2020年の振り返り色々

今年は色々大変だったので、自分何やってたんだろう?ということを思い出してみました。

 

1月

月の頭はまず全立後編の大阪公演!この時はまだ特に何も起こるとは知らず、ただひたすら楽しんでました。タピオカ飲んだりたこ焼き食べたり、とにかく楽しかった。りくろーおじさんが食べたかったけど、公演後に間に合わずお店のシャッターが閉まるのをフォロワーさんと見届けた後にマック食べたのも良い思い出。あと、アンコールであの『太鼓』を観てゲラゲラ笑った。幸せな時間だった…。

 

その後は仙台公演。フォロワーさんとお泊まりしてすごく楽しかった!多賀城市民ホールは、関東氷帝ぶりに行ったので懐かしい気持ちになった。あの綺麗なスタバ好き。

 

2月

福岡公演の辺りから、あれ?なんか…ヤバくない?という空気になり始めたものの、まだ危機感が無く、普通に遠征した。それでも一応マスクは常につけてたし、劇場の中でほとんどの人がマスクをつけてたのも、結構異様な光景だったのを覚えている。テニミュ3rdシーズンに関しては別の機会に細かく振り返ろうかなと思っています。

 

凱旋公演のあたりから、他の舞台がちらほら中止や延期が発表され始めて、ヒヤヒヤしたのを覚えている。とりあえずは3rdシーズンの本公演を無事に終えることができて、次はドリライだね〜、その頃には落ち着いているといいね〜と話していた。

 

テニラビでは、日吉メインのチャイナイベントが発表され大パニックに。あんなに自分の気が狂ったイベントは後にも先にも無い気がする…。

 

いよいよコロナってヤバいんじゃないか?という風潮になってきた中、テニミュは何食わぬ顔で『Thank-you フェスティバル』を全日程開催。強気な展開に驚くものの、3rdシーズンがいよいよフィナーレを迎えるにあたり、このまま強気の姿勢でいてほしいな…という気持ちにもなった。自分は、ルドルフと氷帝の回に行くはずが、仕事の関係で泣く泣く諦めることになり、かなり落ち込んだ…。

 

3月

テニラビチャイナイベ。走って走って走りまくった。ここまで自分に刺さるカードもなかなか無いので、もうあんなに必死こいて走ることはないと思う。ソシャゲのランキングイベントを初めて本気で走ってみてわかったことは……疲れる。神経が擦り減る。もうやりたくない…。けど、一回はやってみたかったので満足した。素敵なカードをありがとうテニラビ。47位でした。

 

あとは、あつ森を買った。外出禁止など予想外の環境になり、普段ゲームをやらない人もたくさん買っていたな〜と思う。ただ、仕事もこの辺からめちゃくちゃ忙しくなった気がする…。

 

4月

コロナウイルスの影響で、テニミュ3rdシーズンの締めくくりとなる最後のステージ、ドリライ2020全公演中止のお知らせ。血の気がザーッと音を立てて引いた。もう何もかも楽しくない。

 

エーステの冬組単独公演の全公演中止。もうため息。やさぐれる

 

文字通りの虚無が広がりあんまり記憶も写真もない。あつ森をたくさんやった。GWにワンピースが50巻くらい無料になっていたので、なんとなく読み始める。

 

5月

今更ワンピースにハマり、読みまくる。無料分を読み終わった後、友達に借りて久しぶりに何かにハマるという体験をした。

 

ジャンプSQでは、幸村vs手塚の試合が始まったので、定期購読し始める。本誌を買って付録のすごろくで遊んだ。

 

あつ森で、島にTDCのステージを作っていたフォロワーさんの島で、本来のドリライの日にキャラに扮してリモートドリライをやったのはめちゃくちゃ楽しかった。

この辺りから、フォロワーさんとよく通話をするようになる。私は今まで、あまり友達と電話するという文化が無かったので、新鮮でとても楽しかった。離れていても話ができるというのが純粋に嬉しかった。

 

音沙汰の無かったポルノ関連では、YouTubeで今までのライブ映像をピックアップして放送する『LIVE ON LINE』があった!これはかなり楽しかったけど、やっぱりライブも新譜も無いのは寂しかった。

 

そして、氷帝vs立海発表。予想外のメディア展開に大混乱になる。今でも混乱している。

 

あとは、何かいつもと違うことをやろうと思って、アップルパイを作ったりミートパイを作ったり、ソーセージパイを作ったりした。

 

6月

温泉に行った以外は特にどこにも行っていない。東京にあるタピオカ屋が2店舗もオープンしたけど、ガラガラだったので買いに行ったり、久しぶりにネイルを買ったりした。ゆるスタの日吉のアクキーも届いた。

 

買って詰んでたゴーストトリックをクリアした!すごく良いゲームだった。DSのソフトだけど、やっぱり名作ゲームはいつやっても変わらない感動を与えてくれる。おすすめ。

 

あと、金曜ロードショーで初めて『バックトゥーザフューチャー』を観た。私はあんまり映画をたくさん観ている方ではないので、恥ずかしながら初めてこの超名作を観て新鮮に楽しめた。金ローは今後もこういう過去の名作をたくさんやってくれると嬉しい。

 

あと、Huluで無料だったので、BUMPのライブツアー『Pathfinder』と『BFLY』の映像を観た。去年初めてライブに参加したけど、またライブがあれば行きたい…。

 

7月

友達とキャンプに行ったりまた温泉に行ったりした。少し中心部から離れると本当に人がいないので、今年はそういうところには何回か行った。

 

ポケモンの公式オリジナルアニメ『薄明の翼』でオニオンくんの回があり大興奮。その回抜きにしても良いアニメだった。

 

フォロワーさんと絶望先生の話で盛り上がり、今更買ってなかった久米田先生の画集『悔画展』を買う。

 

ワンピースは、とうとう本誌に追いつく。ジャンプ本誌を追いかけて読むなんて実に10年ぶりの感覚なので、どうせなら他にも読む作品を増やしたいな〜と思い始める。

 

髪型に変化がほしくて、パーマをかけたら周りに好評で嬉しかった。美容室で『鬼滅の刃』を読み始める。

 

うさぎの避妊手術と、ついでにしこりを2個取る大手術をした。10万円はこれに使った。術後のケアも含めて結構大変だった…けど元気でよかった。

 

8月

なんやかんや色々あった気がする。

『HiGH&LOW THE WORST』のBlu-rayが届いたので、フォロワーさんとリモザワをする。鬼邪高の轟くんが好きなので、ザワにはハマりまくった。ハイローは全作品追えてるわけじゃないけど、機会があったら全部観たい。ザワは続編があるので楽しみ。

 

呪術廻戦を本格的に読み始める。呪術は実はだいぶ前に1巻が無料になっていたので読んだんだ。面白かったんだけど、その時は気持ちに余裕がなくて結局続きは読んでなかった。私は新しいジャンルに対して腰が重いタイプなんだけど、このご時世で自分のメインジャンルに動きが無かったので、この機会に色々見たかったというのもある。そのひとつがワンピース。

 

跡部さんが森永乳業の『ミロハ』のCMにご出演なさる。改めて、跡部景吾は世の中を明るくする存在だと思った。

 

冬組単独公演の全公演配信。情勢を配慮して、様々な舞台で配信が行われていたが、その例に漏れずエーステも配信があって助かった。ただ、本来なら現地で観れていたのに…という気持ちにはなってしまう。感想は別記事にて。

 

ドリライの中止を受け、テニミュでは3rdシーズンの締めくくりのために、代替の卒業企画である『Dream Stream』の配信が決定。それに先駆けて、まずは大運動会2019の配信があった。

 

あとは日吉のよりぬいが届いたり、初めて一人焼肉に行ったりした。パフェも食べた。昭仁の体調不良などがありかなり心配した。この状況下での【お知らせ】は本当に心臓に悪い。コロナではなかったのでとりあえず安心した。

 

9月

A3関連では、ジルとのコラボがあったり、エーライの全公演配信があったりした。なんとエーライは夜公演は全てライビュがあり、手厚いなぁと思った。さすがにまだ東京へは行けないと判断したので、客を入れての公演だったが、私は行かなかった。客席で一切喋ってはいけないという公演を初めて観たが、みんなよく黙っていられるなと思った。すごい。

 

なんとなく申し込んだリングフィットが当たったので買った。リングフィットも今年大流行していたな…。あと、グニャグニャ曲がるタイプのスマホホルダーを買った。フォロワーさんと、お互いのジャンルのライブ映像などを見せあいっこしようということになり、テレビ画面を映すために買った。私はもちろんポルノグラフィティのライブ映像を見せ、そして、この円盤交換会で初めて『アイドルマスター SideM』と出会うことになる…。

 

体調不良でお休みしたスペシャの昭仁の振替放送もとても良かった。久しぶりに歌っている姿を見て、早くライブが観たいなぁ…と思った。

 

そしてそして…

テニミュ&4thシーズン上演決定!!!!!

本当に、本当に待ちわびていた。今年の何よりも嬉しかった。自分が生きる中で、観劇という楽しみを見つけてしまった今、配信やライブビューイングがあっても、生で、リアルでステージを浴びる楽しさというのは、何にも代えられない素晴らしさがある。それを、またこの身で感じることができるんだ!という嬉しさで満ち溢れた。

 

畳み掛けるように、ポルノグラフィティ オンラインライブ『REUNION』開催決定!!!!!

生き返った!!人生が戻ってきた!!!昨年の東京ドームから早1年。休息の時間なのだとわかっていても、そのままこのような状況になってしまい、終わりのない不安が続いているような気持ちの中で、これは本当に一筋の強い光りとなった。新しい歌声とパフォーマンスが見られるんだ!という確証があることが、画面の向こうだとしても、とても嬉しかった。

 

10月

SQでは、幸村vs手塚戦が決着。新テニミュを観て新テニを読み始めた人、テニミュ3rdシーズンを見届けた人、今は全然読んでないけど、テニプリを読んだことがある人、全員におすすめできる超名試合なので、本当に読んでほしい。これに関していつか感想とか書こうかな〜と思ったけど結局書けずにいる。

テニミュはキャスト発表があった。高校生やコーチがいるのはもちろん、続投キャストがいたのは驚き!全立後編でアンダーとして出てきたリリアデント・クラウザー役の新谷デイビッドくんも正式にキャストとなったのは結構嬉しかった。

他にテニス関連では、786種類のブロマイドがネットプリントできるようになったり、新テニミュのチケ代とグッズの発表があった。テニミュは他の舞台よりかなり安めの6,300円(3rdシーズンの途中までは6,000円)が定価だったけど、新テニミュではS席A席制度が導入されて、価格も上がったのがちょっとびっくりした。

あと跡部さんの誕生日に日吉が新テニ公式Twitterを乗っ取り始めたのも面白かった。日吉がおはようございますと言ってくる世界はずっと続けば良いのになと思った。

 

私はあんまりアニメを追っかけるタイプではないんだけど、今期はエーアニ秋冬、呪術アニメ、ヒプマイのアニメを観始めた。A3は他2本と比べるとやっぱり作画が微妙すぎて、一番待ってたはずなのに一番適当に見てたかもしれない…。呪術アニメは漫画も本誌に追いついたというのもあって、メディア展開のうまさに驚くと共にすごく楽しめた!バトルもよく動くし、細かいとこが補完されてるし、作者直々に脚本を書いているじゅじゅさんぽなど見所がたくさんある。ヒプマイアニメは、話題になっていたのでほんとになんとなく見始めたら、形容しがたい中毒性に一気にハマってしまった。落ち込みがちな日々の中に現れた爆弾。

あと、ちょうどSideMのアニメの再放送がチャンネルであったので、それも同時に見始めた。

 

初めて一人回転寿司をした。やみつきになって2回もした。今年は楽しいことが減った反動で、無意識に食でストレスを発散していたかもしれない。おいしいお寿司屋さんを発掘できたのでよかった。

 

11月

ゼルダ無双 厄災の黙示録』の体験版をやった。ブレスオブザワイルドは大好きな作品なので、その世界観を引き継いでいるということでかなり楽しめたが、製品版はまだ積んでる…。

 

フォロワーさんがこちらに遊びに来てくれて、一緒においしいご飯を食べたり観光したりした!観劇の現場で話すことはあっても、私の住んでいる場所的になかなか人が来てくれることはないので、ものすごく嬉しかった。念願のくまちゃんの鍋を食べた。めちゃめちゃ楽しかった。

 

アイドルマスター SideMのアプリを始めた!ついに自分がアイドルジャンルに手出しすることに。フォロワーさんの影響だけど、アニメ再放送でとどめを刺されてハマってしまった。モバマスとエムステ両方始めた超初心者Pだけど楽しんでます。このことについてはいずれ別記事で。

 

『Oh My Diner』、行きたかったんだけど行けなくて悔しい思いをした…。3rd出身のキャストがたくさん出ていたので観たかった。いつか再演してくれないかなぁ…。

あとは、ポルノの『REUNION』に先駆けた51時間(?!)のニコ生があった。次にシングルが出るとしたら51枚目になるので、何か新情報が出るかなと思ったけど、特に何もなかった。でも『BE』『UNFADED』、更に台湾でのワンマンライブの映像が丸ごと流れたので、見てくれた人が多かったのは良かった。

 

そして11月は何と言っても、『Dream Stream』。テニミュの3rdシーズンの締めくくり……とは思えないほどのトンチキ映像が繰り広げられ、違った意味で頭がおかしくなった。その場の瞬間風速はかなり大きかったけど、やっぱり、3rdを支えてくれたキャストたち、ドリライを経験していない青学10代目と四天宝寺、そして2代に渡って座長として、リョーマを演じて引っ張ってくれた仁愛くんを、華やかな舞台で送り出してあげたかった……。

こんな状況になってしまった数々の影響の中でも、今年で一番悔しかった。本当に。

 

12月

ワイヤレスイヤホンを買った。何をしててもかなりの広範囲でスマホを充電しながら音楽やラジオを聴けるので、今年で買ってよかったものの一つになった。

 

いよいよポルノグラフィティのオンラインライブ、『REUNION』!もう大興奮。大歓喜。詳しい感想はまた別記事で…って何回言うんだって感じだけど、来年はもう少したくさん文章が書けたらいいなと思う。

素晴らしいライブだった。舞台の配信はたくさん観たけど、こうしてオンラインありきのライブを観るのは初めてだったので、どんな雰囲気になるのかドキドキしてた。でも、大成功だったと思う。興奮冷めやらぬままフォロワーさんとすぐ打ち上げ通話をしたのも、まぁ今じゃないとできない経験ではあったかなと思う。そりゃほんとは生で見たかったけど…。

なんとこの『REUNION』は3月に劇場でも再編集版が上映されるとのこと!絶対観に行かなければ。

 

そして…新テニミュが開演!!

こんなに長い間舞台の遠征をしなかったのは初めてだったので、久しぶりすぎて何でも楽しかった。ただ、今冬でまたコロナの感染状況が厳しくなったので、色々なことに気をつけたし、ホテルと劇場の往復以外は特に何もしなかった。だけど、やっぱり好きなものについてだけ話せる時間がたっぷりあったのは、本当に幸せだった!

テニミュ自体は、今までのテニミュとはまた違った面白さがあって、新鮮な気持ちになった。初日を観ることができて本当によかった。感想はまた別で…。

4thシーズンがいつから始まるのかはまだ発表されてないけど、また熱い夏にテニミュが観れるといいな〜。ちなみに12月24日で3rdシーズンのお披露目から6年経った。時の流れ…!

 

氷帝vs立海が2月13日に配信されることが決定。ベスゲみたいに映画館上映があると思ったけど、U-NEXTの独占配信というのは驚いた。オーダーについて考えるだけで、正直胃が痛い…。楽しみの中に怖さがある。どうなるんだろう。また、新作映画『リョーマ!』も、9月3日から上映されることが発表された。思ってたより早かった!全編3DCGということでどうなるのかなと思ってたけど、予告を見る限りかなり良い出来になりそう!!少年誌原作でこんなフルCGの映画ってなかなか無いのでは?とても楽しみ!

 

年末は掃除をしたり、NHK露伴ドラマをチラ見したりした。録画してるので今度ゆっくり見たい。

 

 

今年は、本当に誰も予想してない未曾有の状況になり、様々な楽しみが奪われ、すぐに落ち込んだり、イライラしたり、悲しい気持ちになったりしやすかったなと思う。自分だけじゃなくて、誰しもがそうだったと思う。みんな我慢してるとか、希望を持てとか、ポジティブになろうとか、頭ではわかってても、こんなのもうどうしようもないよ!!とやるせない気持ちになることが多かった。そんな中でもみんな一生懸命よく生きてたと思う。

来年は、もう少しだけでもマシな一年に、今よりもっと楽しい気持ちになれるような一年になりますように!おしまい!今年もお世話になりました。

 

【観劇】『MANKAI STAGE「A3!」〜WINTER 2020.08〜』レポ・感想【二幕~総評】

エーステ冬組単独公演、二幕のレポ・感想です

あくまでも、私個人が感じたことを正直に色々と書いているものです。

※原作(アプリ)のストーリーの内容、舞台のネタバレを多分に含みます。ご注意ください。

一幕の感想はこちら。

ikaika1015.hatenablog.com

 

▼プロローグ

冒頭、東のモノローグからスタート。東の家族は、慎ましい家庭ながらとても仲が良かったが、東が子どもの頃、旅行先の交通事故で父、母、兄を亡くしてしまう。

「留守番は寂しかったけど、たかが一泊だ。すぐに帰ってくると思ってた。でも、送り出した3人は……二度と帰ってこなかった。」

東も一緒に行く予定だったが、熱を出し家に残っていたため、助かった。しかし、大切な人を送り出して自分独り残ってしまったことが、未だにトラウマになっている。

二幕は、その部分が中心となって物語が進んでいく。

 

▼寮内〜冬組MT

寮の談話室で、紬と丞が他の劇団のフライヤーを見ている。お互いに、次に観に行く公演の情報をリサーチしているようだ。オススメの劇団があったり、あまり好きではない劇団に対する紬の「そこは……うん、て感じかな。」というリアクションがリアルで、わかる…と思った。

原作では、東の知り合いから塗り絵が届き、冬組みんなで塗り絵大会の流れになるのだがそれはカット。

どうやら冬組でのミーティングがあるらしく、次に誉がやってきて、マシュマロに釣られて密もやってくる。本公演でのマシュマロノルマは、このシーンが初めてということに気づく。秋冬公演では大袋入りのマシュマロを直に取り出して渡していたが、今回からは直接手が触れないようにさらに一つ一つが個包装になったマシュマロに変化していた。随所に情勢への配慮が見られる。

冬組第3回公演『真夜中の住人』に向けてのミーティングのようで、既に配役は決まっている。今回の主演、孤独に生きる吸血鬼・玲央役は東で、準主演のお人好しなサラリーマン・浩太役は丞。

そこへ、シトロンがやってきてみんなに台本を配り始める。綴が部屋で力尽きたので持ってきてくれたらしい。

紬「今回はどんなお話なんだろうね?」

シ「オー!ワタシ、もう読んだヨ。今回の舞台は、現代のような、そうでないような、日本のような、そうでないような場所で起こる、悲しいような、悲しくないような物語ネ。」

丞「…自分で読んだ方が早そうだな。」

いつも通りの笑えるシトロン、と言いたいところだが、実はこの感想はかなり的を得ていることが、公演の内容を知っているとわかる。

 

黙々と台本を読む冬組。そんな中、シトロンと一成がイタズラを仕掛けていく。この日替わりシーンで大活躍したのが、’’ミスターツッコミくん’’こと、綴の等身大パネル。とうとう本人がいないのにいじられるようになってしまった。

シ「ツヅル!ツヅル!ワキワキするネ〜!」

綴パネル「いやワクワクな!」

と、一成がスマホから録音した綴のボイスを流すというめちゃくちゃな展開に、初見から笑いが止まらなかった。このツッコミくんパネルを使った日替わりが本当に面白くて、毎回ゲラゲラ笑った。台詞のバリエーションも多く、特に「ならヴェローナから出て行くことだな」という、春組公演の『ロミオとジュリアス』で綴が演じたマキューシオの台詞が飛び出した時が一番好きだった(このせいで、後のライブでロミジュリを見た時に思い出して笑う羽目になった)。

更に、回を重ねるごとに’’ミニ臣パネル’’が登場したりと、二人の自由さに冬組も我慢大会のようになっていたので、特に笑い上戸っぽい荒牧くんは大変そうだった。

 

今回の公演は、吸血鬼と人間の、少しダークで切ない物語。早速稽古がしたくなったので、ストリートアクトに行こう!と言い、出ていく冬組。そんな中、東は物憂げな表情で台本を見つめる。

『おやすみ……良い夢を』か…。ボクには酷な結末だな。」

ここで、東の幼少期の回想が入る。冬組の他の3人が家族に扮して出ていくのを、東が見送り、東の親戚役をサポートメンバーが演じている。

綴(親戚A)『まさか、家族で事故だなんてな…。上のお兄さんが大学進学したばかりだろう…』

一(親戚B)『二人とも、これから少しゆっくりできるって話してたばかりなのにねぇ…』

シ(親戚C)『下の子はたまたま留守番してたから助かったそうだが…』

一(親戚A)『かわいそうよね、たった一人で残されるなんて…』

首をかしげながら親戚の話に聴き耳を立てている幼い東の表情が切ない。

幼東「そうか、ボクはもう独りなんだ…」

親戚が、自分の引き取り手のことで揉めているのを聞いてしまい、これからたった一人で残され、生きていかなければならないことに気づいた東。幼い子どもでも、大人達の様子から、自分がそれほど歓迎されていないということを察したのだろう。

ふと我に返ると、丞からLIME(エーステ界のLINE)で連絡が来ていることに気づく。

丞【ドライブ行きませんか?】

東「丞からの連絡なんて珍しいな。」

行先は任せて、すぐに出発することに。

 

▼海へのドライブ

ドライブの行き先は、海。「旗揚げ公演の頃は、こうして二人でドライブに来るような関係になるとは思ってなかったな。」と東が言う通り、冬組の距離感が少しずつ変わってきてあることがわかる。しかし、まだ仲良しの友達かと言われると、そういうわけでもない、微妙な距離感。ここの海のシーンでの台詞の間の空け方がその空気感を醸し出して好きなシーンだった。

 

東は、どうしていきなりドライブに誘ったのかと問う。丞は今回、準主演としてできるだけ東をサポートするために、二人で役について深める時間が必要だと考えたようだ。そのため、台本を取り出し、読み合わせをしたいと申し出る。

東「ボクはドライブのつもりで来たんだけどな。…まあいいけど。」

丞「台本、持ってきてくれてたんですか。」

トートバッグから台本を取り出す東。一緒に過ごすうちに、東にも丞の考えが少しずつわかるようになってきたようだ。このバッグや、手帳型のスマホケースなどというチョイスが東らしくて、エーステはキャラの一人一人に合わせた小物を用意するのがうまいと思う。

互いの台詞を確認しながら、台本を読み進める二人。まだ台本をもらったばかりで、演技の方針が決められず、これからゆっくり詰めていきたいと言う東。丞が何か提案しても、身を任せてばかり。

東「……ごめんね?」

丞「いえ、こっちこそすみません。台本を貰うと、つい一人で色々考えてしまって。」

この「ごめんね?」の言い方でも思ったのだが、上田くんの演じる東は、原作より近寄り難い雰囲気が少なく、秋冬公演よりも更に優しさとあたたかみを感じる東だなぁと思った。自分が原作の東への理解度が低いというのもあるが、ステの方が人間らしさを感じられて、東という人物像がより好きになった。

 

東は、何かを確かめるかのように、丞がどうしてこの劇団にいるのか問う。「今は、ここでやる芝居が気に入ってるし、拾ってくれた恩もある。だからこそ、今度の舞台もいいものにしたい。」と答える丞に、それ以上の追及はしない東。

今度は冬組みんなでドライブに行こうと提案する東に、苦笑しながら「うるさそうですね。」と言いつつ、悪くないかもな、というような表情を見せる丞。

先程、ステ東のことを人間らしいと書いたが、更に良いキャラクターになったなぁと思うのが、北園くん演じる丞だ。原作の丞は、元々表情が少なく、割とぶっきらぼうであまり喜怒哀楽が激しいタイプではないが、ステの丞は、言葉の端々や仕草から感情が読み取りやすい人になっている。

かといって過剰に優しいわけでも爽やかすぎるわけでもない、絶妙なバランスを保ったまま新しい丞を作り上げていると思う。話しやすさで言えば、ステ丞の方が会話が続きそうだな〜と思えるくらい私はステの丞の人間らしさがけっこう好き。

 

▼稽古場

冬組の稽古だが、なぜかそこに臣がいる。

今日はパンフレット用の写真撮影をする予定だったとのことだったが、紬がすっかりみんなに伝えるのを忘れていたようだ。自分は大丈夫だが、気がかりになる人がいるようで……

誉「おや、臣くん、どうしたのかね。」

臣「今日は、パンフレット用の撮影を撮らせてもらおうと思って。」

誉「パンフ用…?!困るなぁ〜〜そういうことは事前に伝えてもらわねば!」

気がかりなのは誉のことだった。ジャージだと自分の魅力が伝わらないので着替える!!と言って聞かない誉に、臣が優しく「誉さんの魅力は、その内面の美しさだと思うんです。何を着ていても、それは変わらないと思いますよ。」と諭すと、すっかりご機嫌になりポーズを決めまくる誉。臣くんは本当に曲者の扱い方が上手い。

 

稽古が始まり、それぞれの役について深めていく。監督は、丞にもっと頼りない感じが出るようにとアドバイス。どうやら、東の演技に思うところがあるようだ。

東「役とボク自身に距離がある?」

丞「玲央の、’’独りで生きていく’’っていう達観した感じを出していくといいんじゃないか。」

東「独りで生きていく……」

どこか思うところがあるような東。人との繋がりを求める東とは真逆の玲央を演じることが、今回のネックとなってくる。しかし、東はそれを話さずに「大丈夫、ボクが変わらないと、どうしようもないしね。」と笑顔を見せる。

