心が濡れる曲、ポルノグラフィティ46thシングル「カメレオン・レンズ」感想

新藤先生のラジオ「カフェイン11」で先行解禁されてからだいぶ経ってしまいましたが。「最新が最高」であり続ける、ポルノグラフィティの新しい1面がいよいよ世に露呈する。1回目に聞いた時のファーストインプレッションも交え、ざっくばらんな感想。

 

【全部が「気持ちいい」音】

まず、曲の印象としては「ANGRY BIRDの重さ、MICROWAVEの軽さ、part time love affairの気だるさが混ざった感じ」だと思った。こういう、電子とロックの融合みたいな曲が近年は徐々に増えていて、特にこの3曲は顕著。そしてそれぞれが全く異なる魅力を持っている。

CMで使われているのを聴いたときはもっとオシャレでpart time~寄りかな?と思っていたのだけど、意外にもボンボン重低音が鳴ってたりして、骨太な印象。これはANGRY BIRDのアレンジもしている篤志さんが編曲だからっていうのもあるのだろうか?

イントロのテンテンテン…テンテンテン……からのカサカサカサ……みたいなノイズのあとに、キュアキュアキュア…キュアキュア…とゾクゾクするような謎の音からの「ありのままの真実など…」っていう昭仁の声がもうたまらなくいい。途中途中に入るノイズのひとつひとつに意味があって、全部がとにかく「気持ちいい」音。特に2番の「深紅の薔薇もワインも 色を失くし泣いてるの?」…パパン!!てなんか爆発してるみたいな音とか、Bメロのカリカリカリ!!カリカリカリ!!っていう物食ってるみたいなノイズとか、その裏でポロロロポロロロ……とまるで涙の粒のように聴こえてくるピアノとか、こ、康兵先生~~~!!!

こういう、オシャレシティな曲は、カップリングから始まりアルバムに入り、やりたいんだなってのは伝わってきてたんだけど、ここにきて満を持してとうとうシングルで登場したなって感じ。最高。

 

【英詞と日本語】

歌詞もまた、英詞パートが多くてまさに「耳触りのいい」、歌詞もまた音の一部というか、昭仁の声も楽器の一部として扱っているような、絶妙なバランス。

これは最新アルバムのMICROWAVEでも顕著なんだけど、昭仁の英詞の歌い方も数年でめちゃくちゃ変わってきていて、発音がどっちかというとネイティブ発音寄りになってる。今までずっと「よんまいはねー!!」とか「かぁーもじゃぽねいぜー!!」とか、日本語かってくらいパン!パン!とハッキリ歌っていて、それも特徴的で好きだったんだけど、今回はそれを新しいアプローチで仕掛けてきているのがめっちゃわかる。さらに、日本語パートの滑舌の良さとメチャクチャいい対比になっていて、歌詞がより印象的に聴こえるようになっている。言うなれば、日本語の部分だけでも成立するっちゃするんですよね。英詞の部分は役割としては伴奏というか、あえてスッと流せるイメージ。

日本語部分は日本語でまた、「二つの月」とか「カラスが青い鳥になった」とか、新藤先生お得意の「つまり???」系の歌詞。でもなぜか心にスッと入ってくる、説明されなくても、ああこの二人はこういう関係なんだなってのが聴き手に伝わるマジック。あと、赤とか青とかステンドグラスとか、それこそタイトルのカメレオンとか、割と色鮮やかな歌詞なのに曲の印象が全然カラフルじゃないのも面白い。

 

【「タメ」の妙】

そしてその歌詞の歌い方。岡野氏の持ち味のひとつとには、1個1個の言葉をパキパキ!とハッキリ発音する「滑舌の良さ」があって、言葉がダイレクトに伝わってくる魅力がある。だけどこのカメレオン・レンズでは、あえてそれをせず、ゆったりとタメたような歌い方が印象的。「おぉたがいを~」とか「うぅつくしい~」とか、わざとリズムを揺らすような譜割りで、元気!というより、大人の余裕を感じさせられる。

もっと顕著な所で言うと、「君の空に放した青い鳥」のところ。今までだと「はんなーしたー、あ、おいと~り」みたいな感じになっていたはずが、「はっな~~~し~た~ぁおいと~り」と、言葉の境目をぼやかしている。これは昭仁にしてはかなり珍しい歌い方だと思う。

この、リズムを揺らしたり音を詰めたりっていうのが、何かに似てるな~と思ったんだけど、ジャズのサックスアドリブ。あんな感じで、ただリズムに沿うんじゃなくてあえてタメる。上にも書いたけど、正に今回の昭仁の歌い方は楽器かのような、演奏と合わせてひとつ、ものすごい気持ちのいいグルーヴが生まれてる。エモい。バイブス上がる。

 

【あえての外し】

あえてあえて言い過ぎな気もするけど、この曲は本当に「あえて」が多い。特に印象的だったのが、サビの最後のフレーズを繰り返さないところ。今までだったら、もう1回「Black or White~」のくだりがあったと思うんですよ。だけどそれをあえてしない、あえて1回でスパッとやめるってのが、最初聴いたとき「えっ終わり?!やだ……もっと聴かせてよ……!もっとちょうだいよ!!!ねえ!!!」と、心が欲しがりさんの欲求不満になるくらい、おあずけ感がすごい。焦らしがすごいです。ただでさえ音も声も気持ちいいのに最後にこんなんされたらねぇ。Light and Shadowの歌詞にもあったけど「心が濡れる」曲ですよ。マジで。心びしょびしょ。キスだって無駄ですよ。

 

【タイアップ】

この曲は金曜ナイトドラマ枠の「ホリデイラブ」ってドラマのタイアップシングルで、まあざっくり言えば夫婦の不倫もの。そこで晴一がラジオで言っていた、曲を作るにあたってのコンセプト的なものが以下の文なんですけど、

「ドラマは不倫を扱った内容で、ディレクターさんと打ち合わせをしたけど、細かい話というよりは、世界観の話。タイアップが無いとシングルが出せないご時世ではあるけど、今回は『ポルノと言えば?』みたいな、サウダージハネウマライダー、アゲハ蝶、愛が呼ぶほうへ…みたいのはまぁ少ないけど、いわゆるそれらのパブリックイメージを踏襲して……みたいなリクエストではなかった。従来の作り方とは違う、新しいところをシングルで出せるという感覚はある。」

ホリデイラブ様様ですよ。本当に。「ポルノっぽくしてください」じゃこの曲はできなかったってことになる。でも逆に言えば、このカメレオン・レンズを世に出すことで、「ポルノってこういうのもできるんだね」というイメージにしてしまえる、ポルノにはそういう力がある。二人だからこそ、自由に形に囚われず、なんでも「ポルノの曲」にしてしまえる。引き出しがいくつ増えるんだ?とこちらが考える必要もなく、まだまだ色んな面が見ることができるのだとも思っている。

 

ドラマも一応毎話追ってるけど、最後の最後の良い(えげつない)場面で流してくれるんだ……ドラマの感想もせっかくだから書いておきたい気持ち。早く音楽番組でこの曲が聴ける、世間に聴いてもらえることを今から心待ちにしている。CD発売は3月21日。前日にはWOWOWの中継もあるので、この曲もやるだろうか。待ち遠しいです。

 

カメレオン・レンズ(初回生産限定盤)(DVD付)

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