう他人の人生に委ねることで心の癒される部分、悲しみなのか憂いなのかわからいけど、とにかくそういう心の……(指で四角を書きながら考える)深い部分は自分じゃ入っていけない、触っちゃいけんところなのよ。わかる?それを少しでも、曲に委ねられるような、僕たちの音楽にもそういう役割が少しでもあればいいなと思いながら……やってます!」
私は晴一のエンタメに対するこういう姿勢が好きなので、いつもより踏み込んだ話が聞けてよかったなと思う。
また、昭仁からは今回のアルバムについての話が。
昭「昔は、アルバムや新曲を作ると、世の中とか、音楽業界という大きな世界に投げ込んで、どれだけ波を立てられるのかみたいなことを考えていたけど、今回の『暁』を作る時にはハッキリどこを向いたらいいか正解がわかったんよ。まずファンのみんなのことを考える、みんなの方を向けばいいものができるんだってこと。みんなに向けて曲を書くことで、『ポルノこんな曲あるよ』とか『こんなの出したよ』って、一生懸命に布教活動とか宣伝してくれるじゃろう?みんなが波を立ててくれるからいいものを作ろうと思える、それが本当にありがたいし、そういう関係が心地いいんよ。」
この話は、アルバムがリリースされた時から違うニュアンスで何度も出てきた話ではあるが、実際こうして本人達の口から「みんなのことを考えたらいいものができた」と言われるのは、改めてファン冥利に尽きる。なんといってもその答えが、あのアルバム『暁』なのだから、こんなに幸せなことはないだろう。2017年の『BE』ツアーでは晴一が「たくさん曲を作って、この1曲が何になるんだろうって思う時もあるけど、広い世界に投げ込んだ小さな波紋がバタフライエフェクトを起こしていけばいいなと思ってる」みたいなことを言っていたのを思い出して、こんなにハッキリとファンのことを想ってくれている、信頼してくれているという事実に嬉しくなる。やはり20周年の東京ドームから、私たちとポルノの関係性はグッと縮まったんだなというのを肌で感じられるようになった。

EN3 ジレンマ
やはりラストのジレンマは安心する。あまりちゃんとは覚えていないのだけど、サポメンのソロ回しの時にメンバーカラーみたいなのがついているのは気のせいだろうか?確かオンラインライブの『REUNION』あたりからなんとなくそう思った記憶があるのだが、今度気が向いたら確認してみたい。
最後の最後にかけられる、 昭仁の「自信持っていけ!胸張っていけ!!」というお決まりの言葉。私は札幌の最前席で、何度も貰ってきたその言葉が、改めて光り輝く宝物になった。一般的に誇れるステータスもない、努力も足りない怠けがちな自分にとって、この昭仁の言葉が眩しすぎて、そんなことを言ってもらえるに値する人間じゃないような気持ちが、年齢を重ねるうちに大きくなってきて。でも、初めて一番近い場所でこの言葉をもらって、やっと、「ああ、この人がそんな風に言ってくれるなら、自分も自信持っていいのかもな」と突然ハッキリ感じることができて。
最前席というのはただ近いだけじゃない、何もかもが違って見える場所だった。髪も、指も、爪も、体の厚みも、腕の血管も、喉の動きも、歌いながらのけぞった時の奥歯も、頭皮にかいた汗も、靴の高さも、靴下も、目をこする仕草も、目尻の皺も、ギターの金具で擦れたTシャツの生地も。
ライトを浴びた晴一の少し茶色い瞳の色が今までで一番綺麗に見えて、少し細くなったけどぱっちり二重の昭仁の黒い瞳は今までで一番優しくて輝いていた。瞳の表面って水分で濡れてるんだなぁ〜って記憶までもらっちゃって、いいんですか!?と思った。
一番びっくりしたのが、最後に2人が残ってお辞儀をしたときに、つむじが見えたことだった。人体の構造上当たり前なんだけど、「つむじがある!!!!!」と感動した。
そう、あの場所は2人が質量のある”人間”に見える場所だった。ステージと客席という境界線がありながらも、2人の全てが見える場所。だからこそ、”人間”を感じた昭仁の「自信持っていけ、胸張っていけ」がより実感として心に刻まれたのかもしれない。
少し気持ち悪いことをいっぱい書いてしまったが、初めて座った最前席とはそういう体験だったのだ。これだけでも、私にとって大きな価値のあるツアーだったといえる。

今回のツアー全体の評価ついて、本当に端的に言ってしまうと、「楽しかったけど、あのアルバムの期待値からするともう少しやりようはあったのではないか、しかし『暁(曲)』のパフォーマンスは最高!」という感想になる。
まずVAが本当にノイズだった。申し訳ないけどまずこれが第一にあったので、映像が出てきた時点で結構本気でへこんだ。VAを見ていない人は全く気にならかなったかなとは思う。あと、コンセプチュアルなセットやアナウンスは面白い試みだったけど、『悪霊少女』以外で活きていたかというと…?もう少し色々活用してみてほしかった。でもあの扉の演出はかなり好き。背景の動いて組み合わさるライトもよかった。
私は『BE』ツアーでのポルノのライブの進化に本当に感動して、あのツアーからファンとして生まれ直したくらいの気持ちでいるのだが、そこから続くしまなみRP、『UNFADED』ツアー、東京ドーム、『続』ツアーと比べると、どうしてもあと一歩何か欲しかった……という気持ちになってしまった。ファンとして、毎回あらゆる趣向を凝らしてくれているポルノチームにどんどん期待値が上がり続けていたのもある。さすがに期待外れとまではいかないが、割とスタンダードだなぁという印象を受けた。もちろん、初めて来てくれた人や熱心なファンではないけど普通に楽しんでくれた人の気持ちを否定するわけではないので、そこは勘違いしてほしくない。『BE』以来の久しぶりのアルバムツアー、しかもあの最高傑作『暁』を引っ提げたツアーなんて、どうなっちゃうんだろう!?と思いすぎていたのかもしれない。まぁこれでアルバムの価値やポルノへの信頼が下がるわけではないし、アルバム曲もほぼ全部聴けたのも嬉しかったし、何よりあの『暁(曲)』の演出を見られたこと、そして個人的に最前席に入ったことで楽しかったしいいや!と思うし、結局ますますポルノグラフィティのことが好きになったツアーだった。
あと、超個人的に一つだけ。あのセットとコンセプトなら『蝙蝠』やってほしかった……!!次いつやってくれるんですか。待ってます。

色々あって表に出すのを迷っていたけど、結果的に全部書いてよかったなあと思えている。これを書いている今はもう19thツアーも終わってしまっているので、そちらは早めに書ければと思う。


【セットリスト】
M1  悪霊少女
M2  カメレオン・レンズ
M3  バトロワ・ゲームズ
M4  ジョバイロ
(M4‘ ネオメロドラマティック ※武道館のみ)
M5  Stand for one’s wish
(M5‘ オニオンスープ)
(M5‘ プリズム ※武道館のみ)
M6  サボテン
(M6‘ 愛が呼ぶほうへ ※武道館のみ)
M7  ナンバー
M8  クラウド
M9  ジルダ
M10 うたかた
M11 瞬く星の下で
M12 Zombies are standing out
M13 メビウス
M14 証言
M15 アゲハ蝶
M16 ミュージック・アワー
M17 VS
M18 テーマソング
M19 暁
EN1 Century Lovers
(EN 新曲『OLD VILLAGER』 ※武道館のみ)
EN2 ジレンマ

※クリスマス付近の公演のみアンコールに追加で『Hard Days,Holy Night』

 

 

【ワズビル】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想をもらった Part6

BEツアーの時から続けている初見感想記事。今回のツアーも、初めて参加してくれた人の感想をいただくことができた。私がうるさくアピールしているからというのもあると思うが、ありがたいことにこれまで興味を持って来てくれた人はそのままリピーターになってくれている人がほとんどだ。それでも、こうしてまだ「行ってみたい」と思ってくれる人がいることを大変嬉しく思う。
これまでの記事は以下のリンクから。

 

【BUTTERFLY EFFECT】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った

【しまなみライビュ】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った Part2

【UNFADED】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った Part3

【神vs神】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った Part4

【暁】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った Part5

初見の人数
・2024.2.10 さいたまスーパーアリーナ 1人(座席:アリーナ、花道より後方ブロック)

【Mさん】
・性別など:女性
・好きな音楽:特に決まって好きなアーティストはおらず、ゲームのサントラなどを聴くことが多かったとのこと。ミュージカルなど舞台関係の音楽もよく聴いているそうです。
・ポルノの知識:世代的に、テレビやラジオで流れていたような曲は大体わかるとのこと。
・予習として:公式が出していたプレイリストを聴いてもらっていた。また、前回の『暁』ツアーのライブ配信も見てくれていた。

Mさんはミュージカルの観劇繋がりで話すようになった方。ジャンル問わずよくいろいろな舞台を観劇している印象。なんと晴一プロデュースのミュージカル作品『ヴァグラント』も観に行ってくれていました!!舞台関係のペンライトを振るようなコンサート(テニミュドリライ)以外の音楽ライブは初参加とのことでした。

【感想】
・とにかく歌うますぎ。音源と変わらないどころか生な分迫力もあるし、動き回ってたりするのに声ぶれないのすごい。伸ばすところもかすれたりないし喉つよ
ありがとうございます。ああ~~~嬉しい!!!岡野昭仁が褒められていると気持ちがいいですね。最近は『TFT』などもありましたが、やはり昭仁の歌の凄さをリアルに体験してもらうにはライブが一番なので、それがダイレクトに伝わっているのが嬉しいですね。

・終盤でも疲れてる感じしないし体力お化けすぎ
来てくれた人がみんな驚く2人の年齢。あのバイタリティで今年50だなんてファンでも信じられないくらい。もちろん本人達が丁寧にコンディションを整えてくれているというのはありますが、ここ数年昭仁はソロプロジェクトを通して「歌うこと」に対して更にもう一段階上の調整をしてくれていて、それが如実にライブのコンディションに表れていると思います。

・曲によっていろんな種類のライトが使われてたり、曲イメージ?の形になってたり(アビが鳴くのときの鳥居)、盛り上がるときはビッカビカだし火も出るけど、静かな曲とか映像メインのときは落としてたり曲にちゃんと合ってる気がする
鳥居イメージのライトすごく良かったですよね!Mさんは舞台慣れしているからか、照明や映像についての感想もたくさん寄せてくださり、改めて言葉にしてもらうと自分がファンとして感じていた「ポルノのライブの良さ」を認めてもらえた感じがして嬉しいです。今回は特に特効モリモリで楽しかったですね。

・映像は新曲とか歌ってほしいっぽいところだけ歌詞出てたくらいで使いすぎてる感じしなかった。逆に照明だと派手すぎになりそうなところを映像にしててよかった(夜間飛行のところ)
今回は私も照明効果や映像のバランスが良かったな~と感じていました。個人的に『暁VA』が肌に合わなかったというのもありますが、『ワズビル』はそこの調整が非常にうまくいっておりノイズも少なかったなと思っています。『夜間飛行』の演出も大好きでした!アリーナの埋もれだったのでMさんには花道の誘導灯があまり見えていなかったかもしれません…申し訳ない。

・呼びかけるけど楽しみ方自由にねと言ってくれるのは初心者にはありがたい
今回昭仁がMCで「えらそうにステージから歌えとか手拍子しろとか言うけど楽しみ方はそれぞれだから」ということを強調して言う機会がありました。ポルノのライブは「客の動きが揃いすぎてる」とよく言われるので、こういうMCはやっぱり初見の人にとっては安心なのかな~とも思いました。

・ファンの割合が男女半々くらいのイメージだったから、MCで男性が多いと言っていたのは意外だった
これもMCで毎回触れられてましたが今回は特に多かったです。徐々に増えている印象はあって最近でもだいぶ増えたと思ってましたがどうしてなんだろう?熱気があってとてもよかったですね。彼らと同性がポルノを好きというのは、男性がテニプリを読んでいるみたいな嬉しさがありますね。

・子供の頃に聞いたときから変わらないような気がする・・・なんとなくずっと30~40歳くらいの感覚でいるから今年で50は驚く
上にも書きましたがファンでも本当に驚きです。ずっと変わらずパワフルな、むしろどんどん迫力もクオリティも増していくライブを見せてくれる2人はすごいです。「変わらない」と言ってもらえるほど歌声やパフォーマンスに全く衰えが無いどころか進化し続けているのが岡野昭仁の凄いところです。

・普通に話してるときの感じと歌ってるときのギャップがすごい
ポルノの2人とも言われがちな、ギャップ。あのゆるい感じのMCと方言はあまりテレビでは見せない姿なのもあって新鮮に感じるみたいですね。新鮮に感じている人を見ながら、私は笑顔になっています。

・ファンに向けての言葉が素敵
ファンじゃない人にこういうことを言ってもらえるのは嬉しいですね!前も違う方に「ファンの人嬉しいだろうなと思った」という旨のことを言ってもらったことがあって、2人の思いがそれだけ外から見てもわかりやすく伝わっているということなのかな?と感じます。

・前より曲数多かったと聞いたが、勢いもあってか短い時間に感じた。歌ってる時間が多い?
コロナ禍の『続・ポルノグラフィティ』ツアーや『暁』ツアーでは、間のアコースティックの時間などをゆったり取って20~21曲となっていましたが、今回から従来の平均曲数である23曲に戻っています。実質の時間よりあっという間に終わった感じがする!とMさんは何回も言ってくれました。他のアーティストと比べてもポルノは特にMCが短いとかは思ったことが無いのですが、今回は私もすごく密度の濃いライブだったなと感じました。

・盛り上がるところと落ち着くところとバランスよくてダレる感じしなかったのかも。最近の舞台のせいで感覚がバグってるのもある
最近の舞台作品は公演時間が3時間を超えるものも多く、長く拘束される分内容が見合っていないと……うん……と思うことも多いので気持ちはわかります。こういった感覚は観劇慣れしている人特有の感想といった印象ですね。

・ペンライト無しライブ初めてだったのと手の形決まってない感じだったので見様見真似。なんとなくライブ系では人差し指出すイメージあったけどふんわりらしい
言われて思ったんですけど、昔のポルノのライブでは指をしっかり「L」にしていた記憶があります。いつからどうなったとかは全く覚えていません。あの手の形ってどうやって生まれたんだろう…。Mさんは「(ラテンとかの)手拍子より5拍子の曲のペンライトのほうが難しいかも・・」と感じたらしいです。

・繰り返しなのもあって2回目からはなんとかなった気がする?参加すること自体が楽しい。アゲハ蝶のとこコーラスできて嬉しかった
大体の振付は昭仁が指南することも多く、曲の中でも同じタイミングで手拍子などをするのでついていけたとのことです。参加すること自体を楽しんでもらえたのはすごく嬉しいですね。