稽古が終わっても、あれこれと演技プランを話し続ける紬と丞を見ながら、何か思うところがある様子で誉に話しかける東。

東「ねえ、誉は、お芝居好き?」

誉とって重要なのは、好きか嫌いかではなく、それに意義があるか否か、それが大切なのだという。その判断基準でいくと、演劇は打ち込む意義があると答える誉に、また思うところがある様子の東。

この誉の返答は、まさに「合理的思考か、芸術的思考でしか考えられない」という誉らしい答えであるが、じゃあお芝居に意義を感じなくなってしまった時には一体どうするんだろう………?!とふと考えてしまうことがあるが、それは置いといて…。

東「独りで生きていく、か…。久しぶりに戻ってみようかな、独りに…。」

そうつぶやいて、何かを決行する意志を固める東。それぞれの芝居への向き合い方を見て、自分なりにやれることをやろうとしているようだ。

稽古が終わり、臣と紬が稽古場に残る。すると臣が、稽古の時の東の表情が気になったといい、心配している様子。舞台のオリジナル台詞だが、カメラのファインダー越しだと表情がよく見えるという理由は臣くんらしくて良かった。それを聞いて紬は、注意して見てみるよとリーダーらしく気配りする。

 

▼とあるマンション〜駅前

東「ただいま。…って、すっかり癖になっちゃったな。」

MANKAI寮ではない、どこかの部屋。ここは、東が元々一人で住んでいたマンションだ。寮とは違う、しんと静まり返った空間に、東は寂しさを覚える。

 

♪「ただいま」の声 

東のソロ。いつもうるさいMANKAI寮は、孤独を忘れさせてくれるくらい賑やかで大切な場所だが、今はあえて離れることで、孤独に生きることに向き合おうという曲。

(本来単独公演の主役のソロ曲はこういうものだよな、と一幕を振り返っても思うが、似たような構成になるのを避けたのかもな…と考えてお茶を濁すことにする)

東は、秋冬公演からずっと’’寂しがり’’であることを強調されつつも、肝心の東自身はそれを表に出さず、どこか掴みどころのない風に舞う葉のような人物として描かれている。

曲中、場面が切り替わり、稽古場にいる4人の元へ、支配人がやってくる。

支「雪白さんいませんか?瑠璃川くんが、衣装について打ち合わせをしたいそうなんですが…」

東が不在だということを伝えると、また明日にしてもらうと言い支配人は去っていく。こうやって別の団員の存在も匂わせて、同じ日々を過ごしているんだなと思わせてくれるのはエーステの好きなところ。

 

《虚しく響く「ただいま」の声  忘れていた一人ぼっちの夜》

《変わっていかなきゃ  その為に今  もう一度この孤独と向き合おう》

本当は誰より孤独が怖いのに、それもまた一人で抱えてしまう。東は設定上は年齢不詳だが、平均年齢の高い冬組の中でも、恐らく少し歳の離れた年長ということもあり、弱みを見せずにここまでやってきたという側面がある。

一幕の誉と共通しているのは、’’役の心情を掴めない’’というところだ。しかし、’’心情を考えても理解できない’’のではなく、’’理解はできても、受け入れることができない’’ことで苦戦しているのが誉との違いだろう。

紬「東さん、どこへ行ったんだろう…」

稽古が始まってから、毎晩どこかへ出掛けている様子の東。しかし、それに気づきながらも、詳しいことは聞けず、深入りできないでいる。

丞「…俺がなんとかする。」

口下手で積極的に人に働きかけるタイプではない丞だが、舞台を成功させるため、「準主演だしな。ちゃんと話してみる。」と、自分から進んで話し合いをしようと試みる。

 

一方、また一人でマンションにいる東。部屋で眠ってしまい、悪夢を見てしまう。

「待って、行かないで……嫌だ―――ひとりにしないで!!」

いつも両親と兄を送り出すシーンで飛び起きる東。朝起きると、大切な人がいなくなっていたというトラウマが、深く根付いていることがわかる。

スマホを見ると、丞から昨日の夜に連絡が来ていたことに気づく。

丞【ドライブ行きませんか】

東【ごめん、今メッセージ見たよ】

丞【今どこですか?】

東【秘密。今から帰るよ】

 

場面が変わり、東が帰ってくると、駅前で誰かを探している様子の丞がいた。迎えに来てくれたのかと言われ、ジャージでもないのに「ちょうどランニングに出るところだった」とバレバレの嘘でごまかそうとしたが、東には通用しなかった。更に、電車で帰ってくるとは限らないのに駅で待っていたことを指摘される。思い込んだらそれしか考えられない丞の不器用さが描かれてる。

東「…なんでボクを待ってたの?」

丞「最近、夜出かけることが多かったみたいなんで、どうしたのかと思って。」

東「吸血鬼の役だし、夜に行動した方がそれらしいでしょ?心配しなくても、公演はうまくやるよ。」

丞「……はい。

東にはぐらかされ、肝心なことが聞けずに「……くそっ」と自分に憤る丞。

 

▼アルバム完成〜稽古場

稽古が終わり、疲れている様子の紬。談話室を通り掛かると、他の組のメンバーが何やら盛り上がっている。

紬「アルバム、完成したんだね!」

一「ちょーっと大変だったけど、おみみと協力して、一生懸命作ったんだよねん☆」 

一幕から作成していたアルバムには、旗揚げ公演の時から各組が楽しそうに映っている写真が飾られている。紬はその写真を見比べて、やはり周りから見た冬組の雰囲気や距離感について思うところがあるようだ。

紬「…俺たちの距離感って、どう思う?」

一「別に、フツーじゃね?冬組って、みんな大人じゃん!俺たちとは違うけど、それが、冬組らしい距離感なんじゃないの?」

春組、夏組、秋組。それぞれ色々な出来事があり、時には互いにぶつかり合うことで各公演を乗り越えてきた。しかし、冬組は、他の組と比べても、顔をつきあわせて本音を言い合うような場面が少なく、特に仲が悪いというわけでもないが、特段仲良くなったというイメージも無い。

唯一、メンバーの全員が成人していて、大人である冬組。人と向き合うには、力技ではどうにもならない時があることを知っているが、今回はそれが裏目に出てしまっているのだ。

 

紬「俺たちは、どうしたら前に進めるんだろう…。」

シ「…足を、前に出せば良いヨ。」

綴「シトロンさん、そんな単純な話じゃないから…」

紬「ううん、きっとそんな単純なことなんだよね。でも俺たちは、その単純なことが怖いんだと思う。大人だから、余計に…」

一「なら、ほんの少~し、前に進めばいいんじゃね?大きな一歩が怖いなら、ほんの少しの一歩でも、前に進めるっしょ?」

紬「…ありがとう。みんなが繋いでくれたもの、俺達も必ず繋ぐよ!次の季節に…」

 そう言って、アルバムをシトロンに渡す紬。このシーンは、今後のエーステ自体のメタファーでもあるようで、舞台でのMANKAIカンパニーの未来も感じさせてくれる素敵なシーンだと思った。

シトロンや一成の優しい助言。一歩ずつでいい、その言葉が紬の背中を押す。困難を乗り越えようとする紬、そして冬組の姿に触発され、俺たちも負けてられないな!と残ったメンバーもストリートACTへ向かう。

 

後日、稽古終わりにまた出かけていく東。東の様子を心配する。

本来は丞と監督二人の会話だが、その役目を今回は紬が多く担っているため、原作よりリーダーとしての立ち回りを物凄くうまくやっているような感じがする。丞は、旗揚げ公演の際に揉めてしまったことを思い出し、上手く声をかけられずにいる。

丞「また言葉を間違えたらと思うと、何も言えなくなる。言葉にしないと伝わらないって、もう十分わかったはずなのにな。……俺は何も成長していない。」

紬「そんなことない、丞は変わったよ!逃げずにちゃんと向き合おうとしてる。冬組みんなで、もう少しだけ前に進んでみようよ。」

ここで監督が一言、「気の利いた言葉じゃなくてもいい(原作より引用)」と助言する。

丞「気の利いた言葉じゃなくていい…?」

紬「なんでもない言葉が欲しい時もあるよ、昔の俺がそうだったから…」

それをどうやったら伝えられるのかと悩む一同の元へ、支配人が荷物を抱えてやってくる。どうやら、東宛に荷物が届いていたようだ。

支「なんでも、雪白さんの昔からの知り合いで、同じマンションに住んでる方みたいなんですが〜」

昔からの知り合い、同じマンション、という言葉に反応し、その住所へ急いで行ってみることに。

 

丞【今どこですか?】

東【秘密】

丞【ドア、開けてください】

 

東「え?」

東がドアを開けると、そこには冬組が勢揃いしていた。原作だと先に監督と丞が来て、そのあと残りのメンバーを呼ぶ流れになるのだが、ドアから一気に4人がなだれ込む様子がなんだかほほえましかった。この時そっとドアを閉める誉のしぐさが好き。

東「みんな…」

丞「突然すみません」

以前、「吸血鬼の役作りのため」ということを聞いていた丞は、そういうことなら協力すると必死に食い下がる。

丞「役作りなら俺も手伝います。台本なら持ってきました。」

既にボロボロで使い古した台本(原作では、汚くなったので2冊目を監督に用意してもらっている)。東はそれを少し見せてくれと頼む。東(玲央)との掛け合いについてのメモが多いことに気づき、しばらく台本を眺めるが、頑なに姿勢を崩さない。しかし、公演のことではなく、東自身が何か悩んでいるのではないかとストレートに聞いてきた丞に、たじろぐ東。

紬「聞かなくてもいいことかもしれない、でも知りたいんです!…ダメですか?」

 

今までに無いくらい、自分に近づこうとするみんなを見て、東は過去を語ることを決める。

 

▼東の過去

冬組以外のストリートアクトの場面になり、「箱の中からくじを引き、出た配役で芝居をする」ということに。そのまま、父:臣、母:一成、兄:シトロン、幼少の東:綴という配役で、ストリートACTから東の回想に移行する演出は舞台ならではで、とてもうまいと思った。

冒頭と同じ語りに合わせて、シトロン達のストリートACTにより、仲睦まじい家族の平凡な日常が描かれる。

そして、東以外の3人が旅行に出かけ、その旅行先で事故に遭い、自分一人を残して家族が亡くなってしまったことをカミングアウトする。

ここで、東が初めて、遺体が見つからないままの兄が帰ってくるように願掛けで髪を伸ばしていたことを告白する。

「あの時、『いってらっしゃい』じゃなくて、『行かないで』って言っていたらって、何度も後悔した。そんなこといくら考えたって、意味が無いのにね…。」

真剣な顔で話を聞く冬組。

そして、夜に事故の時の悪夢を見るため、一人きりで朝を迎えることが怖くなった東は、添い寝屋を始める。劇団に入ったのも、同じような理由だったという。孤独を埋めるために演劇をやっている自分が、真摯に芝居へ打ち込んでいる仲間に対して申し訳なくなり、東なりに一人で役に向き合おうとしていたのだ。

「ボクも、冬組のみんなも、それなりに歳を重ねて、他人との心地いい距離っていうのがわかってる。だから、お互い必要以上に踏み込まずにいた。でもそれは、配慮っていう建前で距離を作ることで、自分自身を守ってたんだよね。そんな関係は心地よくもあったけど……少し寂しかったのかもしれない。」

この東の言葉は、冬組の全員が抱えている問題でもあった。実際、自分もいい大人なので、冬組のもつ面倒くささや、大人だからこその距離の取り方は、とても身に覚えがある話でもある。しかし、そこに切り込んでいかない限り、より親密な関係にはなれないし、一緒に芝居をしていく以上、つかず離れずの関係では、越えられない壁というものがあるのだろう。

 

紬「俺たちみんな、踏み出せないままでいたんです。でも、だからこそ今日、ここに来ました。ほんの少し、前に進むために…」

東「ほんの少しでも、か……。じゃあ、今夜一晩だけ、話してないことを話してみない?もちろん、無理にとは言わないけど…。」

みんなが賛成し、こうして、冬組としては初めて、お互いにきちんと腹を割って話すこととなった。

このシーンは、本来話しにくいこともあると思うからお酒の力を借りよう!という流れになるのだが、それはカット。やはり頑なに酒を排除するエーステ…。果たして冬組は素面で腹を割ることが現時点で出来るのだろうか…?と少し思った。

 

誰から話そうかということになり、まず、旗揚げの時は紬と丞がなんであんなに関係が拗れていたのか聞きたいね、と誉が挙手で礼儀正しく質問。紬と丞が、お互いの心境を素直に話し始める。順番に、今まで話していなかったことをスムーズに話せるようになっていく冬組。

 

♪ボクらの距離

この時誉が何を話したのかとても気になるが、恐らくは恋人に言われた壊れたサイボーグに関するエピソードだろう。原作では、旗揚げ公演の際に開かれた飲み会で恋バナをすることになった時、頑なに『恋愛に関して話すことなどない。好きなタイプもない。』と拒んでいた。

舞台では、秋冬公演でも元恋人の存在は丸ごとカットされているため、せめて曲中で話したことになっていてほしいという願望がほとんどだが…。

 

冬組「♪近づくことで傷つくこともある  でも近づいたからこそわかりあえる」

これは、まさにこの冬組単独公演の大きなテーマを表しているフレーズだと思う。

東「春組は家族、夏組は友達、秋組は仲間って感じだよね。ボクたちは、なんだろう……」

ここで、今後の冬組を象徴するワードが誉から飛び出す。

誉「運命共同体というのはどうかね!病めるときも健やかなるときも、幸せも苦しみも笑顔も涙も共有し、運命を共にする運命共同体…うむ、素晴らしいではないか!」

 

 

紬「一人で抱えきれなくなったら、その時はお互いに苦しみを分けあって、一緒に背負ってあげる…そんな感じですよね。」

東「そうだね。そんな関係がいいな。」

 

彼らがここにいることは、始めこそただの偶然だったかもしれない。その偶然から生まれた関係性が、彼らの心地良い居場所を作っていく。若干重いようなこの『運命共同体』という言葉も、お互いを想いあえるようになった冬組の独特の距離感を表現していると思う。

冬組「♪これからはこの距離を忘れずに  心地いいボクらの距離にしよう」

他の組よりも、少しだけ歩みが遅かった冬組。第2回公演、そして第3回公演へと時を重ねるうちに、やっと互いの足並みが揃い、輪になれるところまで近づいたのだ。ゆっくりでも、小さくても、その一歩は確実にお互いのぬくもりを感じあえるところまで来ている。冬組のストーリーは地味ではあるが、より人間らしい感情の動きが丁寧に描かれている。旗揚げ公演のストーリーは、その大人ゆえの踏み出せなさから、他の組とは違ってファンタジーで強引に動かした感じがあるので、私は第2回公演以降のストーリーで、より冬組の魅力を感じられるようになっていくのが好きだ。

 

話し込んでいるうちに、起きているのは東と丞だけになった。ふと窓の外を見ると、既に外は白んで、朝日が昇る時間になっていることに気づく。

東「ここから見る朝日がこんなにキレイだったなんて、知らなかったな……」

丞「最上階で見晴らしいいですしね。」

このちょっとずれている返答が、いかにも丞らしいなと思う。朝日が綺麗に見えるのは、場所だけではなく、朝を迎えることが少し怖くなくなったと感じられる東の新しい人生の心象風景でもあるのだと思う。しかし、この綺麗な朝焼けがみられるこの部屋は孤独の象徴。東は、一人ぼっちにならなくても良い場所をやっと見つけたので、ここに帰ってくる必要はもうない。この部屋に来るのは今日が最後だと言いながら東が取り出した鍵には、また別の鍵がついていた。

丞「その、もう一つの鍵は?」

東「実家の鍵だよ。家族が亡くなってから、一度も帰ってない。」

丞「……。」

もう一人ぼっちではない。しかし、東の過去の悲しみは消えてはいない。その記憶と向き合うタイミングで、この鍵が必要になる時が来るのだが、それはまた別のお話。

東「いつか、ここに行く勇気が持てたら、その時は……一緒に行ってくれる?なんて…!」

ふと振り返ると、丞も限界が来ていたのか、いつの間にかスヤスヤと眠ってしまっていた。

東「寝ちゃったか。…ふふ、いいところで寝ちゃうんだから。」

 

東『…おやすみ、良い夢を。』

 

▼初日開演前、幕の前の4人

ストリートアクトを終え、芝居について話し合う3人。

綴「雄三さんに言われたんすよ、芝居なめてんじゃねぇ!って。」

臣「きっと、わかったところがスタートラインなんだよ。」

綴「スタートラインか……じゃあ、まだまだ走り続けないとっすね!」

そこへシトロンが泣きながらやってくる。どうやら、GOD座の晴翔に出会ってしまったらしい。

シ「山田(晴翔)にインゲン投げられたヨ〜!」

綴「なんて言われたんすか?」

シ「『アンタ、日本語変だよ?』」

綴「そりゃそうでしょ!」

一「大丈夫だって!俺がバイブスアゲめで、やばみな日本語、教えちゃうからさ☆」

シ「カズ…!」

綴「三好さんが教えたら余計ややこしくなるから…」

一「その前に、冬組のアゲみな芝居、観に行っちゃおうよ〜!」

シ「アゲ美…?女の子ネ〜!」

ここで、しっかりと雄三さんの存在を舞台の上に残してくれる脚本。エーステとして、雄三さんの扱いを今後どうするのかは、私にはわからないし、どうするのが一番しっくり来るのかも考えられない。だけど彼も、ちゃんと天鵞絨町に生きているということだけは確かだ。

 

いよいよ、冬組第3回公演の幕が上がる。

 

▼劇中劇:真夜中の住人
やや暗めのステージの上手側で、夜の世界に生きる吸血鬼が人間を襲うシーンが繰り広げられる。追っ手が迫り、攻撃を受けながらも命辛々逃げる、吸血鬼の玲央(東)。
下手側では、サラリーマンである浩太(丞)と野々宮(誉)が仕事をしている。その帰り道、今にも倒れそうな男に浩太が走り寄る。

浩『お、おい!』

玲『助けて…』

時計の鐘が鳴り、『真夜中の住人』とタイトルが月の映像をバックに映し出される。

朝起きると、昨日助けた玲央が朝食を作ってくれていた。

浩『うまっ!俺は瀬尾浩太。あんたは?』(この台詞のスピード感が毎回じわじわきていた)

玲『…玲央。九頭玲央だよ。』

浩『玲央、行く場所がないなら、しばらく俺の部屋にいてもらってもいいけど?』

玲『こんな得体の知れない男を家に置くの?』浩太は普通の青年だが、少しお人好しが過ぎるくらいの優しさを持ち、玲央は一線を引きながらもそれに甘えることとなる。

東(さすがだね。いつもとは違う頼りなさがよく出てる。)

丞(強く見せている俺の方が、演じているのかもしれないですけどね。)

丞がそんな風に思っていたなんて…!事実、ステの丞は冒頭で触れた通り、原作よりとても人間らしさを醸し出しているので、より普通っぽさが強調されている浩太が物凄くハマり役だと感じた。

東の演じる玲央も、普段の掴み所の無さとは別に、少し冷たい雰囲気をきちんと表現していてとても良い。

浩太を会社に送り出し、家に残る玲央。それぞれの心中が描かれる。

浩『追い出すかよ。…助けてって、言ってただろ』

原作では、浩太のお人好しの理由が「自分も田舎から出てきた時は大変だったから」というもので、ちょっと抜けてる人なんだな〜という印象だったのが、この台詞で少しゾッとした。何か、人を助けるとか、役に立つことに関して執着のようなものを感じる。一方で、吸血鬼ということを明かさずに世話になることに対して少し罪悪感を覚える玲央。こうして人間の家を転々としながら生活していたのだろう、どちらかというと申し訳なさよりも哀れんでいるような印象を受ける。

玲『ごめんね…』と玲央が浩太に聴こえないようにつぶやく。

ここで、紬演じる泉が登場。隣に引っ越して来たのだという。物腰の柔らかい好青年風だが、どこか謎めいた雰囲気の男だ。

会社で同僚の野々宮が浩太の状況に触れる。

野『聞いたぞ〜?行き倒れの男を拾ったって?怪し過ぎるだろ。アラサー向けのドラマか漫画じゃねんだから…』

浩『ほっとけ。』

野『ハァ…んなこと言ってっと、いつか痛い目見っぞ。』

この野々宮の台詞を聞いた瞬間、誉…すご!!となった。正確には田中くん演じる誉なので田中くんの演技とも言えるのだが(ややこしい)、彼の解釈でここまで役者:有栖川誉としての演技の幅が広がっていくのは見ていて本当に面白い。あんなに普通の演技が難しかった誉が、ただのサラリーマンを自然な演技でやっている…いやこんな頭身の高いこんな派手な髪型のサラリーマンはいないが…。

この気のいいにーちゃん風の話し方は、どちらかというと田中くんのパーソナリティに寄っているせいか、よりリアルで野々宮の人間像がとても掴みやすかったし、誉がこういう普段の様子からかけ離れた役やってるの、もっと見たい…!となった。

野々宮は社内でわかりやすく人気がありそうだけど、浩太は陰でこっそり母性本能をくすぐられてる人がいそうだなと思った。

誉(どうかねどうかね?!ワタシのサラリーマン役は!)

丞(正直驚いた。こういう役もさらっとこなせるようになったんだな)

しかし役以外はいつもの誉なところがまた愛おしい。

誉(好きなようにやりたまえ。我々が支えるよ。)

第2回公演での主演を終え、頼もしくなった誉に丞もまんざらでもない表情を見せていた。

玲『♪ごめんねと言うのもずるいかもしれないな 僕は君の命を食らってる だけどどうしてだろう 君の血が欲しいのに 君の血が欲しくないんだ』

原作ではきちんと名言されていなかったが、玲央は毎晩浩太が寝た後、その血を飲んでいる。リアルな舞台で見るとなんだか生々しくちょっと耽美な場面に見えてそわそわした。

血を飲まれている影響か、最近悪夢を見るようになったという浩太。

夜中にうるさくなかったか聞かれて、『人の心配より自分の…』と言いかける玲央。単なる餌である人間の浩太に対して玲央の気持ちが変化していっているようだ。

一緒に過ごすうちに、浩太の部屋には玲央用のマグカップなどの小物が増えていく。台詞がないシーンでも、小道具や話している表情から、二人がより親密な関係になっていっていることがわかる。

いつものように朝出かけると、また泉と鉢合わせる。泉は、浩太の部屋から昼間も物音がするので、平日も休みなのか?と問う。

浩『ああ、ちょっと友達が泊まってるんです。』

泉『そうですか、お友達が…。』

この泉の表情が怖すぎる!まだ本性を隠してはいるが確実に何か不穏なものを秘めていることがわかる。第2回公演の『主ミス』から引き続き、紬の繊細な演技が光る…。繊細な演技をするキャラをきちんと表現できる荒牧くんの技量のおかげだろう、秋冬公演から紬の演技だなという説得力があるので、安心して観ていられる。

紬(みんなすごい、どんな細かい演技も受けて返してくれるし、芝居が多彩で面白い!)

丞(一番やってるやつがよく言うよ。)

紬(俺たちは、冬組に出逢うために芝居をしてきたんだね。)

丞(…だな。)

こんな風に2人が、特に丞が思っているなんて…!丞は、GOD座のトップに立ってなお、方針についていけないという理由だけで、その座をあっさりと捨てられるほど、ただ芝居がしたいという想いだけで舞台に立っている人間なのだろう。その丞が、本当に居心地のいい場所としてMANKAIカンパニーの冬組を選んでくれたとしたら、それはとても大きな意味があることだと思う。

玲央がやってきて一週間経ち、浩太の顔色の変化を心配し野々宮が声をかける。ただの寝不足だと浩太は言うが、野々宮は居候がやって来たタイミングを訝しむ。

野『ここ1週間ずっとだぞ?一週間って、居候が来てからだろ。やっぱそいつおかしいよ!』

浩『玲央のせいじゃないって。』

野『いいやおかしい。1回会わせろ。』

浩太と野々宮がどれだけの仲なのかは明言されていないが、友達にしても野々宮はとても世話焼きだし、そこまで「一回合わせろ」とまで心配される浩太は、やっぱりどこか放っておけないところがあると思われているんだな…と感じる。

一方、上手側では見慣れない怪しい人影が玲央と話している。
?『いい寝床を見つけたみたいだねぇ。』

玲『用がそれだけなら帰れフランツ!』

密演じる吸血鬼のフランツ。原作とは違い、どうやら玲央とは元から顔見知りのようだ。浩太の近くでは柔らかい表情を見せていた玲央だが、突っぱねるような態度を取っている。やっぱりステ東の演技は、儚さだけでなくきちんと男性の持つ強さを見せてくれるので好きだ。

フ『♪お前が何にうつつを抜かしてるのか知らないが ボク達は所詮』

玲『♪わかってる 太陽の光は強すぎる』

浩太に惹かれている様子の玲央に対し、人間と共に生きる事はできないのだと諌めるフランツ。《ボクたちは所詮》という歌詞から、フランツ自体も、吸血鬼という生き方に満足しているわけではないことが伺える。フランツは玲央に、自分達を狙う追手がすぐ側までやってきていることを忠告する。

浩太は2人が話している様子を見て、何のためらいもなく声をかけるが、巻き込みたくない一心か、玲央はそれを無視して去ってしまう。

野『あっ逃げた!さてはあいつら犯罪組織の一員とかじゃ…』

浩『いい加減にしろ野々宮!…だけど、なんで無視したんだよ……。』

あからさまに雰囲気も妖しいので野々宮が訝しむのも無理はない。浩太は誤解を解こうと庇うものの、玲央の態度に少し違和感を覚える。

浩『♪家に居させてるのも ずるいかもしれないな』

2人『♪いるのが当たり前になってる』

2人『♪偶然出会った見知らぬ男なのに ずっと一緒にいたいんだ』

この、《ずるいかもしれない》というフレーズが、浩太の単なる優しさのつもりが身の回りの世話をさせてしまっているという罪悪感からなのか、行く当てのない玲央の置かれた状況をなんとなく察しているからなのか、私にはいまいちピンとくる解釈ができていない。

ただ、察するに、お互いに何らかの強い友情、もしくはそれより少し上の、依存するような感情が生まれ始めているのだと思われる。

また玲央のもとに忠告をしに来るフランツ。あまり血を飲んでいないだろうという指摘に、玲央は自分に言い聞かせるように『大丈夫だよ』と答える。

しかし、自分が生きるためには人間の血が必要であり、このままだと、いつか自分の命が尽きるか、浩太の命を奪ってしまうことになるだろう。やはり共存することは難しいのかもしれないと葛藤する玲央。そして、世話になった浩太の元を離れることを決める。

出発の朝、玄関では泉が待ち構えていた。
浩太は普通に挨拶するが、玲央は『お前…!』と何やら警戒する。
泉『引っ越されるんですね。それじゃあ…これ、僕からの餞別です。』

そう言って紙袋を差し出す泉に対し『浩太、下がって!』と浩太を庇うため前に出る玲央。

その一瞬の隙を突き、泉が差し出した紙袋の後ろから、隠し持っていたレイピアのような剣で玲央を貫く。

泉『残念だなぁ~~少しの間だったけどお隣さんだったわけだし?』

今までの柔らかな雰囲気から豹変し、猟奇的な笑顔を浮かべる泉。この紬の豹変ぷりが、第2回公演の相馬とも通ずるところがある。二回連続の悪役だが、あの演技を観たらやらせたくなるのもわかる。

浩『おいアンタ何してんだ!!』(ごもっともなツッコミすぎてちょっと面白い浩太)

泉『汚らわしい夜の一族よ。我が血盟の掟に則り汝を排除する!』

迫っている追っ手というのは、エクソシストである泉のことだった。浩太はここで玲央が吸血鬼だと知るが、それでも玲央を庇おうとする。二人まとめて送ってやる!と泉は再び刃を向けるが、そこへ俊敏な人影が割り込む。

フ『あーらら、ご相伴に預かろうと思ったのに貧乏くじ引いたな〜。』

フランツが助太刀にやって来る。両手に持ったナイフをクルクルと回しながらダルそうに話す感じが良かった。フランツは気が強く、戦闘が得意なタイプのようだ。

激しい戦闘を繰り広げる2人。恐らく別舞台で鍛えた荒牧くんの剣さばきと、植田さんの小柄で身軽なアクションがとてもよく映える。

紬(すごいね密くん、稽古の時よりも更に動きが洗練されてる!)

密(考えなくても、体が勝手に動く。)

紬(密くんの過去に関係しているのかもしれないね。)

密(東みたいに、いつかオレも向き合いたい。自分の記憶と…)

この心情会話を、アクションしながら尚且つ演じている役とキャラクター自身を切り替えてやっているのがすごかった。一歩間違えば怪我をしそうな動きもあり(後ろから頭を狙って突くのを見ずに避けるなど)、阿吽の呼吸になるまで練習したんだな〜と思いつつ毎回ハラハラしていた。

密は、秋冬公演で熱を出した時に過去を思い出したが、寝て起きるとすっかり忘れてしまっていた。記憶の奥底に眠る本当の姿を、この時はまだ捉えきれてはいないものの、’’役者・御影密’’として生き生きと演技している様子が伝わってきた。

フランツの回し蹴りが決まり、武器を落とし劣勢になる泉。

フ『まだやるぅ〜?』

泉『…ッ!人間は貴様らには屈しない、白き刃が必ず貴様らを裁く!』

泉が捨て台詞を吐いて去っていく。玲央を連れて行こうとするフランツに浩太は警戒するが、『安心しろ。ボクたちは同類なんだ』と言われ、フランツに玲央を託す。

ここの植田さん演じる密のフランツがとても良かった。原作では密自身の持つミステリアスな雰囲気が出ていたが、その感じも残しつつ、好戦的で血の気の多い一面もあるというギャップが良かった。舞台で見る密は、儚げでどこか人間離れした独特の空気が強いので、このくらいの演技のバランスがカッチリとハマっていたのかもしれない。

玲央とフランツが去った後、自分の気持ちを吐露する。

浩『♪ごめんなんてもう言わなくていいんだ  俺の血なんかくれてやる  だから お願いだから 生きてくれずっと  お前を……失いたくないんだ』

舞台の方が、浩太の玲央に対しての入れ込みようがすごいことになっている。原作でも、確かに友情以上の仄かな感情を匂わせる雰囲気の物語ではあったが、自分がそこまで読みとれていないのか、なんでここまで浩太が玲央に執着しているのかが舞台でもいまいち分からなかった。

少し考えてみると、冒頭で浩太は『助けてって言っただろ』と、玲央が誰かに救いを求めていることを感じ取っている。原作では、田舎から一人で出てきた時は自分も色々困ったから、頼っていいぜ!みたいな、少し天然な風味のある心からのお人よしという感じだったが、舞台の浩太は、優しさは本物だが、どこか人を助けるということ自体に迫られているような感じもした。困っている人を心から助けたい、そう思うあまり、その人に感情移入しすぎてしまうような。

吸血鬼は、題材や逸話によって様々な姿を持つが、餌となる人間を惹きつけるために、非常に美しい容姿をしているとされることが多い。玲央も、人間を惹きつける不思議な魅力を持っていて、その上で優しい浩太は一緒に過ごすうちに、段々と離れがたい気持ちになっていったのではないだろうか。

フランツに介抱され、気がついた玲央は真っ先に浩太の心配をする。『僕たちが何をした?ただ人より長く生きられるだけだ!』と、浩太と一緒に生きられない吸血鬼の宿命を呪う。フランツはどこか憐れむような様子で、異端は排除するのが人間というものだと諭す。もしかしたらフランツにも、人間との絆を諦めた過去があるのかもしれない。舞台だと、原作では感じ取ることのできないドラマを、役者の表情や台詞の言い方から思い描くことができるので、劇中劇でもそれぞれのキャラクターに新しい魅力が生まれたりするのが面白いと思う。

吸血鬼は不老不死の設定であることも多いが、玲央たちは「人より長く生きられる」と言っていることから、寿命が何百年とかなのかもしれない。

怪我が良くなり、別れの挨拶をしに来た玲央。結構な勢いで刺されていたが、吸血鬼だから治りも早かったりするのだろうか。

玲央の素性を知りながら、それでもいいから出て行く必要なんてない、ずっとそうして一人で生きていくのか?と引き止める浩太。しかし、玲央はそれを断る。すると、浩太から驚きの言葉が飛び出す。

浩太『だったら、俺も連れて行け。』

玲央『え……』

浩太『道連れになってやるって言ってるんだ!吸血鬼にでもなんでもなってやる!』

東(今まで踏み込まなかった…踏み込めなかった距離……。勇気を出して踏み出したら、今まで以上にみんなと繋がれた気がする…!)

ここで東の独白。状況が状況だけに、最初見た時は玲央が浩太に対して言っているのかと思った。けど、ここはダブルミーニングと捉えてもいいかもしれない。

自分の気持ちを隠し、孤独な心を抱えながら、人のぬくもりを求めて生きてきた東。吸血鬼である玲央が人間に求めていたものも、もしかしたら似ているのではないだろうか。

玲央は首を差し出し待っている浩太に、少しずつ歩み寄る。

玲『ありがとう浩太、その言葉だけで僕は……!』

2人『♪本当は』

ここの最後の台詞と、原作の『真夜中の住人』のテーマ曲である『正体』へ繋がる。本当に素晴らしい流れだった。その言葉だけで、と言いながらも、狂おしいほどの感情に突き動かされそうになる玲央。2人のデュエットから、最後が玲央のソロになる部分が、物語の結末を表しているようで切ない。

曲が終わると同時に、玲央は浩太をそっと抱きしめるが、手刀で浩太を気絶させ、その場を静かに去る。

玲央『おやすみ……良い夢を』

東が苦戦していたこの台詞。その言い方が、本当にあたたかくて、寂しくて、孤独を受け入れるための台詞ではなく、愛しい気持ちを知った台詞になったんだなぁと思った。上田くんの東は、ただの優男でもなく、なよっとしているわけでもなく、とても人間らしいところが滲み出ていて、それが東の演技としても反映されているなと思う。

夜が明け、次の日になり、部屋で倒れている浩太に野々宮が声をかけている。

野『お~~い、生きてっか~瀬尾ちゃ~ん!』

この舞台オリジナルの’’瀬尾ちゃん’’呼びに、思わずドキッとしてしまった。田中君のサラッとした自然な台詞回しが光る。野々宮は会社の女子からも人気が高そう。髪形は誉のままだけど。
起き上がった浩太に、なんだ寝坊かよ、無断欠勤とかするから心配したわ…と呆れる野々宮。わざわざ訪ねてきてくれるなんて優しい…。

浩太は、咄嗟に辺りを探すが、もう玲央の姿はどこにもない。

浩太『置いていかれた……。』

玲央が置いていったコートを握りしめ、地面に伏せて啜り泣く浩太。何のことだかわからずに困惑する野々宮。

玲央は別の場所で何かを想いながらじっと空を見つめ、最後はまた独り、闇の中へ消えていき……終幕。

千秋楽のみ、丞による浩太の『馬鹿やろう…』というアドリブがあった。これは原作で初日に丞が入れたアドリブでもあり、舞台はまた違う印象のエンディングになったなぁと思っていたところにこの台詞が再現されたのが良かった。

真夜中の住人は、原作よりも音楽等の効果で重厚で暗い雰囲気の物語になっていて、二人の関係がより濃密に感じ取れる場面作りになっていた。静かでしっとりしたシーンが多い中、途中にはアクションも挟まり、劇としての緩急があってとても見やすかった。

一幕の主ミスも悪くはなかったが、少し自分のイメージより少し軽快すぎというか、バタバタとただ進んで行ったような印象を受けたので、真夜中の方が舞台化するにあたり歌と芝居のバランスが丁寧に作られていて良かったなと思った。

何より、ステの丞と東は、個人的には原作よりも’’人間らしさ’’が出ている2人だと思っているので、その主演と準主演の持っている雰囲気が芝居と噛み合っていて、2人のことも、真夜中のことも、舞台版を見たことで今までよりずっと好きになれた。

▼終演後

観劇を終えた冬組以外の団員が幕前に出てくる。

シ「紬たち、ちゃんと繋いでくれたネ…」

一「冬が終わったら、次は春だね!」

臣「ああ、みんなでゴールを目指そう」

一「俺たちがいる限り、MANKAIカンパニーは続いていくんだよ!ゴールなんてないっしょ~☆」

シ「繋いでいくヨ、みんなでずっと…」

綴「はい!」

そこへ、小さな花束を持って支配人がやって来る。密宛にプレゼントが届いていたが、差出人は不明だという。

届いていたのは、可愛らしい小さなマリーゴールドのブーケだった。

綴「マリーゴールド…?確か、マリーゴールド花言葉って、なんか怖かった気がするんすよね…なんだったかな?」

なんで綴が花言葉に詳しいんだろう、と思っていたけど、もしかしたら、ステにおける第2回公演の『主ミス』の脚本を書くにあたり、花言葉について調べていたからかもしれないと思うとしっくりきた。(むしろここに繋げるために花言葉推しの改変を…?)

そんな綴の心配も特に気にしていない面々。

一「プレゼントに怖い花なんて送らないっしょ〜!」

支「手紙もついてるみたいですよ!」

一「手紙?もしかして、恋文じゃね?!なんて書いてあるの?!……『お前を見ているぞ、ディセンバー』♡(一成の読み方がこんな感じだった)……エーピーアール?」

密「えーぴーあーる…エイプリル?」

一「ひそひそ、なんで読めるの?」

密「わからない…」

臣「ディセンバーって、12月ですよね。」

綴「冬組みんなに差し入れってことですかね?」

一「箱推し的な?!それあり得る!」

【お前を見ているぞ、ディセンバー Apr.】というメッセージは、実は原作では冬組第一回公演の『天使を憐れむ歌。』の上演後に贈られてきたもので、それを今回のエピソードで回収してきたので初見でめちゃくちゃ驚いてかなり心臓に悪かった。

これは、ストーリーを進めてくると出てくるとある人物から送られてきたもので、密の過去に重大な関わりを持つ人物なのだが、ここでわざわざ出してくる、ということは……?

ちなみに、マリーゴールド花言葉『嫉妬、絶望、悲しみ』

この花を贈った人物が、いずれ舞台でも明かされる日が来るのだろうか。エーステの未来の物語が、もしかしたら、もう動き始めているのかもしれない。

▼エピローグ、海

これは原作の真夜中の住人ストーリーのエピローグでもある部分。

第3回公演が終わり、冒頭で丞と東が話していた「冬組みんなで海に」が実行された。しかし、冬の足音が近づく季節外れの海に、寒い寒いと言い出し車に戻ろうとする密と東。

丞「何しに来たんだお前ら…」

誉「良い詩が浮かんできそうだ……やっぱり寒い!」

寒い、なんとかして、と誉のコートにくるまる密。2人がカンガルーの親子みたいになっていて可愛らしかった。ここの場面では、原作の衣装ではなくオリジナルの冬の装いになっていて、丞がライダース、誉が濃灰色のロングコート、密がモコモコしたフリースなど、それぞれの個性が出ていてとても良かった。

寒いので、とりあえず温かい飲み物を買いに行った3人。

残った東と丞は、以前も海に来たことに触れる。丞は以前のドライブの際、なぜが東が海が好きだと思い込んで連れて行ったらしいが、実はそんな話は一度も出ていない。

丞「海、嫌いでしたか?」

東「ううん。好きだよ。……今、好きになった。」

丞「本当によくわからない人だな…」

原作にもあるこの面倒くさい彼女みたいな東の台詞が好きで、誰かの気持ちを受けとめて自分の好きなものが増えていく、という、人間関係の波紋のようなものがうまく表れているなと思った。

一幕では、誉が「密のことが好きだから世話をしていたんだ」という旨の発言をしていたが、「みんなのことを愛している」とまで言えるストレートな誉とは違い、東は東なりに丞やみんなを大切な存在に思っているということを言葉にしたのだろう。

丞「俺たちは変わりました。ちゃんとチームになれた…時間はかかったけど。」

話しているうちにドタバタと帰ってくる3人を見て、「チームって言っていいのかは、分からないですが。」と苦笑しながら言う丞。

東「運命共同体、ってやつでしょ?誉曰く。」

丞「そうでした。」

ここの丞が少し優しい顔になるのが好きで、冬組……こんなにもあったかいチームになるなんて……と感慨深い気持ちになった。

すると、紬が何やら見たことのある箱を持ってきている。他の団員がストリートACTの際に使っていた、配役決めのためのくじびきBOXだ。ここで、エチュードをやって、一緒に来ている監督(ここまで監督=私達が一緒に来ていることに言及していなかったのでびっくりした)に見てもらおうと言い出す。

5人が中央に集まり、箱の中に手を伸ばす。

紬「それじゃあ監督、俺たちの芝居、見ててくださいね。せーのっ!」

♪エンジェルスノー

みんなが箱から手を出した瞬間、粉雪が舞いあがった。

この演出は本当にハッとするくらい綺麗だったし、ピアノの切なくてあたたかいイントロで胸がいっぱいになった。

冬組のテーマソング、『エンジェルスノー』。旗揚げ公演の『天使を憐れむ歌。』ともかかっていて、良いタイトルだと思う。また、「スノーエンジェル」という言葉には、雪の上で寝転んで手足をバタバタさせるとできる、天使の羽のような模様という意味もある。

《冷たい風が僕をいつの間にか大人にしてた》

それぞれの想いを抱えて、最初はつかず離れずの距離だった5人。どこの組よりも大人で、大人だからこそ、傷つくことを、傷つけてしまうことを恐れていた。

どこの組よりも時間をかけて、第三回公演にしてやっと、近づいてあたためあえるようになった。《ほろ酔いで語り合う 頬が赤く染まる 素敵な帰り道》という一幕を想起させる歌詞があるが、エピローグはカットされてしまったので、結局また冬組は最後までお酒を飲むことはなかった……。

《みんなで描き足していく 心を繋ぐ冬の星座  手を伸ばせば届く距離で 輝いていけるように》

この《星座》という言葉は、エーステにおいて、冬組を表す時のモチーフになっているような言葉だけど、これが的確に関係性を捉えているなぁと私は思う。星にはそれぞれの色や輝きがある。光が弱い星も、強い星もある。ポツンと真っ暗な夜空に浮かぶ様子は寂しいように見えても、その星々を繋ぐと、大きな模様を描くことができる。

冬組の距離は決して近くない。だけどそれはもう、近づき難くて生まれてしまった距離ではないのだ。

また、それを象徴するかのように、『エンジェルスノー』の振り付けは、他の組のテーマソングよりも’’等間隔’’が意識されているように感じた。特に、上記の《星座》を表現するかのような、輪になって回転しながら手をスッスッと動かして、宙に何かを描くような振り付けがたまらなく大好きだった。

これは私の経験に基づく余談なのだが、曲中に《孤独だけが降り積もる 泥だらけの雪だるま》という歌詞がある。私は雪国の生まれなので、雪に関して良い想い出、綺麗だとかロマンチックだとか思ったことがほとんどない。だけど、雪には不思議な特性があって、それは、同じ冬の寒さでも、’’雪が降っている時の方があたたかい’’ということである。科学的には色々な理由があるが、その一つには雪には保温性があるからだという。かまくらの中があたたかいというのがそれだ。

雪だるまも作れないような剥きだしの地面。そこに、優しさという雪が積もって、クッションのように包み込んでくれる。そんなイメージの曲でもあるなと感じた。

その積もった雪の上を、冬組が同じスピードで歩き出す。新しい足跡で、物語を描きながら。

曲が終わり、幕が下りる。

ここからは、エーステお馴染みのサービスナンバーの時間だ。しっとりと終わった物語も、最後は明るく笑顔で、等しく幸せな気持ちになれるのがエーステの好きなところ。

▼サービスナンバー

♪blooming smile~WINTER 2020~(東京公演ver.)

この『ブルスマ』も、各組の単独公演で共通して使われている曲だ。

《冬の夜空にキラキラ光る 星を眺めて暖めあうストーリー》

歌詞の随所に、各組それぞれのアレンジが加えられているので、今回は冬組の歌詞になっている。やはりここでも、《星》が使われている。そして更に《心を開いて ほろ酔いで語り合えるように》という歌詞もある。曲でばっかり強調されているが、いつになったら舞台上で飲酒シーンが見られるんだろう。

また、タイトルが’’東京公演ver.’’となっているが、本来は恐らく’’東京凱旋公演ver.’’として使用されるアレンジだったのだろう。なぜかというと、曲中に初めて各組のテーマソングから歌詞を引用したパートが作られていたからだ。秋組パートの《わがままバイブレーション》という歌詞を臣くんが歌うのがなんだかちょっと面白かった。

冬組パートが引用ではなく、《今日が特別な日に変わるように歌うよ》という、新規の歌詞になっていたのが印象的だった。さっき歌ったばかりというのもあるだろうが、今まで無かった物が出てくる=次に進むというイメージも感じた。

いよいよ、最後の季節までやってきたのだなぁという感慨もひとしおだった。

曲の途中、支配人が手持ちのカメラを持って歩きながら舞台上を映し、その映像が配信で流れるという演出があった(劇場では、スクリーンに映し出されている)。

私は映像配信とライビュでしか見ることができなかったが、カメラに向かって手を振ったりリアクションしたりするキャストを見ていると、’’今’’の瞬間を切り取ったものを見ている気持ちになれて、ものすごく興奮と切なさが同時に襲ってくるような感覚になった。配信用の綺麗な映像とはまた違う、人間の目を通しているような雰囲気は、’’この瞬間がいつまでも続けばいいのに’’と思ってしまう力があり、正に本物の舞台を観ている時と似たような気持ちになって、とてもいい演出だと思った。

《もしも帰りに寂しくなったら》のパートで、みんなが座って横揺れするシーンがたまらなく愛おしくて、ふわふわとした多幸感で溢れた。見つめあってニコッと笑う誉と密が映るのも好きだった。

曲が終わると最後に、紬役である荒牧君が「全ての演劇、全てのエンターテイメントに祈りを込めて。『The Show Must Go On!』」とタイトルコール。
初日と千秋楽のみ紡がれたこの言葉、とても短い文章だが、この舞台に懸けてきたキャスト、スタッフ、観客、全ての人たちの願い、そして、今日この日を迎え、最後までやり通すことができたことへの祝福でもあるように感じて、色々な気持ちが込み上げて来て、涙が出てしまった。

♪The Show Must Go On!

この曲は、エーステの初演から使用されているサービスナンバーで、作詞・作曲は、原作にもキャラソンを提供している大石昌良氏によって手掛けられている。とてもハッピーになるメロディで、うまく言えないけど、花火とかパレードとかをみているような気持ちになれる。
ショーは何があっても続けなければならない。このコロナ禍において、この言葉を体現し、このMANKAI STAGE『A3!』という舞台の息を吹き返してくれたスタッフの方々、そしてキャストの皆さんには、本当に尊敬と感謝の念でいっぱいである。

この後、無事に『Four Seasons Live』も開催されて本当に良かった。また、次の季節の物語に出会えることを、心から待っている。

▼挨拶
最後に冬組の5人が出てきて、日替わりで一人がメインの進行となって寸劇を繰り広げるというシステムだった。丞が筋トレ講座を開いた時に、誉さんが「お前30越えたら膝ぐちゃぐちゃになるぞ」って言われていたのがめちゃくちゃ面白かった。誉はその場で詩を作れと言われて生み出していたりして(雰囲気からして恐らく本当の即興)、純粋に頭の回転が速くてすごいなと思った。

また、終演後の後アナで披露した詩が、ものすごく良かった。

「返り咲くフローズン、ここに立つリーズン、幸せ運ぶMANKAIなカンパニー!」

田中くんが有栖川誉で本当に良かったと最後の最後まで思わせてくれた。

 

▽全体の感想

まず、一度は中止となった公演を、再度日程を組み、キャストを集めて開演してくれたこと。それに関しては、ただただ感謝しかない。一番楽しみにしていた公演を、この目で直接観られなかったことはずっと悔しいままかもしれないけど、仕方のなかったことなのかな、とも思う。全体ライブが控えているからといって、時期を急いて完遂しなくてもいいのではないか…とも少し思ったけど、時系列的に冬組だけ宙に浮いたまま、みんなが今までの第二回、三回公演の話をしていたらいたたまれないから…。

そして、キャスト。エーステは本当にキャスティングが上手くて、ビジュアルも演技も、観たかったものをきちんと見せてくれると思っているけど、それを今回の公演でも実感できた。キャラメイクも本当に素晴らしいし、劇中劇でも実際にキャラクターが演じて動くとこういうシルエットになるんだな、この人の衣装はこう動くんだなというのが、イメージ通りか、それ以上のものばかりだった。今でも誉さんの横髪が揺れると、生きてる………となる。冬組と、サポート組と両方が上手いこと噛み合っていて、キャストが欠けたり変わったりしなくて本当に良かったなぁと思った。

ただ、やっぱり、主に一幕で触れたとおり、原作のストーリーと、主演で扱われるキャラクターが好きだからこそ、どうしても納得できない箇所は最後まであった。それを風化させたくなくてこうして感想を書いているのだけど、もっと手放しで良かった!素晴らしかった!と言いたかったな、という気持ちは残っている。多分、気にならない人は本当に気にならない程度の改変だと思うし、自分が気にしすぎなのかもな、とは思っているけど、なかったことにはできないので、悔しい気持ちになった。

今回の改変は、多分、独立した一幕・二幕というより、’’冬組全体の成長物語’’という大筋が通った話にしたかったのかなと思う。そういう見方をすると、アルバムのエピソードを両方に挟んで繋がりを持たせるなど、公演としての見やすさはあったと思う。紬がリーダーとしての立ち振る舞いをよりしっかりとこなしていたのも、距離感の話をピックアップしてそれが二幕のエピローグと噛み合っていたのも、キャラクターエピソードではなく’’エーステ’’として見た時にきちんと成立していて、とても良い公演だったと思う。

ただ、上演されてよかったね、良い公演だったねという気持ちと、もう少し丁寧に掘り下げてほしかったな…というキャラクターのファンとしての気持ちは全く別のところにあるから、こればかりはこうなんだと言うしかない。原作でも誉さんの主演は現在のところこの『主ミス』しかなく、準主演もやっていないため(…)、エーステで今後また組単独公演があっても、掘り下げの機会が今しかなく、せっかく舞台が上演されたのなら、観たかったところを余すことなく見たかったな……と、どうしても思ってしまった。『ブルスマ』にも、《自分を好きになろう》という歌詞があって、それを聴くと、ほんとに一幕もエピローグ欲しかったなぁ……と思う。あと、秋冬公演から見ている感じだと、このまま誉さんがエーステにおける冬組のポップ担当、とりあえず愉快なことをさせておけばいいかみたいな立ち位置にならなきゃいいなとも思う。もう少し田中くんがシリアスなお芝居してるところが見たかった(田中くんができないというわけではなく取扱いの問題)。

ただ、次の季節に繋ぐということも意識して作られていたので、そこは素直に楽しみにしたいと思う。ストーリー的には、次の公演でもまた冬組が大きく関わってこないといけないはずなんだけど、どういう構成になるのか全然読めないので、期待と、不安と入り混じった気持ちで待っている。

色々言ったけど、こういう状況で上演してくれたことで、やってる期間中もなんやかんや言いつつ毎日楽しかったし、終わったらものすごく寂しかった。無事に最後まで公演が続けられて、本当に良かったと思う。
早く全ての舞台が安心してできる、観られる状況になりますように!