・会場とかファンの雰囲気から居づらさとかはなかった。知っている曲も多いぶん、他にも聞いてみたい曲もあるのでまた機会があれば参加してみたい。いつか通常版アゲハ蝶も聞けたらいいな
よかった~!!自分が好きなもの、楽しいと思うことを外から見てどう思うのか知る機会はなかなか無いので、「また来てみたい」と思ってもらえるだけで安心します。ぜひまた来てください!アゲハ蝶は演奏頻度が高めなので次に来てもらえる時に聴いてもらいたいですね。

何回も「あっという間だった、すごく短く感じた」と言ってくれたMさん。充実した時間を過ごしていただけた様子で嬉しかったです。今回のツアーは特に、コア向けというよりは比較的ライトな楽しみ方ができるツアーだとも思ったので、余計にわかりやすく楽しんでもらえたのではないかなという感覚があります。貴重な感想をありがとうございました!
今後も、周りに初めてライブに参加してくれる人がいる限りこの記事は続けていきたいと思います。

 

(感想のオマケ)
・めっちゃサーステだった
これはどういうことかというと、昨年秋に上演していた『ミュージカル新テニスの王子様 The Third Stage』という舞台があって私も観ていたのですが、その中の演出に「神殿が壊れる」という映像があったのです。今回のライブ映像と謎のニアミスがあり、テニミュに行っていて今回のライブに来てくれた方全員に「途中で神殿壊れてなかった?」と言われてすごくおもしろかったです。そこ被ることあるんだ。細かいことですが、新テニミュの方で壊れていたのはローマの神殿ではなく、ギリシャパルテノン神殿でした。

【暁】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った Part5

自分のツアー感想を書いてから取り掛かろう、と思っていたら、一向に自分の感想が書き終わらないうちに次のツアーが始まってしまうまでに至った。せっかく掲載許可をもらったものをしまっておきたくないので、5回目の初見感想記事。多分、自分の感想はお蔵入りになると思う…。

初見の人数
①2022.10.17 オリックス劇場 1人
②2023.1.24 日本武道館 1人
文章で感想をいただいたのは②の方のみ。

①2022.10.17 オリックス劇場(座席:3階席)
【Kさん】
・性別など:女性
・好きな音楽:椎名林檎。幅広く聴いているイメージがある。
・ポルノの知識:知ってはいるけど、今の曲は知らないという感じ。
・予習として:ライブ前にいくつかこれまでのライブ映像を見てもらった時にすごく褒めてくれた。

Kさんとはミュージカルの観劇繋がりで話すようになり、かなりエンタメに大しての評価を信頼しているので感想を口頭で聞いたのにそれをメモし忘れるという失態を犯してしまった…。ので、かいつまんで記しておくと、とにかくライブを褒めてくれた。曲の流れ、パフォーマンス、ライティング、演出についてベタ褒めしてくれて、「自分の信頼する人に見せたい」という最上級の褒め言葉をいただいてとても嬉しかった。
以前にライブ映像を見せた時もすごく楽しんでくれて、何度も格好いい〜!と言ってくれたり楽しすぎて終わるのが早かった!という感想をもらっていて、概ね生で見た時も同じ感想を頂いた。あと、MCで泣いてくれたらしい。そんなに思い入れの無い(ファンではない)人にもそこまで伝わるものなんだ…と思って嬉しかった。Kさんの素敵な感受性の豊かさもあるとは思うけど、嬉しい感想ばかりでした。ありがとうございます!

②2023.1.24 日本武道館(座席:2階南西)
【Lさん】
・性別など:女性
・好きな音楽:バンドやロキノン系、テクノサウンドなど幅広く聴いているイメージがある。
・ポルノの知識:知ってはいるけど、今の曲は知らないという感じ。
・予習として:知ってはいるけど…の感じ。とりあえずサブスクで色々聴いてもらった。その中でもアポロが素晴らしいと改めて思ったらしい。また、ポルノがどういうバンドなのかということを説明する会みたいなのを僭越ながら開かせてもらった。
Lさんとも同じミュージカル繋がりで、今回初めて行きたいと言ってくれたので初参加。なんとツアーファイナルの武道館が当たったので特殊な体験になったと思う。以下感想文。

・えっ?歌上手すぎ
ありがとうございます!!一番の褒め言葉です。

・レーザーが綺麗
・火アッチィ!!!!ポって火とか出すんだ
演出関係。近年のツアーのライティング本当に素晴らしいので嬉しい感想。あとポルノは火が結構出る!ホールツアーだったけど最後は武道館だったおかげで景気のいい演出がたくさん見てもらえたかなと思う。

・曲予習しておいて良かった
ミュージック・アワー振りが分からんけど分かる!!
・アゲハ蝶の手拍子2回目3回叩くんだ…
・振りとか手拍子とかのやつ、リズム天国初見プレイで面白い
振り付け関連。ポルノは結構決まった手拍子とか手振りがあったりして完全初見だと何?!ってなることも多いかと思うんだけど、目立つものは昭仁が教えてくれたりするのでそこまで心配は無いかなという感じ。ラテン系の曲は2回3回の叩き方曲によって逆転したりして結構な罠。

・筆者が固まってる…(何曲かあった)
すいません。連番してたんだけどお構いなしに地蔵になってしまいました。

トークの2人が面白い
・方言大好きマン大興奮
・ボイスストラップで遊ぶの可愛い(ちょっと欲しくなった)
やっぱり必ずあるMCの感想。ちょうどヴァグラントの発表もあって武道館のMCは面白かった記憶がある。やっぱり初見の人にはカッコいいライブとのギャップがウケるのだなぁと思った。人柄もわかってもらえるし良いことです。

・暁で膝つくのヤベーーー!
いや………本当にやばかった。あれは本当にあのツアーで最大の見せ場だし、衝撃だった。岡野昭仁に心臓を鷲掴みにされてそのまま倒れるかと思ったので喜んでくれて嬉しい。

・アンコールかな?腕が引きちぎれるくらい全力でノッてくださーい!って言われて「俺はたった今から恥を捨てる!」ってなって手をバッて上げた
昭仁ってほんとに客席を煽るのがうまいなと思うんだけど、初めて参加する人がこうやって心から楽しんでくれるのが何より嬉しいので良かった。ゆっくり見るのが好きな人はそれでもいいけど、コンサートとかでノるのが好きな人は思う存分ノってほしい。

・新曲の歌詞がモニターに出てきて良い感じになってるの良い
・モニターに映る2人がいいアングルで映ってることが多くてモニター見てた
・てかあんなに動き回ってるのに息切れしてないのヤバすぎる。若手俳優か?(48歳らしい)(嘘でしょ)
広い会場だとモニターで表情見るのも楽しいよね。私はあんまり歌詞をテロップで出すの好きじゃないんだけど、今回は初披露の曲だったからこそみんなに伝わる演出を選択したんだなぁと思った。
あと年齢は嘘じゃないです。初めて年齢を教えた時に「よ、48?!?」って言われた記憶がある。本当に2人のバイタリティは留まることを知らない…ありがたいことです。

・2人の衣装が素敵
最近の衣装はほんとに良いチョイスだな〜と思う。武道館でツアー中に見たことないの着ててびっくりした。

・サポートメンバー上手すぎ
・最後にメンバー1人1人の見せ場の所でドラムの人が手でドラム叩いてたのと今宵、月が見えずともとピアノの人が知ってる曲(ド忘れ)をアレンジして弾いてて最高
サポメンにまで言及してくれるとは!ポルノは2人バンドなので必ずサポートの方が必要なんだけど、どの方もポルノの音楽を魅力的に彩ってくれる素敵なメンバーばっかりでみんなサポメンのことも好きになる。特にバンマスのtasukuさんはリリースする曲の編曲にも深く携わってくれてて、ツインギターになってからライブの魅力もグッと増したという経緯があるからずっとステージに立ってほしい。

感想もらってたのに反映がめちゃくちゃ遅くなってすみません…こうしてほぼ毎回違う人が興味を持ってくれてライブに来てくれることがありがたいです。別に自分はポルノグラフィティの何者でもないけど、ファンとして魅力が伝わっているんだぞーっていうのを残しておきたくて始めたので、何かのきっかけでまたこれを見てライブに行きたいな〜気になるな〜って人が増えてくれたら更に嬉しいですね。

というわけで今は『PG wasn't build in a day』ツアーの前日ということでこの辺りで失礼します。最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

【ライブレポ】ドラスタとS.E.Mに会えた日【F@NCOMLIVE~BRAINPOWER!!~】

2023年7月9日に開催された「315Production presents F@NTASTIC COMBINATION LIVE~BRAINPOWER!!~のライブレポです。以下「ファンコンライブBP」。これを書くにあたりアーカイブはまだ見ていないので、所々違う箇所があるのはご了承下さい。

筆者はSideMを知ってから約3年のペーペーPです。好きになった経緯などは以前はこのような記事にまとめました。

ikaika1015.hatenablog.com

5月のロードマップ報告配信で突如として発表された、315プロのアイドルによる、3DCGのユニット合同ライブ。何もかもが未知の状態で、そもそもがコンテンツの行く先に不安を抱えている状態ということもあり、私は最初どうするのか迷っていた。だけど、見たことによる後悔と見なかった後悔ならば、圧倒的に後者の方がダメージが大きいだろうという経験則から、もうどうにでもなれ~!と半ばヤケでチケットを取った。

結論から言うと、心の底から何もかもが幸せなライブだった。

☆会場の様子
今回の会場である「神奈川県民ホール」は横浜の赤レンガ倉庫の近くにあり、時間を潰すにはあまり困らない場所だったので、早めに行って会場物販で買い物をした。グッズの売れ行きは、開演に近づくにつれて徐々に売り切れていったので在庫が少なすぎるということもなさそうだった。ランダムブロマイドの交換のやり取りをしている人も多く、普段私が行っている舞台等ではなく、SideMの現場でそのようなことが起きている光景が新鮮だった。

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物販に展示してあったアクスタ。メチャクチャ良いので絶対買う

カフェで休んでいると、アイドル達がリハをしています!みたいな公式ツイートが流れてきて、いよいよ現実との境目が曖昧になってきたぞ……と慄いた。まぁ今日起こることは全部現実なんですけど……みたいな気持ちもありつつ、まだどこか不安というか、どうなるんだろう……みたいな感覚もずっとあった。

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何をしてても笑ってくれない舞田のクリアカードめっちゃ好き

会場内に入ってびっくりしたのが、モクモクとスモークが焚かれていることだった。私はライブ会場がスモークで薄く煙っているのが大好きな人間なので、否応なしに興奮した。今日、ここで本当に315プロのライブが開催されるんだ……!という高揚感に包まれた。

☆開演前
まだ客席に入る勇気が無かったので、ロビーのベンチで速効ブルーベリーを飲んだり水を飲んだりして一息着いていると、会場内から「ぎゃーーー!!!」と突如とんでもない悲鳴が聞こえてきた。何だ何だ?!とつられてロビーにいた人も中を覗きに行く。後で知ったのだが、なんかミス的なもので一瞬6人の姿が出てきたらしい。そうとは知らなかったものの、今日は私がこれまで体験してきたこととはまるで違うことが起きるんだという予感が一気に高まり、こうしちゃ居られない、これは行き慣れてる舞台とは違うんだ、起こる全てをのんびりして見逃すわけにはいかない…!!と少し早めに席に着くことにした。

私はSS席は落選しS席の当選だったので、2階のセンター寄り上手に着席した。1人ぼっちでそわそわしていると「緊張してきますね…」と隣の人が話しかけてくれた。周りはどうやら一人参加の人が多かったようだが、どうにかして未知のステージへの期待と不安が入り混じった気持ちを共有したいという雰囲気を感じた。

開演10分前ほどで、メインステージ横のモニターに突然次郎が現れ、会場がまた瞬間的に沸騰した。Twitterで行っていたカウントダウンの映像だと気づいたが、いよいよ目の前にみんなが現れるのだ…!!という期待感を煽る。この動画の舞田が本当に可愛くて改めてメロメロになった。

本当にかわいい。

会場内では妙なことが起きており、ずっとドラスタとS.E.Mの曲が交互に流れていたのだが、段々客席が異様なテンションになり、最初は曲に合わせてペンライトを振ったりしているだけだったのが、盛り上がる曲になると歓声が起き、音源なのに道夫さんが"越える"とフゥ〜〜〜〜♪♪と煽るような事態に。極め付けに、ムンナイが始まると「ギャーーーーーーーー!!!!」とまるで目の前で公演が始まっているかのような空気感になり、最前ドセンではUOが焚かれていた。信じられないが、本当にまだ何も始まっていない。雄叫びを上げたオタクたちは思わず謎の一体感にアハハ…と笑ってしまっていた。私はこの異様な集団幻覚に、今日ここまでやって来た人みんなが、色々な気持ちを抱えながらも「盛り上がるしかないっしょ!!!」と思っているのだな…と元気づけられた。

☆前説

既に熱気が溢れんばかりの会場内で、フッとBGMが止み、客電が落ちる。その時を待ち侘びていたみんなが小さく悲鳴を上げる。緊張感のピークの中で、ドラスタとS.E.Mがいつものライブ前の注意を読み上げてくれた。そう、ファンの前に事務員である山村は出てこない。演者のみんなが前アナをしてくれている。輝、薫、翼、道夫さん、舞田、次郎。一人一人が名乗るたびに、ワッと歓声が上がる。

315プロのアイドル達が、今、初めて目の前に現れようとしている。

M1 Beyond The Dream
聴き慣れたフレーズと共に目の前に現れた6人に大歓声が上がる。DRAMATIC STARSが下手側、S.E.Mが上手側に一列に並んでいた。
最初は、うわぁ、いる、いるよ………!!!とじんわりした感動に包まれていたが、すぐに脳みそが破壊される瞬間が訪れた。

ジャンプが、バラバラだったのだ。

そう、《Let's jump,Everybody go.》という歌詞でみんなが大きくジャンプする時、その高さ、腕の位置、膝の曲げ方が、何一つ違っていた。6人全員が、それぞれの動きをしていた。
これが何を意味するのか。人間、6人集まってその場でジャンプしてくださいと言われ、全く同じ角度の同じポーズで跳ぶことは無いだろう。今、目の前でそれが起きていた。