 

ありえないくらい長い文章を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。おしまい。

【観劇】『MANKAI STAGE「A3!」~WINTER 2020.08~』レポ・感想【一幕後半】

冬単一幕感想の後半。劇中劇のシーンから一幕ラストまでの内容です。

前半はこちら。 

ikaika1015.hatenablog.com


 

 

▼劇中劇:主人はミステリにご執心

まず、最初のライティングがとにかく美しかった。衣装を着た5人のシルエットが順番にスポットライトで浮かび上がる。今回は旗揚げ公演の天使とは違い、ジャケット、燕尾服、ベスト、袴、制帽に外套と、様々な衣装の違いがわかるのが見ていて楽しい。エーステは、各キャラクターが立ったり動いたりした時のシルエットに物凄くこだわっているのがわかるので、今回の『主ミス』の衣装も、文句の付け所がないくらい完璧で、見た目の完成度が鬼のように高かった。これが見たかった…!という正解を見ることができて嬉しかった。

前回の『天使を憐れむ歌。』は、激しい動きのあるシーンが少なかったが、今回はけっこうダンスも挟まってくるようだ。最初のみんなが椅子を持ってうにょ~と動かすところが好き。

演目が始まる前に、一人ひとりにスポットライトが当たり、ハイライトを映し出すような演出で次々と台詞が語られる。

今回の物語のキーパーソンとなる草薙嬢(こちらに顔は見えず、キャストによる兼ね役。支配人役の田口さんか?)が現れ、ハンカチを舞い上げ静かに倒れる。

 

全員『コリウス花言葉は……』

 

暗転し、『主人はミステリにご執心』という今回のタイトルが浮かび上がる。

エーステの劇中劇は、本来ならストレートプレイであるはずの演目を、わかりやすくミュージカル仕立てで演じるため、歌と台詞を織り交ぜた展開となっている。が、冒頭のこのダイジェストのような演出は新しいなと思った。

そして今更なんだけど、鷺島衣装の誉、脚がなっっっっがい。田中くんのことはテニミュ乾貞治の時から知っているので、あえて言及することでもないと思っていたのだけど、この衣装だと余計に際立つ。縮尺がバグって見えた。

 

舞台は大正の日本、名家のお屋敷らしき一室から物語は始まる。

鷺島『志岐さま。志岐さま?……志岐さま、庭のシクラメンが綺麗に咲いております。シクラメン花言葉はご存じで?』

志岐『鷺島、なぜ僕が無視をしているのに話を続ける?』

鷺島『無視をしておいでだったのですか?』

既に感じられる、稽古時との誉の演技の違い。

私は正直なところ、「こう来たか。」と思った。

原作の鷺島は、一歩引いた正統な執事らしさの中に控えめな毒が随所にある感じだったが、ステはそれよりも慇懃無礼な態度が前面に出ていて、ペラペラと好き勝手におしゃべりを始めるような感じ。志岐との掛け合いも、よりラフな雰囲気がした。

エーステの見どころは、’’役者が演じるキャラクター、そのキャラクターが演じる役の解釈と演技’’が観られるところである。

つまり、ややこしい言い方だが、原作の有栖川誉(CV:豊永利之)が演じる鷺島と、舞台の有栖川誉(演:田中涼星)が演じる鷺島は、同じ役なのだけど、台詞回しも、雰囲気も若干違う。

例えば、原作の誉さんの話し方は、たっぷりと抑揚のあるゆったりした間を取るような話し方で、独特のマイペースさと、少し浮世離れしたお坊ちゃん感が出ている。対して、ステの誉さんは、素早く回転する思考回路がそのまま溢れ出るような、いつも楽しそうでちょっとせかせかしたオーバーリアクションで捲し立て気味の話し方になっている。

好みの違いはあれど、私にとっては両方が有栖川誉だと思える。しかし、舞台の鷺島は間違いなく’’田中くんの演じる誉が解釈した鷺島’’だなと思った。

 

部屋に篭ってばかりいる志岐に、散歩に出掛けて花でも見たらどうか、と声をかけるが、志岐は花言葉なんかに興味はない』とそっぽを向く。

鷺島『草薙家のご息女も散歩に出かけている時間なのですが。』

志岐『すぐに行こう。シクラメンが見たい!』

ここは大きな改変。志岐が草薙嬢に前から好意を抱いていたという設定に。

志岐は調子のいい生意気なおぼっちゃんという感じで、《こんな言うこと聞かない執事がいるか》という歌詞があるが、本当に鷺島が言うことを聞かないわけではなく、あれこれ世話を焼いて話しかけてくる鷺島のことを鬱陶しがっている様子と思われる。

また、やたらと花や花言葉が強調されているのもオリジナルの設定だ。

『やれやれ、志岐様は犬よりも頭がお悪い。』という、鷺島を代表する台詞がいきなり冒頭で出てきたのには驚いた。後で正しい文脈で出てくるのだろうか?

 

鷺島の口車に乗せられて、散歩に出かけた先でハンカチを見つける。そのハンカチにはコリウスの花の香り』がついていると鷺島が指摘。ハンカチを拾って差し出す所作が美しい。

志岐『これは…草薙嬢のものだ!』

ハンカチの香りでわかるの?!と少し驚き。前から面識があったということだろうか?

遠くを見ると、道に倒れている草薙嬢が。しかし、鷺島が確認すると、なんと既に彼女は事切れていた。

 

そうこうしているうちに、現場には丞演じる刑事の中津啓二が到着。『中津ケイジケイジとは。』という台詞は、志岐ではなく鷺島のものに。中津は原作よりも強引で、気の強い人な印象を受ける。中津は、以前から面識のある志岐に動機があるのではないかと疑いをかける。

志岐『失礼な、この僕が犯人だとでも言いたいのか?』

中津『まぁ、調べればすぐにわかることですから。』と高圧的な態度をとる中津。

 

気を悪くした志岐が、事件の関係者の人間関係を調べるよう鷺島に命令する。

鷺島『余計なことに首を突っ込みたがるのは志岐さまの悪い癖です。』

志岐『犯人としてこの僕が疑われているんだ、黙ってはいられないだろう?』

そうして屋敷に集められた中津刑事と、関係者と思しき残りの2人、草薙嬢の兄である静馬、草薙嬢の婚約者である相馬京一。

静馬『妹は人から恨みを買うような娘ではありません。賢く、気立ても良く、誰からも愛される素晴らしい娘でした。』

原作の静かでミステリアスな雰囲気とは違い、屋敷の当主らしい凛とした話し方のステ東が演じる静馬。

相馬『彼女は婚約者として完璧な女性でした、僕には勿体ないくらいの人で…』

気弱な青年らしき相馬、なぜか言葉は褒めているのに静馬がそれを物凄く訝しげな顔で見つめている。

 

突然、犯人がわかったと言い出す志岐。大丈夫でしょうか?と返す鷺島に、ミステリをたくさん読んでいて良かった!という。志岐は意外と読書家なのだそう。

志岐『犯人は……中津刑事、あんただ!ミステリーのセオリーなのだよ!もっとも意外な人物が犯人というのはねぇ!』

気分を害し、付き合ってられないと怒って退出する中津。それと同時に、体調がすぐれないからと言って、部屋をそそくさと出ていく相馬。

 

鷺島『志岐様、中津啓二刑事は犯人ではありません。』

なんだと?!と本気で驚く志岐。そりゃそうだろう。この中津啓二刑事という言い回しが少し気に入ってるっぽい鷺島がちょっとお茶目。『お前は犯人がわかっているというのか?』と問う志岐に『さて?』と意味深な返答をする鷺島。

どうやらこの時点で鷺島には心当たりがある模様。この『ありません』とか『さて』の言い方がとても好きだった。応答しながら自然な動作で椅子などを片付けているのも執事らしくて良い。

時を同じくして、志岐と同様に刑事を快く思っていなかったという静馬。志岐の突拍子もない推理が面白かったと言い、意気投合する。

静馬『ひょんな出会いというのは、意外なところに転がっているものですね。そう思いませんか?』

志岐『ああ、そうだな。君とは仲良くやれそうだ。』

 

東(添い寝屋、詩人、記憶喪失。僕らが同じ演劇をやるなんて…。ひょんな出会いは、意外なところに転がっているものだね。)

誉(ひょん?詩興が湧いたよ東さん!表情のぬらりひょん、無表情でイリュージョン!)

密(アリス、芝居に集中して。)

誉(ああ、失礼……。)

エーステにおいては最早お馴染みの、この謎空間における心理描写。しかし、相手と掛け合いをし出すのはどういう原理なんだろう…?芝居に集中してとまで言われてしまうオリジナル台詞に、そんなことある?とちょっと思ってしまった。今更かもしれないが。

仲が良くなった記念に、静馬が本を渡してくれる。その本には栞が挟んであり、『おや、可愛い栞ですね。』となぜか鷺島がサッとそれを抜き取ってしまった。

この後の「♪主人の珍しいご友人~~~~↓」が好き。

 

犯人捜しを続ける志岐の元に、これ以上事件に関わるなという内容の脅迫状が届く。犯人を捕まえようと何やら企む志岐。

鷺島『志岐さまがそのお顔をなさる時は碌なことがございません。』

志岐『なに、少し餌を撒くだけさ。』

少し餌を、のところで毎回椅子をトン!と置くのが好き。悪企みをするいたずらっ子のような顔で何か企んでいる志岐。

 

触れていなかったが、劇中劇では後ろ中央のドアがステンドグラスのようなライトで照らされていて、お屋敷仕様になってるのがとても素敵。

そのドアに浮かび上がるシルエット。相馬が東条家の屋敷に忍び込み、暗闇の中で強襲をかける。しかし、椅子に座っていたのはおとりである鷺島だった。そしてそのまま華麗な身のこなしで、ナイフを持った相馬を返り討ちにする。暗くてはっきり見えたわけではないが、まさか誉のアクションが見られるとは!誉はあまり体力があるイメージはないけど、どんな気持ちで挑戦したんだろう。その稽古風景が見てみたい。丞や秋組と練習したりしたのだろうか?

中津『その身のこなし…お前一体何者だ?』

鷺島『ただの執事、ですよ』

意味ありげな台詞を言いながら、押収したナイフを中津刑事に渡す鷺島。しっかりと普段つけている白手袋の上からさらにハンカチで包んでおり、抜かりがない。鷺島には何やらただならぬ設定が加わっている様子。まあ、良家に仕える使用人で、お坊ちゃんの昔からの付き人的な扱いなら、護身術くらい嗜んでいてもおかしくはないのかも。本当に深い意味はなくただの執事なのかもしれない。

脅迫状は書いたが草薙嬢は殺していない、と弁解する相馬。気の弱い仮面が剥がれ、段々と本性を露わにし始める。

相馬『脅迫状もバレたし東条志岐の襲撃にも失敗した!俺を捕まえたところで大した罪にはなんねぇよなぁ…?』

鷺島『しかし真相を草薙さまに知られるのは困るのでは?』

志岐『どういうことだ?鷺島』

鷺島『ご自分でお話しなさいませ。殺人の疑いも晴れる…』

文字だと伝わらないのが惜しいが、田中君のこの含みのある言い方がものすごく良くて、なんというか、語尾で感情表現するのがとても上手い。いや、厳密に言えば鷺島は’’何を考えているのかわからない’’というのがミソな、相手を煽ったり煙に巻く感じの役なのだが、それがわかりやすくて良い演技だなぁ~と思っていた。毎回聞いても好きな台詞だった。

渋々、自分の罪を告白する相馬。

相馬『他にも女がいたんだよ…!あの女と婚約したのは財産目当てだ…』

志岐『何だと?』

相馬『あんなつまんねぇ女と結婚したいわけねぇだろ?!でも、金には困んねぇからな…けどそれがバレたら、いま草薙家に貰ってる援助もなくなっちまう!あーあー死ぬなら結婚した後にしてくれりゃ良かったのによ~!』

清々しいまでの屑!原作でも好きな箇所だが、荒牧くん演じる紬の演技が素晴らしく突き抜けていて、真っ当な不快感を与えてくれた。

その言葉を聞き、思わず相馬に殴りかかる志岐。

志岐『刑事、僕が今何か?』

中津『……目にゴミが入っていてな。何かあったか?』

舞台オリジナルのくだりだがとても良かった。脅迫罪、家宅侵入罪、その他の余罪を疑われ連行される相馬。

密(紬の演技、憎たらしすぎ。)

誉(ワタシも危うく手をあげる所だったよ!)

この心中台詞が、鷺島としての怒りと誉としての怒りが入り混じった感想なのが面白い。特に、温厚で家柄も良く、暴力とは無縁そうな誉に’’手をあげる’’という発想があるのがなんだか興奮した。

しかし、舞台上で取る行動は、誉のものではなく鷺島の行動として客には捉えられてしまう。心ではそう思っても、主人に従順に仕える執事という立場では、直情的に行動できない。鷺島はそういう意味で、普段から感情をオープンにしすぎるほど表現している誉にとっては、尚のこと心情を掴むのが難しい人物だったのかもしれない。皮肉にも、自分が周りからは’’何を考えているのかわからない’’と思われがちだけど、誉は意図してそうなっているわけではないので…。

紬(あとは頼んだよ、2人とも。)

連行される相馬を演じながらの紬からの主演・準主演へのメッセージ。

 

鷺島・志岐『♪犯人は京一じゃない 犯人は一体誰なんだ』

鷺島『♪ハンカチについていた香り 真実は優しいとは限らない』

志岐『♪真実が知りたい』

鷺島『やれやれ、志岐さまは……』

事件の真相を知りたがる志岐に対し、呆れと、ほんの少しだけ気遣いを滲ませた鷺島の表情。ドアを閉めて出ていく所作が優雅。《真実は優しいとは限らない》という歌詞に、鷺島の表には出さない優しさが垣間見える。

 

場面は騒動が過ぎ去った志岐の屋敷へ。

音楽が止み、時計の秒針の音だけが、静まりかえった部屋の中に響いている。静馬から借りた本を読んでいた志岐に、気の合う友人ができて何よりだと言う鷺島は、なぜか『では、犯人探しはおやめになりますか?』と志岐に問う。

志岐『なぜそうなる?勿論やめない。』

鷺島『…そうですか。』

志岐の半ば意地とも捉えられる決心の強さに、少し残念そうな表情を滲ませ、燕尾服の内ポケットからいつかの栞を取り出した。

鷺島『その本から漂う香り……コリウスの花の香りですね。』

志岐『…コリウス?どこかで……まさか?!』

コリウスの香りがついていたのは、亡くなった草薙嬢が持っていたハンカチと、静馬がくれた本に挟まっていた栞。そして、本の所持者は静馬。ここでやっと、志岐の中に草薙嬢を殺した犯人の実像が浮かび上がる。

鷺島は、その事実をとっくに知っていながらも、せっかくできた友人が殺人犯であるという事実に主人が傷つかないよう、隠しておくという選択肢もできた。しかし、いずれ志岐は真実に辿り着いてしまうだろうということを察し、早めに決着をつけさせたのだろう。

原作では志岐が栞を所持しており、気付くのも志岐だが、ここの改編は、鷺島の主人に対する不器用な気遣いがわかりやすく関係性として見えるのでけっこう好きだ。

あと、志岐が犯人に気づく瞬間の、迷いのある瞳の動きの演技が細かい!気づいてしまったが信じたくないという志岐の気持ちの揺れが伝わってきてとても良かった。まさに冬組の専売特許とされる繊細な芝居がここにも再現されている。

鷺島『だから、犯人探しはおやめになりますかと申したでしょう…!志岐さまは犬よりも頭がお悪い…。コリウス花言葉はご存知で?』

志岐『花言葉に興味などないと言っているだろう!』

取り乱して叫ぶ志岐。急にそんな悠長なことを言い出した鷺島に対して憤っている。

鷺島『コリウス花言葉は…』

 

鷺島・静馬『叶わぬ恋。』

BGMが変わり、鷺島と、舞台に現れた静馬が同時に言葉を発する。

正直、舞台オリジナルで何度も出てくるこのコリウスの’’叶わぬ恋’’というワードが何を指しているのか、最初は全くわからなかった。静馬は、『愛する妹があの男に嫁ぐのが我慢ならなかった!僕がもっと早くあの男の本性に気づいていれば…』と言う。

静馬が花言葉の意味を知っていたことから、実は’’叶わぬ恋’’は静馬の気持ちの方にかかっていて、静馬が所持していた栞についていた香り=静馬の気持ちで、まさか肉親間の恋愛を指しているのか?!とも思ったが、ちょっと捻りすぎなので、順当に考えて、草薙嬢には他に想い人がいたが、何らかの理由により相馬家に嫁がなくてはならなくなったとか、そんなような理由だと思いたい。

……と、これを書くまでそう思っていたが、やはり思い返すと、元々原作からこの話自体が、禁断の恋を匂わせているのではないかと感じ始めた。

血の繋がりがありながらも恋をしてしまった2人。しかし、名家の令嬢ならばいずれは嫁いでいかなければならない。草薙嬢は自分の感情を花言葉としてハンカチの香りに秘め、その婚約を受け入れたが、静馬は相馬の本性に気付いてしまう。そして、決して明るい未来の無い、退廃していくだけの恋とわかっていながら、屈折した愛情を抱えた末、犯行に及んだ。

原作の『主ミス』イベントで手に入る東のNカードの客演スキル名は『兄妹の秘め事』。これを踏まえると、舞台の方が、花言葉などで二人の関係性がより強調されて仄暗さは感じるが、納得はいくような気がする。しかし、脚本の真相は恐らく観客に委ねられている部分が大きいだろう。綴に詳しく聞いてみたい。

静馬『唯一の誤算は君が関わったことだよ。まさか、僕以外に花言葉に興味がある男がいたとは…』

志岐『それは、こいつが…』

鷺島『うちの主人は博識なのです。』

志岐のメンツを立てる鷺島。表に中津刑事を呼んであります、と静馬の出頭を促す。どこか達観したような表情で去っていく静馬を、鷺島が呼び止める。

鷺島『草薙様。ナイフは正面から静かに突き立てられていた。揉み合った形跡もなく。』

静馬『…それが何か?』

鷺島『草薙嬢は…望まぬところへ嫁ぐより、愛する兄に、殺されることを選んだのかもしれませんね。』

静馬『…ありがとう、執事さん』

連行される途中、静馬は妹の幻覚を見る。舞台の上に現れた草薙嬢の幻は、そっと静馬を見つめ、こちらに表情を見せることなく去っていく。しばらく呆然と草薙嬢が消えた虚空を見つめ、立ち尽くす静馬だったが、中津に引きずられるようにその場を後にする。

 

状況が飲み込めず、椅子に座ったまま困惑した様子の志岐。すると、なんと突然鷺島がバックハグ?のような動作で後ろから志岐に覆い被さった。

『だからなんだ?!』と更に混乱する志岐。こっちも混乱した。

鷺島『さすが志岐さまは犬よりも……いえ、なんでもありません』

ここでこの台詞をまた挟んでくるのも最初は意味がわからなかったが、ツイッターで物凄く納得できる解釈を見て、なるほど!と思った。自分で思いついたことではないので、ここには記さないでおく。しかしそれがないと、ずっとこのシーンの意味がわからなくて、ただの鷺島の気遣い?にしてもハグって……と悩み続けていただろうと思う…。

 

ハンカチが飛ばされてきたあの日と同じ、強い風が吹き抜ける。

志岐『…あの日も、風の強い日だったな。』

鷺島『…大丈夫ですか?』(ここから以下は、誉のアドリブという設定。)

志岐『何がだ?』

鷺島『珍しくご傷心なのでは……いえ、差し出がましいことを申し上げるところでした』

志岐『お前が僕を気遣うなんて気味が悪い。一体何を考えている?』

鷺島『…私は思っていたよりも、志岐さまのことが好きなようです

志岐『……全く、変な奴だ』

『お前が僕を気遣うなんて』の部分は、時計が見つかった際の誉と密のやり取りと逆になっている台詞なのが粋だ。

ここで音楽が切り替わり、聴き覚えのあるあの曲のアレンジになりドキドキした。

密(さっきのアドリブいらない)

誉(少しばかり本音を混ぜてもいいかと思ったのだよ!)

密(無駄に台詞が増えた…)

誉(よくわかったのだよ。ワタシは自分で思っていたよりも、密くんのことが好きなのだと!)

密(オレは別に好きじゃない…)

この台詞が、ここに心中台詞としてサラッと入ってくるのが予想外だった…。後述するが、この掛け合いは本来、原作では千秋楽の後になぜあのようなアドリブを入れたのか、と直接話し合うやり取りになっている。

 

鷺島「♪擦り切れてた悲しい愛が」

志岐「♪ああ仕組んだ共犯」

2人「♪今は優しい夢を」

2人が歌い出したのは、原作の『主ミス』のテーマ曲、『esの憂鬱』である。エーステでは、劇中劇の最後に原作のイベント曲を歌うというセオリーがあるが、私はこの曲がとても好きなので、舞台で聴けるのを本当に本当に楽しみにしていた。なんなら田中くんと植田さんの声でイメトレしてたくらい楽しみにしていた。

原曲と同じ複雑な2人のパート分けと、鷺島(誉)の高音ハモリが見事に再現されていて、とても感動した。植田さんの声質はソロの時よりもかなり密に寄っているし、田中くんの歌い方は豊永さんを意識したような抑揚があり、特に《静かに》のビブラートがとても良くて、こんな歌い方できるんだ?!とびっくりした。原曲へのリスペクトと2人のハーモニーが感じられる素晴らしい出来だった。特に千秋楽が一番綺麗にハモっていて、これが聴けて本当に良かった!と心の底から思えた。(とても公演に合った素晴らしい曲なので原曲の視聴動画を貼っておくhttps://www.youtube.com/watch?v=2i2-j9nMvSE&t=313s

最後の《さよなら  あゝ無情》の振り付けが、誉が一番余韻を残している優雅な動きなのも良かった。

 

曲が終わり、終幕。

終わった瞬間、ニコニコしながらみんなより先にお辞儀しちゃう誉。密にトントンと肩を叩かれて、おっとすまないねという表情で、下がって全員で礼。背の高い人がお辞儀をすると、腰の高さがみんなと違うのが好き。センターに立つ誉さんの姿を脳に焼きつけた。

 

▼終演後

舞台から降りて、監督に即ダメ出しを求める紬と丞。密は既に眠たくなっており、誉があちゃ~という顔で肩を抱きながら運搬している。

とにかく、何事も衣装を脱いでからじゃないと瑠璃川くんに怒られますよ!と支配人に言われ、ゾロゾロと賑やかに袖へ捌けていく。

東「ボクもカツラ外さないと」(この演目の際、東は短髪)

誉「短い髪も似合っているよ」

東「ふふ、ありがとう。」

立ち止まり、意味ありげに監督へ話しかける東。

東「…願掛けで伸ばしてたんだ。いつか話す時が来たら、教えてあげる」

ここで、エーステとしての一幕は終了。

 

原作ならば、ここで上記の’’本音を混ぜたアドリブ’’についてのやり取りがある。

誉「いいじゃないか。普段のワタシたちのやり取りなら、少しばかり本音を混ぜてもいいかと思ったのだよ。」

監督「本音?」

誉「今回の一件で考えたのだ。なぜ面倒なはずの密くんの世話をワタシがするのか……。甘ったるく、うっかりすると手がベタつくマシュマロをかいがいしく運んでやるのか……。

そしてさっき行きついたのだ!きっとワタシは自分で思っていたよりも密くんのことが好きなのだと!」

密「…。」

この「今回の一件で考えた」というのは、’’相手の身になって考える’’ということを鷺島に当てはめ、「鷺島がどうして志岐に仕えているのかわからない」 ということに対して、誉なりの結論を出したということだろう。

このやり取りが無く、劇中でいきなり「密くんのことが好き」と言い出すので、誉が唐突に密への好意を吐露したように見えてしまったのが惜しいなと思った。

 

更にこのあとエピローグでは千秋楽の描写があり、誉はみんなとそれぞれ握手をし、「密くんには特別にハグだ!」と言ってハグしようとする(が、躱される)といったシーンがある。これを劇中のバックハグで回収しているのかな?と見ていた当時は思っていた。

また、千秋楽のあとに冬組全員で打ち上げに出かけるのだが、舞台ではそのエピソードも無く、ここで初めて誉がお酒を飲むと泣き上戸になることが判明するという話などもカット。エーステは頑なに冬組にお酒を飲ませないが、何か意図があるのか、単に尺の関係で不必要と判断されているのか…。

そして、飲み会はまだ良いとして、最後にやってほしかった大事なシーンがあった。肝心なのは、その打ち上げ帰り道でのシーンである。


いつになく神妙な雰囲気で、話したいことがあると言い、誉が道の真ん中で、みんなに心の内を打ち明ける場面がある。

ワタシは人の感情がわからない。昔、恋人を傷つけてから、ずっとそのことを気に病んでいた。

だが、今回の公演で鷺島を演じて、ワタシはそんな自分でもいいと思えるようになったのだ。

今でも人の気持ちはわからない。だが、人の身になって考えることはできるそれでいいのだと。

そう思えたことで、ワタシは本当に心が楽になったのだ。

これも密くんと、監督くん、そして冬組のみんなのおかげだ。ありがとう。

この言葉が、今回の公演では絶対にあってほしかった。

なぜそう思うのかというと、一幕全体の流れを見ると、話の主軸が’’失くした時計を見つけること’’に重きを置いていて、本来の’’誉が人の感情を理解できるきっかけを掴み、自分らしさについて気付く’’ことが、薄まっていたように感じるのだ。

確かに、要所要所は抑えているが、シーンの切り貼りで意味が変わってしまったり、説明が足りなかったりしている部分が多いと思う。肝心のソロ曲は探偵ごっこで、心情描写には使われなかった。

そして’’相手の身になって考える’’という、誉にとって今後の指針となるキーワード自体は回収され、自分らしい役作りが出来るようになって良かったねというシーンはあるが、’’誉が自分のことを認められるようになった’’という描写はない。

コンプレックスはそのままでも、別の方法で人とわかりあうことができる、それで良いのだと思えた誉。その姿を、今回の公演で描ききってほしかった。誉さんにとっての希望や、救いのあるシーンが少しでも見られれば良かったな……と、彼のファンである私にはそう映ってしまう。

もちろん、そのせいで公演の全てが悪いと言いたいわけではない。ただ、少しずつ気になる箇所が、積もり積もってしまったなという印象のある一幕だった。

 

二幕感想へ続く。

 

【観劇】『MANKAI STAGE「A3!」〜WINTER 2020.08〜』レポ・感想【一幕前半】

今更ながら、エーステ冬組単独公演のレポ・感想を書いておく。

本来ならば5月の東京公演を皮切りに、兵庫、香川、凱旋公演と続くはずだった。しかし、新型コロナウイルスの影響で、一度は全公演中止となった。しかし、その後8月に上演が決定。東京のみで全11公演、その全てを配信に対応するという形で上演された冬単は、この状況で現地に行くことを諦めた人でも、チケットが取れなくても、たくさんの公演を映像で観ることができ、幻とならずに多くの人の心に残る公演となったことだろう。

かくいう私もその一人であり、本来ならば元の日程では1回だけ観劇できるはずであったが、延期後の日程では断念せざるを得なかった。しかし、配信があることにより約10公演(仕事の後に途中から見たりしたため"約")を観ることができた。それは本当にありがたいことではあるが、私はエーステの中でも特に今回の冬単を非常に楽しみにしていたので、やはり生で観られなかったという悔しさは未だに言葉にできないものがある。

ただ、色々な意味で思うところがたくさんあった公演であることは間違いないので、その感想をしっかり残しておきたいと思う。

あくまでも、私個人が感じたことを正直に色々と書いているもので、特に一幕と、有栖川誉さんに関しての言及が非常に多い感想となっています。

※原作(アプリ)のストーリーの内容、舞台のネタバレを多分に含みます。ご注意ください。

 

▼プロローグ〜♪Brand new world

紬と丞が深刻な顔で言い合いをし、何やら不穏な空気から始まる冒頭。秋冬公演の冬組を思い起こさせる。

丞?「何とか言えよ…ひろゆき!」

しかし、それは2人による街中でのエチュードだった、というオチ。

東「みんなで飲みに行く予定だったんだけど2人がストリートアクト始めちゃったんだ。」

既になんだか仲が良さそうな冬組。秋冬公演でのお酒を交えた打ち上げシーンはカットされたため、今回はお酒エピソードがあるのかもしれない。「ごはんは?」とマシュマロ以外の物を欲している密に驚き。ステ密は他の食べ物にも興味を持つのだろうか?

せっかくなら監督に見ててもらおうよ、と再びストリートACTを始める紬と丞。こうなっては仕方がないね、と付き合う冬組。

紬「俺たちの芝居、ちゃんと見ててくださいね、監督!」

 

ここで始まる『Brand new world』は、各組の単独公演で同じ曲のアレンジ違いが使われており、冬組はキラキラと雪が輝くような、しっとりめのアレンジになっている。

各組で歌詞が違う部分は特に《星の降りそうな夜 相合い傘をしよう》で傘を描くような振り付けをするところが好き。

《大人同士ひねくれた距離 飲みながら語り明かそう》と歌う通り、冬組は唯一メンバー全員が成人している組なので、飲み会は冬組の特権。秋冬公演ではやらなかったのでそこにも期待したい。

《打ち明ける心はblooming 大切な人》は、正に冬組の関係性を表していて、メンバーそれぞれのエピソードの肝となっている部分。

一番が終わると、今回のサポートメンバーのパートになる。春組からはシトロン、夏組からは一成、秋組からは、そして支配人。他の組と違い、水野や円といった、今回のメインとなるキャラクター達に密接に絡むゲストがまだ出てこないのが、冬組の特徴とも言える。

《トラブルさえ味方に変えてく楽しさをBrand new world》は、中止になる前からこの歌詞だったのだろうか。この状況下において痛いほど実感する歌詞。

最後、アウトロに合わせてみんなが捌けていき、紬と丞が扉を閉めて出ていくところがなんだかとっても好きで、毎回ウキウキしていた。中央にある扉はエーステお決まりのセットなので、久しぶりに観られて嬉しかった。

今回の冬単では、演者が全員マウスガードをつけていたのだけど、色々なところで使われている物とは違い、エーステのスタッフにより工夫して作られたオリジナルだそうだ。他の物より本当にクリアに顔が見えて、つけているのが気にならないくらいの存在感だったのですごいなと思った。

 

▼朝の寮内〜誉の荷物整理

朝早く、支配人が眠たそうに歩いてきて監督と話し出す。春、夏、秋と、それぞれの組の公演を終えてここまできたことに感慨深くなっているようだ。

支「冬が終わり、また春が来る。そうやって、ずっと僕たちと一緒に……!」

しんみりと良いことを言おうとしていると、ピンポーン、と玄関の呼び鈴が鳴る。

支「まったく、こんな朝早くに誰なんですかね?」

 

玄関に向かう支配人と入れ替わりで、可愛らしい音楽と共に、一幕の主役である誉が出てくる。

誉「おはようバード、グッドモーニング小鳥さん、サンサンフランシスコでカーニバル!」

誉のポエムにチュンチュンと頷いているかのような小鳥。会話しているのかな?でっかいディ○ニープリンセスみたいだ…。

「♪美しい朝日のサプライズ さえずるバード達のシンフォニー」

爽やかな音楽に合わせて歌う楽しそうな誉。エーステ名物(?)雑な食べ物の扱いはここでも健在で、ベーコンエッグを手で直持ちしていて笑ってしまった。

そのままインストに合わせて、支配人が荷物を抱えて入ってくる。どうやら、誉の実家から送られてきたものが大量にあるらしい。

みんなで手分けして運んでくれたまえ!と提案する誉と、何で俺達が…と渋る丞。

誉「ワタシ1人じゃとても持ちきれないからね?」

そう言って座ったまま、どうしてワタシが持つんだい?とでも言いたげな誉。少しくらい持つのかと思ってたら全然持つ気がなくて笑った。お坊ちゃんらしさがよく出ている。

 

 ♪理解不能

「♪誉の思考は理解不能 天才 変人 奇想天外 唯一無二」

「♪いつまで経っても理解不能 天才?天然?朝からハイテンション」

誉以外の四人が歌い、それに合わせて愉快なステップで楽しそうに踊る。’’他人が誰かを評価している’’が好きなので、最初は可愛いと思ったけど、ここまでメンバーに’’理解不能’’と連呼させるのは少し違和感がある気もする。

まあ、この時点で冬組はまだお互いを完全に理解できているわけではないし、初見のためにここで誉が何を考えているのかわからないことを印象付ける必要があったのかもしれない。

 

運ばれてきた段ボールの中からは、色々な物が出てくる。民族風の置物や瓢箪のようなもの、新体操のリボン?など、いつ何に使ったのかよくわからないものがたくさん。日替わりでタスクに渡すものは、原作にも出てきた小石、もしくはオモチャのアヒルだった。


曲が終わり、東が小箱に入った懐中時計を見つける。

この時計は、何度時間を合わせても時間が狂ってしまう、だけどこれはこのままでいいのだ、という誉。少し何か物思いに耽っている様子だったが、なんでもない、朝練に間に合わないよ!と荷物を運ぶことように急かす。「マシュマロあげないよ!」と密も動かす。手馴れている。

 

▼台本完成〜読み合わせ稽古

場面転換後、綴が布団と枕と完成した台本を持って出てきて、倒れる。臣がそれを見つけ、心配して綴に近寄ろうとすると、

一「触らないで〜!指紋つくから〜!」

シ「離れるヨ!離れるヨ!!」

と、何やら手袋とメガネを装着して一成とシトロンが登場。「ソーシャルディスターンス♪」と言いながら時事ネタも交えコミカルなやりとりを始める二人。

次の冬組公演がミステリーなので、探偵をやりたくなったという二人。探偵というより警察みたい。そしてなぜかシトロンに事情聴取をされる臣。

シ「名前は?」

臣「? 伏見臣です。」

シ「血液型は?」

臣「O型。」

シ「体格は?」

臣「……え?」

シ「体格だヨ!体格!おー?おお?」

臣「……大型!」

シ「小型には見えないネ!」

途中で気づいてニッコリする臣くんが優しくて可愛い。公演の後半ではジェスチャーゲームで「クワガタだヨ!」というのも追加。

 

なんやかんやで綴の懐から台本を見つける探偵二人。

シ「死者からのダイイングメッセージネ!」

「台本っす!」と起きる綴。ドラマの殺人現場でよく見る紐で囲われていたり、顔に番号の札が乗せられていたりして、あーもう!と苛立っている。

綴「早くそれを監督に届けて!」

一「え?鑑識に届けて?」

綴「監督っす…」

まだ眠気が取れず立ったまま寝てしまう綴を臣くんがキャッチ。賑やかな探偵が去ったあと、臣くんが「おやすみ。」と言いながら抱えて部屋まで運んでいった。お父さんだ…。

 

▼稽古初日

配役決めのシーンはカットで、読み合わせからスタート。

誉「この度主演に抜!擢!された!有栖川誉です。」

丞「抜擢って…自分で立候補したんだろ」相変わらず手厳しい丞。

座長となる有栖川さんから何かありますか?と支配人。

誉「主演として、これだけは伝えたい!……謎に満ちたミステリー。揺れ動くオーソリティー。ロマンスのパフュームに……ダイビング!」

公演の途中からダイビングがセルフエコーするパターンに。

ご満悦な表情で微笑んで一礼し、無言で席に戻る誉。

丞「なんだったんだ今の?!」

 

早速台本の読み合わせに取り掛かる5人。ト書きは支配人が読んでくれる。エーステでは監督が口を挟まない分、支配人がとても働き者に見える。

ここで、皆が読む台詞から、既に原作の公演の内容から大きく改変されているらしいことが、ストーリーを知っている観客にはわかる。

読み合わせの際に、積極的にアドリブを挟んでいくのが丞らしくて良かった。旗揚げ公演とは比べものにならないくらい稽古はスムーズに行われている。

読み合わせが終わり、監督が話せない(観客=監督なので)代わりに、紬が色々とアドバイスしてくれる。一方、アドリブを挟みすぎだと密から文句を言われる丞。

丞「悪い、つい色々試したくなって」

こういう丞の演劇バカな部分が見えるところはとても良い。無意識かもしれないが、丞なりにチームを引っ張って行こうという自然な計らいにも思える。

 

しかし、誉の演技に違和感を覚えている他メンバー達。異様にテンションが高く、オーバーリアクションといった感じだ。

有栖川家には執事や使用人がたくさんいるはずだが、それらを参考にしようとは考えたりしなかったのだろうか?とも思ったが、この時点では鷹尾は出てきていないので、変わり者の執事がたくさんいるという憶測の範囲内に収めることもできるかなと思った。 

誉「何度脚本を読んでも、鷺島がどうして志岐に仕えているのか、何を考えているのかわからないのだ。」

秋冬公演で、他人の心情を理解することができない、’’壊れたサイボーグ’’だと言われたことがあると監督に吐露した誉。今回も、鷺島を演じるにあたり、それがネックになっているようだ。

まだ時間はあるのでゆっくり詰めていきましょうという紬。誉は一人、物憂げな表情で稽古場に残る。

 

▼幼少期の誉とおばあさま

ここでシーンは、誉の幼少期の回想へと移り変わる。

幼誉「おばあさま、お茶の支度が…あっ!」

姿形はそのままだが、声色と仕草で幼少期の誉を演じる田中くん。

つまづいて、テーブルの上にある懐中時計を引っ掛けて落としてしまう。

幼誉「どうしよう、壊れてしまいました…」

困った顔で泣きそうな声を出す誉が、本当に子どもに見えてきて切ない。

スクリーンにシルエットは映っているが、監督と同じホワワン…という効果音スタイルで返事をするおばあさま。ここは原作をプレイしていないとちょっと補完が難しい気がするので、台詞があっても良かったのでは…?と感じた。

幼誉「でもこの時計、時間が狂っています」

返答するおばあさま。

幼誉「では、新しいものに取り替えては?壊れた時計など意味がありません。」

誉の、いわゆる『合理的な思考』がこの頃から健在であることがわかる。その言葉に思うところがあったのか、そっぽを向き、何か言うおばあさま。

幼誉「ワタシがこの時計と同じ?…それはどういう意味ですか?」

何か言い、去ろうとするおばあさま。

幼誉「必要……ない……?」

 

本当にホワワンしか情報が無いので、ここでわかるのは『以前から時間が狂っている時計がある。誉はこの壊れた時計と同じだ、そしてその時計は必要ないものである』ということになる。

ひどいことを言われているようだが、全容を知っていれば後からわかる仕掛けになってはいる。しかしこの演出では、これは誉も勘違いしても仕方ないな…と思えるほど情報が少ない。

 

誉が「自分は必要ないものなのだ」と勘違いしたキーポイントとなる、原作のおばあさまの台詞を補完するとこうなる。

幼誉「どうしよう、壊れてしまいました…」

(祖母:お見せなさい。問題ありません。傷もついていないわ。)

幼誉「でもこの時計、時間が狂っています」

(祖母:その時計はいつも栄さん(祖父)が直してくれたのです。いなくなってしまったからもう直せません。)

幼誉「では、新しいのに取り替えては?壊れた時計など、意味がありません。」

(祖母:……。あなたもその時計と同じね。)

幼誉「ワタシがこの時計と同じ?…それはどういう意味ですか?」

(祖母:ーー。もう私には必要ありません。あなたに差し上げます。)

幼誉「必要……ない……?」

この"もう私には"必要ない壊れた時計を誉にあげた、という部分が非常に鍵となっているところだと思っていたので、そこが描写されないのは大変勿体なく感じる。

 

回想から現在の誉へ移り変わる。

「ワタシはこの時計と同じ、壊れた機械仕掛けの時計……壊れた……サイボーグ……。」

「こんなワタシに役の心情を理解することなど…」

うーーん。回想をホワワンにするなら、いくらなんでも誉のモノローグを端折りすぎでは…?と感じてしまった。ここで細かく心情を説明するのかと思ったのだが。なんならソロ曲を入れるならここだろうと思っていたけど、それも違った。

 

今回の一幕にあたる原作のストーリーでは、’’誉がどのようにして役の心情を、そして他人の心を理解するのか’’ということがフォーカスされている。

原作のモノローグでは、誉が勘違いしているポイントと、なぜ誉が人の心情を理解できずに苦しんでいるのかが細かく描写される。

(おばあさまはきっと、ワタシが壊れた機械仕掛けの時計と同じと言いたかったのだろう)

(彼女に言われた壊れたサイボーグという言葉と同じ。人の気持ちがわからない機械のようだと……)

(いつも人はワタシから離れていってしまう。おばあさまに捨てられたこの時計と同じように)

(人の気持ちがわからず傷つけてしまうワタシはやはり、生まれた時から欠陥品なのだ)

誉は「壊れた時計など意味がない、必要がない」と考えていて、それと同じと言われたことで、自分が必要のないものだと言われたと思ってしまっている。

そして、誉は人の気持ちを理解できない自分を『欠陥品』と思い込んでいることがここでわかる。それには、『いつも人が自分から離れていってしまう』という実体験が伴っている。

誉の周りから人が離れてしまうのは、相手の理解不足もあったかもしれないのに、"自分が相手の感情がわからず傷つけてしまう欠陥品だから" としか思っていることが、舞台ではわからない。これを知っていると、冒頭の『理解不能』もかなり切なくなってしまった。

 

おばあさまに『壊れた機械仕掛けの時計と同じ』と言われたことがトリガーになり、元恋人に『あなたは壊れたサイボーグ』と言われ、決定的なトラウマとなる。この流れと、誉の気持ちの背景をきちんと説明してほしかったなと私は思った。

『A3!』の世界で主演をやるということは、そのストーリー上の主人公と同義と言ってもいい。一幕ではそれが誉にあたるので、とても楽しみにしていたシーンでもあったのだが、そもそも『元恋人に壊れたサイボーグと言われた』というエピソードのことは、秋冬公演でも一切言及されておらず、今のところ無かった存在になっていることに後から気づいた。細かい省略がこういうところに影響が出るのか…と思った。

 

▼中庭で探偵ごっこ

一人悩みながら歩く誉に、突如スケボーに乗ったシトロンに追いかけられている綴が突撃する。転倒し、危ないではないか!と少し怒る誉。

ここで、客席からは懐中時計を落としていることがわかるが、誉は気づいていない。

次の冬組公演でミステリーをやるので、探偵ごっこがしたくなったと言うシトロンと一成。

綴「なんで俺が犯人役なんですか!」

シ「とぼけるなヨ!今日は誰のデニム盗んだネ?!」

綴「盗んでないっすよ!」

相変わらずめちゃくちゃにされている綴。エーステの綴のいじられ方は、みんなに愛されているのがとてもよくわかるが、ツッコミが本当に大変そう。

「なにしてるの?」と突然階段の隙間から出てくる密。それにさらに驚く誉。何してるの?と聞かれて「昼寝。」と答える相変わらずの密。

探偵役を楽しみにしていると言われた誉だが、「うむ、ありがとう…」と言葉少なに去ってしまう。

綴「なんか…有栖川さん、元気ないっすね…」

一「そう?いつも通りじゃね?」

まだ探偵ごっこを続けるシトロン。

「探偵といえばメガネに、スケボーに乗ってるヨ〜!!」とスケボーで階段の方に突撃する。が、密が不自然な動きで走ってきて衝突しかける。

「ごめん、転んだ…」

運動神経の良い密らしくない動きに、不思議に思う3人。

 

▼立ち稽古

後日、立ち稽古のシーン。

なんだかぼんやりしている様子の密。

『志岐さま。志岐さま、庭のシクラメンが綺麗に咲いております。シクラメン花言葉はご存知で。』

なんと、誉の演技がまるで感情の無いロボットのように変化している。いくらなんでもそんな極端な…と思ったが、これが誉なりの感情の抑え方なのかと思うと本当に不器用な人なんだな…と感じる。

ひとまず、それには触れずに動きをつけた稽古がすすんでいくが、執事役の誉が主人役である密の後ろに立つと、なぜか密が逃げるように動いてしまう。

それを繰り返し、ドタバタと追いかけっこのようになってしまう二人。

丞「待て待て!一体どういう演技プランなんだ?!草薙嬢はどこにいる設定なんだ?!」

これを演技プランと捉えてくれる丞は優しいと思う。

 

どうも、密は誉が後ろに立つと動きがおかしくなってしまうようだ。

誉「ワタシが近くにいると、何か困ることでもあるのかね?」

密「そんなことない…!」

何かを弁解するような口調の密だが、みんなその理由はわからない。

みんな違和感を覚えながらも解決策が見つからないので、この件は一旦そのままに。

 

紬「うーん、執事っぽさは増したとは思いますが、少し無機質というか」

誉「ふむ、無機質すぎてもダメか…。」

試行錯誤している様子の誉。まだ感情表現のすり合わせができていないようだ。

そうこうしていると、誉が急にあたふたとその場で何かを探し出す。

誉「ム…?ムム?!はっ!?ムム!!はっ!!」

丞「うるさい!!どうしたんだ?!」

誉「無い!!」

丞「え?」

誉「クリスティーヌが無い!!」

 

なんと、ポケットに入れていたはずの懐中時計(クリスティーヌという名前をつけている)を無くしてしまったという誉。

「どこかに落としたとか?」と言われた後、「ひえ…!」みたいな「ふぇ…」みたいな声を出すのだが、一瞬子どもに戻ってしまったようなリアクションが非常に良かった。胸が締め付けられる。

そして、とうとう「誰かに盗まれたのだよ!!」と突拍子もない結論に辿り着く誉。

そんなわけない、と制するみんなだが、それを聞かずにあっという間に自分の世界に入ってしまう。

「これは事件だ。ミステリーだ!!」

 

♪名探偵!有栖川誉

誉「♪ミミミミ ミステリ謎が謎を呼ぶ サササササスペンス 消えた時計」

イントロの時点でおや?と思ったのだが、これは秋冬公演のソロ曲『まごころルーペ』と同じメロディの、歌詞変えアレンジ。

同じ曲か……。そしてここでソロを挟んでくるのか。楽しそうな誉を見ているとほっこりするが、正直たっぷり時間を使ってほしい場面はここでは無かったな、と思ってしまう。

「サスペンス」でフェンシングのような振り付けをするのは可愛い。『刺す』とかかっている感じ。背景には、名探偵コ〇ンや金田〇少年の事件簿、ガリ〇オなどのパロディをふんだんに盛り込んだ映像が使われている。スレスレ。

 

曲と共に場面が進行していく。

今回疑われているのは、支配人、綴、一成、シトロンの4人。

誉「支配人!キミはお金に困っているね!」

原作と同じ理由で怪しまれる支配人。迷惑かけて悪いな、というようなジェスチャーをする丞。

誉「綴くんのような地味な人間が犯人というのはミステリーの鉄則だ!」

ただの悪口。推理に飽きた丞がストレッチを始める。

誉「一成くん!キミは手先が器用だ。怪盗の素質がある!」

一「やべ〜…褒められちった☆」

とっても優しくてポジティブな一成のリアクションに救われた気持ちになる。

誉「そしてシトロンくん!キミは存在自体が……怪しすぎる!」

シ「ヒドイ!ヒドイヨ!ぜんざい(冤罪)だヨ〜〜!!」

困り顔というより、ちょっと楽しそうなシトロン。

疑われるメンツは、支配人以外は原作と異なるが、ステのサポートメンバー達は、みんな疑いをかけられてもどちらかというと許してくれそうな人達で良かったなと私は思った。

そもそも’’自分の物がなくなったので、人に盗みの疑いをかける’’という発想自体が、根本的に失礼な行為である。それをやってしまっている誉というのが、表情や動きがよく見えるステでは特に生々しく、まごころルーペの際の一悶着再来とまでは言わないが、いたたまれない気持ちになった。団員によっては、疑われた時点で気分を害して怒る人もいただろう。人選に救われたなと思った。

そして、曲中に支配人が「そもそもその時計、壊れてたんですよね?そんなもの欲しがる人なんていないんじゃ?」と指摘する。

うむ、と少し戸惑った誉だがそのまま曲は続き、「どうやら犯人は見つからないようです、有栖川誉でした〜…」と若干古畑任三郎風味な言い方で締める。

ここも、’’壊れたものなどいらない’’という言葉は、本来誉にとってはかなりの地雷なはずなので、もう少しリアクション重視で進めてほしかった。誉にとって、その時計がどういう意味を持つのかという重要性が少し見えにくく感じてしまう。

突然、時計は諦めると言い出した誉に驚く一同。

誉「すまないね、密くんの探偵役を見ていたら、ワタシもやってみたくなったのだ。それに、あれは元々不要なものだから…」

そう言って、笑ってはいるが少し元気無く去っていく誉。

その様子を見た紬が時計を探すと言い、みんなも寮内を探してくれることに。誉はああ言ったが、本当は大切にしているものなのだと気づいてくれたのかもしれない。

そしてその場にいた密が、何か思うところがあるような素振りでこちらを向く。

密「ねえ、監督…!」と問いかけ、暗転。

 

▼談話室で写真整理

場面が変わり、紬が談話室にやって来ると、臣がパソコンを開いて写真の整理をしていた。完全舞台オリジナルのシーン。

時計のことで元気がないのかもしれないと、無くした時計と誉のことを心配してくれる臣くん。

紬「あ、でも大丈夫!本番は必ず成功させるから!」

臣「あはは…何も心配してませんよ。冬組は、皆さん大人ですから。」

紬「大人か…。だからこそ、難しいんだけどね…」

バツが悪そうにつぶやく紬。

ふとパソコンの画面を見ると、そこには各組で撮った写真が映し出されていたようだ。

紬「こうして見ると、それぞれの組で全く色が違うね。春組のあたたかい色、夏組のにぎやかな色、秋組の熱い色。冬組の距離感って……」

少し思うところがあるような様子の紬。

’’冬組の距離’’というテーマは、原作では特に第3回公演の『真夜中の住人』のストーリーにおいて大きく扱われているが、今回の冬単ではこの’’距離感’’というテーマが、一幕二幕全体を通して重要なポイントとされている。

臣と別れ、部屋に戻ろうとする紬。すると、目の前に密が現れる。どうしたの?と聞くと、なんでもない、と足早に去る姿を見て不思議そうに首を傾げる。

 

▼本番14日前、稽古場〜誉の悩み

密が変な動きをするのが相変わらず直らない。どうもそれは、誉が後ろに立つと起きるようだ。

誉「何か隠し事でもあるのかい?」

丞「そんなわけないだろ!!」

なぜか急に大声を出し、不自然に密を庇うような丞。原作には無いシーンだが、ここで何かしらの事情を丞が知っているのだろうな、ということが窺える。

誉「どうしたのかね急に…まさか!2人のどちらかが、懐中時計を盗んだとか…!?」

東「ダメだよ誉、根拠もないのに相手を疑うとどうなるか、旗揚げ公演でわかったでしょ?」

旗揚げ公演で根拠も無いのに人を疑い始めたのは、どちらかというと別の二人なのだけど…。なんだかトゲのある言い回し。でも確かに再び疑い始めるのもどうかと思う。無駄にギスギスを思い起こさせるオリジナルシーンだな…。

とりあえず、「動きに関しては慣れるしかないのかな」ということに。原作の「反射的に動きそうになる」という説明は無い。

 

そして、未だに演技がしっくり来ない誉。

紬「うーん、まだ、感情と動きが合っていないというか…」

丞「難しく考えなくても、感情が理解できれば、自然とちょうどいい表現になるはずだ。」

丞のアドバイスにもいまいちピンと来ておらず、不安げな様子。人がたやすくできていることが、やはり自分には出来ないのだと思い込んでしまっているように見える。

 

稽古終了後、「ちょっと、アドバイスが欲しいのだが」と紬を呼び止める誉。紬は快くいいですよ、と返す。ここで誉は、以前書いたという小説の話を持ち出す。小説も書いてたんですか?と驚く紬。誉は、それに対し少し言葉を濁しつつ、エピソードを話し出す。