315プロのアイドルが、生きている。

冒頭20秒にして、その事実に真っ直ぐ貫かれた私の脳は音を立てて大爆発した。
今日は、すごいことが起こる。起きている。その予感でいっぱいになった。
ビヨドリもちゃんとドラスタとS.E.Mが歌っていて(目の前にそのユニットしかいないから当たり前なんだけど)、すごく嬉しかった。翼と舞田の《心のオアシス みんなのイエロー》のユニゾンめっっっちゃ可愛かった。「Beyond The Dream~~~~!!」の、舞田の背中をそらす振付がめっちゃ大きくて、ジャンプもめっちゃアイドルポーズで、キメでピタッと止まるし、身振り手振りが全部大きい!!かわいい!!かっこいい!!と”初めて見る舞田類のダンス”に目が釘付けになった。

M2 STARLIGTH CELEBRATE!
まだ何がなんだかわからないまま、ドラスタのユニ曲へ。ちょうど2日前に3DMVが先行お披露目されたこともあり、ドラスタさんのパフォーマンスが生で見れる~!!という喜びがひとしおだった。輝のダンスのキレすごい!薫のパフォーマンス優雅だし歌うまい!翼めっちゃ手足長い!とまたも情報の海にあっぷあっぷしていた。3人がお互いに向き合って手をかざすところでは思わず客席から「ヒャ~~~!!」と声が上がる。この日の観客は、目の前で巻き起こる”現実”のすごさにたびたび脳を焼かれて要所要所で限界の悲鳴が漏れ出ていたのが面白かった。何もかもが初めてのステージで聴くスタセレは、安心感がありとてもよかった。

M3 ∞ Possibilities
ドラスタが来たということは、やはり…という流れでS.E.Mが登場。ビビットピンクのレーザーの中で踊る銀ピカギラギラのスーツ。本当に目の前で、S.E.Mのステージが繰り広げられている……!!振付は記憶のどこかにあるものに似ているが、今は関係ない。ピシッと姿勢のいい道夫さん、やっぱり振りが大きく緩急のある舞田、適度に力の抜けた動きをする次郎。ただひたすらに、S.E.Mがいた。サビ前の”情熱のポーズ”では、ワッと喜びの歓声が上がる。そして道夫さんが”越えた”瞬間、観客の盛り上がりもピークに達する。

MC①
正直MCの内容に関しては記憶のみだとあやふやな部分が多いので雰囲気で。3曲を披露したところでユニットが揃い、改めて自己紹介。私は3曲披露する間に、すでに脳のキャパシティが限界を迎えそうになっているのを感じ、「いかん…落ち着かないと、このままボンヤリ眺めてるだけになってしまう…!」と思って落ち着くよう努めていたのだが、割とみんなの姿に慣れてきたな~と思っていたのも束の間、輝や道夫さんの話を聞いている舞田の仕草を見ているうちに「ああ、うんうんって頷いてる……腕の角度かわいい……身振り手振りが大きい……」とジリジリ脳が焼かれ始め、ふいにこちらを向いて手を振り始めた瞬間にボン!!!!!と弾け飛んだ。類が……類が手を振っている!!!この「誰かが話している途中に何かをする人」というのも、全員がそれぞれ生きているからこそである。
道夫さんの「ここからがライブ本番だ」という言葉にハッとなる。そうだ、まだ全然始まったばかりなんだった…でも、もう何が起きても楽しい!ワクワクする~♪と、何が起こるのか身構えていた次の瞬間。

M4 GOLD~No.79~(Short ver.)
プァ~~~~……♪ \ギャアアアアアアア!!!!!!/
言葉通りの、阿鼻叫喚。ここからがライブ本番です!と言われて始まるのが、山下次郎のソロだなんて一体誰が予想しただろうか……。
次郎が歌い始めても悲鳴は止まず、「信じられない!」と「これから起こることってまさか……」の予感で会場はAメロの直前までざわついていた。次郎のダンスは、気だるげな余裕があり、その代わりカメラに抜かれる瞬間やキメのポイントでの小技が光るタイプのパフォーマンスだった。3DMVでも見たことが現実になっている。あの映像は、本当にステージ上の山下次郎さんを切り取ったものだったんだ……と感動した。サビのダンスがちょっと面白風になっていたのは若干の勿体無さを感じたり。ジェスチャーの振付じゃなくてもいいのにな~と思うが、まぁそれも味と言ってしまえば味である。

M5 THIS IS IT!(Short ver.)
次郎ソロの直後にイントロが流れて、私は予測可能回避不可状態になり崩れ落ちてしまった。自分はそこまで普段ライブでオーバーリアクションな方ではないと思っているが、人間本当にキャパシティを超えると体が勝手に動いてしまうのだと悟った。
あの底抜けに明るい太陽のような舞田類のソロ曲が、星のきらめきのような少し切ないイントロから始まるのが大好きなので、聴こえてきた瞬間胸がいっぱいになった。メロディもあえて少し落ち着いた低めの旋律なのが本当に好きで……。《Come on,join us! おいでよ、楽しまなきゃ!》とは、まさに今日のためにある言葉にも聞こえる。舞田は歌いながらステージを歩き回って、ニコニコして、いっぱい、いっぱい手を振ってくれた。その一挙手一投足が本当に可愛らしくて、きらきらしていて、ありがたくて(?)、ウウ~~…!!と小さく呻き声を上げることしかできなかった。

終わってからかなりの人が言っていたけど、私もステージの上の舞田を見て「舞田ってこんなに踊れるんだ…!」と驚いた。野暮とは思いつつあえてステータスの話をすると、実は舞田のDa値は4なので、あの6人の中では薫の次に低い。しかし、そこをカバーするのがVi値7という数値で、技術や正確さとは違う「ダイナミックに動きしっかりキメを作ることで、華やかでいわゆる”魅せる”タイプのダンス」だと思った。ステージの上の舞田類という存在を、あのように解釈してパフォーマンスしてくれたことが私はすごく嬉しかったし、もっともっと舞田類のことが大好きになった。
曲の最後では道夫さんが出てきて、また歓声が上がる。

M6 Learning Message(Short ver.)
ここまで一人ずつのパフォーマンスを見てきたが、私がこのライブで特に楽しみにしていたことの一つが”硲道夫さんのダンス”だった。道夫さんのダンスは、正確、精密、芯がブレないという、正に本人の精神性そのものを体現しているようなパフォーマンスだった。MVでの道夫さんは常にまっすぐ前を向き、未来を見据えて姿勢を正していた。その姿に涙していたのだが、今、目の前のステージ立って、変わらない眼差しで私たちを見つめていた。
この曲の振付は、独特というか有り体に言えば少しなのだが、「面白い動きをしているから」ではなく「きちんと動ける人が意図をもってヘンテコな動きをしている」という、インターネット風に言うと”無駄に洗練された無駄のない無駄な動き”みたいな面白さがあった。しかし、それを道夫さんがいたって真面目にやっていること、それが逆に真摯な想いの裏づけであることを、私たちはこれまでの積み重ねで知っている。道夫さんが良しとしているなら、私はそれを全身で受け止めるだけだ。もちろん変な部分だけではなくかっこいい振付もあるので、その絶妙な融合加減が正にS.E.Mというユニットの本質に通ずるのだなと私は感じた。

3人のソロが終わり、次は何が来るんだろう……とざわついているその時、またもや会場は驚きと大歓声に包まれた。

M7 Study Equal Magic!(DRAMATIC STARS ver.)
ここでライブの前にも予告されていた、楽曲交換枠が来た!ドラスタが『S=M』をやるだろうということは、なんとなく連動ストーリーやパンフレット(ライブとの交錯具合と情報量がとてつもないので、該当Pやファンは絶対に読んだ方がいい)で確信してはいたものの、実際に始まると面白すぎて圧倒されてしまった。ポップアップで出てくるなんて聞いてないよ!こういうアイドルっぽい演出、どんどんやってほしい。
連動ストーリーではこの曲に苦労している姿をたくさん見たし、何より3人がS.E.Mのパフォーマンスとそこに込める意味をすごく大切に扱ってくれているのを知っていたので、普段ドラスタがやらないようなダンスと動きを見て、ありがとう……と胸がいっぱいになった。それはそれとしてS.E.Mの振付をする桜庭薫、面白すぎる。
要所要所に楽曲を交換した意味が散りばめられていて、「錬金術知ってっか~~♪♪」という薫の美声、《”Wing” ほら 飛べるさ!》が上手いこと翼のパートになっていたり、人文字が”S・T・K”と3人の名前の頭文字になっていたり(歌詞はそのままなので蟹・ウニ・Takoの画像みたいになっていた)、オレンジ色のタケノコが一面に生える光景だったり。ただ歌うだけではない、このファンコンライブをやる意味が生まれていたのがとても良かったと思う。
あと、改めて思ったのが声出しできることの嬉しさ!私は315プロのことをコロナ禍で知ったので、声出しの現場には行ったことがなかった。こういう盛り上げ曲でコールできるのが楽しすぎたし、知らなかったコールのセオリーにびっくりしたりもして、新鮮な気持ちで『S=M』を楽しめた。曲に思い出が乗っかって更に好きになれることがライブの醍醐味だとも思うので、また一つ宝物が増えたなぁとジーンとしていた。

MC②
ドラスタの3人がそのまま出てきて、曲の交換について話し始める。こういうMCの時の、「あの時ちょっと苦労したんだよな~!」という、「ちょっと苦労した」の内容を、連動ストーリーを見ていると全て知ることができる。それを聞いた時に、「ああ、あの時は大変だったよね」という”見ていた側=Pとしての立場”になれるのが、うまいことできているなぁと私は感じた。逆にストーリーを見ないでライブを見たときに違和感を感じない程度の情報の出し方の塩梅が非常にバランスがいいなとも思った。

M8 約束はドリーミングフライト(Short ver.)
次のソロメドレーのトップバッターは翼。新鮮に、翼って……足長!スタイル良!背高!それでいて……めちゃくちゃ可愛いなぁ!!!という気持ちになった。あの、脚を斜めにピーンて伸ばしてターンするところ、妖精みたいだった。ここまで目の前のアイドルの動きに全力集中していた私は、ドラスタのターンになったことでやっと上のモニターの存在に着目することができ(遅すぎる)、飛行機雲がsmileになっててかわいいね、などと思う余裕があった。
曲の最後の方ではなんと薫が出てきて、記憶がどんどん上書きされていた私は新鮮に「薫だ!!!」と思った。ファンコンライブは目の前でいろいろなことが起こりすぎていちいち覚えていられないのだ。いやもう……桜庭薫さんってこんなダンスもしてくれるんですか?とあまりの可愛らしさに会場も大いに沸き立つ。アイドルとして完璧な仕事をこなす薫の姿に、そうかこの人は、常に全力なんだ……と改めて実感した。

M9 Because(Short ver.)
MVが公開されてからたくさん話題になっていたけど、あの桜庭薫のパフォーマンスを見た後に改めて聞く『Because』という曲は本当に素晴らしかった。《完璧な輝きを届けてみせるから 受け取ってほしい 僕のすべてを今込めて歌おう今…》という言葉に込められたものが、すべて本物であることを知った。
ライブ会場で聴く薫の歌声は本当に凛としていて力強く、歌の上手さが際立っていた。クールなだけではない熱量の籠ったパフォーマンスに、ペンライトを振る手にも力が入る。そして、順番的にわかってはいたことなのだが、曲の終盤では輝が出てきて……薫と輝が一緒に……?!と遅れて衝撃がやってきた。ここでもまた”現実”に驚いたのだが、輝の方がダンスが速い!!ずれているというわけではなく、薫とはリズムの取り方が違うというか、キビキビと元気に動くので全然違ったパフォーマンスに見える。”ダンスの上手さゆえに振りが速く見える”というのは、私が普段行っているテニミュ等の生身の人間が演じる舞台でもよく見る光景だったので、より”存在”の濃度が上がって脳みそが喜んだ。

M10  THE FIRST STAR(Short ver.)
ソロメドレーの最後を飾るのは、輝。なんかもう、ファンコンライブの初回にドラスタがいてよかった……としみじみ思った。安心感というか、ホッとする。輝の放つ明るさとパワーを真正面から浴びることが、これだけ自分に元気をくれるのだということがわかっただけで、ここにいる価値が高まる。みんな色々な想いを抱えて今日という日を迎えたのだと思う。だけどそれは、紛れもなく”いい日”となった。

M11  DRAMATIC NONFICTION(S.E.M ver.)
楽曲交換で、S.E.Mがやるなら『ドラノン』がいいな~とずっと思っていたのが実現した喜びと、最初のポーズが思いっきりS.E.Mナイズされていたおかしさで叫んでしまった。というか特殊イントロになっていて、ファンコンライブってこんなことまでしてくれるんですか?!と気合の入り方に驚いた。ドラスタの曲のなかでも割とシリアス寄りの楽曲だし、編曲の雰囲気もS.E.Mに合ってるだろうなと思ってはいたけど、正に大正解だった。
今回のメンバーはキャストも言っていたように、全員が”大人”。ドラスタとは形が違えども、それぞれの人生を歩んできた人たちによって新しく色づけされたドラノンはめちゃめちゃカッコよかった。おもしろいもカッコいいも楽しいも可愛いもできる、S.E.Mが好きでよかった………と改めて思ったし、ドラスタさん曲を貸してくれてありがとう……となった。ドラスタの『S=M』が新境地の開拓ならば、S.E.Mの『ドラノン』は魅力の再認識といったところか。

MC③
それぞれのソロ~楽曲交換パートも終わり、健闘を称えあう6人。この辺で確か輝と次郎がお酒を飲みに行った話をしていて、「お酒おいしかったよね~」みたいなリアクションを2人でしているところで、また脳が破壊された。この”誰かのリアクションに誰かが反応して動く”みたいなのがノンストップで押し寄せてくることのすごさに、最後まで全然耐えられなかった。とか思っていたら、類が「みんなでやりたいことがあるんだけど…」と言い出して、コーレスの練習が始まった。315プロのアイドルと、コーレスできている……リアルタイムで……!!!という感動があった。「俺たちのライブに初めて来たよ〜って人〜!」という問いかけがあったが、それを聞くってことは…このライブが初めてじゃない人がいるってこと?!羨ましすぎる!!と思った。
ライブもいよいよラストスパートとなり、終わらないでくれ~~!!と早く次の曲も聴かせてくれ~~~!!が同時に押し寄せた。ここまで約60分くらいなのに、信じられない密度である。

M12  Multiple Entertainment Show!
ここでMVも披露された最新ユニ曲の『MES』が来た。あのMVの出来が本当~~~~~に良すぎて、私はこれを書いている今現在でも毎日毎日見ている。(良すぎるので貼っておく)

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タイミングが良かったのもあってか、イントロで歓声が起こる。今回S.E.Mがユニットとして披露したのはまだ『∞ Possibilities』だけなので、十八番である「カッコよさと面白さの融合」みたいな曲も見れるのが嬉しかった。これまでソロで見てきた3人の違いが、一緒に踊るとよりわかりやすかったし、『∞ Possibilities』がスタイリッシュ寄りだったのに対して、めちゃめちゃハードに踊っていた。熱くて、まっすぐで、ちょっとコミカルでユニークで、カッコいい。私の思い描いていたS.E.Mのステージがそこにはあった。あのMVも、本当にS.E.Mのステージの様子をそのまま映し出してくれたんだなと思えたし、自分が初めてアニメで『S=M』を見たときのとてつもない衝撃と感動に似た、原始的な感情を思い出していた。そして改めて舞田類のダンスに魅了されていた……本当にカッコよくてチャーミングで、いいんですか?こんなに素敵なアイドルを好きでいられて……と嬉しくなった。

M13  Change to Chance

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ドラスタも素晴らしいMVが配信されましたね。冒頭のスタセレと比べて、こちらは逆にシリアスなカッコよさを前面的に押し出した曲で、ドラスタの大人な魅力全開のステージを見ることができた。連動ストーリーでもS.E.Mが評価していたように、ドラスタの魅力は、人間としての個性はバラバラでも、個々の能力値が高く、ステージ上では息の合ったパフォーマンスを披露できるというところにあると私も思っている。実際にライブを見ることで、その説得力がひしひしと感じられた。やっぱりドラスタって本当にカッコいい……。

MC④
私は連動ストーリーで舞田が薫に懐いていたのがめちゃくちゃ好きだったのだが、ここでもミスターさくらばに絡みまくって邪険にされているのが見れて大喜びしてしまった。冒頭で輝も「俺と類をそういう目で見るな~!」みたいなこと言ってたけど、薫の舞田の扱いってそうなんだ……(笑顔)という発見があった。「俺たちもうすっかりfriends!だよね☆」と言われ「……勝手にしろ」と言う薫にフゥ~~~と茶化しの声が上がる。ありがとう、ファンコンライブBP。

「次が最後の曲だ」と言われ、お約束の「ええ~~~!!!」が飛び出る客席。本当に終わってほしくなくて私は既に泣きそうだった。次はいよいよ今回のために作られた合同曲。コールもやってね~!とのお達しにワクワクが止まらなくなる。

M14  Dramatic Anthem

試聴が来たときから、いい感じの曲だ~とは思っていたが、実際にライブで聴くとめちゃくちゃカッコよかった。今回のテーマである”知的さ”をモチーフとした、スタイリッシュで大人なアレンジになっていて、どちらのユニットの雰囲気にも合っていた。後に発表されたがCDシリーズになるようなので、後続のユニ曲もすごく楽しみ。

今気づいたんだけど、後半になるにつれて楽しすぎたのかどんどん記憶が曖昧になっていってる。こんなことになるイベントは本当に久しぶりかもしれない。

曲が終わり、みんなが挨拶をしながら捌けていく。舞田は最後の最後まで愛嬌たっぷりでかわいいなぁ……と思っていたら一番最後に捌ける次郎が投げキッスしてきてうわ!!!!!!になった。ずるい、山下次郎って本当に……ずるい。心得ている。(配信に載っていないらしい、残念…)

はぁ、すごいもの見たな……と放心する暇もなく、アンコールの掛け声が始まる。あらゆるライブでのアンコールって、半ば形骸化しがちなものというか、「出てきてくれるよね」という確信の下で行われることが多いとは思うんだけど、私はこの何もかもが初めてのファンコンライブで、「このまま本当に終わったらどうしよう…!!!いやだ!!!」と思いながら、一生懸命コールしていた。こんなに必死に、本気で終わって欲しくなくて、祈るような気持ちでアンコールをしたのはいつぶりだろうと思った。そのくらい、みんなと離れるのが嫌だった。

程なくして、画面横のモニターに何やら楽屋前の廊下のような映像が映り、次郎が出てきた!こんなに呼んでくれてアリガトね~的なことを言いながら、みんなが次々向かってくる。すごい。本当に私たちの声援が聞こえてるんだ………と本気で思えて、感動した。ファンコンライブはこんな風に「すごい歓声だねぇ」とか「みんなの声が聴けて嬉しいぜ!」みたいな、”こちら側のリアクションを想定して進んでいく”という場面が随所にあったのだが、それが客席の空気感と全く齟齬を起こさずに最後までやり切ったのが本当にすごいと思った。まるでリアルタイムなアイドル達の言葉で叫んだり、笑っているかのような。その想定が少しでもずれると違和感が生まれ、実在性がガラガラと崩れる危険性もあるが、ファンコンライブにはそれが全然無かったことも、心の底から没入できた要因だと思う。タイミングは忘れたが次郎が「そこ~!笑わないの!」みたいに客席に絡んでいたのもめちゃくちゃ良くて、脳がドロドロドロ……になった。
最後に輝が「今、会いに行くぜ!」って言ってくれたの、め~~~~っちゃ嬉しかったし、来てくれるんだ~~~(涙)(涙)になって最高だった。心からアンコールしてよかった。

M15  DRIVE A LIVE(アンコール)
最後はやっぱりこの曲だよな!という締めのドアラ。ここまでカウントダウンからパンフから何もかも徹底して「315世界のアイドル達によるファン向けライブ(コンテンツそのものやPの存在はどこにも出てこない)」という体を貫いていたからか、「SideMって呼称がいきなり出てくる」みたいな話も目にしたけど、私はもうこの空間が幸せすぎてなんか、細かいことはどうでもよくなってしまっていた。実家のテニミュでも思いっきり作中で「テニスの王子様」って言ってるし……みたいな……あんま気にならなかったかも。ファンコンライブでも、そうじゃない形式のライブがあったとしても、これはこういうもの!ってなっていくかもしれない。私はずっとドアラを歌い続けてほしい。
ドアラではもう怒涛のファンサービスが巻き起こり、受け止めるだけで精一杯だった。可愛いメンタル二人、薫に寄りかかる次郎(めっちゃいい)、背中合わせのリーダー。こうしてみると、ドラスタとS.E.Mってめっちゃ相性良かったんだな~と改めて実感した。愛嬌と明るい人柄の二人、歌が上手くて理知的な二人、みんなの柱になるリーダー。この2ユニットのライブが見れて、本当に本当に幸せだった。
オレンジとピンクの銀テープまで発射されて、2階席だったのでああ~~~欲しかった~~!!と思っていたのだが、帰り道で優しいPさん(ファンの方かも)が「ここに置いておきます!」ってガサっと置いてくれたものをありがたく一本ずつ頂戴した。

曲が終わり、みんなが一言ずつお礼を言って捌けていく。その時に、舞田が「またすぐに会えるよ!」と言ったのを聴いて、私は心が汚れた大人なので、「嘘だ……」と思ってしまった。この時は。なんて優しい嘘をついてくれるんだろう、きっともうこんな機会ないかもしれないのに……と、類が悲しませないようにしてくれている(と思い込んでいた)ことが逆にすごくすごく寂しくて、ちょっと泣いてしまった。
最後に、輝が捌ける前にしたのが、手を振るでもなく決めポーズでもなく、”深いお辞儀”だったのがすっごく良くて……28歳の、社会を経験している、責任や感謝を知っている人だ……ということが伝わってきて、感動してしまった。天道輝の魅力がぎゅっと詰まっていた。

輝が捌け、終わってしまった~~でもすごく楽しかった~~!的な空気が流れている客席に対し、間髪入れずに315プロから情報の波が押し寄せる。
先ほど、舞田は「またすぐに会えるよ☆」と言ってくれた。完全に、優しい嘘だと思っていた。
11月に追加公演があるなんて!!!!!
私は本当に反省した。よりにもよって、大好きな担当が言った言葉を一瞬でも信じなかった自分に腹が立った。本当にごめんなさい。でも本当に嬉しい。本当にまた会える。絶対チケット取って、会いに行こう。
新曲は新CDシリーズとして出るし、ファンコンライブの第2弾も開催が決定し会場は狂喜乱舞状態に。彩×アルテ、レジェ×クラファなんて絶対楽しいし絶対見たい!!!今日この場に居合わせた人、そして配信で見た人のほとんどが、開演前まで抱えていた不安感は払拭されたことだろう。私は、ファンコンライブを絶対に完走してほしいし、なんなら最終的に全ユニ揃ってでっかいライブやってほしい。でっかいモニターのある会場で。

最後の最後まで”存在”してくれてて本当に最高だった。

☆総括
ここまで読んでいただいた方には伝わっているかと思うが、私は今回のライブに行って本当によかったと思っている。ここまでSideMが歩んできた道があり、様々な展開を積み重ねてきた中で、関わり方も人それぞれで、2000人いれば2000通りの思いがあったと思う。最初はもちろん不安もあった。モデルに馴染めなかったらどうしよう、何らかの違和感があって、逆に”現実ではないこと”を突き付けられて、楽しめなかったらどうしよう…とか、いろいろ考えていた。そんなことは一切無かった。
私個人の思いとしては、このライブで起きたこと全て、ステージに立っているアイドルの声が、ダンスが、仕草のひとつひとつが、アイドルの姿で、想像ではなく本物の記憶として自分の中にあることが、ただひたすらに嬉しい。そんな風に思っている。
システム的な話をしてしまうと、背景が真っ黒なのは寂しいな~とか配信映像明るくならないかな〜とかもっと演出豪華になるといいな~とかはあるけど、今後変わっていくかもしれないし、追加公演でどんな風に変わるのかも楽しみ。初回であの盛り上がり方ができたのは本当にすごいし、開演前の独特の一体感を共有できてよかったな〜と思う。
会場の空気感も本当に素晴らしくて、あの場に居合わせたことはずっときらきらの宝物になるんだろうなと思う。DRAMATIC STARSもS.E.Mも、確かにそこにいた。ずっと見たかった景色を見ることができた。初めての試みを大成功に導いた2ユニットと、熱量を込めてステージを作り上げてくれたスタッフさんに心から労いと称賛と感謝の気持ちを伝えたい。いっぱいアンケートを書こう。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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ポルノグラフィティ 12thアルバム『暁』全曲感想

2022年8月3日にリリースされた、約5年ぶりとなるニューアルバム『暁』。全ての作詞を新藤晴一が行い、岡野昭仁はより歌へのアプローチを深め、アレンジャーと共作の曲を作り出すなど、これまでにない試みを取り入れた全く新しい作品となった。「ファンにフォーカスしたアルバムにしたい」「新規の方々が少しでもザワザワしてくれるものを」と言う彼らが届けてくれたのは、紛うことなき傑作だった。

1.暁
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁tasuku 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

ポルノの得意とする、アップテンポでマイナー調のシリアスな曲。これがシングルではなくタイアップすらついていない、アルバムのための曲であることに驚きを隠せない。
タイトルのイメージから、なんとなく暗めのミドルテンポで壮大な感じの曲を想像していたら、全然違った。めちゃくちゃカッコいいポルノだった。こういうタイプの曲を「ポルノっぽい」と自認してくれているのが、ファンとしてはすごく嬉しい。
作曲は、昭仁とtasukuさんの合作という珍しい形態。今回、「トラックを先にアレンジャーに作ってもらって、後からメロディを乗せる」という方式で作った曲が何曲かあって、そのやり方が結構良かったので採用したとのこと。リクエストしたとはいえ、tasukuさんの引き出しにある“マイナー調のカッコいいポルノ”でこれが出てきたのがまた嬉しい。『THE DAY』の進化形って感じがする。
「全体的に明るい雰囲気ではない」と2人が言うとおり、確かに今作は弾けたパーティーチューンやワイワイ盛り上がるような曲は無いかもしれない。ただ、冒頭に置かれたこの『暁』を聴けば、単に「暗いアルバムだな」という評価を下すことには、まずならないだろう。逆境に置かれてこそ鋭く閃光を放つ、カウンターパンチのような曲である。
作詞の面では、晴一が韻を意識して作ったとのことで、確かに大量に散りばめてある。個人的に、韻って、やりすぎると小手先の技術による「加工」っぽさが洒落臭くなって好きじゃなかったりするんだけど、これはそうならないギリギリを攻めているんじゃないかなと思う。「共犯者」と「乱反射」で踏んでるとこが、言葉の雰囲気も加味して好き。

「暁」という言葉の意味を二人が統一してイメージしていなかったのが面白いなと思った。そんなことある?「まぁ、明けていくことに変わりはないんで」という言葉通り、最終的な方向性が同じだからそういうスタンスでいれるんだろうなとも思う。

2.カメレオン・レンズ
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:篤志PORNOGRAFFITTI

発売当時は「なんだこの曲?!すごすぎる…」ってなって、その後1年くらいずっとなんだこの曲?!って言ってた気がするけど、さすがにもう馴染んだな。こういうEDMというかリズム主体のエレクトロに振り切った曲をポルノも頻繁に作るようになったし、特にこのアルバムにはそういう曲も多いので、通しで聞いたときの空気感が合ってる。でも、改めてこういう曲がシングルにあるのはすごく嬉しいし、楽曲の完成度が高すぎる。
「UNFADED」ツアーでの演出がすごすぎて、あれを超えられるのか…と思うけど、意外とサラッとやるのかなぁ。でもこういう曲がセトリに入っているとものすごくアクセントになるし、期待したいところ。やるよね?ツアーで…。お願いします。

3.テーマソング
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:立崎優介、田中ユウスケ、PORNOGRAFFITTI

アルバムの中にあったら浮くかなぁと思っていたけど意外とそうでもなかった。ただ、アルバム全体のバランスとかをガン無視すると、これが『REUNION』だったらなぁ…もっと最強になったのに…とはどうしても思ってしまう。これは個人の好みの問題…。
昭仁が「続」ツアーで言っていたように、いつかみんなで声を出せるようになった時のための曲というテーマに沿うなら、「暁」ツアーではやらない気がする。同じくだりを繰り返すことになるし。

4.悪霊少女
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:江口亮PORNOGRAFFITTI Strings Arrangement:江口亮、友野美里

タイトルが出た時点でかなり期待されていた曲だと思うが、個人的にはその期待を全く裏切っていない名曲だと思う。もっと重厚な暗い雰囲気の曲かと思っていたら、アップテンポな暗めのロックチューンで紡がれる恋の歌だった。短いイントロだが、真っ逆さまに落ちていくような不気味さと没入感があり、歌詞は晴一の得意とする物語調の世界観で、また新しい切り口が生まれたなという感じ。
様子がおかしくなっている人に対して「悪霊が憑いている」という見方をするのは、少し昔の話なのかな~という印象もあり。少女に対する父と母のリアクションの違いも面白い。《我らは戦士 戦うの 生涯をかけても》と言う母親が勇ましすぎやしないか?と思ったが、少女のように恋わずらいに対して抗わなければいけなかった時があったのかもしれない。