誉「…その小説に、人の感情を読み取ることがひどく下手な男が出てきてね。その男は、恋人が最も悲しい時に、詩を読んだ。男にとっては、恋人を慰めるつもりだった。しかし、その行為は彼女の傷をえぐる行為でしかなかった。そうして恋人は、男を軽蔑し、男のもとを去ってしまった…。」

紬「……切ないお話ですね。」

もちろん、この話は小説などではなく事実だが、誉は自分の事としては話そうとしない。紬は、その小説の男とみんな同じ、自分自身も、幼馴染みである丞の考えていることが全てわかるわけではないし、しょっちゅう怒らせていると言う。

「キミと丞くんですらかい?」と驚く誉。

誉にとって、相手のことを理解できる=深く繋がっているというイメージなのだろう。相手のことをきちんと理解できているか、それは誉に限らず、良好な人間関係を営む上で大切なことである。しかし、誰でも最初からそれができるわけではないし、どんなに仲が良くても、わからないことだってある。間違うことだってある。

しかし誉はその間違いを、自分が誰かを傷つけてしまったという経験として、ずっと抱えて生きてきてしまった。そしてそれが誉の場合、すれ違う回数が人よりも少しだけ多かったのだろうな、と思う。だから、「誰でも同じ」と言われても、単純には理解できなかったのだろう。

 

役者としての経験から、紬はアドバイスを続ける。

紬「鷺島が何を考えているかじゃなくて、誉さんなら何を考えるのか、何を感じるのか。誉さんなりの解釈でいいんですよ。誉さんが鷺島なんですから。」

誉「ワタシが、鷺島……。」

このやり取りを見るに、どうやら誉は「演じる役=一人の独立した人間」だと捉えている節が見受けられる。演じる自分が鷺島になるのだ、という理解ではなく、何回も繰り返している「鷺島がどう考えているのかを演じる」と捉えてしまっているために、一人の人間を感情ごと理解しなければいけない、そしてそれは自分にとって困難なことだと悩んでいたのだと思う。役を、キャラクターを、考えや感情を持つ存在として捉えている誉は、どんな相手をも尊重できるとても優しい人だと思う。

 

戸惑う誉を置いてどこかへ去る紬。戻ってきたその手には、小さな鉢植えがあった。

紬「ヒペリカムです。よかったらお供にどうぞ。……誉さん。今度の舞台、最高の公演にしましょうね!」

誉「ありがとう…。」

秋冬公演のまごころルーペの時も思ったが、私はステ紬の誉に対する接し方が好きだ。多分それは、誉のことをわからないもの扱いせずに、一歩踏み込んできてくれているような優しさを感じるからだと、今回のこのやりとりを見て思った。

 

誉「ワタシなりの解釈、か…。」

可愛らしい鉢植えを持って、神妙な顔でつぶやく誉。

この一連の田中くんの演技が素晴らしく、胸が締め付けられる想いだった。私は田中くんが演じる誉の、クルクルと変わっていく楽しそうな表情が好きなのだが、それとは裏腹に、今回は思いつめるシーンが多いため、そのギャップがよく現れていた。

 

紬がくれたこの花は、この公演以降も誉の心にずっと残っていたようで、原作の2年目のバースデーコメントでは、自ら紬にヒペリカムを要求していた。

ヒペリカム花言葉は、『悲しみは続かない』

ずっと抱えていた、大切な人を傷つけてしまった悲しみや後悔。他人に共感できないという苦悩。誉の心にある曇りが完全に晴れることを願うばかりだ。

 

部屋に戻った紬は、誉の作品の中に小説はあったか丞に確認するが、「いや、全部詩集だって言ってたぞ」と答えられ、「だよね。…ふふ、誉さんも不器用だなぁ。」と真相に気づき微笑む。(原作だと「ざっと目を通したが、全部詩集だったぞ」という台詞で、荷解きの際に渡された詩集全巻に律儀に目を通した丞、というほっこりする姿が見られる場面なのだがマイナーチェンジ。細かい部分だがちょっぴり残念。)

 

小説の主人公である"男"が、誉自身であることに薄々気づいていた紬。ということは、エーステ世界では誉にとってかなり重要なカミングアウトである元恋人との一悶着を間接的にでも知っているのは、実質紬だけということになる。

 

ふと目をやると、さっきから丞が机の上で何か作業をやっているが、慌てて隠そうとする。不穏なBGMとともに暗転。ドライバーなどを持っていたように見えるが果たして。

 

▼最終稽古の朝〜時計の在りか

誉「ワタシなりの解釈、か…。」

うむ!と何かを決意したかのように奮い立たせ、支配人や東に声をかける。

誉「始まりのモーニング、さわやかサワーセレナーデ、すこやかセボンシンフォニー!」

支「有栖川さん、すっかりいつもの調子が戻ったみたいですね!」

東「どうかな?ボクには無理をしてるように見えるけど…。」

冒頭で理解不能と歌っていたとは思えない理解っぷり。やはりああいう歌詞を歌わせるにしても、冬組じゃなくても良かったのではないかと思ってしまう。

 

みんなが集まると、紬は誉に話したいことがあると伝える。

丞「有栖川……これ。」

そう言って丞が渡したのは、修理した誉の懐中時計だった。

誉「これは!ワタシの懐中時計!キミが犯人だったのか!」

丞「あのなぁ…」

呆れて怒り出しそうな丞を制し、密がカミングアウトする。

密「ちがう。…持ってたのは、オレだよ。」

 

▼密の回想〜時計の行方

カチ、カチ、と逆戻りする針の映像と共に時間は過去へ遡る。

今回のこの時計の演出は、鍵となるモチーフを上手く使っているなと思った。

 

まず、場面はシトロン達が探偵ごっこをしていた時へ。

誉がシトロンとぶつかった時に時計を落としたこと、そしてそれに気づいていないのを実は見ていた密。

密「あれ?この時計、壊れてる。前から壊れてるって言ってたっけ……」

そのまま綴が時計を踏みそうになり、咄嗟に俊敏な動きで時計を拾い、「ごめん、転んだ」と転んだフリをしてごまかす。

密「後で渡そう…」

そうこうしているうちに稽古が始まり、時計がなくなった!と騒いでいる場面へ。

密「時計、返すの忘れてた。でも、いま返したら、オレが盗んだって思われる…。時計を壊したのも、オレだって思われるかも。」

この舞台版のモノローグはあまり密らしくないなぁと思った。密だったらあまりそういうことは気にせずに、何食わぬ顔で渡しそうなものだが。原作では、寝ていたので失くしたと騒いでいる場面にはいなかったことになっていた。

誉「あれはもともと、不要なものだから…。」

誉の言葉に、「…不要なもの?」と疑問に思う密。その意味を確かめるため、監督の部屋へ訪れる。

 

密は、あの時計は誉にとって必要なのか、要らないのか、本当は必要なものなら、どうして要らないと言うのかを監督に問う。監督は、なぜそう言うのかはわからないけど、本当に要らないならすぐ捨ててしまうと思う、時計を見つけてあげたいと言う。「なんで探すの?アリスの気持ちはわからないんでしょ?」という密に、監督は相手の気持ちが正確に理解できなくても、誉さんの身になって考えることはできる(原作の台詞より)」と言う。

密「相手の気持ちがわからなくても、相手のことを思いやることはできる…?」

密が反芻したこの監督の言葉は、有栖川誉にとって重要なターニングポイントとなりえる非常に大切なワードである。

密「大切な人から貰ったものをなくしたら、オレはどう思う……?」

 

♪大切なもの

秋冬公演に続き、密ソロ。密のこういう心情描写と、「何かを忘れてしまった」というテーマは、舞台でかなり丁寧に掘り下げられているような印象がある。この頃の密は、自分が誰であるか、何を忘れてしまったのかにあまり頓着が無いイメージだったので、舞台ではそこが違うポイントだなと思う。事あるごとに「誰か」のことを示唆しているというか。

《寒い夜 あたたかい手のひら わからないはずなのに なぜだかわかる気がする》

原作では、’’監督に言われたことを頼りに、密自身が考えたゆえに行動を起こす’’となっていたのが、“忘れていた自分の経験と重ね合わせて行動している”ように見える。私は前者のほうが、密が自主性を持って動いてくれた感じがして好きだ。

 

そして、丞のところへ時計を持ってくる密。

こんな専門的なもの直せない、公演まで時間がないから無理だと断られるが、密は食い下がる。

密「今度の公演、これが無いとダメな気がする。最後のパーツだから…。」

実は、ここは原作の時間軸と大きく変更がされていて、原作では丞の「直すって…本番は明日だぞ?」という台詞からわかる通り、公演初日の前日に依頼されていたことがわかる。

舞台では、本番14日前の時点で頼まれていた。丞が稽古中に密をかばうような変な素振りを見せていたのはこのためだ。ある程度余裕をもって直せる状況にあったというのは現実的な改変かもしれない。

とは言っても、通常さわることがないような、年代物の(そして恐らくそれなりに高価な)懐中時計。この時の、“いい舞台を作るための頼みごとは断れない”という丞が好き。密が一生懸命、大好物のマシュマロをお礼にあげようとしても突っぱねるが、「その代わり、最高の芝居をしろ。」という丞。恐らく、密が誉のために、冬組のために、本気で頼んでいるのだということが伝わったのだろう。

 

そして、時は現在へ進む。

密「アリスの気持ちを想像した時、あれはなくしちゃいけないものだと思った。」

紬「でも、直しているなら、どうして言わなかったの?」

密「先に話して直らなかったら、アリスががっかりするかと思って。」

原作よりだいぶ相手への思いやりが感じられるる密。確かに、ステ誉のしょんぼり顔は、本当に悲しい気持ちになるので、切なくて、見たくない。密も似たような気持ちになったのかもしれない。

丞「でも、なんで直さなかったんだ?俺でも直せたんだから、店に持っていったら簡単に直っただろ」

誉「何度か直そうとは思ったのだ。しかし、直らなければ、本当に不要なものになってしまう。」

丞「直らなくても、本当に必要なものなら、不要なものではないだろ。それも天才の思考ってやつか?」

この台詞の言い方が、最初は嘲笑のような感じだったのが、最終日にかけて段々と優しい言い方になっていて、寄り添ってくれている……と思った。

東「誉の思考は極端だね。まぁ、そこが良いところなんだけど」

壊れたものは使えない。使えないので、要らない。そう思ってしまう誉だからこそ、「壊れた時計と同じ」と言われた時のショックは図り知れないものだっただろう。実際はそのような意味ではなかったのだが。

丞「そういえば、こんな彫刻が中に掘られてた。」

時計の中身を直に見るのではなく、舞台ではスマホで撮った写真を見せていて自然な改変だなと思った。しかし、丞がわざわざ見せるために写真を残しておいてくれるなんて……。

 

【 機械仕掛けの君に愛を込めて 栄 】

 

栄とは、誉の祖父の名前。すなわち、機械仕掛けの君というのは、冒頭の回想で出てきた誉の祖母のことだ。

誉「ワタシはおばあさまに、この壊れた時計と同じだと言われたのだ。だから、この時計は自分にはいらないものだからあげると言われたとき、ワタシのように壊れたものは、いらないと……言われた気がした。」

紬「……違いますよ。おばあさまはきっと、誉さんのことを要らないと言ったわけではないと思います。」

本来監督の台詞だが、紬が良いパスをしてくれている。誉のエピソードを全て知っているのは神の視点の私達観客だが、話をかいつまんで聞いただけでも、孫に対して「要らない」と言っていたわけではないことくらいわかるだろう。

誉「わからない、ワタシには人の気持ちが……」

密「相手の気持ちがわからなくても、相手の身になって考えることはできる。……カントクが言ってた。」

誉「……受け売りかね。」

やり取りは少しカットされているが、ここの田中くんの表情と言い回しが非常に素晴らしかった。焦っている時に、普段より含蓄深いことを言われた驚きと困惑、しかしそれが丸ごと人の言葉だったという、やれやれ、全く仕方がないねといった脱力感、密はやっぱり密だな、という安心感までもが声色に表れていた。

 

紬「芝居と同じですよ!考えてみてください。おばあさまが何を考えていたのか…。」

これは本来、元恋人に“壊れたサイボーグ”だと言われたことを知っている監督による助け舟だが、「芝居と同じ」というベクトルの発想を持たせることで何ら違和感のない言葉になっていてとても良かった。紬らしい考え方だし、リーダーとしての立ち回りとして良い効果を生んでいる。

誉「機械仕掛けの君………サイボーグ………」

うーんと考え、間を置いてハッと気づく誉。

誉「そうか…おばあさまも、この時計と同じだったのだ!不器用なおばあさまのことを、おじいさまは心底愛していた。その愛するおじいさまに貰ったものを、今度はワタシに託してくれた……」

勘違いされやすく、人の気持ちがわからない壊れたサイボーグだと言われた誉。機械仕掛けと評されるほどに、言葉少なで感情の発露が少ないおばあさま。2人は、ある意味似た者同士だったのだ。誉の、どこかずれている、ちぐはぐなパズルのような思考回路に、小さい頃からおばあさまは気付いていたのだろう。そして、そんな自分と似ている不器用な孫に、自分を愛してくれた人からの贈り物を授けた。

「不器用は家系だったんだね。」と東が誉の人間性のルーツを評価する。

この時計と有栖川家の話は、実によくできているエピソードだと思う。そして、カットされた以下の監督のモノローグが、時計の持つ更なる意味を非常に的確に表している。

(もしかしたら、誉さんにもおじいさんのような人を見つけてほしいと願っていたのかも……)

(ありのままを受け入れてくれて、愛してくれる人を……)

時間が狂ってしまう壊れた時計。それは、いつもおじいさまが直してくれていた。そして、おじいさまが亡くなってからは、時間がずれたままになってしまっている。それは、誉の祖母そのもののことでもあるのだろう。

ぶっきらぼうで可愛げのない、少しずれたところのある、ありのままの自分のことを理解し、心から愛してくれた人がいた。しかし、自分と似ている孫はどうだろうか。誰かに愛され、この時計のように、壊れていても、必要としてくれる人が現れるだろうか。

「壊れたものは要らない」と、人の心を無視してさっぱり切り捨ててしまう誉を見て、そんな懸念が、おばあさまにあったのだろう。そんなつもりはないのに、人に誤解されてしまう自分と重ねて。その上で、言葉が少ないために誉に苦手に思われ、誤解されたままだったのがまたやるせない話である。

事実、誉は、自分なりの気遣いが伝わらずに、恋人に別れを告げられている。そしていつしか、人と深く関わることに、心の奥では恐れを抱くようになった。自分のことを、人を傷つける欠陥品だと思いながら。それでも誉は周りの人を愛し、理解しようともがいてきた。

このエピソードを読んだとき、なんてもどかしく、苦しく、優しい話なのだろうと思った。誉にもおばあさまにも、そして、おじいさまにも、たまらなく愛おしさを感じた。

 

壊れた時計は使えない。しかし、全てにおいてそうではない。大切なのは、時計がその役割を果たすことだけではないのだということに、誉はやっと気づくことが出来たのだろう。

そして、そんな自分を受け入れてくれる人が、周りにいたのだということにも。

 

しかしだ。私は、舞台におけるここからの展開に疑問を残してしまっている。

誉「ありがとうみんな!遠回りしたが…!ワタシらしい鷺島をお見せできそうだ!」

密「やっと元のアリスに戻った。最近はいつも考え込んでて難しい顔してて、アリスらしくなかった。」

誉「時計を直してくれるキミも、キミらしくないよ。」

密「アリスも、好き勝手に詩を読む鷺島の方がアリスらしい。」

誉「詩を詠めばいいのかね?」

密「それはいらない。」

誉「なっ……!でも、執事を振り回す志岐の方が、キミらしい。」

 

この、「誉らしい」「密らしい」、そして「ワタシらしい」という言葉。これは、ばっさりカットされてしまったある場面を抜粋したものになっている。

原作では、誉が紬に相談し花をもらった後、考え込んだまま中庭で眠ってしまい、祖父の夢を見るというシーンがある。

そこに密がやってきて、誉にブランケットをかけてくれるのだ。

起きた誉に密が声をかけて、以下のやり取りがある。

密「……変なの。最近のアリス、たまにアリスじゃない。いつも考え込んでるし、こんなところで一人で寝てる。」

誉「キミにだけは言われたくないね。それを言うなら、ブランケットをかけてくれるキミもキミらしくないよ。執事を振り回す志岐の方がキミらしい。」

密「アリスだって、好き勝手に詩を読む鷺島の方がアリスらしい。」

誉「詩を詠めばいいのかね?」

密「それはいらない。」

誉「冗談だよ。」

密「それに、アリスはいつもオレの後ろに立ってマシュマロをくれないと。」

誉「そういえば、そうだったね。」

この「こんなところで一人で寝てる」という台詞を、いつでもどこでも好き勝手に寝ている密に言われていることや、あまり誰かの世話を焼かない気ままな密が気遣いを見せているという指摘から、誉が普段とは違う様子なのだということがよくわかるシーンだ。

 

そして、誉は鷺島と同じように、普段、自分がどのような気持ちで密の世話をしているかということに、密かの「いつもオレの後ろに立って~」という言葉で気付く。こうして、何気ない日々の中から、自分らしい役作りのきっかけをつかむのだ。

 

このシーンが別の場所に挿入されることで意味が変わり、上記の「時計に込められた意味がわかった」という点は、「相手の立場になって考える」ことへの気づきではあるが、いまいち’’誉らしい’’鷺島の心情に近づく直接的な理由にはなっていないような気がする。この中庭で密とのやり取りが無くなったのは、大事な部分が抜け落ちてしまったように感じた。


さらに舞台では、密の変な動きの件も、唐突にここで挟まってくる。

密「あれは時計とは関係ない。ただの癖。でも、もう慣れたから。だって……アリスはいつもオレの後ろに立ってマシュマロくれないと。」

本来、密が変な動きをするのは「後ろに立たれると反射的に動きそうになる」というもので、過去に原因があるのかもしれないという判断材料であった。

それが、劇中では、あたかも誉に隠し事をしているのが理由であるかのように、ミスリードを狙っていたように見えた。まあ、原作を読んでいればそんなことは何の意味も為さないのだが、舞台の構成としても、そのように見せる意味はあまり無かったのではないか…と思ってしまう。

更にはそれを「誉がいつも後ろに立っているから慣れた」という解決方法でまとめてしまっている。本来ならば、「いつもオレの後ろに立って、マシュマロくれないと。」という台詞は、誉にとって自分らしい鷺島を捉えるためのきっかけだった。その役目を無くした意味が、私にはあまりピンと来ない。

秋冬公演から、舞台では既に散々誉が後ろに立ってしまっているので、そういう見せ方をするしかなかったのだろうか。

ただ、誉の前に立って「マシュマロくれないと」と言い、安心したような顔で振り向きながら、ゆっくり瞬きをして誉を見つめる密の表情と、肩に手を乗せて顔を覗き込む誉はとても可愛らしく、じーんと来た。そんな見せ方があるのか…!と思った。

 

いよいよ本番直前。緞帳が閉まっており、ステージにサポート組が出てくる。

ここの日替わりでは、シトロンと一成がまだ時計を探してくれていたり、綴を犯人に仕立て上げていたりしていた。毎回非常に面白く、たくさん笑わせてくれた。今回のサポート組のメンツは個人的に大好きだし、バランスも良かったと思う。

一「やっぱ俺たち、探偵向いてないんじゃね?」

シ「やっぱりミステリーは、やるより観る方がいいネ!ワタシ、最高に面白いミステリーが観たいヨ!」

臣「それなら今から観られるだろ。冬組が送る、最高のミステリー。」

シ「オ~!楽しみネ~!」

 

ブザーが鳴り、いよいよ本番の幕が開く。 

 

一幕後半の感想はこちら。

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【円盤感想】1秒も参加できなかったライブのDVDを見た【ポルノグラフィティ】

2ヶ月ほど前、ポルノグラフィティの『12th LIVE CIRCUIT "PANORAMA×42" SPECIAL LIVE PACKAGE』というライブDVDを、初めて最後まで観た。

 

このDVDは2013年4月に発売されたもので、つまり私はこれを約7年放置してから見たことになる。

意図的に放置したというよりかは、購入した当時、全く見る気になれなかったのでそのままにしていた、と言う方が正しい。

 

今まで散々書いてきている通り、大好きなバンドであるはずのポルノのDVDなのに、なぜそんなことになったのか。それには個人的な深い理由がある。

 

1.一度も行けなかったツアー(2012年)

『12th LIVE CIRCUIT "PANORAMA×42"ツアー』(以下『パノラマツアー』)は、ポルノグラフィティの8thアルバム『PANORAMA PORNO』の楽曲をセットリストの主軸として、2012年7月13日から12月27日にかけて開催されたライブツアーである。

"今までツアーで行ったことがない都市を訪れる"をテーマに、全国各地を細かく回り、約半年という長いスパンで演出やセットリストを微調整し、より良いステージにブラッシュアップされ、更にホール公演とアリーナ公演に分かれた演出も素晴らしいツアーだったようだ。

 

なぜ伝聞調なのかというと、私はこのツアーに一度も行っていないからである。勿論、彼らは私の地元にも来ている。3都市4公演もやっている。しかし私は行っていない。行けなかったのである。

 

行けなかった理由については詳しく書けないが、簡潔にいうと、『開催日が全て平日・会場から遠く離れたド田舎に住んでいる・休みを取れない状況』、これらが全て重なった結果起こった事態だった。

今考えても、あの時こうしてれば…みたいなことでもなく、逆立ちしても行けない状況だったと思う。逆立ちしながら玉乗りしつつ縄跳びをするくらいの無理が必要だった。

 

ポルノグラフィティのライブツアーに行けなかった。

 

このことは、大袈裟でもなんでもなく、私の人生において非常に重大な出来事であった。

私にとってポルノグラフィティとは、生きる意味の一つで、好きになってからのツアーは必ず毎回参加していた。最初の頃はまだ子どもだったし、地方住みだった私には、遠征はおろか複数参加にもまるで縁がなかった。しかし、その時のお金で買えるだけのグッズと、参加できた一公演分の幸せを噛みしめて、また次のライブのためにがんばって生きよう、お金を貯めよう、次の新曲楽しみだなと思いを馳せる、それを何年も繰り返していた。

 

特に『ツアー』においては、東京や横浜で行われる『ロマンスポルノ(何年かに一回開かれる大きな会場でのお祭り的なライブ)』とは違い、地元に来てくれるというのが大きく、当時の私にとってはツアーがライブに参加できる唯一のチャンスだった。次行けばいいじゃんとか、そんな気軽な気持ちではいられないくらい、自分にとって非常に大切な人生のビッグイベントだった。

年に一回でも、ライブに行くことは私にとってほぼ当たり前の出来事で、"行かない"とか"行けない"とか、そういうことを考えるような次元の存在ではなかった。

 

しかし……自分が行き始めてから、初めてツアーに参加できなくなってしまった。

 

2.感情に蓋をした時期(2012年~2013年)

「行けない」と判明した時は、それほどショックで泣いたりとかはしてなくて、ただ『ああ、私、これ行けないのか…………可哀想に』と、自分を謎の俯瞰視点で見ていたのを覚えている。本当に実感がなくて、ふーーん……そっか……みたいな気持ちだった。

 

ただ、後になって「行けない」という事実に悲しみの気配がふつふつと遅れてやってきた時、いや正確には、悲しみが本腰を入れて襲ってくる前に、私は感情に蓋をした。

 

まず、「アルバムツアーだもんな。どうせ行けないなら、聴く意味ないじゃん」と、同年3月に発売された新アルバム『PANORAMA PORNO』を聴くのをパッタリやめた。よって、このアルバムが人生の中で一番聴いていないアルバムになってしまった。極端だと思われるかもしれないが、この曲聴きたかったな、これやるのかな、という想いを巡らせること自体が無意味だと感じてしまったのだ。

 

そしてそれに引きずられるように、ポルノに関する情報を見るのをやめた。この頃はちょうど新しい環境に身を置いていて、新たに関わり始めた様々な他人の趣味嗜好に触れていたこともあって、世の中にはこんな素敵なものがあったのか〜と新鮮な発見をしていた時だった。なので、私はあえてそちらの新しい世界に飛び込むことを優先した。

追い打ちをかけるように、そのツアー前にあったファンクラブイベントにも当然のごとく行くことが出来ず、更に重くて大きな蓋をする羽目になった。

 

考えたら辛くなるだけだから、どうせ行けないイベントやツアーのことなんて忘れてしまおう。

そう思い続けながら数ヶ月経ち、本来ならばライブがあった日にも、上記の通り私は忙しかったため、特に凹むことなく過ごしていたと思う。 

ライブ会場が遠い、と書いたが、無理すれば行けたのでは?と思う人もいるかもしれない。しかし、当時私が住んでいた地域は、一番近い会場に行くにも特急5時間、バスだと7時間程かかったため、思い切って行ってしまおう!とか考えられる距離ではなかった。開催が休日ならまだチャンスがあったのかもしれないが、突発的に行こうとかはそもそも思わなかった。

……このように、何回も『無理だったんだよ』と自分に言い聞かせる必要があるくらい、忘れたつもりでも全然忘れられていなかった。心の表面は綺麗でも、中はグズグズのボロボロになっていたのだ。

 

3.「DVDだけでも買ったほうが良いよ!!」(2013年)

そしてツアーが終わり、終わったことにすら関心を持たないくらいポルノに無感情になっていた頃、久しぶりに会う友人(ポルノ好き、ほどほどに仲良し、違う土地に住んでいる)と話す機会があった。

 

「パノラマツアー行った?めっちゃ良かったよね!」

「ああ、それ行けてなくて…」

「え?!行ってないの?!そんな……あんなにいいツアーだったのに?!」

 

そんなことはわかっている。ポルノグラフィティのライブが悪いことなんてない。少し傷ついている私をよそに友人はこう続けた。

 

「行ってないんだったら、せめてDVDだけでも買うべき。本当に買うべき!!映像だけでも見てほしい。知ってる?初回特典にツアーのライブCDがついてるんだよ。こんなの今まで無かったよね?!絶対買わないと後悔するって!!