暗黒の館には決して
足を踏み入れてはならない
出口には錠が落とされて
呪いの儀式で身を焼かれる

これだけ見て、恋の曲だとは誰も思うまい。禁断の恋に落ちて前後不覚になる比喩のようでもあり、もしかしたら本当に相手も吸血鬼や悪魔なのかも…と思わせるようなダークファンタジーっぽさもあり。《生温かい泥のような甘美の夢》なんて歌詞も出てきたりするけど、晴一も何度か言っているように、ともすれば背徳感すら滲む表現を、昭仁の歌声によって過剰に湿った印象にならず、キャッチーに聴けるのは強みだなぁと思う。
キャッチーとは言ったものの、Aメロの背後から忍び寄るような低音は初めて聴いた時にゾクゾクしたし、サビの最後のフレーズをファルセットで伸ばしてきたのは「そう来たか!」と思った。特に2番サビの「逃れられない」は、まるでライブの時のようなロングトーンで驚いた。岡野昭仁は一体どこまで新境地を見せてくれるのだろうか。これ本当に生で聴けたらすごいことだぞ…。
間奏で3拍子になるのも、おとぎ話風のアレンジで更に深く物語の世界へと誘われるような気持ちになるし、歌うようなギターソロもカッコいい。展開も面白くて短くて聴きやすいし、めちゃくちゃ好き。

5.Zombies are standing out
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

これツアーでやらない理由ある?無いよね?頼むよ。これも「UNFADED」ツアーのイメージが強いけど、夏フェスでやったりドームでもやったりして、こういうゴリゴリのヘヴィロックがファンにもきちんと求められていることがわかっていると思うので、今回のツアーで外すわけないと信じている。アンフェ初日の『Zombies~』が始まった時の割れるような歓声が本当にすごかった……。あの演出でこれ出されたら、そりゃああなる。それだけのパワーがある曲だと思う。

6.ナンバー
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:トオミヨウ、PORNOGRAFFITTI

曲調は、「続」ツアーで披露された(仮)バージョンとほとんど変わらず、ストリングスとバンド演奏が融合した、ポルノが得意とするタイプのロックナンバー。本人たちも言っているように、UKロックの雰囲気を主体としているとのこと。少し乾いた感じの、洋風?洋楽?的な空気を醸している。
昭仁のベタ~っと引きずるような、ザラついた歌い方はけっこう珍しく、印象的。その影響で、曲からもどこか退廃的な印象を受ける。しかし、湿った感じの表現をしても重くなりすぎず、カラッとして聞こえるのは声質のなせる技である。

詞は、正に新藤晴一の得意とする、「全然わかんないけど、とにかく世界観に引き込まれる」タイプのやつ。『ナンバー』は穏やかな曲調と相まって、どこかメルヘンチックでありつつ、その裏に潜む不安と違和感が見え隠れし、ある種の怖さすら覚える。
個人的な感覚としては……この曲でキーになるのは「数字」と「満ちる・欠ける」ことであり、その「満ち欠け」とは、「月」を指すのではないかと考えている。現実世界では、時間や月日といった「数字」に囚われて生きている人間も、元は日の出や星の動き、月の形に従って、自然の成り行くまま生きていた。主人公は何らかのきっかけで「数字」を失い、しがらみから解放される。それと同時に、今まで築いてきた生活や「君」をも失うことになる。最初は寂しいと思っていたけれど、段々と元の生活を忘れていく。《数えるのではなく満ちる(欠ける)が合図》であり、行雲流水、無為自然、流るるままに生きることしかできなくなっても、どちらにせよ《Life goes on》なのだと締めくくられる。2番には『胡蝶の夢』のエッセンスを感じ取れる部分もあり、夢か現実か曖昧になってしまった人の曲であるような気もしてくる。

長々と書いたが、これが正解とも思わないし、別にすべてを理解できなくても良い。「考えなくとも、感じる」ことができる楽曲が存在するのも、ポルノの魅力の一つである。ツアー最終日の(仮)バージョンで披露された時は、下手したら『メビウス』より怖がられていたんじゃないかという難解さだったけど、それより幾分かマイルドになったイメージがある。もちろん、すべてを理解しているわけでは全く無いが…。

7.バトロワ・ゲームズ
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁、トオミヨウ 編曲:トオミヨウ、PORNOGRAFFITTI

トオミ節全開の曲。『ナンバー』もトオミさんなことを考えると、なんでもできる人なんだなぁと思うけど、ポルノにおいてのトオミ編曲のイメージはこっちかな。とにかく音使いが気持ちよくて自然とノれるけど、どこか緊迫した雰囲気もあるカッコいい曲。
裏テーマとかを感じさせないくらいに、ストレートにFPSゲームに熱中する人の曲だな~という感じなんだけど、この曲の昭仁の歌い方が気持ちよすぎるので、メロディで聴く曲だと思ってる。
《常にヘッショを狙われて こっちもヘッショを狙ってる》の文章のモタつき感はもっとどうにかならんかったのかと思うけど、若者言葉的な口語体をイメージしていると落とし込んだ。とにかく、音使いもボーカルも歌詞の乗せ方も全部気持ちいい。サザンの桑田さんとかがやる、日本語をあえて英語に聞こえるようにダラッと歌う感じが新しい。1サビの「まぁーだのーぅわ」の歌い方とか「濃いめのドーパミンに酔って」のファルセットも、「バァァァァァ!!!!トロワ・ゲーィムーズ…」も、こっちのドーパミンが垂れ流しになるわという勢い。

『暁』と同じくアレンジャーにトラックを投げてもらってできた曲とのこと。昭仁はこの作り方を気に入ったっぽいので、今後もどんな楽曲が飛び出してくるのか物凄く楽しみ。OPにPS2の起動音が使われているのはレーベルがSONYだからか。

8.メビウス
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

初披露された瞬間から話題作。ツアーで披露された(仮)バージョンから少し歌詞が変更されたが、こちらは曲のアレンジそのものも大きく変わっている。ライブの時の無骨なバンドアレンジが非常にカッコよかったので、初めはなんだこれ?!になったんだけど、ずっと聴いていたら割と好きになった。オシャレかつ浮遊感のあるループミュージックになったが、曲のコンセプトにざっくり言うと「意識朦朧」というイメージがあるというのを読むとかなり納得できた。そう言われると、この前後不覚な、霞がかった、水の中で溺れている時の意識のようなアレンジなのもわかる。昭仁ってこういうワンコードで進むみたいなやつけっこう好きだよね。
で、それに伴って問題の歌詞がひらがなという点で、私はライブ時には「子ども」をイメージしてたんだけど、もう少し年齢が上なのかな?と思うようになった。拙さというよりは前述の「朦朧」の方なんだなと。にしても不気味なことに変わりないが…。なんかあらゆる創作において見つかったらバズりそうだなと思っている。

9.You are my Queen
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

箸休め。と言っても、これはこれで存在感があって意外と嫌いじゃない曲。最初に聴いた時は、なんとなく題材が「晴一版『スパイス』か?」と思ってしまい気乗りしてなかった。『スパイス』があんま好きじゃないので…。まぁでもこちらの書き手は新藤晴一だしな…と思って何回か聴いてると、アレンジも含めて悪くないなと楽しく聴けるようになった。
晴一的には、二人が誰とか関係なく「こういう関係性があったら素敵だよね」というニュアンスの曲らしいが、私はこの曲の登場人物を“親子”だと最初から思っていて。小さな可愛らしい娘に対して「レディ」とか「クイーン」とか気取った呼び方をしておどけているじゃれ合いの曲なのかなと。《君の前にひざまずいて その手の甲にキスするよ》も、相手が小さい女の子だからそういう表現になっているのかなぁとか。《象の背に乗った君を》あたりからは、絵本のような、子どもが見る夢のようなファンタジックな世界観で、カラフルだなぁと思う。クレパスで描いた絵のようなイメージ。
でも、最後のワンフレーズ《永遠にあなたに仕えましょう》が、娘だとすると果たしてそうなるか?とは思うけど、離れても親子の関係は変わらないだろうから、いつまでもワガママを許してしまう父親、みたいなニュアンスなのかな。
ただ、この曲で印象的なのが「レコード針の音」である。イントロと間奏で聞こえてくるこの音がどのような意味なのか、もしかしたらすごく遠い昔を思い出してるみたいなイメージもあるのかなとか。間奏の微妙な“間”が若干不安になるのは私だけだろうか。多分そこまで意味深な演出ではないとは思うけど。

10.フラワー
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:篤志PORNOGRAFFITTI

壮大なバラード。こんな“宇宙”みたいな感じだっけ…?と思って、過去に配信された原曲と聞き比べたけど、デジタルだったのがCD音源になったおかげで音質がクリアになり、なんとなく広がりのある感じに聞こえていただけっぽい。特にミックスとかに変更は無さそう。昔あった『アゲハ蝶』とか『渦』みたいな、アルバム用のリミックスってあんまり無くなったよね。『2012Spark』が最後?たまにはそういう枠も復活したら面白いかも。
テーマもハッキリしてるので、ツアーでの扱いは難しいところだと思うけど、曲の雰囲気も考えると後述の『証言』とかもあるし、今回は入らないんじゃないかな?と思う。どっしりしたスローバラードって何曲もやるもんじゃないし。

11.ブレス
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

優しいギターの音色と、それを引き立てる打ち込みのリズム、爽やかで力強く伸びやかなボーカルと、押し付けがましくない、でも突き放すわけでもない、そっと背中を押すだけの絶妙な言葉選びのマッチングなど、ポルノが得意とする方向のメッセージソングらしさが詰まった曲。しまなみロマポルと、ポケモン映画タイアップの思い出がぎゅっと詰まっているので、無条件で泣けてしまう曲。そうでなくても曲自体が本当に良いので、ぜひともツアー固定曲になってほしいところ。『ギフト』的なポジションになってくれそう。セトリの最後に置いてもいいくらいだけど、リリースから期間空いてるしなぁ…という。本人たちがどう思ってるのかはわからないけど。

12.クラウド
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:宗本康兵、PORNOGRAFFITTI

正直最初に聴いた時は「まぁ、1曲はこういう“スーッ”のやつも入ってきちゃうよね。」と思っていた。が、サビの「燃えるような 夕陽だけが」「が↑↑↑」のファルセットを聴いた瞬間、嘘でしょ?!になり飛び起きた。全体のメロディがすごく綺麗だし、Aメロの投げやりな歌い方から段々ギアを上げてくるのも面白いし、サビは本当に泣いているのか?と思うくらいの切ない声色と、対比した明るいメロディが余計に哀しさを帯びている曲で、これはやられたなぁ……と何回か聴いて心に染みる羽目になった。
晴一って『空が青すぎて』とかもそうだけど、悲しい出来事をメジャー調で書くと余計哀しい、みたいなのが好きなイメージがある。なんというか、《泣きたくなるほどの青さ》を曲にすると、こういうメロディになるのかなぁという感じ。普通、空が青けりゃ嬉しいもんだけど、自分の心はそうではないよ、でもそんなの関係なく、どうしようもなく空は綺麗で、心の置き所がなくて切ないね、みたいな。

アレンジャーが付き合いの長い康兵さんなだけあって、すごく自然な仕上がり。昭仁の特徴である、語尾のフォールを活かすディレクション、ストリングスの入ったバンドサウンド、というポピュラーな「ポルノっぽさ」を汲み取ってくれているので聴きやすい。キラキラしたサウンドに乗ったドラマチックなメロディと切ない歌詞が、このまま何かしらの映画の主題歌になっても良さそうなくらいにマッチしている。

13.ジルダ
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:tasukuPORNOGRAFFITTI

煌びやかでラグジュアリー、ちょうど良く気だるげな甘さを感じる、ポルノ流シティー・ポップといった雰囲気のオシャレな曲。メロディからストーリーや情景が浮かんできやすい、ベルベットの赤!シャンデリアのゴールド!という感じ。こういう、ジャズ、ソウルチックな、揺らした感じの曲はあんまり無いので新鮮さもあるが、これもポルノだな〜と思わせる説得力と魅力がある。

それにしても……この曲に出てくる主人公の男は、まぁ、私に言わせると「人の話を聞かない頭お花畑のいけ好かないキザナンパ野郎」なので、9割がた「何言ってんだコイツ」という気持ちにはなる。本当にただひたすらコイツの頭の中で話が進んでいくので、軽く恐怖すら覚える。ポルノの(主に新藤晴一の)世界にはたまに出てくるタイプの人だが、中でも相当にヤバいと思う(※個人の見解です)。1番終わりでこの曲の意味するところを察して、文字通りジタバタしながら聞いていた。彼氏いる女の子を連れ出そうとすな!友人の牽制をスルーすな!ウインクすな!仕事仲間を脇役とか呼ぶな!急にアインシュタインを持ち出すな!カレンダーの余白を虹色にすな!なんだこいつ。ジルダさんは小粋なオペラジョーク(笑)でコロッと転がされる女性ではないと思いたい。正気を保っててほしい。まず恋人がいるのに別の男について行くという破滅的な倫理観が私には無いので、コイツの行為を、物語の結末をどう捉えるかは、人によると思う。
曲中に出てくる「オーチャード」とは、十中八九、渋谷のオーチャードホールのことであろう。もしかしたら、そこにコイツと誑かされた女の子のストーリーがあるかもしれない。結局「マグリオット」って何なんですか?教えてください新藤先生。あまりに男のことが理解出来なすぎて、気がつけば『ジルダ』のことばかり考えていた時もあったので、夢中にさせられてるのは自分だったってオチなんですか?腹が立ちますね…。

しかしながら、長々と書いた歌詞の共感性の有無を丸ごと差し引いても、岡野昭仁の歌声がとにかく素晴らしすぎて、まるでロマンティックで上品なラブストーリーを見ているような気持ちになるのが不思議だ。散々言ってるけど、昭仁の歌声は、声色による緩急のつけ方、表情の豊かさなど、何を取っても“最強”になっているので、『ジルダ』においても異常なくらいのグルーヴを生んでいる。Aメロのオク上で被せるコーラス、「土曜の夜にオペラへ」のファルセット、「オーチャードでSee you」の音ハメの気持ちよさ。シルクのような肌触りと、古いランプのようなボヤけたあたたかみのあるオレンジ色。曲が、詞が、歌声が全てのシーンを作り出している。最後まで聴けば、まるで映画のワンシーンをそのまま切り取ったような満足感に、いつの間にか虜になっている。そんな曲。