 

私は、ライブでも舞台でも、自分が見ていない公演の映像をあまり買おうと思わないタイプなので、好きになる前の昔の公演や、参加したことがない大きなライブのDVDは持っていない。尚更パノラマツアーのDVDなんて買う気も起きなかったし、ファンクラブ会報のライブレポもほとんど読んでいなかった。パノラマツアーという存在自体から自分を遠ざけることで、ずっと自分を守っていた。

しかし、友人の力説が妙に心に残った。「映像でいいから見てほしい」と言えるような、そこまで押してくるほど良いライブだったというのは、確かに気になるかもしれない。

 

こうして私は、なんとなくその友人の後押しが忘れられずに、まんまと行ってもないライブのDVDを買った。しかもきっちり初回盤で。正直聴けるかどうかは別として、ライブCDが魅力的だったというのはある。

 

……しかし、それ以来、パッケージを開けることはなかった。やはりどうしても、見る気にはなれなかった。

まあ、いつか見るかもしれない。そんな曖昧な気持ちで、封を切ることすらなく棚に並べて終わっていた。

 

 

4.一度目の挫折、そして(2017年~2020年)

開封で放置されたパノラマツアーのDVD。

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その存在を思い出したのは、2017年に開催された『”BUTTERFLY EFFECT”ツアー』を見た後のことだった。

 

『BUTTERFLY EFFECT』というツアーは、このブログを始めようと思ったそもそものきっかけになるくらい強烈な印象を残した公演で、ファンとして新しく生まれ直したような気持ちになれた素晴らしいものだった。

 

「こんな素敵でハイなモチベーションを持ってる今なら、あのDVDを見ることができるかもしれない。」

そう思い立った私は、初めてパッケージを開封した。

 

結果としては……………見ることができなかった。

正確には、見たのだけれど、途中でやめてしまった。

もう、これは無理だと思った。理由は後述するが、見ている途中で本当に泣き崩れてしまい、この映像の続きは一生見られないかもしれないとさえ思った。

それが2018年の出来事である。

 

更に2年後の2020年。

6月頃、SNS上で数少ないポルノの話ができる方々と話している時に、何気なく「いや~まだ見れてないんですよね~」とパノラマツアーのDVDの話をした。

 

「まだパノラマ見てなかったんですか?!」

「えっ見るのやめちゃったんですか?!」

「絶対見た方がいいですよ…!」

 

口を揃えて言われた。

でも、どうしても見られない、ひとりで見ると、また同じことを繰り返してしまう気がする、誰か一緒に見てほしい…………と泣き言を言っていると、見かねた1人のフォロワーさんが「それなら、会えないけれど私と同時上映(タイミングを合わせて一緒に再生する)をしましょう。」と言ってくれた。

 

非常に冗長な前置きとなったが、ここまでの長い長い経緯を経て、人の力を借りてやっと最後まで見ることができたのである。

なぜ今2012年のDVDを見たのか、どういう気持ちで見たのか、その全てを書いておかねば意味がないと思ったし、自分の心の変遷を残したいと思ってこれを書いている。

 

以下にDVDの感想を書いておくが、

先に言わせてほしい。最高だった。

 

 

 

5.『12th LIVE CIRCUIT "PANORAMA×42" SPECIAL LIVE PACKAGE』感想

2013年4月3日発売 収録公演:2012年12月18~19日 横浜アリーナ会場

※既製品の感想なので、MC等の細かい内容については省きます。

 

 

M1 メリーゴーラウンド

今回のオープニングは、登場までに特に凝った演出はなく、2人がただ出てきてセッションを始めるというシンプルなものだったらしい。唐突に2人がステージ上に現れてからの映像が始まるのでびっくりした。こういうオープニングも最近は減ったので逆に新鮮な気持ちになる。

この『メリーゴーラウンド』では、非常に珍しい昭仁のギターソロが聴ける。ポルノグラフィティのギタリストは新藤晴一だが、昭仁もギターが上手いとプロの方に言われている。早速これを見ていない悔しさを噛み締めることとなった。

 

M2 2012Spark

イントロがアルバムver.の長いやつでめちゃくちゃカッコいい。生で聴いたことがない曲の一つなのでいつか聴きたい。転調があって最初からかなりタイトな選曲。最初から飛ばしてるけど、ライブCDの怪獣みたいな無理やり出してる感じも好き。今だったらもっと軽々とハイトーンを出すんだろうなと思う。

本ツアーでは、サポートメンバーにまだヴァイオリニストのNAOTOさんがいるので、生ストリングスの音がよくわかる。そしてアリーナ公演なのでカルテットがおり、CDより音に厚みがある。

 

M3 やがて哀しきロックンロール

カップリング枠で『9.9㎡』と入れ替えだった曲。地元公演ではそっちをやっていたらしい。冒頭、Aメロ歌い出しの《あれは十四五の頃 色も恋も遠い》でスッと降りてくる4本のオレンジ色のライトが非常にカッコいい。ライトの演出が派手で見応えがあり、全体的に明るい雰囲気のツアーなように思う。

 

M4 ネオメロドラマティック

まさかのファンクアレンジ。この曲をこういうダンスアレンジにしよう!ってなったのがすごい。そして出来ちゃうポルノチームがすごい。『ジャンルに囚われない』というのは本当に強みだと思う。ポルノはディスコとかの持つ華やかさ、ダンサブルな曲も妙に似合う傾向がある。それが非常に上手く活きている感じ。何回も書くけどストリングスが効いてる。原曲とはまた違う艶っぽい魅力。

サブモニターの映像からシームレスにステージに切り替わる編集がオシャレ。前フリのオリジナルコーレス曲がアガる。

 

M5 はなむけ

MCが挟まり、架空のグラスを持って乾杯するという恒例イベントがあったようだ。やりたかった。ハッピーなメロディなのにどこかほろ苦さを感じる不思議な曲。

嗚呼 青春それはまるで爪痕 愛でるよりもヘビー

涙で流すには遙かで 笑うには誠実すぎた日々よ

この歌詞が本当に突き刺さる年齢になってきた。

聴けなかったこととは別に悔しいことといえば、ビールの美味しさがもっとわかる人間でありたかったというところだろうか。

途中のカンパーイ!コールが楽しそう。

 

M6 星球

日常から離れた一瞬の煌めきをくれる素敵な時間を歌った、正に"ライブ"の曲。ライブだけではなく、大切で幸せな、自分にとっての非日常を感じさせてくれる時間を持っている人は多いはずだ。明るいけど切ない、楽しい時間はいずれ終わりを迎えるから一層輝く、文字通りの永遠なんてないと知っているからこそ泣けてきてしまう曲。

そこまでハイテンションな曲ではないけど意外にもジャンプを煽るなど結構盛り上がってて楽しそう。

アッパーな曲ではないはずなのに、この妙にドキドキして涙が出そうになる感覚はなんだろう。メロディの大人っぽさがそうさせるのか、参加できなかった自分の気持ちがそうさせるのか。

「飛んで、跳ねて、手拍子して!」という昭仁の煽り。本当に楽しそう。

 

M7 素敵すぎてしまった

あの夜が夢のように少し素敵すぎてしまった

そうか これはその罰だろう 夢を見終えた暗闇なんだろう

アルバムと同じ流れでこの曲へ。

私はこれを聴いて、一回目の円盤視聴を挫折した。

この曲は、具体的には描かれていないが漠然とした"後悔"や、もうあの時に戻れないという寂寞感がテーマになっている。

しかし、楽しい記憶に縛られて動けなくなる、そのあとに残る切なさすら得られない自分を呪ってしまい、号泣してやめた。

今回も、やっぱり泣けて泣けて顔がグシャグシャになりながら見たけど、なんとかこらえた。

《夢を見終えた暗闇》を私も感じたかった。私は夢すら見ていないのだ。

「素敵すぎてしまった」はずの、あの夜の記憶が私には無い。どんなに心満たされる何かを手に入れたとしても、このツアーには行けないし、このステージの記憶が私の細胞に刻まれることはもう、ありえない。そんな思いは二度としたくない。絶対なんて言葉はないかもしれないけど、出来る限り自分がポルノに触れていられる時間を長くしたい。その決意と後悔で満たされる流れだった。

 

M8 シスター

ここからステージの構成が変わり、メンバーによる打楽器と弦楽器、アコーディオンのセッションが始まる。雰囲気はまるで異国の集落のようで、小さな円筒型のランプがステージ上にいくつも置かれていて、焚き火を囲んでいるようなあたたかな光につつまれている。晴一は珍しく座ってギターを弾いていて、なんだかさすらいの”流し”みたいでちょっとカッコいい。昭仁も歌いながら太鼓を叩いていて、視覚的にも楽しいステージ。

 

M9 EXIT

そのままの流れで原曲とはガラッと雰囲気を変えたフォルクローレ調のアレンジ。アコーディオンカスタネットカホンの音色が耳に心地いい。昭仁の歌声はここまでガッツリ異国情緒を感じさせる曲調が逆に合ってる。キーは半音下げで、テンポも落として少し大人っぽい感じに。

 

M10 ゆきのいろ

 

殴り書きのままだった僕の未来までも

とても意味があるような気持ちになる

今 君がいるだけで 全部がうまくいきそうで

進んでゆける

 

あまりの衝撃に絶句した。

このツアーのアレンジの『ゆきのいろ』は物凄くいい、という話は知っていたものの、改めて自分で聴くと、ここまで印象が変わるのかと衝撃を受けた。

アカペラでいきなりサビから始まるアレンジ。原曲では感じるのことのできないパンチ力を持ってこちらに投げかけられる言葉。このアレンジで売り出してくれれば、少しはファンのリアクションも違ったかもしれない。というのも、このシングルの発売日が私の誕生日だったのだけれど、「良い曲だけど、地味だなぁ~…」と思った記憶がある。その頃は正にCDを聴いていなかった時期なので、余計に聴いていなかった。

だけど、この映像を見て、『ゆきのいろ』が本当に好きになった。雪国育ちなので、好きになれて嬉しい。

 

M11 Truly

晴一によるインスト。本来であれば『光のストーリー』へと繋がるあたたかいメロディで優しく紡がれる曲だが、途中、雰囲気は一変して物々しく激しいアレンジとなる。安心してゲームを進めていたら全く別ルートに突入してしまった気持ちになってゾクゾクした。

 

M12 カシオペヤの後悔

その流れで始まったのは、キーボードの康兵さんによるピアノイントロ。フックだらけで少し癖のあるこの曲も、浮くことなくその存在感を大いに示していた。こんなダークでカッコいい曲がアルバムツアー以外では埋もれてしまうのがもったいないので、今後のツアーでもやってほしい。

ドラム、ベース、ピアノ、ギターとリフが続いていく長い間奏も、途中の三拍子になるパートも、神話をモチーフとしたこの曲の神聖な空気を醸し出していて、ツアーの雰囲気にも合っている。ギターの音色が変わるのも晴一のこだわりのエフェクター芸といった感じか。

 

M13 FLAG

アルバムより少し長めのギターによるイントロ。編曲者の康兵さんが「これはどんなイメージのアレンジ?」と聞かれて「ポルノっぽいアレンジです。」と答えたエピソードが好きなのだが、その言葉通り、ロックとストリングスが上手い具合にマッチした、重厚さの中に緊張感のある曲になっている。ストレートにカッコいい、でも少しクセのある展開。間奏終わりのギターユニゾンが気持ちいい。

「笑っていられる時間を 今!」と私も言われたかった。昭仁がライブの中で「今」という歌詞を強調するのが好きなのだ。

昭仁の書いた歌詞の

運命を共にする僕らに それぞれ背負う旗があるとして

どんな色でも 変な形でもそれぞれ素直に讃えあえること

例えば何も書いてない白い旗でも

 という最後のフレーズがとても好きだ。優しく、受け入れられているような気持ちになれる。

 

M13 電光石火

ベースの歪んだフレーズからそのままこの曲へ入り、客のテンションが振り切れる。縦横無尽にステージから伸びる花道を走り回り始める昭仁。サビの入りでは特大のジャンプまで。ライブCDの音源でもそれを感じさせない安定感だったので、映像を見てここまで動いてたのか!と驚いた。「焼き付けたーーい!」という康兵さんのアドリブパート付き。本当に楽しそう。

アミュフェスで歌詞にアレンジを加えたものだけど聴けたのは嬉しかった。今後のツアーでフルでもやってほしい。

 

M14 Before Century

立て続けにお馴染みの盛り上がりタイム。今回はいつものコーレスとは別に、客に変わった手拍子をさせる時間が長い。そして珍しく「Say ho!!」といったようなポルノではあまりやらないタイプのコーレスも飛び出している。これも楽しそうとしか言いようがない。羨ましい。

 

M15 ミュージック・アワー

コーレスのまま『Century Lovers』をやる、と見せかけて別曲のパターン。私は素直にセンラバやる方が好きなので、円盤でもおっと?!となった。けどミュージック・アワーも無二の盛り上がり方をするのでライブでは特に問題はないけれど。

 

M16 Mugen

ライブCDだと『ハネウマライダー』だったので、ここが入れ替わるとは思っていなかった。同じように盛り上がるタイプの曲でも、タオル回しとはまた違う雰囲気の曲なので、挑戦的だなと思った。ハネウマと同じく、ストリングスが映えるという点では遜色なくカッコいいので、この入れ替えもアリだなと感じた。

あと、ハネウマだとかなりライブの”終わり”感が出るので、ここから更に盛り上がるよという雰囲気作りにも良いポジションの曲だと思う。

 

M17 ワンモアタイム

「まだまだ手を緩めんぞ!」との煽りからのこの曲。ワンモアタイムの冒頭でこんなに掛け合いをやるとは思っていなかった。実は、最初タオル回しを導入しようとしていたらしいけど、不評すぎてやめたというちょっとしたエピソードがある。実際やられてたら私もかなり嫌だったかもしれない。

2018年の”しまなみロマンスポルノ”で初めて生で聴いたので、ライブ映像の時系列としては新→旧と見ることとなったが、正統にアルバムツアーに組み込まれてるワンモアタイムも聴いてみたかった。

 

M18 サウダージ

ノンストップで、サビのメロをギターがワンフレーズ歌ってからのパターン。このタイプのサウダージは久しく聴いてなかったので異様にテンションが上がった。現地のテンションも凄かったのだろう。サビを弾いただけでこんなに興奮する曲があるのはやっぱり強い。ピアノが結構フックになってる気がする。アウトロのギターのメロディが好きなタイプのアレンジだった。

 

M19 メジャー

ここでまたアルバム曲。なんとも真っ当なアルバムツアーらしい構成。他の楽器と一緒に「ジャカジャアーン!」と自身を奏でる昭仁。

『メジャー』はアルバム発売前にリード曲としてテレビでも何回か披露していたので、ワクワクしながら発売を待った気持ちを思い出した。結果、ツアーには行けなくて、そのせいでパノラマポルノ自体をあんまり聴かなかったという事態に陥ったけれども。手拍子が楽しそうだからいつかまたやってほしい。

 

M20 光のストーリー

アルバムのラストナンバーでもあるこの曲。バラードで締めるツアーをしばらく経験してなかったので、ああちょっと前ってこんな感じの構成だったなぁと思った。

この曲は、個人的にはあまり得意ではないタイプの曲で(長い、甘い、重い)、パノラマポルノ自体がかなり濃厚なアルバムなので、通しで聴いててもここまで辿り着くことが少なく、ライブCDでも、わー当時の昭仁めっちゃ声出すの大変そう、というくらいの感想だった。しかし、映像を見て、『ああ、"絶唱"ってこういうことなんだ……』といたく感動してしまった。多分、生で聴いてたら絶対もっと印象が変わっていたと思う。ほとんど声が出てなかった回もあるというが、キーの高い歌い上げ系のバラードをラストに置くのは、きっと難しい挑戦だったのだろう。それでも、これを最後までやり遂げた昭仁には感服だ。

 

アンコール

EN1 カゲボウシ

『カゲボウシ』はツアー中に発売されたシングルだが、私は上記の通りポルノの活動にアンテナを張っていなかったため、実は後から買ったシングルでもある。

曲自体は、まあ、あたたかなバラードといった感じで、当時良いなぁ〜と思った記憶はあんまり無い。しかし、私が初めてカゲボウシを生で聴いたのは、先述のBUTTERFLY EFFECTツアーの弾き語りという非常に贅沢なタイミングだったので、時系列的にはこちらを後に聴くこととなってしまった。当然ながら、今の歌声の方が圧倒的に素晴らしいので、物足りなさは感じてしまう。

背景のスクリーンにこれまで訪れた土地の映像や、手書きの歌詞テロップが映っているのはいいなぁと思った。(恐らく晴一の字だが、昭仁作詞なのに何か意図があるのだろうか。)

 

EN2 瞬く星の下で

このツアー時点での最新シングル。こちらも、初めて聴いたのが2018年のしまなみロマポルだったので、大体同じような感想。東京ドームでも演奏していたが、その時に、意外とセットリストの中でも浮かず、地味すぎるわけでもなく、しっかりとした熱量のある曲だなぁと思えた。音源で聴くよりライブの方がいいというのがこの曲は顕著だと思う。

 

EN3 ジレンマ

ここ数年、アンコールの定番曲である『ジレンマ』で終わるライブが無かったので、やっぱりジレンマだよなぁ〜という気持ちになった。『ライラ』が悪いかと言われればそういうわけではないのだが、やはり何も考えず楽しく暴れて終われるジレンマの方が私は好きだ。次のツアーではぜひ復活させてほしい。

NAOTOさんのバイオリンブリッジ弾きをみて懐かしくなった。またライブに来てほしい。

それにしても非常に楽しそうなジレンマで本当に羨ましい。最後の花火のくだりは笑った。

 

最後、恒例のステージ上を2人が歩いて回るところまで収録されているのだが、あり得ないほどの引きで撮り続けているのはどうかと思った。正にアリーナ後方の視界ってこんな感じだよなとは思ったけど、円盤なんだから、その臨場感より会場ではよく見れない2人の表情とか残しておいてほしかった。

そして2人の生声挨拶があり、締め。

このDVDは、スタッフロールが挨拶の途中ではなく、別枠で最後の最後に映像と共に流れるタイプで、一本の作品を見終わった気持ちになれて良かった。最初に歌った『メリーゴーラウンド』が使われているのも、巡り巡って戻ってくるという感じがして統一感がある。

 

やっと見終わった。

長年避け続けてきたこのDVDをきちんと見ることができたのは、一重に人との新しい繋がりが生まれていたからだと思う。自分1人では絶対に見ることができなかったと思うので、本当にフォロワーさんには感謝している。

全て見終えた感想としては、冒頭でも書いたが、本当にいいライブだったんだなぁということがバシバシ伝わってきた。その一方で、やはり「これに行ってないんだなぁ」という寂しさが入り混じった気持ちにもなった。

しかし、行ってないライブのDVDを見るという体験は、自分が知らないままだったポルノグラフィティの魅力を再確認することにもなった。本当に良いライブだったし、お気に入りの円盤の一つになったので、見てよかったという気持ちの方が大きい。この後もう一度見返して、今は寂しい気持ちは全く無くなっている。

現在のポルノのライブ演出、構成の素晴らしさを知っていても、パノラマツアーは結構特殊というか、目新しさを感じる面白い公演だったと思う。

ただ、やはり歌声だけは、何回も書くが現在の昭仁の方がべらぼうに上手いので、今この曲を歌ったらどうなるんだろうとか、ここ辛そうだけど、今だとそんなことないんだろうな、と思ったりはした。「前の方が良かったな」と一切思わせない昭仁のポテンシャルの高さを再確認すると共に、パノラマツアーでしかやっていない、自分がまだ聴けていないような曲も今後生で聴けたらいいなと思った。特に『2012Spark』とか…。

 

この体験から、次のツアーに行けばいいとか、DVDを見たらいいとか、そういうことは自分にとって何の意味もないただの戯言であるということを改めて実感した。同じツアーは1つとして無いし、映像を見たところで記憶が穴埋めされることもない。

そういう心の穴を二度と生まないために、私はとにかく自分の趣味を行いやすい環境を整えることに躍起になって、色々と取捨選択してきた。そのおかげで、ありがたいことにパノラマ以降のツアーに参加できなかったことはない。今後も、何かの間違いがなければ必ずツアーに行くし、余裕があれば遠くの会場にも行くだろう。それが私にとって最高の幸せなのだ。

…と思っているが、昨年の東京ドーム以来、しばしの休憩を挟んでまた活動再開かなぁと思っていたら、このコロナ禍になってしまった。

今年は何も無しかなぁ、と思っていたら!!

 

ポルノグラフィティ オンラインライブ「REUNION」開催決定!!☆

https://www.youtube.com/watch?v=xuyEiGMHhQ8

 

やったー!!!まだ12月に開催するということしか発表されていないが、続報を待とう。

 

おしまい!

 

 

 

ポルノのニコ生における『プリズム』『一雫』曲解説 書き起こし

2019年7/29日放送の晴一のラジオ番組「カフェイン11」において、10年ぶりに昭仁がゲストでやってきた様子が「ニコニコ生放送」において生中継された。その際、50thシングル『VS』のカップリングである『プリズム』『一雫』が初披露となった。二人がそれぞれの想いを込めて作ったとの前情報があり、各々の楽曲にコメントを寄せていた。それを元に曲の感想を書こうと思っていたのだけどもうだいぶ経ってしまったので、コメントの書き起こしだけ残しておく。今読んでも、それぞれに違った気づきや互いの視点からのイメージなどがありなかなか面白いコーナーだった。

 

 

・『プリズム』(詞・曲/岡野昭仁  編曲/近藤隆史・田中ユウスケ)について

晴:シングルが決まる前から、カップリング曲は20年のファンの皆さんへの感謝の気持ちとかいろんな方への感謝の気持ちを表現しましょうということになって。

昭:とはいえ曲の方は温めてた曲で前からあった。田中君(編曲の田中ユウスケ氏)が元々あったものをブラッシュアップさせて、それがかなりの変態アレンジだったので、ちょっとだけ戻してくれと。あの人いろんなことができる人だから。

晴:今もけっこう変態アレンジだけどね。

昭:今から聴いてもらう『プリズム』もかなり変態アレンジだけど、もう少しこう…ストーリーがあるから、20年という皆さんに感謝を伝える曲なので、もう少しわかりやすくてもいいかなって言ってサビの方をわかりやすくしてもらった。

晴:結果この感じ。

昭:田中君とやってきた10年近く、その辺の田中君の煌びやかさというかその辺のおもしろさというのもポルノのひとつの強い要因になってると思う。存分に出してもらえてる。本当に、今僕がこの歌詞においては思ってることというか、この一年特に濃い一年だった、しまなみがあって雨で中止になったけど、あそこからのストーリーを考えるとファンの人への感謝というかいろんな人への感謝、なんだろな、しまなみがあんな形で中止になったのに、誰も…本当は文句言いたいところをグッとこらえて、それでも私たちは豪雨災害に貢献できることがあればとか言ってくれたり、ほんとに感動的な一年だったからね。

晴:それもやったしアリーナツアーもやったし今度ドームも、あんなに不安がってた気持ちを汲んでくれたのかちゃんと満員になった、なったんじゃろ?完売したんよね、ほんまにね、よぉ愛してくれとるな~。

昭:まぁ〜ほんまにね、わかってたつもりだったんじゃけど、ほんとにそれを、今更かい!って言われてもしょうがないんだけど、ほんとにすごい今年はほんとに、この一年は特にそれはありがたいなと思えたので、その気持ちをほんとに存分に書いたというか、あんまり迷うことなく、でもちゃんとこんな気持ちを伝えたい!と思いながら書けた、かなという曲です。

 

(曲を流し終わって)

昭:でも難しかったなぁこの曲思ったより。自分で作っときながら。色々こうチャレンジしすぎたなっていうのがね。若干歌ったあとにきづいたけどね。

晴:難しい?

昭:難しい。

晴:何が難しい?

昭:まずテンポに自分の歌にグルーヴを出すみたいなとこがとっても難しかったです。やっぱこの疾走感を無くさまいとしてやっぱこうテンポをキープしたけど、わりとやっぱそれをこう消さない歌を歌うみたいのに必死だったなという気がしますけどね。

晴:そういうもんがあるんですね。

昭:そいういうもんもあるでしょそりゃ。

晴:いやいやテンポがあるけぇなんか…一生懸命歌いよったらいいかと思うんじゃけど。むしろ逆にそういうことがあるんじゃね。

昭:まぁ意識がそうなってきたみたいな、ほんまに気がついたら勢いを殺してたみたいなことってあると思うからさ。テンポがあって、音程もよくて言葉がはっきり歌えてて声量もあってみたいなことだけじゃなくやっぱこう…なんていったらええんかな…ちゃんとした置き所に置かんと、歌が、曲が進んでいかんみたいなことってないですか?

晴:いやあると思うよ。

昭:そうなんです。

ギターが難しそうというコメントに対して

晴:ポイントは"無になる"ことです。

 

 

・『一雫』(詞・曲/新藤晴一  編曲/篤志)について

晴:これは僕ですね。まぁさっきも岡野君が言ったように、このカップリングはそれぞれの20年に対する想いみたいな曲にしようってコンセプトから歌詞を書いたんですけれども、まあ曲調も相俟ってありがとうというよりかは、どっちか言うたら"ダイアリーシリーズ"みたいな、ポルノで言うと。

昭:はあはあ。

晴:今思ってることを今まで思ってきたことを…歌詞にしたためたっていう…曲ですね。

昭:なるほど。

 

(曲を流し終わって)

昭:ラップのとこが(コメントが)えらい湧いとったけど。

晴:まあ…言うたらね、僕じゃないですかラップは。

昭:あれ俺もめっちゃ準備しとったのにね…俺が自分が歌うと思ってすげえ譜割りとかもなんかこう…なに?レコーディングし終わったあとになんか(晴一が譜割りを)入れよったやんか。

晴:うん。

昭:「あっ、俺にわかりやすくやってくれよんじゃな」って思って。

晴:本気でやってました僕は。

昭:ほいで譜割りもすげえ俺ちゃんと調べてあ~ココこうやってやるんじゃ~って言って練習しよったら、「あそこ、わしが歌うんじゃけど」言われて!!