14.証言
作詞:新藤晴一 作曲:岡野昭仁 編曲:江口亮PORNOGRAFFITTI Strings Arrangement:江口亮、友野美里

『暁』と合わせて先行配信された曲。
タイトルから、『鉄槌』などの系譜に近いシリアスな楽曲だと予想していた人も多かったが、その正体は、ストレートに愛を歌うロック・バラードだった。バラードと言いつつ、まるで一つの舞台のように目まぐるしく展開していく曲調は、5分15秒という長さを意識させない、疾走感すら感じさせる不思議な構成である。

《悪魔が黒い翼 羽ばたかせ飛び去った》から始まる出だしと共に、主人公の置かれている状況と、悲痛な叫びが伝わってくる。決して明るいとは言えない曲調だが、そのメロディは幻想的で美しく、ヨーロッパの霧深い森を連想させるようなドラマチックな音作りとなっている。
静かに語りかけるような冒頭から、ドラムパターンが徐々に変化することにより、曲のスピード感が生まれている。最初はただ悲しみに暮れ、ゆっくりと歩いている様子が、次第に何かに突き動かされるように、段々と歩みを早め、揺るぎない確信を胸に駆け出していく。靴も履かずに、裸足で、痛みと孤独を抱えながら、それでもただひたむきに、美しさすら感じさせるほどに、長い髪を振り乱して息を切らし続ける……そんな情景が浮かんでくる。

完璧なものなど この世にはないと言うのなら あの愛はそれを
覆した ほんの一瞬 たくさんの星が証言してくれるはず
偽りのない奇跡と

逆説的に、愛の不変性を説くこの「証言」という言葉の使い方に、ただ舌を巻く。そしてあえて文末に置かれた「はず」という言葉選びが、その希望の儚さをイメージさせる。灯火のような小さな光を、哀しみを帯びながらも全てを照らす太陽のような、力強い昭仁の声が高らかに歌い上げることで、この曲は生命の宿る地球のような絶妙なバランスを保つ。

一口に“バラード”と言うにはあまりに力強く、壮大で、揺るぎない。曲の雰囲気の根幹を担う、岡野昭仁によるメロディと歌声。そこに呼び寄せられるかのような、新藤晴一の手法としては珍しい、てらい無く“愛”を表現する言葉たち。ミニマムな世界を切り取ったようでいて、世界の全てを唄っているような錯覚さえ覚えるこの曲は、本当に大げさではなく“音楽である”としか言いようがないと私は思う。

15.VS
作詞・作曲:新藤晴一 編曲:近藤隆史、田中ユウスケ、PORNOGRAFFITTI

ノスタルジックな煌めきと突き抜けた晴れやかさが共存する、アップテンポなロックチューン。東京ドームのメモリアルな印象がつきすぎてしまっているかな?と思ったけど、アルバムの並びで聴いても、最後の曲としてぴったり収まる良い曲だった。同じ理由でツアーでの扱いは難しくなるかもとか考えたけど、そういえばCYBERロマポルでもやってたし、サラッと清涼剤みたいなポジションで扱ってくれたら嬉しい。
東京ドームの『プッシュプレイ』リミックスが良すぎて、アウトロを聴くと毎回「アレッ?!」ってなる。スタジオ演奏動画(文章下)でも、CYBERロマポルでもこのアレンジだったので、これこそ”アルバムver.”でリミックスして出しちゃえば良かったのにと思わなくもない。逆に言えば、ツアーでどう化けるのか楽しみでもある。

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「太陽が昇る前のほの暗い頃」、もしくは「夜明け前の空が少し明るくなり始める頃」を指す『暁』。時代によって意味が移り変わったとしても、夜明けに向かうという意味は変わらない。自分たちが置かれた立場による葛藤、音楽との向き合い方。様々なしがらみや、自問自答から解放されたと思われる2人が作り出す音楽は、これまでの楽曲と比べても、1曲1曲が放つ輝きの大きさがまるで違うことがわかる。「聴く人に希望を与えたい」という意味を持つこの『暁』を生み出した、ポルノグラフィティも今まさに「暁」を迎えているのだと、肌で感じることができた。
ファンとして、まず間違いなく最高傑作レベルだと断言することができる一枚だった。このアルバムを引っ下げて回る全国ツアーが、今から楽しみでならない。

【ライブレポ】17thライヴサーキット『続・ ポルノグラフィティ』

2019年9月の東京ドームライブを最後に、ひと休みをしていたポルノグラフィティ
20周年という節目を迎えるまで、ほぼノンストップで走り続けてきた彼らにも休息の時間が必要だろうと、その帰りを待ち続けていた。

そのタイミングで起きた、未曽有のパンデミック
それでも、2020年12月には配信ライブがあり、晴一はnoteの執筆や個人の舞台制作に向けて動き出し、2021年は昭仁のソロ活動の配信ライブが2回開催され、そしてポルノ名義で『THE FIRST TAKE』に出演しポルノ・リバイバル旋風を巻き起こすなど、できる限りで活動を続けていた。

同じ空間で出会えなくなってから約2年。2021年8月、彼らは突如として凱旋した。

「9月にシングル出るよ!」
「ツアーもやるよ!9月から始まるよ!先行がもう始まるよ!」

ポルノは別に活動休止ですとは言っていないので、そんな風に書かれている飛ばし記事とかを見るとイラっとしてしまうのだが、それでもあえて「新始動」と銘打って、エンジンをゴリゴリに吹かせていることを示してきたポルノグラフィティ
新曲が出ること自体は予想していたが、まさかアルバムも無しにツアーをやってくれるとは思っていなかったので、嬉しい反面驚きも大きかった。アルバム無しのツアーがいかに(こちらのメンタルが)大変なことになるかは、2018年の「UNFADED」ツアーのエントリーにて言及しているのでそちらを参照していただきたい。

ポルノグラフィティが帰ってくる。
新しいストーリーの続章を引っ提げて。

<参加公演>
2021.10.15 福岡サンパレス
2021.10.16 福岡サンパレス
2021.11.28 アイプラザ豊橋
2021.12.13 札幌文化芸術劇場hitaru
2021.12.14 札幌文化芸術劇場hitaru
2021.12.22 東京ガーデンシアター(ライブ配信
以上の公演の内容を織り交ぜて書いていきたいと思う。

☆ツアーコンセプト
2019年7月に発売された『VS』以降、新曲も主軸となるアルバムもリリースしていないということは、「アルバム、カップリングなどの全楽曲がセットリスト入り対象のツアーになる」ことが確約されていることは明らかだ。更に、ツアー前のラジオにて「今回はこういう状況で、キャパも狭くなるし席も少なくなる。そんな中でも一生懸命チケット取ってくれる子っていうのは、やっぱりコアな…俺より曲名を覚えてて、君(昭仁)より歌詞を覚えてるようなファンの人が多いと思うから。どっちかというとコア向けみたいな感じになると思う」という旨のことを晴一が話していたため、ハッキリと方向性が示されていた。
ちなみに私の選曲予想(希望)はこんな感じ

☆開演前~オープニング
会場に着き、客席扉から廊下にスモークが漏れ出ているのを見て、私は既に泣きそうになっていた(早すぎ)。ライブを楽しみに待つ人々のおしゃべりも無く、静かに時が流れる会場で、浮遊感のあるBGMが流れる。客席内を、ボイスストラップ屋さんが練り歩いていた。

(公式ツイッターより引用)

今回、歓声やコールは禁止のため、公式からこのような謎グッズが発売された。舞台などでは既に導入されているところもあるが、あらかじめ収録している音声や、自分で録音した声が鳴らせる代物だ。最も、私は曲間の名前呼びは普段から別にしていないので買わなかったが、周りにはちらほら持っている人がいた。初日から徐々に持っている人が増えたらしい。
(これは別に"チャレンジグッズ"ではなかったはずだが、結局本命のチャレンジグッズに関しては立ち消えになったっぽいので、実質これがそういうポジションになっていたような気がする。)

開演前のライブ会場内は、大騒ぎ出来ないささやかな興奮で満ちていた。
フッと、客電が落ちる。込み上げる気持ちをうっかり声に出さないよう、静かに、しかし逸る気持ちを抑えられずに立ち上がる人々。

鼓動のような一定のテンポでバスドラムが聴こえる。サポートメンバーが入ってくる。そして、ゆっくりと歩みを進め、ステージ中央へやってくる見慣れた二つの人影。スモークが焚かれた床はまるで雲の上のような神秘的な雰囲気を醸し出す。
飾り気のない、シンプルなオープニング。彼らは、ごく当たり前のようにそこにいた。特別な空間を作り出すために息を整えるのを、私はただ見つめていた。

M1 IT'S A NEW ERA

夜明けを待って さあ船を出そう
目指すのは 新世界
私のための 場所がそこにある
約束は果たされる

2人が直接会えなくても、声を、音楽を届けてくれていたことはもちろん知っている。
わかってはいても、頭では理解してはいても……それでも、2年ぶりに大好きな声が鼓膜を震わせた瞬間、涙があふれて止まらなかった。
やっと会えた。やっと同じ空気の中で時間を共有している。私は泣きじゃくっていた。隣の人も、タオルに顔を伏せて泣いていた。

私は『IT'S A NEW ERA』の歌詞が、無意味に何度も写経するほど好きだ。端々に光る、晴一特有のセンテンスを逐一取り上げたいがそうもいかないので、ライブの中でも一番グッときたパートに言及しておきたい。

彼方の空 雲を割って光が差した
間違いじゃない そう言ってくれているのか
挫けそうだよ 笑えないよ 忘れられたいよ
そんな日々はもう 海に返して

「忘れたいよ」ではなく「忘れられたいよ」であるつつましさ。この言葉選びの妙が、私には他人事とは思えない感情となって刺さってくる。つらいこと、悲しいこと、ぶつけようのない怒り。私が私である限り、切り捨てたり、忘れることができない感情。隔絶された気持ちになるならば、いっそ誰しもが私のことを忘れてほしいという、自己矛盾が表現されていることに共感してしまう。
その自棄的な感情を《そんな日々はもう 海に返して》と受け止め、半ば強引に忘れさせてくれる力強さがこの曲にはある。
この曲の昭仁の声は恐ろしいほど綺麗で、だけど確かな力強さと優しく美しいファルセットが共存している。『IT'S A NEW ERA』は、カップリングという位置づけにありながら、シングルカットされてもおかしくない曲であったことが晴一の口から明かされているが、その裏付けともいえるパワーを持つ、オープニングナンバーとしての存在感。《約束はついに果たされるのさ》と歌うこの曲は間違いなく、「続・ポルノグラフィティ」というツアーの幕開け、そして、ポルノグラフィティの新たな夜明けにふさわしい曲であった。

M2 幸せについて本気出して考えてみた
2018年の「UNFADED」ツアーでも披露されたこの曲が来るのは予想していなかった。
ただ、あの時と違うのは、声が出せないということである。最近裏打ちのリズムで拳を上げる人が少なくなったように思うけど、私は裏打ちしたいのでもどかしい気持ちになる。まぁノリ方は人の自由だからどっちでもいいけど。

ここで昭仁の煽りが入る。
「みんな今日は来てくれてありがとう!声が出せん代わりに、クラップで盛り上がりましょう!思いっきりクラップしてくれ!クラップユアハンズ!!今日は思いっきり楽しんで、夢のような時間をみんなで作ろうぜ!」

M3 ドリーマー
まさかの選曲で早速度肝を抜かれた。さすが「コア向け」とあえて謳っただけのことはあるけど、それにしても予想外すぎる。『ドリーマー』は初めて聴けるのでラッキーという気持ちになると同時に、2006年の『SWICTH』ツアーに行かせてもらえなかった自分が成仏した。
冷静に考えると、歌詞的に「夢のような時間にしようぜ!」という煽りで出てくる曲ではない気がするのがちょっと面白かった。あと、歌割が謎な箇所があったがずっとそれで歌ってたので珍しくCDと全然違う感じになってしまった。なんでだろう。

M4 ANGRY BIRD
間髪いれずに始まったこの曲でまたひっくり返りそうになる。声が出せていたら、割れんばかりの歓声が聞こえただろう。ポップな『ドリーマー』から、一気にダークでシニカルな世界観のゴリゴリなロックサウンドに。いわゆる”裏ポルノ”的な曲がもう聞けるのかと、このツアーに対する期待値がグンと高まった。サビで入るギターパートで、晴一だけにグリーンのピンスポが当たる演出はズルすぎる。終盤の「デン!デン!デン!デン!」に合わせて切り替わるライトもカッコ良かった。「ダイキャス」ツアーから更に進化した『ANGRY BIRD』の姿を見ることができた演出だった。

M5  Love,too Death,too
恐らく、長い間多くのファンが待ちわびていた曲であろう。ポルノはなぜか全体を通して全くライブでやらない時期の曲があり、『ラブデス』も不遇シングルの一つと言われてきた。この曲に関しては、晴一が「ギターがつまんないから」という理由を吐露していたが、満を持してビカビカのミラーボールが光りまくる派手な演出とギターソロパートの追加という大変身を遂げてやってきた。ライブでやったら絶対盛り上がるのに~というファンの期待を裏切らない、名アレンジであった。

M5’ LiAR
ツアー中盤から、曲順が変わり5曲目が『LiAR』に変更される。ラテンナンバーとしては新しめ、かつ『オー!リバル』よりパンチが少ない、いぶし銀的なポジションに収まってきているような感じがしたので、ここで聞けたのはラッキーだったのかもしれない。「BE」ツアーでもやったが、やっぱり映像が無い方が締まる感じがする。

M5’’ 今宵、月が見えずとも
ツアー地方最終日の札幌2日目から突如加わり、もう変更が無いと思い込んでいた私は完全に挙動不審になった。嬉しすぎる!!正直なんでこんなにやらないんだと思ってしまうくらいカッコいい曲なのでめちゃくちゃ嬉しかった。
ラスサビの昭仁のロングトーンは、ぶっ倒れそうなほどかっこよかった。もっと『メリッサ』とかくらい頻繁にやってほしいけど、次聞けるのは一体いつになるんだ。

ここでMCが入るが、今回は曲間に声を出すことができないため、各々のボイスストラップに吹き込んだ声を流すという光景が。メンバー的には、間が持つという意味で声はあった方がいいらしいので、役に立ってるなら良かったなと思った。昭仁がこそこそ「今押してー!それ使ってー!」と指示する場面も。

新メンバー紹介。今回はベースの山口寛雄さんと、ドラムの玉田豊夢さんと田中駿太さんが仲間入り。
(以下挟まるMCは全てニュアンス、地域ごちゃごちゃです)

昭「みなさんこんばんは!元気でしたか!!わしらが~~~~~ポルノグラフィティじゃ!札幌の皆さん元気ですか!!」
晴「すごいホールよね、hitaru。初めて来たけど、めちゃくちゃ綺麗なホールじゃけぇ。あれじゃろ、大泉洋さんが建てた……」(※違います)
昭「高さがすごいよね、4階くらいまであるんじゃろ?…おお手振ってる。みんな見えとるからね~!!すぐ隣?中?にテレビ局があったけぇ。”御殿”なんじゃろ。違う?まぁええわ、あれじゃったね、トイレもめちゃくちゃ綺麗で。あの水の流れる…音のやつが、クラシック音楽じゃった!」
晴「えっ、違うよ。水の音だったよ、わし。」
昭「え?!わしが入った時はクラシック音楽じゃったけど。」
晴「BGMかなんかじゃないの?」
昭「ええ~?!流れとった気がしたけどなぁ。まぁいいんですよこんな話は!!(笑)」
晴「みんな声が出せんけぇあれじゃけど、盛り上がってるってことでええんよね?…ボイスストラップもなんか、活用してくれとるみたいじゃけど。なんか、あれよね、隣の会場が盛りあがっとるみたいな不思議な感じですけども。……今回久しぶりにやる曲とかも多くて、次いつやるかわからんような曲もあって……それを考えると、一曲一曲大切にやっていけたらと、思いますね。」
昭「え~、ここまで聞いてもらったらわかるけど、結構ね、コアな感じの曲もやっとりますけど。大丈夫?初めての人ついて来れてる??この後もね、久しぶりにやるようなね、十数年ぶりにやるような曲とかもやっていくので、皆さんと盛り上がれたら嬉しいです。その曲は、『ウォーカー』という曲です。聴いてください。」

M6  ウォーカー
あんまりやらない曲をとのことだったので、どれどれ…と思っていたら本当にやってない曲だったので驚いた。2007年の『PORNOGRAFFITTI』からのチョイスとはいくらなんでも渋すぎやしないか?初めて来た人とか、連れてこられた人が割とポカンにならないだろうか、と思いつつも、あくまで今回はいわゆる「2人より曲や歌詞を覚えているようなファン」に向けてセトリを作ってきたというのがひしひしと伝わってきた。こういう、ポルノも自分も歳を重ねて、今だからこそ沁みる感じの曲をやってくれるのはいいなぁと思う。《賞味期限が切れる夜の0時に ミルクには何が起こるんだろう 致命的ななにごとかが》は、今読んでも名歌詞。
早く『蝙蝠』のことも思い出してほしい。

M6’ Free and Freedom
『ウォーカー』と日替わり枠でやっていたのがこの『Free and Freedom』。『ジョバイロ』のカップリングという位置づけもあり私は聞いたことがなかったので、初めて聞けて嬉しかった。昭仁がBEツアーで新調したアコギが本当にいい音なので、浮遊感のあるアレンジと深く響く音色とが相まってすごく気持ちいい曲になっていた。リリース当時より圧倒的に進化して伸びがいい今の昭仁の声で昔の曲が聞けること自体が嬉しい。アウトロの皆川さんのキーボードアレンジがカッコ良すぎた。

M7 君の愛読書がケルアックだった件(前半セトリのみ)
あんまりやらない曲を~という発言の直後にしては、こちらは比較的新しい曲。しかし、シングル以外のアルバム収録曲はアルバムツアー後は埋もれてしまいがちなので、こういう『ケルアック』みたいな他と競合しそうな曲をまたすぐ聞けたのは、個人的には良かったなと思っている。後半はラブデスがここに入ってきて消滅した。

昭「え~~みなさんご存知かもしれないですけど。23年間ポルノグラフィティとして活動する中で、ほんとに色んなことをやってきたけど。今年はある新しい、魅力的なコンテンツに出させてもらって。『THE FIRST TAKE』というね…」
ここで大きな拍手。この『THE FIRST TAKE』は、ポルノが出るまで私は噂程度しか存じていなかったのだが、近年の音楽シーンの中でかなりの影響力を持つコンテンツで、動画が上がるたび何百万という再生数がつくチャンネルだ。そこにポルノが出たのは昨年9月。『サウダージ』を披露し、ぐんぐん伸びる数字を見て、かなりの反響だったことが伺えた。

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サウダージ』は今では1750万再生され、比較的新しい動画ながら全体の中でも20位代をキープし続けている。本当にすごいことだ。
昭「ビッグコンテンツに出させてもらって、ありがたいことですよ。その出させてもらった時にそこでやったアコースティックセッションがすごく良かったので、ここでも披露したいなと思います。曲は、『ミステーロ』です、聴いてください。」

M8 ミステーロ
本当に、こんなに盛沢山でいいの?ってくらい贅沢な時間だった。『TFT』のアコースティックセッションはとてもクオリティが高くて素晴らしかったが、まさかそのアレンジで違う曲が聴けると思っていなかったのですごく嬉しかった。『ミステーロ』が持つエキゾチックな雰囲気が更に増して、美しい楽器の音色と昭仁の声がクリアに聴こえて、高級なディナーを食べているような気持ちになった。山口さんがコントラバスで鳴らしていた「ギューン」という音が不穏な空気も醸し出していて、不思議なアクセントになっていた。本来サビ始まりなのがAメロ始まりになって、最後にサビを繰り返すという構成になっていたのも面白かった。

昭「え~ありがとうございます。ここで、せっかくなので、その『THE FIRST TAKE』でやった曲もね、披露したいと思うんですけど。」
客席から湧き上がる拍手。やったー!『サウダージ』も聞けるんだー!と喜んだ瞬間、昭仁から衝撃の一言が。

「せっかくのこういう機会で、こういう距離が近いホールでやらせてもらえるんでね、今日は、せっかくなんで、マイクを使わないで、みなさんに届けたいと思います!」

マイクを使わないで、と言った瞬間、建物が揺れるくらいの拍手が沸き起こった。客席が一気に息を呑むのがわかった。
昭仁がスッと息を整え、客も静かに身構える。

M9 サウダージ

「私は私と はぐれる訳にはいかないから
いつかまた逢いましょう その日までサヨナラ恋心よ」

これまで約18年間、昭仁の声がずっと大好きでいたけれど。この日改めて、岡野昭仁の声が好きでよかったなと、本当に本当に心の底から思った。
今までも、昭仁がライブでアコギ一本で弾き語りをしてくれたこともあるし、少ない音数で声を聞くという機会はあった。最後の挨拶だっていつも生の声ではあった。
だけど、本当の生の歌声、それが直接鼓膜に入ってくることは今までなかった。この人から本当に私の大好きな歌声が出ている。その実感だけで、声を聞いただけで、涙があふれて止まらなかった。
あの時間は、紛れもなく、私の人生の宝物になった。一生忘れないし、最後に思い出す瞬間のひとつになると思う。
サビのワンコーラスをアカペラで歌った後は『TFT』のアレンジになり、美しいラテンの民族音楽のような素晴らしい演奏と共に濃密な時間が流れていった。Aメロが始まるギリギリまで鳴り止まなかった長く大きな拍手が、昭仁の歌声の素晴らしさを物語っていた。
曲が終わると雰囲気が一変し、ステージが暗転、重く響く金属音のイントロと共に、無数の光の筋が舞台上に檻をつくりあげた。

M10 鉄槌
艶やかな空間から、一気に重く薄暗い緊張感が走る。私はこのツアーが始まる前、まだコロナ禍ではあるし、最新シングルもメッセージソングだし、全体的に明るめのライブになるのかな?と思っていた。そんなことは無かった。にしてもここまで、恐ろしいほど圧倒的な“陰”のオーラで殴ってくるとは。ポルノが繰り出す暗い、ダークな雰囲気を纏った曲というのは、ポップな曲とのギャップも相まって本当にシリアスでかっこよくて、こういうポルノがたくさん見たい!と思っているファンも多い。世相を加味せず、あくまでライブという空間のカッコいいポルノを見せる選択をしてくれたような気持になって、嬉しかった。
1番が終わると、ステージ上に厚い霧のようなスモークが立ち込めており、いつの間にか昭仁が消えていた。長いギターソロのアレンジは、晴一の独壇場だ。これで曲のポジションがいわゆる“ヘソ”だということは分かったが、まさか今それがこの『鉄槌』になるとは…。

M11 Fade Away
2曲続けて、また暗めの曲。こういう流れは大好きなのでめちゃくちゃ嬉しかったし、『ケルアック』と同じく2017年の『BE』アルバムの曲なので、こんなに早くやってくれたのも嬉しい。ダークな世界観と昭仁の艶やかなボーカル、メロディアスなリフが非常に印象的な曲だが、「続」ツアーでは更にバンドサウンドがブラッシュアップされていて非常にかっこよかった。今回のツアーは、かなりタイトでシンプルにバンドの音を聴かせていたなというイメージがある。アウトロの昭仁の叫びがたまらなくカッコよくて打ちのめされた。

昭「え~皆さん大丈夫ですか!ね、ここまでこう、静態して聴くような暗い曲が続いたけぇ、ここでちょっと愛の曲なんかをね、届けようかなと思います。」
そう言って、昭仁にアコギが手渡され、ポロポロとスケールを確認する。

M12 元素L
イントロ無しで、昭仁のソロ歌唱で始まった瞬間、やられた!!と思った。『元素L』も比較的レア曲なので、ライブで初めて聴けた。ミディアムテンポのラブバラードの中でもかなりの名曲だと思うし、私も大好きなのですごく嬉しかった。静かに、訥々と語るようにゆったり歌う昭仁のパートが終わると、通常のテンポに戻りバンド演奏が始まる。ひとつの曲を多面的に聴くことができてお得感があった。晴一のコーラスがよく聞こえたので、にっこりした。

M13 Winding Road
やさしい空気感はそのままに、しっとりしたバラードが続く。『Winding Road』は、ここ数年の昭仁の歌声の進化に伴い、非常に化けた曲であると思う。「しまなみロマンスポルノ」で披露されたので比較的最近聞いた気もするが、良い曲は何回聞いても良い。
リリース当時より大人になった今の方が胸に響くし、そもそもメロディが物凄く綺麗なのでは?ということに気付くのが遅かったため、自分の中で評価が覆った曲でもある。
ステージの上から降り注ぐライトが床に水玉模様を作り、まるで雨の中で歌っているような幻想的なステージだった。

昭「ありがとうございます。え~こうしてね、全国回っとるわけじゃけども、まだまだ世の中はコロナで暗い気持ちになることも多くて、先が見えなくてしんどくなることも多いと思う。でもそうやってね、暗闇の中だけを見とったらいけんと思うのよ。暗闇を抜けた先にはきっと光が、明るい未来があると思うけぇ。その新しい時代、イッツアニューエラを迎えるために、このライブがそのためのきっかけになってくれたらいいと思う。みんなで新しい時代を迎えようや!その新しい日を迎えるための一歩を踏み出す、今日が”その日”だ!!THE DAY!!!」

M14 THE DAY
今日が“その日”に。これまでのライブでも何度か聞いたことのあるメッセージだ。しかし、こんな世の中だからこそ、いつもより更に強く胸に響いた。『BE』のアレンジがめちゃくちゃ好きなんだけど、スタンダードなアレンジもすごく良かった。『THE DAY』はすっかりライブでもおなじみだけど、本当にカッコいい新しい定番曲が生まれたのは大きなことだなぁと思っている。

M15 REUNION
ピンと糸を張ったような、シリアスなピアノのイントロが奏でられると、会場はピリッとした気持ちの良い緊張感に空気に包まれる。配信ライブの『CYBER ロマンスポルノ』で発表された時は、てっきり表題シングルになると思っていたくらい力のある曲だ。
静かで張り詰めたAメロからどんどん音が増え、サビで一気に開放する。激しく点滅するライトの中で浮かび上がる二人のシルエットに、目が眩みそうになる。ポルノが得意とする、スタイリッシュだが泥臭い、ギラリと研ぎ澄まされたカッコよさが凝縮されている曲だ。初披露時とリリース時では、歌詞の変更と追加パートが加わったが、これがまたすごかった。

我と彼を隔てるのは 此処と其処を割かつのは
止まった思考と 固定された視点だ
I am you, Here is there 真理を孕んだこの矛盾

まるで咆哮ともいえる「止まァアッ!!!た!!!!!!!」を聞いた瞬間、ザワ……と体の中に何かが渦巻くのを感じた。岡野昭仁がどこまで進化していくのか、ただひたすらに怖い。年齢と共に劣化どころか更に高みへ登っていく姿を目の当たりにするたび、私はただ立ち尽くすことしかできなくなる。
REUNION』の歌詞は珍しく二人の共作で、昭仁の作成した英詞(晴一曰く“念仏”)が多すぎる初期バージョンが好きだったが、この追加パートとライブでのパフォーマンスを見て、やっぱりブラッシュアップには意味があるんだ、これが完成形なんだと思うことができた。曲全体に流れる禅問答のような、瞑想のような、内向的だけど開かれている、不思議な浮遊感も好き。

M16 メリッサ
この3曲の畳みかけが本当に良かった!特に『REUNION』が入ったことで、同じ系統でもパリッと締まる空気が作られたのがすごくよかった。ライブ映えするし、今後も頻度高めでやってほしい。
メリッサは相変わらず、序盤でも終盤でも安定して盛り上がるし、昭仁の信じられない長さのロングトーンも健在だ。もはや当たり前のようにやってるけど言い方を選ばなければ本当に化け物である。

『メリッサ』が終わると、ひと呼吸置いて“男前ギター”が始まる。
自然にタオルに手をかけると、もうすぐ終わってしまうんだなぁと少し寂しい気持ちになる。

晴「君らは手拍子しか出来んけど……声が出せなくて溜まってるその…君らの中のその……残留エネルギーみたいな……そのエネルギーで……サステナブルな世の中を作りませんか?」

M17 ハネウマライダー
定番も定番なのでストレートにやるのも飽きたのか、上記のような(歯切れの悪い、謎の)SDGs煽りを毎回挟んできたりしていた。一時期は私も飽きた~とか言っていたけど、やっぱりハネウマは盛り上がるし楽しいし、たくさんの思い出が詰まっているので、なんだかんだ無いと寂しい…かもしれない。でも終盤にやるのが定着すると、本当に“終わりの予感”の曲になってしまうので、やんない回があってもいいし、今度はいっそ久しぶりに最初の方にやってみたらどうだろうか。
でも、ハネウマのメロディってよく考えたらかなりドラマチックで、少し切ない煌めきがあって、最後の方にやりたくなるのかもなぁと最近思う。この20年に名前をつけるなら?と問われて晴一が「Days of the Sentimental」と引用して答えるほどだし、彼らにとっても、ポルノとしての青春の象徴なのかもしれない。