晴:ふふふwww

昭:なんか、なんかすごい恥ずかしかったわ!なんか恥ずかしいな俺…自意識過剰?!俺が歌うと思うじゃんやっぱ!

晴:いやいや…(嵐の)櫻井君の位置ですよね僕はね。

昭:サクラップの。ハルラップで。やかましいわ!!

晴:しょうがないですよ、しょうがないですよ。ほんとならね、こういうテーマの曲じゃなかったらもちろん任しとったじゃろうけど、こういうテーマじゃったけぇ、自分の声が入っとってもいいかなぁと思って…やってみたんですけれども。

昭:ほんま俺がやると思うとったわ~~よーし、俺もなんか"ほんとはできるんだぞ!"みたいなとこをね、見せたかったんよ…。

晴:でもこれ(編曲の)篤志とデモ作った時に、「これ絶対ラップ入ってくるよ!」って、「これリップスライムならラップ入ってくるよ!」て、面白おかしくやりよって、それで入れたらばっちりハマって、これはこういうパートにしようって。でまぁあれが歌いよって、ほんとのレコーディングでけっこう熱入れてやったら、(篤志が)「そういうことじゃないんです」つって(笑)。なんかいい声で歌おうとかやろうとしたら、「もっとあの、申し訳なさそうにやってほしいんですけど」って言われて。

昭:篤志が?ああそう?!なんちゅうリクエストなんよ、初めて聞いたわ!"申し訳なさそうにやってくれ"?(笑)」

晴:本気でやったら怒られた…。

昭:ああそう!(笑)いつかあそこ俺が奪ってやるからな…他のとこ歌うてくれ。わしあそこだけ歌うけぇ。

 

おしまい。

 

【神vs神】初めてポルノグラフィティのライブに行った人の感想を貰った Part4

少しでも多くの人にポルノのライブの面白さを知ってほしい!という気持ちで書き始め、今ではほとんど自分が書き残しておきたい趣味として続けているこの初見感想シリーズも、とうとう4回目を迎えた。

何事も、「初めて何かを見た、聴いた気持ち」というのは、誰しもがたった1回しか持てないもので、どうせ初めて観る人を誘うなら、ポジティブでもネガティブでもいいのでその人にしか抱けない感想を貰いたい!と今まで数多くの人に協力していただき、この記事は出来ている。

各地を回るツアーではなく、東京ドーム公演で初見の感想がいただけたことを大変ありがたく思う。

 

初見の人数

①2019.9.7 東京ドーム1日目 1人

②2019.9.8 東京ドーム2日目    1人

 

偶然ではあるが、東京ドームの両日に1人ずつ来てくれて非常にバランスの良い結果となった。

 

①2019.9.7 東京ドーム1日目(座席:スタンド1階)

【Iさん】

・性別など:女性(フォロワーさん)

・好きな音楽:嵐や関ジャニ∞のファン。だけど、邦楽からアニメソングから色々聴いているイメージ。

・ポルノの知識:同世代で、大ファン!というわけではないけれど、流行っていたし、∠TRIGGERあたりの記憶まではあるような感じと思われる。

・予習として:WOWOWでやっていた「UNFADED」のライブ映像をみて行こうと思ったと話していた。あとは聴いたことないアルバムを借りたりして、今までの初見さんと比較するとポルノに関しての知識はかなりある方だと思われる。

・とても密度の濃い感想を送っていただいた。感謝…

 

【感想】

・客いじり、30分くらいやってたんだと思うと、今考えると長い…。でも面白かった。同席した友人は「これで当てられるの怖すぎない?!」と言っていたけど空気感は楽しんでいた。

あれは本当に好き嫌いの差が出ると思うので、楽しんでくれて良かった。ちなみに客いじりは大きい箱でしかやらないので、ホール公演や今後あるかわからないけどライブハウスだとやらないです。

 

「あのロッカー まだ闘ってっかな?」で始まるのいい!!闘ってるよ!!

1曲目に『プッシュプレイ』をやるのはかなりファン向けの始まり方だったと思うんだけど、そう感じてくれて良かった。彼らの今までの活動の答えあわせみたいな公演だったので、ファン的にはかなり胸に響いた。

 

・本間さんのメドレー、『ミュージック・アワー』や『マシンガントーク』の変な踊りは「これ見た事あるやつや!」ってなってた。生では初見だったけどちゃんと踊れた。ここから既にアキヒトさんがだいぶ暴れていてワロタ

晴一がラジオで「生後9ヶ月からできる」と言っていたように、『ミュージック・アワー』の踊りは単純な動きでこうして初めての人でも簡単に盛り上がることができるのが強いなぁと思う。『マシンガントーク』は、昭仁の動きはあれでもだいぶソフトになったと思う(笑)。ああやって昭仁がステージングしてくれるからこそポルノのライブは早くからボルテージを上げられるのが良いですよね。

 

・メドレーの曲のつなぎ目で、本間さんが『次はどの曲来ると思う?』みたいないたずらっぽい笑みを浮かべていたのが印象的だった。本人も楽しんでるんだろうな、というのが伝わってきた。

初めてのライブで本間さんに対してここまでの感想を貰えるとは思っていなかったのですごい。関ジャムとかにも出てるからかな?本間さんはポルノの育ての親、お父さんみたいな人なので、一緒に演奏している姿を久しぶりに見られて本当に嬉しかった。

 

・MCで始まるハピバスディの歌(早くない?!)と突然のウェーブ。本人たちが楽しそうでほほえましい。

しかし1日目のMCは長かったので若干不安でもあったけど、楽しんでもらえてよかった。ちょっとした身内の同窓会的な雰囲気もあった。

 

『アポロ』、アレンジと通常版が聴けてお得…。

演出的にも「たった2人(3人)のポルノに本間さんが加わって、さらに世界が広がっていく」みたいな感じがあって良かったですよね。やっぱり『アポロ』は20年経ってもカッコいい。本間さんが『アポロ』をポルノのために作ってくれたことが嬉しいと未だに思う。

 

序盤の晴一のお衣裳が可愛かった。

あのカラフルなロングジャケット良かった。わかる。晴一の衣装はいつも小綺麗にまとまってるように思う。この日は昭仁もパリッとジャケットできめてて、普段の謎紐・謎丈・謎ラインのシャツとかじゃなくて安心した。せっかくの20周年だからカッコいいお衣裳着てるとこ見れて良かった。

 

・『グラヴィティ』~~~!!!イントロで震えた。静かで切なげな歌い方に切り替わってスゴ…直前まであんなとばしてたのに。曲調も歌声も映像も全てが綺麗。映像が涙ぐんでまともに見えてなかった。大好きな曲だから生で聴けて本当に嬉しかった!

『グラヴィティ』はちょうど『m-CABI』に入ってて、私もIさんも世代ど真ん中で当時アルバム聴いてたってのが大きいのかな。涙が出るほど綺麗だし本当に切なくて愛しくて淡いのに力強い曲。昭仁が今の歌声で歌うからこそ、余計に素晴らしく聞こえた。

 

・『n.t.』、最初なんの曲か分かんなくて、サビ前でようやく理解した…。ラスサビの怒涛の問いかけで心臓ギュッてなる。

私も最初昭仁が「佞言断つべし」って言った瞬間ヒイイ!となったので、ざわめきで『n.t.』って言ってたの聞こえてなかった…。ラスサビ私も本当に大好き。好きになりたてで『雲をも掴む民』を借りてこの曲を聴いた時、かなり衝撃を受けたのが未だに心に残っている感じ。

 

・『Hey Mama』のイントロが聴こえた時の会場のざわめきは忘れない…。でもハルイチ言うほど下手じゃなくない?(それもそれで失礼)やわらか~い声。日本語訳バージョンまであってびっくりした。私が知らなかっただけでフルバージョンが存在するのかと思った…。

フルバージョンはないけど、そのせいでこの日一番贅沢にアレンジ貰ってんじゃないか?って感じになってましたね。元々は日本語歌詞が先行で作られていて、後で「生々しすぎるからやめよう」となった経緯があるらしい。晴一はね、下手っていうかなんていうか、そのやわらか~い声で舌っ足らずな感じがどうにも観客を見守りの体勢にさせるよね。なんか。

 

・この日やった曲の中で一番情緒がヤバくなったのは『渦』。ポルノではどんより仄暗い曲や、さわやかに悲壮感の漂う曲が好きになりやすいので…。全てのモニターがウニョウニョうねってる映像がまた不気味でよかった。

Iさんとは曲の趣味が合うようで。『渦』、本当にカッコよかった。ホーン隊の出方も演奏もそうだし、昭仁のゾッとするような色気のある囁くような声、晴一の咽び泣くギター、全部がポルノの妖しい魅力を引き出していたと思う。ドームで聴く『渦』はヤバかった。本当に。

 

・これは自分語りになるんだけど、私が初めて”ポルノグラフィティ”というアーティストを認知して、初めて”ポルノグラフィティ”の曲として好きになった曲が『愛が呼ぶほうへ』で。聴きながら、当時のことを思い出して(CDをレンタルしてMDに録音してMDウォークマンで聴いていたこととか…)、感傷に浸っていた。

読んでて一番泣きそうになった感想。曲にまつわる思い出って人それぞれだし、それがIさんの中のポルノにもあったことが嬉しい。

(続き)そういえば、昔から自主的にアルバムを借りに行ったり、ポルノのファンに出会うことが多かったり、気付いたらどっかで曲が流れていたりしてて。この曲が本来伝えたかったこととは違うけど、《僕を知っているだろうか いつも傍にいるのだけど》《遠くから近くから 君のこと見ている》を勝手に感じて、音源を長いこと聴いていたこの曲を、生演奏と生歌で聴けて本当に良かった…。

私は、曲を聴いたその人が持つ感想こそが、その人にとっての曲の意味なんだと思ってます。Iさんが曲を聴いて思ってくれたこと、それがIさんにとっての『愛が呼ぶほうへ』という曲の存在なんだと思います。こんな素敵な感想を書いてくれてありがとう。ポルノは確かに、私も好きになってから調べた時に「この曲も知ってた!この曲も!」と、自分の生活の背景にポルノが知らないうちに存在していたことに驚いたもので、その出会いが、Iさんは東京ドームでより距離が近くなったのですね。素敵な話です。

 

・『Mugen~ネオメロ~ハネウマ』のテンション爆上げメドレーやばくなかったか!?!私はやばかった。特に『ネオメロ』のイントロが流れた瞬間のボルテージの上がりようが凄くて。”バラード100曲やっても絶対盛り上がる曲”みたいな話を思い出してなるほどね…になった。

私もヤバかった。この辺りは楽しすぎて半狂乱になってた。ネオメロはやっぱりカッコいいよね、あのイントロの短さであそこまでテンション上げられる曲ってそうそうないと思う。最近だと『THE DAY』がその枠に入ってくる感じがある(イントロ超短いのにカッコいい)。

 

・ハネウマでタオル回せなかったのが悔やまれる…(事後通販で買った)。

お買い上げありがとうございます。次は持っていこう!一緒に回そう!ポルノのライブはタオルあるとより楽しめるので、私は俺は地蔵派です!って人以外は持ってた方がいいアイテム。

 

・『アゲハ蝶』…こんなに大きな会場で間奏の合唱を響かせられたの、ファンの人嬉しかっただろうな…。その声を聴いているハルイチも嬉しそうな表情してた。気がする。

Iさんは特定のアーティスト(グループ)を応援する楽しさをわかっているからこそ、ファン目線の感想を持ってくれたのではと睨んでいる。これは本当にそうで、アゲハ蝶は特にファンと一体になって完成する曲だと思っているから、あんなに大きな声が響いているのを聴いたのも初めてだったし、それを見ている、聴いている2人の表情を見て本当に感動したし、幸せな気持ちになった。

 

・『VS』でセンターステージを歩きながら紙吹雪に包まれる2人を見ながら、ここでもファンの人ほんとに幸せだろうな…とまたファンの心理になってた。実際私もこの光景観て、今日来てよかった、20周年のお祝いができてよかったなと思ったよ…。次ツアーあったら行く!

これも本当に涙が出る感想。本当に本当に幸せだった。あの長い花道を歩いて、キラキラの紙吹雪に包まれて《そうか あの日の僕は今日を見ていたのかな こんなにも晴れ渡ってる》って歌ってる、ギターを弾いている姿を見ただけでもう涙が止まらなくて。この景色を一緒に見られてよかった、ここに一緒にいれて良かった、ポルノを好きで良かった、それしか考えられなかった。ツアー行く宣言ありがとうございます!その言葉がもらえただけで誘って良かったと思える。今の所まだ今後の予定はないけれど、今度は一緒にポルノを浴びにいけたら嬉しいです。

 

・サイのフロートどうした?!アイドルかな?!バズーカ撃ったりちょっと手振ってみたり…ポルノもこういう演出やるんだな…。でもジャニーズのライブに慣れてる私はだいぶ楽しんじゃった。サイフロートよくできてたな…。

20周年ということもあり、かなり張り切った演出してるなぁとこっちもテンション上がっちゃった。大きいライブではたまにフロート乗ったりリフト乗ったりしてるかな。2人とも楽しそうで良いと思う。バズーカのせいでリバルはしっちゃかめっちゃかだったけど!あのサイのフロート良かったのわかる。

 

・『オー!リバル』の時のハルイチの顔がいいコーナー。「これこれ~!アンフェでならったやつ!」ってキャッキャした。

WOWOWで観てもらったやつ。個人的には、たまにならいいけどアンフェで毎回やり出した時はもういいでしょ(笑)になってたな…スッと始まるのがカッコいいと思ってたので…でも本人気に入ってるみたいだし、定番化しても、まぁいいか。(笑)

 

・バンドメンバー紹介の時、本間さんがピアノでしれっと『カルマの坂』弾いてなかった??「ここで?!」「なぜ鬱曲を選ぶ?!」二重にびっくりした。

『カルマの坂』、弾いてましたね。単純に、本間さんが作曲した中からチョイスしたのかな?と思ったり。カルマもピアノ始まりだし(2日目は本来ピアノじゃない『ラビュー・ラビュー』 だったけど)。そういや今年のアミューズフェスの’’愛とか恋とか’’ってテーマで『カルマの坂』ぶちかましてたりもする。ポルノチームの趣味?

 

・最後の曲が『ライラ』で、ウェ~~~~これか?!!?ってびっくりしたんやけどこれ定番になってたのね。終わりの曲で毎回《歩き疲れたら帰っておいで》って言ってくれるアーティストめちゃ優しくない…?

『ライラ』……正直私も「ウェ~~~~?!?」となる気持ちはわかる派なので気に入ってる人にはごめんなさいなんだけど、確かにアンコとしての歌詞はいいのよね。《歩き疲れたら帰っておいで》が主題だとは思うし。ただいまいち盛り上がるのが難しい。

(続き)皆で歌って踊って大団円~~HAPPY END~になってたけど、個人的には原曲のテンポのままが良かったのでは…と思った。なんで遅くしちゃったんだろう。C&Rするワードをスクリーンに映してくれたのはプチありがたポイントだった。

ほらファンじゃない人も言ってるよ!!そこね。わかる。遅いんだよね…多分後半の盛り上げのために緩急つけたいからだと思うんだけど、『ジレンマ』の、スタートからハイテンション!を欲してる私としては物足りなく感じる。コーレス用のロシア語テロップ、あれアンフェの3公演くらいまで無かったのはけっこう鬼。でもテロップ出ても未だに覚えられてないので毎回ぐじゃあってなるのは内緒。まぁアンコールだしそれも含めなんだかんだ楽しかったりする。けど『ジレンマ』がいいよ~。

 

・写真撮影の途中で出てきてしまったのだけど、やっぱりそこから離れがたくなるくらい充実してた~~!友達も楽しんでくれてた。(アニメの主題歌になった曲には特に馴染みがあったので、序盤の『メリッサ』『THE DAY』で大喜びしてた

ありがとうございます!やっぱアニメタイアップは強い。 カッコいい曲も多いし。ポルノはヒット曲やるよって言っただけでも、選抜から漏れるくらいたくさんの有名な曲があるんだけど、そのおかげでこうして初めての人が手放しで盛り上がれるのは大きな武器だなぁとつくづく思う。

 

’’神セトリの対決’’がテーマということで、もっとコアなファン人気のある曲も多くなるかな(それこそ『月飼い』とか)と思ってたけど、わりかしシングル曲、それもメジャーなものをたくさん揃えていた印象。おかげで初心者の人も楽しみやすいお祭り公演になったんだな~と思った!

確かにファンの中にはコア向けセトリを望んでた人もいたみたいだけど、私はファンとして今回の2日間のセトリは大正解だと思ってる派。だってこんな風に初めての人がたくさん来てくれるライブだし、’’ファン感謝祭’’じゃなくて’’ポルノの20周年のドームライブ’’だから。現にこうしてたくさんの感想を頂けて、かなり間口の広いライブになったんじゃないかなと思ってる。’’全員’’を楽しませるのは確かに無理だけど、楽しむ分母は増える方がいいと思う。このドームでポルノのライブの楽しさを知ってもらえて、「もっと色んな曲が聴きたい!」と思ったらツアーに来てもらえるといいんじゃないかなと思うし。私は本当に楽しかった。

 

・ペンライトを振らないライブに中々行かないので、曲中ずっと手叩いてたりとかワイパー(っていうの?)してる光景が新鮮だった。勉強になりました。スタンドからだと腕の肌色が一面に広がって見えてオオ…(驚)となった。

ワイパーって誰が言い出したんだろうね。私は実はそういう用語知らないのでここ数年で知った言葉。ポルノはかなり振り付けが揃ってると言われる方で、しかもラテンの手拍子とかもあって難しく感じる人もいるみたいだけど、基本的には迷惑にならない程度に、思うようにノればいいのではと思ってるので、隣の寡黙な友人が意図的に地蔵してても何も思わなかった。ラテンの手拍子は曲によって微妙にリズムが違うので覚えると楽しいかも。

 

アーティストの体力ってすごいね…アキヒトさんいくら声張り上げても、『ライラ』とかでステージの端から端まで走りまわっても疲れた様子を見せてなかった…ように見えた。本当に人間?(?)いくつ??一番の驚きポイント

これ嬉しい感想!!岡野昭仁氏は、今年で45歳なんですね……早いな……本当に昭仁は体力と声帯オバケというのが体感できたんじゃなかろうか。すごいよね。この感想をもらって、「ライラってそんなに走ってたっけな?もっと凄かった回あるから見てほしいな~」とか思ってたけど、この間のディレイビューイングでカメラに映らんくらいの残像かってほどの猛スピードで端から端まで爆走してて?!!?!になった。めっちゃ走ってましたごめん。多分、走りながら歌っても止まってる時とほぼ変わらないから、’’走っている’’という印象が残ってなかったんだと思う。本当にあの人はすごい。

 

’’胸張っていけ!自信持って行け!!’’は浴びると本当に元気になったから一生続けてほしい。充実した時間だった!!おススメしてくれて本当にありがとう。

ファンはあの言葉を貰いにライブに行ってると言っても過言ではない瞬間。私は大袈裟ではなく、生きてることを肯定してもらえるような気持ちになる。元気が出るの、すごくわかる。あのライブをやってのけた後に言われると、ああ、ここにいて良かったと強く思う。またぜひあれを聴きに来てほしい。 

 

この素晴らしい感想を、なんとノートにまとめて書いて写メで送ってくれたIさんに心から感謝。本当にありがとう!!

 

 

②2019.9.8 東京ドーム(座席:スタンド1階)

【Jさん】

・性別など:女性(フォロワーさん)

・好きな音楽:ポルノと同じアミューズ所属の阪本奨悟さんのファン。

・ポルノの知識:有名なシングルのみ知っている感じ。アミューズフェスでのライブを2回見ている。

・予習として:シングルマイベスト15の記事を読んだと報告を受けた。 

いつもアミューズフェスでご一緒する。今年のやつを見て「東京ドーム興味出て来たから行きたい」と言ってくれて血眼でチケット取った。

 

【感想】

・開演前からおもしろかった、あの立たされてやらされたり、みんなでコーレスするやつ。

やっぱ客いじりには毎回驚く人が多いけど、楽しんでくれてるので安心。私は一生当たらなくてもいいけど会場はあったまるよね。


昭仁さんの歌声って声が何重にも重なっているような感じがある、耳触りがいい(謎日本語)桑田佳祐とかユーミンとか?このあたりも声が何重にも重なって聴こえてくるような声だなと思う。

あ~~~なんか言いたいことわかる気がする!私は、うまく言えないけど、昭仁の声は本当に色んな要素が重なり合って「〇〇な声」って一概には言えないというか。明るいけどハスキーで物哀しさもあって、真っ直ぐで芯が通ってて、力強いけど寂しい時もあって、みたいな。そういう感じだろうか。確かに聴いてて心地よい、声量はあるけどうるさい声ではないよね。本当に大好きな声。


・やっぱりどうしても普段はボーカルが目立ってるから、あんまり晴一さんのこと知らなかったからソロ曲で歌声聴いてびっくりした。思ったより優しくて可愛らしい声だなと思った。でもあの曲の歌詞はなんだか難しいなと思った。あと口角がかわいい。

久しぶりの、初見の晴一にびっくりシリーズ。歌っちゃいました。20周年だから。毎回歌ってるわけではないです(笑)。あのクールで斜に構えてるみたいな見た目で喋るとふわっふわなのはどういうことなんだろうな。2日目は『ウェンディの薄い文字』だったけど、確かに晴一の持つ文学性みたいのが前面に出てる曲でしたね。口角ね、見れば見るほどなんでこんな綺麗なアヒル口になってんだろと思う。悔しいので可愛いとかあんまり言いたくないのでおしまい(嫌いじゃないです)。

 

アンコールのコーレスしぬほどさせてくれてめっちゃ満足した!楽しい

『Century Lovers』は楽しい~~!!ほんと楽しい。昭仁の煽りスキルの高さに毎回まんまと乗せられてしまう。ポルノのライブはこういうちょっとファンとふれあうみたいなコーナーもあるけど、それがまた親しみやすくて良いところだなぁ~と思っている。


・私はたぶん一般平均よりポルノに限らずJ-Popを知らないと思うけど、それでも知ってる曲が多かったし、知らない曲でもつまらん曲がなかった、全部楽しかった!

これを言ってもらえると本当に安心する。ライブが好きな人でも、自分の好きな曲が聴けなかったらつまらないとか、知らない人のライブは行きたくないとか、そういう人がいることもわかっているので、私が楽しいよぜひ来てほしいよと誘って実際来てみて、いまいちだったな…と思われてもそれは個人の感想だから仕方ないと思ってるんです。 感想が欲しいと言って、ポジティブなものが来ないという覚悟も毎回してます。でもこうやって(少しは気を遣ってもらっているかもしれないと思いつつも)ポジティブな感想ばかり、楽しかった!と言ってもらえることが多いので、ポルノを見てもらえて良かった!そしてそう思わせるライブができるポルノってすごい!とますます好きになるのです。本当にありがとう!

 

Jさんは、弟さんが同席したと言っていたので、ぜひ弟さんからも感想をいただけないかと伝えたところ、ミュージックステーションみたいだった!!」としきりに言っていたそうで、「ごめん…何回聞いてもこれしか言ってくれなくて…」とJさんが困惑していた。弟さん、ありがとう。どういったところがミュージックステーションだったのか物凄く気になるので、いつか聞いてみたい。

Jさんの好きな阪本奨悟さんは、アミューズフェスでもアポロをカバーしてくれたり、ラジオでもカメレオン・レンズを弾いてくれたり、大阪城ホールの前で前座的なライブをやってくれたり(その時の会報や、もっと過去の晴一のラジオにもゲストで登場している)、個人的には舞台に出ている姿も観たりしているのでかなり同事務所のアーティストとして親近感を覚えている。今度は奨悟さんのライブに行ってみたいので誘ってください。

 

 

今回も素晴らしい、嬉しい感想をたくさん頂けて、別に私がすごいわけではなくポルノがすごいのだけど、本来それを知ってもらうために書き始めたトピックなので記事の役割は果たせているのではないかと思われる。

 

あの東京ドームが初めてのポルノというのは、正直ファンとしては羨ましい気持ちもある。だってあんなに楽しいライブだったのだから。上記の感想のように、これでメジャーな曲をたくさん聴いて、それでもやってない曲もあるし、「またポルノのライブに行きたい!」と思ってもらえたならそれが何よりの褒め言葉であると思う。

 

実際に、長らくファンを続けている自分でさえ「こんな〇〇聴いたことない!」とか「今回の〇〇は過去最高だ!」と、ここ数年は(主にBEツアー頃から)常に新しく新鮮なライブを見たような気持ちになるのは、ポルノが止まることなく挑戦と進化を続けている証だと思う。20年やってきて、初見も大ファンも楽しめるライブが出来ることは本当に素晴らしい努力の結晶なのだろうと思う。

 

こんなにたくさんの人のことを感動させられたり笑顔にできるポルノを好きで良かった、そして私やファンの人が、ポルノのどういうところが好きなのかを、実際に見て聴いてもらって、少しでも理解してもらえるような気がして、やっぱり私はこれからも多くの人にポルノのライブを観てほしいし、近しい人であればまたこうして感想を貰いたいと思う。何事も、初めての経験というものは、プラスであってもマイナスであっても、二度と経験できない、貴重で、尊くて、かけがえのないものだと思うから。

 

感想を下さったお二人、ここまで読んで下さった方、本当にありがとうございました!おしまい。

 

※神vs神、UNFADEDツアーの様子を収めたDVD&Blu-ray BOXは通販サイトで軒並み売り切れだそう。すごい!今から購入したい方はお近くのCDTVショップや家電量販店などに足を運ぶと良いかもしれません。