昭「ありがとう!!あんたらほんまにすごいよ。ほんまにすごい!!今日は声が出せんけど、あんたらの、最高の拍手、生涯最高の拍手をちょうだい。手が痛くなるくらい、痺れるくらいの拍手をちょうだい!!そして次にまた会う時まで、その手の痛みを、その手の熱さを覚えていて。今のこの時間も大切なものになるから!!次会う時までその痛みを忘れないで、そして次に会う時は、きっと声が出せるから!この曲をみんなで歌おうや。その時までの約束!」

M18 テーマソング

ほら 見上げれば空があって 泣きたくなるほどの青さ

ほら 雲のような白いスニーカーで 高く高く昇ってゆけ

このようにストレートな“ザ・メッセージソング”という風体の曲は、実はポルノの楽曲の中では少ない。少ないし、あっても私はそんなに求めてない系統というか、もっとシニカルな視点で描かれる小技の効いたカッコよさを求めているので、最初は戸惑った。

壮大なテーマソング 流れりゃその気にもなるかな

耳に届く音はいつも 不安な鼓動のドラムだけ

フレーフレー この私よ そしてフレー 私みたいな人

ともに行こう 拳あげて 誰のためでもない this is all my life

今までは突然「フレーフレー」なんて言われたら、おい新藤晴一どうした?!となっていただろう。しかし、「今エンタメに必要なのは、明るいとは言えない世の中のことを一瞬でも忘れられるもの。フレーフレーと言う理屈があるから書いた」という、晴一の揺るがないロジックで作られたという安心感があるし、メッセージは素直に受け取るべきだろう。真っすぐな希望溢れる応援歌のようでいて、根底には晴一らしい、ポルノらしい内向的で皮肉っぽい言い回しが随所にみられるのがバランスを取っているとも思う。

「ただ自分らしくあれば それが何より大切」

などと思えてない私 何より厄介な存在

ここのパートが変な方向で刺さったまま、未だにどうしたらいいのかわからない。理解と納得と求めていない共感は、時に苦しくもなる。

しかし、そこまで胸に刺さるフレーズを生み出せる新藤晴一の詞の技量には、どんな形であれやはり舌を巻く。出来るならば、私なりに、納得できるような人生になって、噛み砕いていければいいなと思う。

曲の最後に、「また会おう」と昭仁が何度も何度も言ってくれた。『テーマソング』は最後のサビがコーラス隊によるものとなっているが、音源を聴いたときは、ああこういう方向ね…と斜に構えていた。でもやっぱり「いつかみんなで歌えるように」と昭仁が込めた希望の意味をないがしろにはしたくないので、それが実現する日が来ればいいなと思う。

曲が終わりメンバーが捌け、いつものようにポルノコール……ができないため、ボイスストラップと、精一杯の手拍子でアンコールを起こす。声が出せない分、やはり一体感というか、届けようという客席の熱量があったように思う。

昭「アンコールありがとうございます!みんなボイスストラップちゃんと使えてるね。手拍子も一生懸命ありがとう。

…え~、『続・ポルノグラフィティ』というツアーで全国回っとるわけじゃけども、このツアーの目的は長い期間待っとってくれたみんなに会いに行くために、ポルノグラフィティの”続”を見せるためだったんじゃけども。じゃあ、何をもってして”続”なのか、それはやっぱり、みなさんに、新しい曲を届けることなんじゃないかということでね、みなさんにここで、新曲を聴いてもらいたいと思います。」

やっっった~~~~~!!!!!いや、ツアーをやってくれること自体がすごく嬉しかったのに、まさか新曲を聴けるとは思ってもみなかったので、客席も思わずざわついていた。

昭「え~~聴いてもらう曲は、今わしらが届けたい音、作りたい音楽というのを表現した曲になります。タイトルは、『メビウス』。聴いてください。」

EN1 メビウス(仮)

何?????????

今、一体私は何を聞かされたのだろうか。

やさしいあなたは わたしのくびねを
りょう手でしめ上げ 泣いてくれたのに
うすれるいしきに しあわせみたして
はずかしい はずかしい わすれてほしいよ

こわ………………。

おおよそ明るさやポップさを微塵も感じられない歌詞が、やさしくあたたかな音色に乗って歌い上げられているという事実に、しかもそれを「新曲できたよ~いま表現したい音楽だよ聴いてね~」のノリで繰り出されたことで、完全に宇宙猫になった。
しかも、ツアー最終日の配信で、上記のように「歌詞が9割ひらがな表記である」ということが判明し、物議をかもした。しかも、気になりすぎて調べたんだけど、漢字は恐らく小学校2年生までで習う漢字しか使われていない。どういうことなんだ………。
曲としては、優しいメロディがシンプルなギターサウンドで奏でられ、サビでラウドっぽく展開するのがめちゃくちゃカッコよくて、このまますぐ音源出してほしい!!と思った。「アルバムとかに入るかはわからないですけど」と言っていたけどまぁ恐らく入るので、どうなるのかすごく楽しみ。
個人的に作曲作詞は、少なくとも作詞が晴一なのは確定だと思ってたけど、検索してみると昭仁派も少なからずいて驚いた。でも私は違うと確信しているが、実際の所どうなのかは今後リリースされる際にわかるだろう。昭仁だったら土下座します。

終わった後も、ゾッとした気持ちが抜けないまま放心状態で拍手しているにも関わらず「え~メビウスもね、みんなに長く愛される曲になればいいなと思います」といつもの調子で締めようとする昭仁に対して、いや置いていかないで!!ストップストップ!!!とパニックになっていた。信じられない。突然ビンタして放置しないでほしい。ありがとう(混乱)。

EN2 ナンバー(仮)
ツアー最終日にサプライズで披露された、2曲目の新曲。『メビウス』とは打って変わって、ストリングスが印象的なイントロから素朴で牧歌的な、ポルノの引き出しにありそうな感じのアレンジだったので、ああ、こういう曲ね~いいじゃん。『農夫~』みたいな感じ?と思っていた。

こうして僕は見失った 日付だとか時間だとか
君の住む街の番地さえ不思議な模様に
けれど花は咲くのだろう 熊は春に目覚めるだろう
数えるのではなく満ちるの待っているの

何……?????????

1サビにして雲行きが怪しい。どういう曲なんだこれは。雲行きが怪しいわりに、全体を通して「猫」「蜜蜂」「小川」「キツネ」「花」「熊」「ウサギ」「芦毛」「蝶」など、いやにのほほんとした単語が頻出して一見可愛らしい曲っぽいのがいじわるだ。
そう思っているうちに《まだ何も知らずにいれた僕の残像》《いつものように遠出をして帰り道が消えてしまい》など、おおよそ曲調からは想像できない不穏さと難解さが露出し、結局この曲も??????になってしまった。配信だと歌詞が出ていたからすぐ違和感に気付けたけど、現地参戦組が後から歌詞を知って度肝を抜かれたというのも納得できる。
この『メビウス』『ナンバー』という曲をこうして繰り出されてハッキリしたことは、次のアルバムが楽しみすぎるということ……。
どっちも恐らくシングルにはならないタイプの曲かな?と思うけど、カップリングでもなんでもいいので、いつかこれが世に出るその瞬間が楽しみ。

ここでセオリー通り、サポメンから順番にメンバー紹介。
昭「次に、我らがギタリスト!!!の名前をー、そのー、なんじゃ、緑のやつでぇ、緑のやつを駆使して呼んでやってくださーい!!オーーーーンギター!!!!!」
\はるいち~~~~~/(ボイスストラップ)
昭「オーーーーーンギター!!!!!」
\はるいち~~~~~/
昭「オンギター、新藤、はーるいちーーーーー!!!!!!!」
なお、福岡公演は10月15日の昭仁の誕生日とかぶっていたため、「岡野くん、今日誕生日らしいね。」とモニターに「Happy Birthday」の文字が映し出され、メンバーによりハッピーバースデーの演奏があり、ステージ袖からケーキが出現するというサプライズが。
晴「ハッピバースデー岡野く~ん、ハッピバースデー岡野く~ん、ハッピバースデーディア岡野昭仁く~~~ん…」ときちんと歌う晴一。
昭「ありがとうございま~~~す!!47歳になりました~!」
昭仁がこぶし大のちっっちゃいケーキのろうそくを吹き消して、サプライズは終了……かと思いきや、次の日16日も「岡野くん、昨日誕生日だったよね。……別に、今日も祝ってもいいんじゃないの。」という謎発言から、再び祝うと言う流れに。祝いたがりの晴一。

ここで通常MCへ。
晴「意外と(ボイスストラップの音が)聞こえるもんじゃね。でもなんか、その~、ライブで呼びよるテンションと、家で吹き込むテンションって多分違うけぇさぁ、なんか、お母さんとかに呼ばれてるみたいな気持ちになるよね。『ちょっと!晴一!』みたいな。『宿題やったの!』みたいな。……まぁその、こういう機会もそうそう無いけぇ、みんながそうやって、グッズ使ってくれたりとか、声が出せんくて手拍子したりとかも、良いように言えば、いつかあんなことあったなぁって、なんかこんなん買わされたなぁって、思い出になってくれれば、あー、いいんじゃないかなと、思いますので、わしらもツアーを一本一本噛みしめて、やっていきたいと、思います。」
晴「そしてボーカルは~」
\あきひと~~~~/
晴「ボーカルは~~~」
\あきひと~~~~/
晴「ボーカル~、おかの~、あきひとく~~~ん!」
昭「ありがとうございます!!みんな上手に(ストラップ)使えてるよね、ええことじゃわ。初日より若干増えてきた感じあるよね(笑)。え~~わしらが20周年の東京ドームを終えて、まぁ少し休もうかってなっている間に、コロナがバーッと広がって、活動も少しストップしたみたいになってしまって。そんな中でも、それぞれソロで色んなことをやってみたり、言ってみると”離れ”での活動をやったりして。こうしてポルノグラフィティという”母屋”に帰ってくることができたのも、みなさんが待っていてくれたおかげで。普通なら、こんなに長い間待たされて、なにやっとんじゃって怒ってもいいくらいだと思う。でも、そんなことなく、あたたかく迎えてくれて。離れでの活動をしてみて、改めてポルノグラフィティというのは、すごい母屋だなと。土台がしっかり作られてて、柱で支えられて、立派な屋根があって。これからも、みなさんにはたくさん母屋に携わってほしい、ここ釘が出てるぞとか、ここ壁紙剥がれてるから補修してやろうとか、どんなことでもいいから一緒に作っていけたらいいなと、思います。」

昭「最後は!!!みなさんアホになって、声が出せん代わりにボディで、ダンスで、全てを出し切って、アホになって帰ってほしいと思います!!!!ラスト!!ジ!!レンマ!!!!!」

EN3   ジレンマ
やっっっっと『ジレンマ』で終わるライブに来れたよ!!!!
いや、『ライラ』も悪くなかった。けど、やっぱり最後は儀式を求めてしまう。最後に全て発散してアホになって、あ~楽しかった!ってなれる曲はやっぱり『ジレンマ』なんだなと思う。無言でいないといけない『ジレンマ』なんて初めてだったけど、「声が出せんけぇ思いっきり全身で暴れて帰れよ!!全部出してけ!!!」という、この日何度も聞いた昭仁の煽りに倣い、久しぶりに腕が千切れるほどの気持ちで大暴れした。
「あんたらは最高じゃ!!!!ほんまに最高じゃ!!!自信持っていけ!!!胸張っていけ!!!!」を、このコロナ禍で聞ける喜びと力強さ。ポルノと私たちの強固な合言葉は、またひとつ新しい勇気をくれた。

生声挨拶(メモしたもののみ)
・福岡
晴「ほんと皆さん、また会う時まで、お元気で。」
昭「ほんまにサイコーの誕生日になりましたありがとー!!!また会おうね!!」

・札幌
晴「また、ちょくちょく来ます。」
昭「今日は本当にありがとう~~~!!ほいで!!また会う時は!!今度こそ声出して、大暴れしましょう!!どうもありがとうございました~~~~!!!」

今回、コロナ禍での声が出せないライブツアーということもあり、ポルノも、ファンも手探り状態からのスタートとなった。いつもとは違う距離感で、どんな雰囲気になるのかと思っていたが、蓋を開けてみればなんのことはない、同じ心の距離が保たれていた。むしろ、声を届けることができない分、より一層お互いに「届け!」と願っている、そんなライブだったと感じた。

このツアーを「元気だよ」という顔見せのライブだと言っていたが、並んだ曲のタイトルや構成を振り返ると、紛れもなくコアファン向けのツアーであったのは間違いない。そして、ツアーを通してポルノグラフィティがずっと私たちに伝えてくれたのは、「続くよ」という意思表示であった。コロナ禍で、いつ何が突然終わってもおかしくない不安の中で、「続く」ということを明確に表現してくれたポルノの姿は、確実に私たちの心に光を与えた。


昭仁が使った「母屋」という言葉。休息を経て、お互いに違う活動をしていた二人だが、私たちはそこで得た力をポルノグラフィティに還元してくれることを知っている。その信頼があるからこそ、ずっと待ち続けられるし、これからもたくさんの景色を見せてくれることを期待してしまう。二人も、きっと私たちが待っていると、これまで以上に信じてくれているはずだ。東京ドームで、私たちとポルノの距離は、確実により強固に、密接なものとなった。照れくさい言葉で言えば、その絆を確かめるツアーだったのかもしれない。
どんなに休んだって、止まったって怒るわけなんかないのに。離れるわけないのに。それでも、そんな風に私たちに「待たせてごめんね」と言ってくれる彼らのいじらしさもまた、愛すべき謙虚さなのだなぁと思う。

ポルノグラフィティの進んでいく旅路。それがどんな道であろうと、私は最後まで見届けたい。新時代の幕開け、彼らはその新しい航路の先を、私たちに示してくれた。新始動したポルノグラフィティがライブで見せてくれた「私のための場所」、果たされるべき約束のことを、私はずっと忘れないだろう。

【セットリスト】
M1  IT'S A NEW ERA
M2  幸せについて本気出して考えてみた
M3  ドリーマー
M4  ANGRY BIRD
M5  Love,too Death,too
(M5‘ LiAR)
(M5‘’ 今宵、月が見えずとも
M6  ウォーカー
(M6‘ Free and Freedom)
M7  君の愛読書がケルアックだった件
(→愛知以降はLove,too Death,too
M8  ミステーロ
M9  サウダージ
M10 鉄槌
M11 Fade Away
M12 元素L
M13 Winding Road
M14 THE DAY
M15 REUNION
M16 メリッサ
M17 ハネウマライダー
M18 テーマソング
EN1 メビウス(新曲)
EN2 ナンバー(新曲) ※最終日のみ
EN3 ジレンマ